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今週のコラム 263回目 センチネルリンパ節生検の失敗は何故起こるのか?

今日も晴天!

秋晴れ(冬?)コンディション凄くいいですね。

ZOOMXを履いての初めての日曜日(普段、朝晩に分けている距離を朝一気に走ります:つまり2倍)

予想通り(以上?)のtime upに気分あげあげ(昨日の「ブラタモリ」でもこのワード出てました)でこのコラムを書いています。

 

〇 レベル3まで転移があるのに「鎖骨下郭清は一般的ではない」という理由で、それを行わない(行えない?)

そんなケースを最近目の当たりにしています。

私は、とても憂慮しています。

★ 鎖骨下郭清について

視野が悪く腋窩静脈からの大出血のリスクがあるため、「それこそ」一般的ではなくなりました。

ただ「一般的ではない」ことと、(それが必要な際に)「それができない(患者さんに提供できない)こと」は別次元!

 

私の解釈

 

 

1.画像上(最初から)転移所見が無い場合

⇒ 鎖骨下郭清(レベル3郭清)をする必要はないでしょう。

かつて、(リンパ節転移が無くても)「郭清=鎖骨下まで郭清する」時代がありました。(大小胸筋も合併切除する時代)

その頃を「鎖骨下郭清が一般的であった時代」と呼ぶのであれば、今は(必要が無い時には)鎖骨下郭清はしない=「鎖骨下郭清が一般的ではない時代」と呼ぶことはできます。

2.画像上転移所見がある場合

①術前抗がん剤をした場合

①-1術前抗がん剤でレベル3が(画像上)消失した場合

⇒多くの施設で「レベル2まで郭清」して、「鎖骨下リンパ節郭清は一般的ではない」という理由で、その部位(鎖骨下)は放射線で済ませる

上記が一般的になっているようです。

私は、それには賛成しません(私だったら鎖骨下まで郭清します)。

何故なら(その後の)鎖骨下リンパ節再発のリスクだからです。

ただ(画像上消失しているから)「許容範囲」か!(仕方がないな)とも言えます。

①-2術前抗がん剤をしたが、レベル3が(画像上)残存している場合

⇒問題はこのケースです。

何故なら「抗がん剤は無敵ではない(当たり前)」からです。

このケースでは「当然」鎖骨下リンパ節郭清すべきです。

ただ問題なのは、『日頃から鎖骨下リンパ節郭清を避けている医師に、(難易度の高い)この手技ができるのか』です。

 

そのような医師は、(手技的な)不安から…

本来、レベルⅢ郭清(鎖骨下郭清)すべきこのケースで「鎖骨下郭清せずに、鎖骨下は放射線で済ます」

これは大問題!

鎖骨下リンパ節再発のハイリスクとなる(上記①-1とは次元が異なると私は思います)

②術前抗がん剤をしなかった場合

当然、手術でレベル3までキッチリ郭清(鎖骨下郭清)できるという自信がなければこれは選択できないでしょう。

★ 逆にいうと、「リンパ節転移があると、術前抗がん剤をゴリ押しする医師が多い」背景だと私は憂慮しています

 

つい、本編と関係ないことを熱弁してしまいました。

ただ、次のコラム「腋窩郭清」に続く内容となります。

 

 

〇 本編

センチネルリンパ節生検の失敗

(前回の図)

 

まずは、この図をご覧ください。

(癌から)流れた色素はSN⇒腋窩リンパ節(レベル1)へと流れていきます。

 

 

 

 

ここで、(もしも)皮膚切開を、このように「正しい位置よりも上」にしてしまったら…

どうなるか?

 

 

 

 

 

このように、(本物の)SNが残存してしまいます。

この場合色々なケースが(実際に)起こります。

 

 

1.郭清省略されてしまうケース

 

この場合には迅速診断で提出された(偽物の)SNが「転移陰性」と判断され、郭清省略されます。

しかし、数年後に(転移のある)本物のSNが大きくなり「腋窩再発だ!」と騒がれることになります。

 

 

2.追加郭清はしたが、(転移した)本物のSNが残存してしまうケース

 

この場合には「追加郭清」されることになります。

追加郭清の際に「本物のSNに気付いて」これも郭清されて(事なきを得る)ケースと「本物のSNに気付かずに」やはりSNが残存してしまうケースがあります。

 

 

 

皮切の位置がいかに重要か?

お解りいただけましたか?

本物のSNよりも下(上流)に皮切を置かないと、それは起こり得るのです。

それでは、「できるだけ下(上流)で皮切したらいいのでは?」と皆さん思うかもしれません。

 

 

リンパ管を見つけて、上(下流)に追いかけても、(SNまでに)距離が長くて結構大変となります。

 

 

 

 

こんなイメージです。

術者の心情としては、『なるべくSNに近い部位で皮切して「サクッと」終わらせたい』

となるのです。

 

結局、ここに「SNの失敗の元凶」があるのですが、「経験」しかそれを克服できないのです。