QandAを回答していて、「早く、無用な悩みから解放してもらいたい」と思いブログで回答します。
以下内容です。
タイトル:
皮膚への浸潤を認めるとの記載がある場合
性別:
女性
年齢:
35
メッセージ本文:
いつも拝見させていただき参考にさせていただいています。
現在術後抗がん剤治療中です。すでに3回終わった所なのですが
ここにきて再発するのではと不安になっており
質問させていただきました。
病理結果
腫瘍径2.2センチ リンパ節転移なし
リンパ管侵襲なし 血管侵襲なし ki67.90%
グレード3
トリプルネガティブです
手術で全摘しました。
病理結果を紙でもらっておらず先生が画面開いている時に上記情報を得ました。
抗がん剤したら再発率下がるから抗がん剤しようねとしか言われず
今まで頑張ってするしかないと抗がん剤していたのですが先日たまたま
先生が病理結果の画面を開いているときに画面のしたの方に皮膚に浸潤ありとの文言が書いてあるのが目に入りました。
頭の中が真っ白になってしまって先生に質問出来なかったのですが、これは皮膚転移してるとのことでしょうか??
保険会社に提出する書類にはT2N0M0となっていたので皮膚浸潤とは思ってなかったんです。皮膚浸潤していない場合とでは予後変わってきますか?
癌の部分が乳首の真横で温存は難しいとの事だったので全摘したのですが、皮膚に浸潤している部分は取り除けてるのでしょうか??
こちらのサイトでトリプルネガティブでもグレードが3でもあくまでもステージが大切との先生の言葉をみて前向きに頑張っていたのですが予後が変わるんじゃないかととても不安になってしまいました。
もう1つ最近逆の胸が痛い気がするのですが、抗がん剤中に逆の胸に癌ができたり、別の場所に再発したりすることはあるのでしょうか??
お忙しいところ恐れ入りますがご回答よろしくお願いします。
回答
こんにちは。田澤です。
質問者は大変な勘違いをしています。
この回答を見て安心していただければ幸いに思います。
癌の「波及度」という表現があります。
まずこれを解説しましょう。
「乳腺の解剖」
表面から「皮膚skin(s)」その下に「(皮下)脂肪織fat(f)」その下に「乳腺組織gland(g)」、その奥(下)に「大胸筋層pectralis major muscle(p)」があります。
「癌の進展」
乳癌は「乳管に発生」します。
↓
そして「乳管周囲の間質に浸潤」この段階では波及度(g)
↓
更に「(皮下)脂肪織に到達」この段階では波及度(f)
↓
そして「真皮浸潤」ここで波及度(s)となります。
♯同様に乳腺から(裏側の)大胸筋層浸潤(p)もありますが、これは経験上、かなり腫瘍が大きくならないと起こりません
○特に「真皮浸潤」は特別なことではありません。
皮下脂肪(f)が薄い方だと、比較的頻繁におこります。
これと「皮膚の潰瘍形成、発赤、浮腫、皮膚の衛星結節=T4」とは全く異なります。
T4は「局所進行乳癌」の部類となります。
更に「皮膚転移」はもっと違います。
これは「術後に胸壁におこるもので」局所再発とも異なります。
遠隔転移再発=ステージ4となります。
■回答
「これは皮膚転移してるとのことでしょうか??」
⇒全く違います」
冒頭で解説した通り、「波及度(s)」と皮膚転移(ステージ4)は雲泥の差があります。
「皮膚浸潤していない場合とでは予後変わってきますか?」
⇒波及度(s)は予後に全く影響ありません。
ご安心を
「全摘したのですが、皮膚に浸潤している部分は取り除けてるのでしょうか??」
⇒勿論です。
全摘の場合は「腫瘍直上の皮膚も十分に取れる」のです。
温存の場合でも「皮膚に近い、もしくはくっついている=波及度(f)が疑われる」場合には「直上の皮膚も十分に切除するのが原則」です。
「抗がん剤中に逆の胸に癌ができたり」
⇒これも勘違いが多いことの一つです。
乳腺同士は全く別物であり、「対側乳腺に転移や再発」することはありません。
もしも「出る場合」は「全くの新規乳癌」です。
「別の場所に再発したりすることはあるのでしょうか??」
⇒通常は「抗がん剤中に転移再発」はありません。
質問者は十分に早期なので勿論心配ありません。
★pT2(22mm), pN0は十分な早期乳癌です。
トリプルネガティブやグレード3などに惑わされないようにしましょう(担当医自身が、そのような事を言う場合があるので困ったものです)
抗がん剤による「上乗せ効果」は18%もあるので「きっちり治療すること」に専念しましょう。