[管理番号:8614]
性別:女性
年齢:42歳
病名:乳癌、トリプルネガティブステージ1
症状:
投稿日:2020年6月8日
4年前に右側乳がんになり、ハーツゥ陽性タイプ1.5センチのステージ1で、術前抗がん剤、ハーセプチン、温存手術、放射線を行いました。
術前抗がん剤の時点で、腫瘍は消えてくれました。
経過観察で順調だと思っていた所、4月下旬頃から反対側の左胸にシコリを感じ、エコー、CT、針生検、MRIの結果、今度は左側に新たに癌が出来てしまったようです。
CT、エコー、針生検、MRIの結果だと、1.5センチの癌で、リンパの転移は明らかではなさそうですが、タイプが、トリプルネガティヴのステージ1と言われてしまい、治るものなのか不安で不安で、どのような治療が最善なのかアドバイスを頂きたいです。
主治医は腫瘍内科と乳腺外科の2人の先生が居るのですが、腫瘍内科の先生より、治療は、術前抗がん剤を提案されました。
そのメリットは抗がん剤で腫瘍が消えなかった場合、再発予防にゼローダという経口薬を使う事ができるということだそうです。
術前ならば抗がん剤は今週の水曜日から始められるそうです。
術前抗がん剤と術後の抗がん剤どちらを選択すれば良いのか。
どちらにしても不安です。
右側の時は、ハーセプチンを使えたので、抗がん剤も良く効いてくれ完全に消す事が出来ましたが、トリプルネガティヴだと、はたしてどのような抗がん剤が効くのか、効かない場合、癌を体に放置し、他に転移してしまうのではないかと、1.5センチと小さいうちに早く取ってしまった方が良いのではないかと不安になってしまいます。
術前抗がん剤をした方が、抗がん剤を変えたり選択が広がるのでしょうか。
トリプルネガティヴでも根治を目指し長生き出来るのでしょうか。
また、手術方法ですが、私の場合4年前に右側温存術のため抗がん剤と放射線を使っていて、心臓のことを考えると左の場合は全摘の方が良いのではないかと言われました。
両側を放射線照射するとなると、重なる部分があり危険なのでしょうか。
遺伝子検査を検討してから全摘を選択しても遅くないのでしょうか。
手術先行となると来週には手術の枠があるそうなので手術方法も決めないとなりません。
ですが、まずは抗がん剤を先にするか後にするか、抗がん剤を先にするとステージが上がらないか心配ですし手術を先にするとゼローダという薬の選択肢が減るのでどれが最善策なのか迷ってしまいます。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
これから提示する私の回答は、主治医と「真逆」となると思いますのでご了承ください。
「トリプルネガティヴのステージ1と言われてしまい、治るものなのか不安」
⇒「サブタイプに拘りすぎ!」
1期の乳癌は(サブタイプが何であれ)無再発生存が90%以上あります。
「どのような治療が最善なのかアドバイスを頂きたい」
⇒シンプルに…
手術⇒術後抗がん剤です。
おそらく前回の抗がん剤でanthracyclineを使用していたと思いますので、選択肢は以下の2つ★
1.Anthracyclineは今回行っても許容量なので普通にanthracycline+taxane
手術⇒anthracycline + taxane ⇒(温存手術なら)放射線
2.前回anthracyclineは使用しているので、今回は(敢えて)使用しない
手術⇒taxane(TCもしくはweekly paclitaxel)⇒(温存手術なら)放射線
「腫瘍内科の先生より、治療は、術前抗がん剤を提案」
⇒ありえない!
術前抗がん剤の「唯一の」適応は「小さくして温存するため」です。
現時点で1.5cmならば、「そのまま温存できる」のです。
「そのメリットは抗がん剤で腫瘍が消えなかった場合、再発予防にゼローダという経口薬を使う事ができる」
⇒大変な誤り。
是非、その腫瘍内科医に「capecitabineの(再発以外での)使用は適応外」であることを教えてあげてください。
『今週のコラム 136回目 決して適応外診療を勧めることはありません。今回のガイドラインの記載には正直、迷惑であり驚いています』を読んだうえで、「capecitabine(ゼローダ)の添付文章」をネットでみてください。
★★ capecitabineの適応は『手術不能又は再発乳癌』です。
決して「術後補助療法」で使用してはいけません。
それでも使用するのであれば、(保険適応外なので)「自費診療」となります。
自費診療と保険診療の併診は禁じられているので、(採血を含め)全ての診療を自費診療としなくてはいけません。
「術前抗がん剤と術後の抗がん剤どちらを選択すれば良いのか。」
⇒術前にする理由がありません。
「トリプルネガティヴだと、はたしてどのような抗がん剤が効くのか」
⇒そもそも…
薬剤には「保険適応」があります。
(再発治療ではない)術後補助療法には「anthracyclineもしくはtaxaneしか適応がない」のです。(選択肢は★の2つなのです)
『今週のコラム 227回目 乳癌治療の実際 「全身治療(薬物療法)」vol. 1 術後補助療法』も熟読してください。
「術前抗がん剤をした方が、抗がん剤を変えたり選択が広がるのでしょうか。」
⇒誤り!
(再発治療ではない)術前術後補助療法では使用できる抗がん剤は
「anthracyclineもしくはtaxaneしかない」ので、(効く効かないに無関係に)そもそも選択肢が無いのです。
「トリプルネガティヴでも根治を目指し長生き出来るのでしょうか。」
⇒??
1期ですよ?
何のために「ステージがある」と思っているのですか?
冷静になってください。
「サブタイプで予後を語るのは、頭でっかちの偽乳腺外科医だけにお任せ」しましょう。
「両側を放射線照射するとなると、重なる部分があり危険なのでしょうか。」
⇒誤り!
両側温存で両側同時に照射している患者さんは星の数ほどいらっしゃいます。
「手術を先にするとゼローダという薬の選択肢が減る」
⇒根本的に間違っている。
誤った治療をしないように気をつけてください。
「どれが最善策なのか迷ってしまいます。」
⇒迷う余地は(私には)全く無いように思います。