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腫瘤の硬さや数について

[管理番号:390]
性別:女性
年齢:49歳
はじめまして。
 
3月末に九州の大学病院を受診し、マンモと超音波検査を受け1cm弱の腫瘤が1個あるとわかりました。
その時点で自分ではしこりは確認できていませんでした。
後日MRI検査を受けて、超音波で指摘されたところとは別のところに2か所の腫瘤が見つかりがんの疑いと言われ先日その3個の腫瘤についてすべて針生検をしました。
 
MRIの画像では、超音波で見た腫瘤1cm弱とは別の2個の腫瘤(1cmちょっとのものと1cm弱のもの)が見えていました。その2個は超音波では見えたり見えにくかったりするようでした。
 
針生検では、MRIで見つかった2か所の腫瘤は他の腫瘤よりかなり硬かったようです。
その硬さの違いで先生は超音波で見つけたものとMRIで見つかったものとは別のもののように言っておられました。
 
針を刺すときの硬さでその腫瘤の性質はある程度推測できるものでしょうか?
また癌であった場合、大きさは1cmくらいでも、硬さが固いほど時間が経っていたり悪性度が高いということはないのでしょうか?
場所にもよると思いますが、腫瘤の数が多いということは1個のときよりがんがひろがっているということでしょうか(同時に多発することもあるのか)?
 
自分ではしこりはわからなかったのに、いくつも腫瘤があるとわかり動揺しています。
がんであるなら、これからの検査でわかることですが、大きさに関わらずたくさん腫瘤があることで、リンパ節に転移していないかなど恐怖でいっぱいです。
肩こりがひどいこともそのせいかと考えてこわくてなりません。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 検査精度が悪く「MRIで見えたものが超音波で見えたり見えなかったり」というのは診療の精度に問題があるように感じます。
 その程度であれば、「針生検の精度」に問題があるかもしれません。
 大学病院らしい「超音波は技師さん」で「針生検をする医師とは別」のような事が原因でしょうか?
 1人の医師が「責任を持って」自分で「超音波で腫瘍を評価」して「超音波像での癌の可能性(3個の腫瘍それぞれについて)」などを「きちんと説明しなくてはなりません」

回答

「針を刺すときの硬さでその腫瘤の性質はある程度推測できるものでしょうか?」
⇒ある程度は推測できます。
 
 たとえば、硬癌など「線維成分がおおいもの」⇒硬い
 充実腺管癌など「細胞成分が多い」⇒硬くは無いが「密度がある」
 線維線種は(幅がありますが)⇒(水っぽく)「密度がそれ程高くない」など
※癌でなくとも「乳腺症の線維成分」などは「かなり硬い」(細胞診の針が通らない程)
 
「癌であった場合、大きさは1cmくらいでも、硬さが固いほど時間が経っていたり悪性度が高いということはないのでしょうか?」
⇒(上記で示したように)「硬さは、腫瘍の性質による(線維成分の含有量など)」ので悪性度とは関係ありません。(時間とも関係ありません)
 
「場所にもよると思いますが、腫瘤の数が多いということは1個のときよりがんがひろがっているということでしょうか(同時に多発することもあるのか)?」
⇒これは、「3つの腫瘍の位置関係」にもよりますが、「同じ乳管系を想像するような」位置関係出ない限りは「拡がりではなく、多発」だと思います。
※例えば「非浸潤癌として乳管沿いに拡がり、そのところどころで芽を出すように(浸潤して)腫瘍として認識」のような場合には「拡がり」を考えますが、「全く別々の位置関係だとすれば、同時多発(全てが癌とは限りませんが…)の可能性を考えます。
 
「大きさに関わらずたくさん腫瘤があることで、リンパ節に転移していないか」
⇒数は進行度(リンパ節転移など)とは全く関係ありません。「一番大きな腫瘍の大きさが関係してきます。決して足し算をするわけではないのです)
 1cm程度の腫瘍ならば(多発の有無に関わらず)もし癌であったとしても早期(1期)であり、リンパ節転移は無いと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、昨日は丁寧で的確なお返事をいただきまして本当にありがとうございました。
知りたいことを的確にお答えいただけるのは、豊富な知識とご経験の裏付けがあることはもちろんのこと、それと同時に、先生が患者の心に寄り添い耳を傾けてくださっているからだと改めて思いました。
針生検の結果は今週末(5/14 頃)に出る予定です。待っている期間は辛いですね。
がんであっても早期ならまだ前向きになれそうですが、1cmの大きさでも浸潤していて時間がたっていたらどうしようなどといろいろ考えてしまいます。
昨年度は、自治会の会長に抽選で選出されてしまい精神的にかなり厳しい1年を過ごしました。忙しさは仕方ないのですが、会計担当の人が困った人でまわりの人がみんな振り回され、私自身も寝られない日が何日もあったので、がんの原発は5年以上前のものかもしれませんが、この1年で促進してしまったのかもと思うと悔しい思いです。
ストレスがどの程度がんに関係するのかはわかりませんが、早期の1年くらいではそんなに影響しないだろうと思いつつ、そういうことを考えること自体がストレスになるとまた反省している日々です。
今週の検査結果の良し悪しに関わらず、このたびの先生の迅速でかつ丁寧なご回答によってどれだけ力をいただき救われたかことか、知りたいことを汲み取ってわかりやすくお伝えいただいたことにお礼を申し上げます。
先生にご回答いただけたことが、今の私にとってどれだけありがたいことであったか感謝いたします。
 

田澤先生から 【回答2】

お気持ち、お察しします。
ただ、進行していることは無いと思いますので検査結果まで、心配せずにお待ちいただければと思います。
その結果によっては、再度ご質問いただければお答えします。
江戸川病院 乳腺センター 田澤
 
 

 

質問者様から 【質問3 リンパ節転移について】

先月末に受けた針生検の検査の結果が14日頃わかる予定でしたが、G.Wの影響でまだ結果が出ていないため検査の結果待ちです。
その間子供がいるので普通に生活はしていますが、リンパ節転移や遠隔転移など自分の病状についていろいろ考えて毎日泣きそうな気持でいます。
リンパ節転移について、手術後に正確な状況が判明すると思いますが、手術の前の検査ではどのような方法でどの程度わかりますか?
私は針生検の前にMRIを受けましたが、画像の範囲のことなのか、先生からリンパ節まで映っていないと言われました。
また、リンパ節転移の自覚症状があるならどのようなものでしょうか?
痛みや腫れ、しこりなど、しろうとでもわかるものがあれば教えていただけるとありがたいです。
私は5年ほど前から肩こりがひどいのですが、最近首の両側、特に耳の後ろが痛かったり、のど元の左右両側の下の方もだるく押すと痛いです。また受話器を長く持っていた後、手の先にしびれを感じる時があります。
3個の腫瘤があるのは左側ですが、両側が同じように痛みます。
しびれは腫瘍と逆側だけです。
脇の高い部分やへこんだところには特にしこりはありません。
お忙しいところ、このような不確定な状況をお伝えしてたくさん質問してしまい申し訳ありません。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 「結果が出るまでは大変不安な状態」で御心配なことと思います。
 前回の回答のように「もし癌であったとしても、1cm程度であれば」全く心配はありません。

回答

「リンパ節転移について、手術の前の検査ではどのような方法でどの程度わかりますか?」
⇒超音波とCTで、おおよそは解ります。
 基本的には「超音波の診断」で殆どが解ります。
 CTは参考程度に「造影効果」などを確認します。
◎実際には「腫瘍が1cmと小さい」場合には、「超音波やCTで転移無しと判断」していれば、殆ど「転移は無い」と言えますす。
 
「リンパ節転移の自覚症状があるならどのようなものでしょうか?」
⇒余程大きな転移があれば、「触って解る」のですが、それ以外の症状(痛みや痺れ)は全くありません。
 
「私は5年ほど前から肩こりがひどいのですが、最近首の両側、特に耳の後ろが痛かったり、のど元の左右両側の下の方もだるく押すと痛いです。また受話器を長く持っていた後、手の先にしびれを感じる時があります」
⇒「肩頚腕症候群」や頸椎症などの症状のようです。
 「しこり」とは全く関係ありません。
 安心してください。
 
 

 

質問者様から 【質問4 がんの悪性度について】

田澤先生、いつも丁寧でわかりやすいご回答をいただきありがとうございます。
先日、針生検の結果が出ました。
先生のおっしゃるとおり、硬がんか繊維分の多いものか
どちらか半々の疑いでしたが、硬がんとわかりました
(腫瘍は3個ありましたが、そのうち1個はがんではありませんでした)。
針生検の結果、新たにわかったことですが、
2個の腫瘍のタイプは違うということです。
①腫瘍の大きさ15mm ER90 PgR50 HER2(-) Grade1
②腫瘍の大きさ 8mm ER90 PgR 0 HER2( -) Grade1
①は浸潤性 乳管がんでカドへリン(+) ルミナールA
②が浸潤性 小葉がんでカドへリン(-) ルミナールB
①②共にki67はとれた細胞が少なく不明とのことです。
どちらが原発巣かはわかりませんが、
元はおなじもので細胞の突然変異でちがうものになったのか、
それともまったく別のものがたまたま同じ乳管内にできたのか、
どのくらいの年月をかけてどの時期に2つの腫瘍が発生したのか、
その成り立ちやメカニズムが知りたかったのですが、
病理の先生はまったく違うもの、担当の先生は変異だろうとのことでした。
別の種類のがんがあるということは特別なことなのか、どのような発生の仕方なのだろうかなどわからないことばかりで混乱しています。
また、ki67がわからないというのも気がかりで、
わからない時点で①と②のサブタイプがルミナールAとBとされているのは、
どこの違いからでしょうか?
担当医は②を指して、予後が悪いと言っておられました。
②が小葉がんであるからなのか、PgRのパーセンテージの違いやカドへリンの
陽性陰性の違いなのでしょうか?
小葉がんというのは割合が少ないと聞きますが、乳管がんとどうちがいますか?
悪性度は高いのか人と違うのかと心配でなりません。
ホルモンの値もどんどん下がってくるので薬が効かなくなるという話しもしておられました。ただGrade1だからいいというようなことも言っておられたように思います。
カドへリンについては説明はありませ んでしたが、これが(-)なので①より②の方が悪性度が高いようなことを言われてこわくて仕方ありません。
今後の治療の方針は、ホルモン療法ということは強調されていました。
kiの数値がわかってもわからなくても同じだと言われていました。
術前に化学療法なしで手術のあと切ったもので決めていくということでした。
この場合、術前の化学療法はしなくていいのでしょうか?
リンパ節転移は今針をさしてもないところにさしてなくても意味がないので、
とってからすべてがわかるという話しでした。超音波ではみたとのことですが、
その段階では何もないと簡単に話しをされただけです。
手術ですべてわかるというのは正しいと思いますが、病期も聞いていないし、遠隔転移の検 査はしなくていいのか、リンパ節転移はどうか、ある程度手術前に暫定的にも教えてもらえたら少しは気が楽になるのにと思います。
手術が1ケ月半~2ケ月後というのも大変辛いことです。
進行が早いがんならこの期間にどれくらい進むのかと考えると頭がおかしくなりそうです。MRIの画像では、2個の腫瘍の同じ側の乳管にすべてがんではないかもしれないけど小さな点が拡がっていましたが、カンファレンスで部分切除で
いけると意見が一致しているそうです。
乳管内の拡がりのことを聞いてますます早く手術をしてもらいたいと思いましたが、非浸潤性がんは進行が遅いから大丈夫とのことでした。
今は待つしかないのか、担当医に何をお願いすればいいのか悲しみでいっぱいです。
お忙しいところ、まとまりのない文面になってしまい申し訳ありません。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 針生検の結果がでましたね。

状況の確認

①pT1c(15mm), NG1, ER(90%), PgR(50%), HER2-, IDC, luminal A
②pT1b(8mm), NG1, ER(90%), PgR(0%), HER2-, ILC, luminal B?(私はluminal Aとしていいと思います)

回答

「①と②のサブタイプがルミナールAとBとされているのは、どこの違いからでしょうか?」
⇒これはPgRの値でいっているようです。
 St. Gallen 2013では「luminal Aの定義にPgR 20%以上」としています。
 但し、PgRの値はあまりあてになりません。(免疫染色にばらつきがあるからです)
 それよりもNG1というところに注目してください。
核グレード=核異型度+核分裂
○核異型度
軽度   スコア1
中等度  スコア2
高度   スコア3
○核分裂
経度   スコア1
中等度  スコア2
高度   スコア3
◎核グレード 核異型度+核分裂
グレード1 スコア2,3
グレード2 スコア 4
グレード3 スコア5,6
 つまりNG(核グレード)1と、いうことは核分裂も軽度の可能性が高いという事です。
luminal AとBを区別するKi67は核分裂期にある細胞の割合を示しています。つまりNG1の場合には、おそらく「低い」ということです。
★PgR 0%は大した意味はありません。
 それよりはNG1より『②もluminal Aとしていい』と思います。
 
「担当医は②を指して、予後が悪いと言っておられました。②が小葉がんであるからなのか、PgRのパーセンテージの違いやカドへリンの陽性陰性の違いなのでしょうか?」
⇒「予後が悪い」という担当医のコメントは「完全な誤り」です。
 小葉癌は「乳房内に多発しやすい」性質を持っていますが(全身的な)予後はむしろ良好です。
②は浸潤性小葉癌(小葉癌の定義はEカドヘリン陰性という事です)です。
小葉癌が予後が悪いというのは担当医の完全な誤りです。
★小葉癌は、(同時性にしろ、異時性にしろ)多発しやすいという性質があります。
 これは、「温存術」にリスクがあるという事です、(つまり将来的な温存乳房内再発のリスクがある)
 
「小葉がんというのは割合が少ないと聞きますが、乳管がんとどうちがいますか?」
⇒違いは、「小葉癌は予後が良く、しかし乳房内に多発しやすい」という事です。
 
「悪性度は高いのか人と違うのかと心配でなりません。」
⇒小葉癌は「悪性度は低い」のです。
 ただ、術式として「乳房温存に注意が必要」つまり「乳房切除を検討すべき」という事です。(リスクを承知の上の乳房温存は選択可です)
 
「術前の化学療法はしなくていいのでしょうか?」
⇒不要です。
 術前化学療法の適応は「腫瘍を小さくして、温存する」というものです。
 そもそも①も②もluminal Aですので「化学療法の効果は限定的(弱い)」と思います。
 
「リンパ節転移は今針をさしてもないところにさしてなくても意味がないので、とってからすべてがわかるという話しでした。超音波ではみたとのことですがその段階では何もない」
⇒(臨床的には)cN0(画像上、リンパ節転移なし)という事です。
 おそらくリンパ節転移はありませんが、「術中センチネルリンパ節生検」を行って最終確認するということです。
 
「病期も聞いていないし、遠隔転移の検査はしなくていいのか、リンパ節転移はどうか、」
⇒病期は①cT1c, cN0, cStage1 ②cT1b, cN0, cStage1
 つまり病期は1期です。
 全く心配ありません。
 遠隔転移もないし、リンパ節転移も無いでしょう(術中センチネルリンパ節生検で確認します)
 
「MRIの画像では、2個の腫瘍の同じ側の乳管にすべてがんではないかもしれないけど小さな点が拡がっていましたが、カンファレンスで部分切除でいけると意見が一致しているそうです。」
⇒②が小葉癌であることで「多発のリスク」を話されていないのでしょうか?
 「カンファレンスなど何の足しにもなりません。」
 小葉癌が「現状はどうあれ、将来的に多発のリスクがある」ことを「そのカンファレンスをしている多くの医師は知っているのでしょうか?」
 
★私は「乳房切除」を絶対に勧めているわけではありません。
 ただ、「小葉癌が乳房内に多発しやすい」事を承知したうえで「術式選択すべき」なのです。
 
「非浸潤性がんは進行が遅いから大丈夫」
⇒勘違いがあります。
 ①も②も浸潤癌です。 ①は浸潤性乳菅癌、②は浸潤性小葉癌 です。
 ただ、「進行は早くはありません」は事実です。
 
◎「カンファレンス」「手術まで2か月」 これらからすると「大学病院か○研○明のような大病院」でしょうか?
 小葉癌という意味を良く解っていないような病院で「2か月待ち」での手術は、私は心配に思います。
 少し辛口になりましたが、「正しい診療がされていない、無駄に診断治療までの期間が長すぎる」事に『乳腺外科医として不満』を持っているのです。
 
 

 

質問者様から 【質問5 小葉がんについて部分切除か全摘か】

田崎先生、いつもありがとうございます。
この1か月くらいの間に先生からいただいたご回答が私の大きな励みとなり、また他の方々へのご回答も毎日拝見するうちに先生の豊かなご経験にもとづく一貫したお考えがよく理解できるようになってきました。
手術法についての質問をさせていただきます。
先生が既に前回のご回答の中でご指摘くださっていましたように、実は私自身も小葉がんというところで部分切除が妥当なのか戸惑っていました。
前回の質問が長めになってしまったため、改めて質問させていただこうと思っていたところです。
小葉がんは多発するとのことですね。
MRIの画像には同じ乳管内にすべてはがんではないかもしれないけど、小さな点が見えていてそれが乳管に沿って乳頭の近くまできていたため、それを十分なマージンをつけて切り取ることができるのかも心配でした。
担当医にそのことについて聞いたところ、部分摘出の場合は乳頭ぎりぎりまでとるとのことでした。ぎりぎりというのがどのくらいのサイズなのか数値がわからないので、どのくらい余裕があるのかがとても気がかりでした。また、別問題ですが乳頭の壊死についてお伺いするとそれは切り方によるというお答えでした。
部分切除+放射線で全摘と同じ安全性ですという説明の後、全摘か部分にするかは私に任せますということでした。乳房の美容的な選択なら患者本人の希望でよさそうですが、小葉がんであること、非浸潤がんとみられる小さな点が乳頭ちかくまで延びていることなど、私自身では決めかねる医学的な判断が必要になる要素があるためにそのときは全摘でお願いします、と答えました。そうすると担当医は全摘にするかどうかを決める前に、病院内の形成外科の受診をすすめてくださって、後日全摘の場合の同時再建について詳しくお話を聞くことになりました。まだ形成外科の受診はしていません。
その前に、田崎先生にお話を聞いていただけて本当に良かったです。
小葉がんは細胞が小さいため腫瘤を形成するまで時間がかかり見つかりにくいと聞きます。小葉がんの場合、残した乳腺に見えないがんがあとででてくることがあるということですか?また、反対側にも起こりやすいと聞きますが、手術のあとに見つかると再発ということになりますか?これを早期に発見するために気を付けることはありますか?
答えが見つからないで迷っている患者さんは多いと思います。
先生の存在が力になり、また前に進めそうです。
 

田澤先生から 【回答5】

 こんにちは。田澤です。
 「小葉癌」ですね。
 術式選択には注意が必要です。

回答

「小葉がんは多発するとのことですね」
⇒(乳管癌と比べ)多発し易い事がわかっています。
 
●多発とは以下の2つがある
『同一乳管内にできる多発』:
「乳管癌」のように「1つの乳管内に非浸潤癌として進展し、そのところどころで浸潤して、しこりを形成することで複数の腫瘍を形成する
『多中心性発癌』:
「小葉癌」のように複数の癌が「お互いに全く独立して」発生する
 小葉癌は、この多中心性発癌をおこすのです。
 
「残した乳腺に見えないがんがあとででてくることがあるということですか?」
⇒その通りです。
 これを「乳房内再発」といいます。
 「乳管癌」のように、「腫瘍からの拡がり」を考慮して「大きめに切除すれば、防げる」ものではなく、「小葉癌のような多中心性のもの」は「一つ一つの腫瘍が(全てが、その時点でMRIや超音波などの画像で見える訳ではありません)全く独立して存在するので、大きめに切除しても防ぐことが難しい」のです。
 
「反対側にも起こりやすいと聞きますが、手術のあとに見つかると再発ということになりますか」
⇒「対側にできることは」再発ではありません。『新規発生』といいます。
 例え同側(手術した側)に発生したとしても、手術部位から距離のある部位のものは「乳房内再発ではなく」『新規発生』となります。
&nsbp;
「これを早期に発見するために気を付けることはありますか?」
⇒これは、(術後の)定期的な超音波検査が最も有効です。
 術後3カ月に1回程度、診察超音波をすれば、確実に早期で発見できます。
 
 

 

質問者様から 【質問6 全摘の場合の乳頭と乳輪について】

田澤先生、いつもありがとうございます。
これまで先生から幾度も的確なご回答をいただき、そのことがあったからこそ、前が見えない状況の中、いろいろな選択や迷いに直面した時も、その都度自分の答えを見つけて納得しながら進むことができたと思います。
そしてようやく7月後半に手術の日が決まり、手術法は全摘、後日再建することになりました。
本日は、他の方の質問にもありましたが、全摘で乳頭と乳輪を残せるかどうかについて質問させていただきます。
腫瘤自体(2個)は乳頭から離れて上部にありますが、MRIの画像では乳頭の方に、全部ががんではないかもしれませんが、小さな点々が伸びていて(約7cm)、乳頭まで4mmの距離しかありません。画像では乳頭への浸潤はないようです。
全摘する理由は小葉がんだからですが、この乳管内の拡がりから考えても乳頭・乳輪を残すような切除は通常避ける方がいいのでしょうか?
乳頭を温存することによって、壊死や再発の可能性など問題はあるかと思いますが、このような症例の場合どれくらいの危険性があるでしょうか?
乳頭も乳腺の一部なので小葉がんの多発のリスクは高いですか?
また残した乳頭と乳輪には部分切除のように放射線はあてられませんか?
小葉がんであること、他には整容性の面においても全摘することは最良の選択と思っておりますが、そのことがなくてもやはり全摘だったのかな、と時々考えます。
というのは、乳管の拡がりが7cmくらいあるのですが、昨年強いストレスがありそのことによって数cmでも拡がりが増えてしまったのではないか、通常一年で乳管内にどのくらいのスピードで拡がるものなのか、余裕で乳頭を残せる距離はどのくらいあればよかったのかなどと考えてしまい、その答えが出ないままではどこかひっかっかったような気持ちがしています。
主治医は乳輪、乳頭を残すにはリスクはあるように言っておられましたが、最終的にはどちらにするかは私次第というふうでした。
以上、お答えいただけたら嬉しく思います。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答6】

 こんにちは。田澤です。
 「乳輪乳頭温存乳房切除」については、エビデンスの高いものは無く、適応には十分な注意が必要です。
 やはり、現段階では「腫瘍と乳頭との距離が十分確保されている」事が必要であり、それでも「乳頭部分の局所再発や壊死の可能性」については了解が必要です。

回答

「この乳管内の拡がりから考えても乳頭・乳輪を残すような切除は通常避ける方がいいのでしょうか?」
⇒避けた方がいいと思います。
 「乳頭まで4mmの距離」では「十分な安全性の確保」は困難です。
 
「このような症例の場合どれくらいの危険性があるでしょうか?」
⇒今回のような条件下で「この術式」が為されたケースは極少ないと思われ、「どの位」と応えることはできません。
 
「乳頭も乳腺の一部なので小葉がんの多発のリスクは高いですか?」
⇒小葉癌が「乳頭部に発生」することは無いと思います
 乳頭部には「乳管」がありますが「小葉」はありません。
 乳頭部から乳管が伸びていき「乳頭部から十分離れた末梢」に小葉構造があります。
 
 ○小葉癌が「小葉で発生して」乳管を伝って「乳頭にすでに存在」していれば、それが後から「再発」することは有ると思いますが、「もともと乳頭部に無ければ、新しくそこに小葉癌が発生することは無い」と思います。
 
「また残した乳頭と乳輪には部分切除のように放射線はあてられませんか?」
⇒その部分だけの照射は通常行われません。
 「部分切除のように」とありますが、「部分切除の際には、乳腺全体にまんべんなく」照射します。
 「トモセラピー」であれば、「照射野を任意の範囲に設定できる」ので技術的に可能だとは思いますが、そのような経験は「どこの施設でもない」と思います。
 
「主治医は乳輪、乳頭を残すにはリスクはあるように言っておられましたが、最終的にはどちらにするかは私次第というふうでした。」
⇒主治医と全く同意見です。
 「乳頭乳輪温存乳房切除」での「乳頭乳輪部再発」については現時点ではエビデンスに乏しく、「安全性を優先すべき」と考えます。
 ただし、逆にいうと「駄目だと言うエビデンスにも乏しい」ので、「やってはいけない」という訳では無いのです。
 ○最終的には「リスクを認識したうえで」ご本人の判断となるでしょう。
 
 

 

質問者様から 【質問7 小葉がんについて】

いつもありがとうございます。
手術直前になり異常な緊張感と恐怖心で押しつぶされそうになっています。
ここにきていろいろなことが気にかかり夜中に目が覚めたり、寝付けなかったりしています。
私の状況ですが、片側の乳房に2つの腫瘤(硬がん)と乳管内に7cmの拡がりがあります。
2つの腫瘤は、
①腫瘤の大きさ15mm ER90% PgR50% HER2(-)Grade1
②腫瘤の大きさ 8mm ER90% PgR 0% HER2(-)Grade1
①が乳管がん、②が小葉がんです。
リンパ節転移はないだろうとのことでしたが、先日私の希望もあってPET-CTをしてもらい脇も光っていないし異常なしですとのことでした。
小葉がんは腫瘤を形成するまでわかりにくいとききますが、小さい病変があった場合にも、PET-CTで乳管がんと同じようにリンパ節転移や鎖骨、胸骨の状態はわかりますか?
小葉がんは小さい細胞のためうつりにくいということはないか心配しています。
また、PET-CTと同じ日に胸部X線も撮りましたが、線量は大丈夫だったのかとあとで少し心配になってきました。線量の合計は年間でカウントするものでしょうか?
小葉がんが転移しやすいという真意はどの程度確実かわかりませんが、小さい細胞のためリンパ節や血行性の転移を起こしやすいということなのか、それとも転移の仕方は乳管がんと同等でも転移したときから進行するまで見つかりにくいということなのでしょうか。以前、田澤先生が小葉がんは予後が良いとおっしゃてくださりその言葉を励みにしています。先生のこれまでのご経験から同じ条件下なら、小葉がんがとりたてて転移する頻度が高いという感じはありませんでしたか?
別件になりますが、針生検のことについてお伺いします。
針生検をしたあと、すぐに傷跡はなくなりましたが、3週間くらいした頃に一つの針の痕が膨らんできてだんだん中から血がでてきてそのまま傷自体は治りましたが、2カ月近く経った今も傷あとがうっすらと残っています。
傷の痕から、血行性の転移が起こったり、皮膚にがんがでてくるということは
ないですか?
血行性の転移とはどういった状態のことなのか教えてください。
たくさん質問してしまい、申し訳ありません。
お忙しいのにいつもお答えいただいてありがとうございます。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答7】

 こんにちは。田澤です。
 PETを撮ったのですね。
 PETでもリンパ節転移陰性との事。一安心ですね。

回答

「PET-CTで乳管がんと同じようにリンパ節転移や鎖骨、胸骨の状態はわかりますか?小葉がんは小さい細胞のためうつりにくいということはないか心配しています」
⇒小葉癌でも、関係ありません。写り難いという事はありません。
 通常通り評価できます。
 
「PET-CTと同じ日に胸部X線も撮りましたが、線量は大丈夫だったのかとあとで少し心配になってきました。線量の合計は年間でカウントするものでしょうか?」
⇒心配ありません。
 同時に行うことがリスクではありません。 トータルの線量なのです。(年間の線量でもなく、生涯の線量なのです)
 
「小葉がんが転移しやすいという真意」
⇒誤解です。
 乳腺内に「多中心性発生」するだけで、転移し易い事実はありません。
 ネットなどでは「不十分で不確かな情報として E-cadherinが無いと、細胞の接着性が低いので転移の可能性が高くなる」みたいな情報が出ているのかもしれませんが…
 全く根拠の無い話です。
 そんな情報に「振り回されない」ように願うばかりです。
 
「先生のこれまでのご経験から同じ条件下なら、小葉がんがとりたてて転移する頻度が高いという感じはありませんでしたか?」
⇒その通りです。
 全くありません。
 
「傷の痕から、血行性の転移が起こったり、皮膚にがんがでてくるということはないですか」
⇒ありません。
 心配なのは解りますが、安心してください。
 
「血行性の転移とはどういった状態のことなのか教えてください」
⇒癌細胞が間質浸潤(乳管から外へ出ること)を起こした際に、(間質には微細血管やリンパ管があるのですが)その血管に入り込み、血流にのった癌細胞が臓器に生着し、そこで増殖する事です。
 
○小葉癌は「乳房内多発」以外に注意するべきポイントはありません。
 変な情報に振り回されない様にしてください。
 
 

 

質問者様から 【質問8 手術を前にして】

先生のお答えが届いて涙が出ました。
小葉がんについて教えていただいたこと、またお忙しい中、迅速にお答えいただいたことに深く感謝いたします。
手術前に次々と不安なことが増えてきました。
いくつか質問させていただきます。
1.前回、針生検の質問の際、お伺いするのを忘れていたことがあります。
全摘で皮膚温存手術をしますが、がんの腫瘤の上部の皮膚は通常残しておくものですか?
針生検の痕の傷については心配ないものとして、もうすこし乳腺に近い脂肪?の中にある血管には転移のリスクはないですか?
2.全摘で後日自家組織で再建という予定にしております。手術では、全摘の後、形成外科の先生がエキスパンダーを入れるとのことです。手術時間が8時間、入院期間が2週間と聞いており、なんとなく長いように思うのですが、いかが思われますか?
3.部分切除と全摘手術では、手術時間や入院期間は大きくちがいますか?
また、痛みや傷の治り方にも差がおおきいのでしょうか?
私の場合、エキスパンダーの負担もあるのではないかとわからないものへの不安が強いです。
4.私は、昨年11月から生理がありませんが、この場合閉経と考えて術後の治療をすればいいですか?閉経という決め手は何かわかる方法があるのでしょうか?
今後は、ホルモン治療や場合によっては抗がん剤、放射線治療など、術後の治療についての悩みや迷いに移行すると思います。
また、先生の豊富な知識とご経験からいろいろご助言いただけたらありがたいです。
 

田澤先生から 【回答8】

 こんにちは。田澤です。
①腫瘤の大きさ15mm ER90% PgR50% HER2(-)Grade1
②腫瘤の大きさ 8mm ER90% PgR 0% HER2(-)Grade1
①が乳管がん、②が小葉がん

回答

「全摘で皮膚温存手術をしますが、がんの腫瘤の上部の皮膚は通常残しておくものですか?」
⇒皮膚浸潤などなければ(十分な注意のもと)残す事は可能です。
 ただし、従来
「乳房切除」の際にはその真上の皮膚も切除
「乳房温存」の際には(真上の皮膚を残す代わりとして)放射線照射
 を行っていました。
 これを行わない「皮膚温存乳房切除」が本当に安全なのかは「完全には」解ってはいません。
 
「乳腺に近い脂肪?の中にある血管には転移のリスクはないですか?」
⇒そこから「血行性転移を起こす」事など到底考えられません。
 そのような事があれば、世界中大変なことになります。
 
「手術時間が8時間、入院期間が2週間と聞いており、なんとなく長い」
⇒長いですね。
 私の感覚では「手術時間も入院期間も、その半分で十分」でしょう。
 
「部分切除と全摘手術では、手術時間や入院期間は大きくちがいますか?」
⇒大して変わりません。
 以下に江戸川病院の場合を示します。(念の為に多少差をつけていますが、術後経過に殆ど影響しません)

  手術時間 入院期間
部分切除 45分 2泊3日
全摘手術 60分 3泊4日

 
「痛みや傷の治り方にも差がおおきいのでしょうか?」
⇒傷の大きさは違いますが、「痛みも治り方」も殆ど差はありません。
 
「昨年11月から生理がありませんが、この場合閉経と考えて術後の治療をすればいいですか?」
⇒生理が終わってから「半年~1年」は注意が必要です。
 通常はその期間は「閉経前」としてタモキシフェン療法となります。
 ここで不用意に「閉経後としてアロマターゼインヒビターを用いる」と生理が復活する可能性があります。
 
「閉経という決め手は何かわかる方法があるのでしょうか?」
⇒血中エストラディオールを測定すれば解ります。
○今後も、何でもご相談ください
 
 

 

質問者様から 【質問9 手術を前にして(前日)】

田澤先生のお返事にまた、ありがたさと心強さを感じております。
いよいよ手術となりました。
これが手術前の最後の質問になります。
ずっと自分の乳がんの成り立ちが気にかかっていました。
①乳管がん15mm ②小葉がん8mm ③乳頭に向かって乳管内を進展する7cm の拡がり(すべてはがんではないかもしれないけど小さな点々が乳頭4mm まで延びている)
これらはどのような出現の仕方をしたと考えられますか?
わからないこと
①と②は大きさから考えると、①の方が先にあったように思いますが、がんの大きさではなく性質によってどちらが原発巣(またはまったく別のもの?)か推測するものでしょうか?
小葉がんは腫瘤になるまで画像で見えにくかったり、しこりを認識するまで時間がかかるという認識がありますが、②については急にしこりを形成したのではなく小さな点々が年月をかけていくらか乳管に拡がっていたものが目に見えてきたということですか?
(腫瘤ができる前から小さな点々があったということ)
その場合、7cm の拡がりである小さな点々は①の乳管がんではなく、②の小葉がんでしょうか。
手術後の病理検査ではこの小さな点々もがんであったかがんであったらその種類もわかりますか?
7cmの拡がりががんであった場合、この状態になるまでどのくらいの期間かかったのか、おおよそで結構なので教えてください
上記①~③はこの一年でどういう変化(大きさ、画像の見え方など)があったと推測されますか?
一年前の状態はどうだったのか教えていただけたらありがたいです。
以上、治療とは関係のない内容ですが、①~③についてはしこりなどの自覚症状もなく、市のマンモグラフでも見つからず、2ヶ月後たまたま別の病院で反対側のしこり(良性)について診てもらったときにも超音波ではわからず、また別のしこり(良性)を調べるためのMRIで見つかったという経緯があるため、いつの間に?という気がずっとしていてすっきりしていません。
 

田澤先生から 【回答9】

 こんにちは。田澤です。
 「乳管癌」と「小葉癌」ですね。
 まず乳がんを正しく理解するためには「乳腺内で転移を起こす事はない」という事実です。
 乳腺内を拡がる(乳管沿いもしくは、間質の中を)事はあっても転移は無いのです。

回答

「これらはどのような出現の仕方をしたと考えられますか?」
⇒全く別々です。
 たまたま同時期にある時、「同時多発」といいます。(術後など時間が経った後で、全く別の場所に発生した時には「異時性多発」と表現します)
 
「がんの大きさではなく性質によってどちらが原発巣(またはまったく別のもの?)か推測するものでしょうか?」
⇒これは「どちらが先か?」は全く不明です。
 どちらも「全く独立してできた」同時多発ということは間違いありません。
 
「②については急にしこりを形成したのではなく小さな点々が年月をかけて」
⇒最初は小さな点(癌細胞)であり、それが大きくなりしこりを形成という意味では「小葉癌」も「乳管癌」も同じです。
 
「腫瘤ができる前から小さな点々があったということ」
⇒これも「乳管癌も小葉癌」も同じです。
 
「7cm の拡がりである小さな点々は①の乳管がんではなく、②の小葉がんでしょうか」
⇒(勿論、推測ですが)
 乳管癌だと思います。
 乳管癌であれば、広い範囲に拡がっている事も想像できますが「小葉癌が、一度にそんなに無数に独立して発生する」可能性は相当低い筈です。
 
「手術後の病理検査ではこの小さな点々もがんであったかがんであったらその種類もわかりますか?」
⇒(病理の医師しだいですが)コメントは通常あります。
 「非浸潤性乳管癌の拡がりがあります」とか…
 
「7cmの拡がりががんであった場合、この状態になるまでどのくらいの期間かかったのか、おおよそで結構なので教えてください」
⇒難しい質問です。
 非浸潤性乳管癌が発生して「乳管内進展する中でしこりを形成」という意味なら、癌細胞がうまれてからで4~5年でしょうか。
 
「上記①~③はこの一年でどういう変化(大きさ、画像の見え方など)があったと推測されますか?」
⇒①②は徐々に大きくなってきたのでしょう。
 ③はMRIを撮影しなければ、いずれ不明だったと思います。
 
○非浸潤性乳管癌として乳管内進展し、「しこりを形成」した事と、たまたま「同時期」に小葉癌が存在した。ということです。
 
「同時性多発」にしろ「異時性多発」にしろ、組織型が全く異なるのは普通です。(起源が全く異なる訳ですから)
あまり、特別に考える必要はありません。
 
 

 

質問者様から 【質問10 手術を前にして(前日)】

田澤先生、こんにちは
手術後、どうしていいかわからないことが多くて
助けてください。
先日、(経過はこれまでの質問9までに記載)皮膚だけ残して全摘手術を受け、同日形成外科医によってエキスパンダー挿入がされました(年内に自家組織による再建の予定でした)。
手術後の説明で、術中の検査でセンチネルリンパ節に一つ転移があり、腋下リンパ節郭清をしたと聞いてかなりのショックを受けました。担当医も、腫瘍が小さかったので驚いていました。
その後の治療の方針は、2~3週間後の病理検査が出てからということです。
病理の結果がまだなので、不確定なことはありますが、
抗がん剤が必要になるのは、どういった状況の時でしょうか。
やはりKi67の値が目安になりますか?
抗がん剤を使うならどのような薬剤が考えられますか?
放射線についてはいかがでしょうか。
これまでリンパ節転移4個以上というように認識していましたが、最近は1~3個でも有効性が実証されたというような記事も見た気が致します。
ホルモン治療については、前回のご回答で閉経しているか、閉経していないかを見極めることが
必要と教えていただきました。
私の場合、乳房再建が絡むため、抗がん剤、放射線治療、ホルモン治療の期間や順番などをどのように組めばいいのか頭を悩ませているところです。
手術を受けた病院では、乳腺外科と形成外科がありますが、実はそれほど連携が密ではないような気がします。
乳腺外科の先生は、せっかくエキスパンダーを入れたのだから急いで自家組織再建をしてから放射線治療と言っておられました。形成外科の手術の予約がすぐにとれるかどうかが問題だったため、手術ができるのが一番最短で今から1カ月半後とのことでした。そのために放射線治療が遅れたらいやなので、形成外科の先生に放射線治療のあと自家組織再建すると皮膚が伸びにくくてやりにくいですか?と聞いたところ、一年開ければ大丈夫とのことでした。
今は、がん治療に専念して一旦、エキスパンダーを抜去しようかと考えています。
病理検査の結果が出たらさらに具体的に質問させていただいてよろしいですか?
今のこの状況で考えられる範囲でお答えいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答10】

 こんにちは。田澤です。
①腫瘤の大きさ15mm ER90% PgR50% HER2(-)Grade1
②腫瘤の大きさ 8mm ER90% PgR 0% HER2(-)Grade1
①が乳管がん、②が小葉がん
 手術ご苦労様でした。

回答

「抗がん剤が必要になるのは、どういった状況の時でしょうか。やはりKi67の値が目安になりますか?」
⇒2点あります。
1.リンパ節郭清を追加していますが、センチネルリンパ節と合わせて「4個以上転移」を認めた場合:St.Gallen 2015 votingより
2.Ki67が25以上(この位が妥当だと思いますが)である場合:ルミナールBとなる。
 
「抗がん剤を使うならどのような薬剤が考えられますか?」
⇒ルミナールタイプの場合以下の2つがあります。
1.TC療法(ドセタキセル+エンドキサン)
2.アンスラタキサン(アドリアマイシンorファルモルビシンに加えてドセタキセルorパクリタキセル)
 ♯ルミナールタイプではTC療法の方が一般的です。
 
「リンパ節転移4個以上というように認識していましたが、最近は1~3個でも有効性が実証されたというような記事も見た気が致します」
⇒リンパ節転移1個でも照射する考え方はありますが、1個なら(きちんと追加で郭清しているのであれば)絶対ではないと思います。
 4個以上なら絶対ですが…
 
「がん治療に専念して一旦、エキスパンダーを抜去しようかと考えています」
⇒放射線も抗がん剤も、あくまでも「再発予防」です。
 それ程急ぐ必要はありません。
 病理結果が出てから「じっくり決める」事でいいと思います。
 
 
○(NG1より)Ki67はそれ程高くない事が予測されます。
 (リンパ節転移1個だけ)の場合には「放射線も抗がん剤もしない」という選択肢は十分許容されます。
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:790「センチネルリンパ節陽性と乳房再建」

 
 
 
 

 

質問者様から 【質問11 CT、骨シンチ検査の読影画像について】

性別:女性
年齢:53歳
田澤先生、メディカルプラザ市川で定期的に受診させていただいています。
いつも心の支えにしております。
2年5か月前、右乳房全摘手術(小葉がん、浸潤径9mm、リンパ節転移1コ、Ki67=2.5%、放射線治療、フェマーラ服用中)し、地元の病院では術後はエコー検査がされないため不安に思う毎日でしたが、田澤先生に診ていただくようになり本当によかったです。
ありがとうございます。
今日は診察の時にお話しできなかった検査について相談させていただきます。
一年前、股関節と尾てい骨が痛くて不安になり、(元々地元の先生は定期的なCT,骨シンチはされない方針ですが)私の方から希望してCT骨シンチの検査をうけたところ、結果は肋骨第5番と肺に淡い影があるが、肋骨は打撲、肺は肺炎などの痕だろうとのことでした。
そして今後経過観察で変化をみる必要があり、半年後、再度CT+骨シンチを
撮ると言われましたが、被爆のことが不安だったためもう少し間を空けていただくようお願いし、先生もいいでしょうとのことで検査は一年後ということになりました。
もうすぐ一年となり、CT、骨シンチの検査が近づいてきました。
今回のように、CT、骨シンチ検査の画像で何かわからないものがあったとき、次回の撮影までどのくらいの間隔を空けるのが適切ですか?
それは映っているものの濃淡や形、大きさなど緊急性のあるものかどうかによっても変わるものでしょうか。
また、CT,骨シンチの読影において、その画像からがんなどの病的集積とその他とでは、ある程度判別できるポイントはありますか?
最後に、骨転移かどうか調べるときにはMRIも併用して行う方がいいですか?
転移かどうかの見極めをするための各検査のステップや有用性についてわからないことが多いです。
一年前の検査で自分が自覚していた痛みと違う箇所を指摘されましたが、肋骨を打った記憶がなく、肋骨の炎症や打撲の痕といっても気づかない間にそんな痕ができるのかと考えて不安です。
以上、ご回答をお待ちしております。
よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答11】

こんにちは。田澤です。
転移再発の検査については、部位によってまた臓器によって様々なものがあるので所謂ゴールデンスタンダードのようなものは存在しません。
沢山の患者さんを診療していくなかで医師の経験によって蓄積されて(その医師)独自のスタンダードが生まれていくものなのです。
「CT骨シンチの検査をうけたところ、結果は肋骨第5番と肺に淡い影があるが、肋骨は打撲、肺は肺炎などの痕だろうとのこと」
⇒そもそも、ここに引っかかります。
 骨シンチは、あくまでも「スクリーニング」検査だから、(もしも疑うのであれば)本来は「第5肋骨」の単純レントゲン撮影をすべきだったと思います。
 私の経験上、肋骨は「単純写真」で最も解り易い部位です。
 逆にいうと…
  (打撲という結論であり)「単純レントゲンで精査するまでもない」という判断ならば、「後日、骨シンチで経過観察」という方針に矛盾があります。
 CTでの肺所見は、(良くある所見なので)「肺は肺炎などの痕だろう」というのには(画像を見てはいませんが)妥当に思います。
「今後経過観察で変化をみる必要があり、半年後、再度CT+骨シンチを撮ると言われました」
⇒上記と矛盾します。
 もしも「経過観察する必要がある」程度に疑っているのであれば、「肋骨は(経過観察ではなく)単純レントゲンすべき」です。(最終的にMRIもありますが、通常単純レントゲンで肋骨は解ります)
「今回のように、CT、骨シンチ検査の画像で何かわからないものがあったとき、次回の撮影までどのくらいの間隔を空けるのが適切ですか?」
⇒お解りですか?
 どう考えても「CTや骨シンチ」で経過をみる類のものではありません。
「CT,骨シンチの読影において、その画像からがんなどの病的集積とその他とでは、ある程度判別できるポイントはありますか?」
⇒そもそも骨シンチは(純粋な)スクリーニング検査だから…
 骨転移を疑った場合には「精査(肋骨なら単純レントゲン、椎体ならMRI)」をしなくては結論できません。
「転移かどうかの見極めをするための各検査のステップや有用性についてわからないことが多いです。」
⇒どの程度疑うのか?です。
 本当に疑うのであれば「骨シンチで経過観察」ではなく(肋骨ならば)単純レントゲンを撮影すべきだったということです。(おそらく打撲を疑って「精査は不要」と考えたのでしょうが、それなら「骨シンチで経過観察」が矛盾するのです)
 
 

 

質問者様から 【質問12 オンコタイプDXの数値の意味について】

性別:女性
年齢:54歳
いつも的確なご回答をいただき、心の支えにしております。
肺と肋骨の検査について、肋骨の影を経過観察するほど疑うならCTや骨シンチではなく、単純レントゲンをすべきという、前回のご回答をいただき納得しましたが、地元の病院で一年前から検査の予定をしてそれを変更するようになかなか言い出せず、結局CT+骨シンチの検査を受けました。
その結果、肺の小さな影は変化なしで肺炎の跡だろう、肋骨の淡い影は薄くなっており打撲だろう、少なくともがんによるものではない、
とのことでした。
今後は定期的な検査は予定されていません。
安心しました。
その反面、被爆の不安があるので必要のない検査はしたくないという気持ちがつよいのですが、検査がなければないで再発転移のこわさがいつもあります。
手術後すぐ受けたオンコタイプDXでは低スコアの結果でしたが、リンパ節転移ありの検査においては、10年ではなく5年後再発リスクが表示されていて、同じ低リスクでもリンパ節転移なしの数値と同等と考えていいのですか?
小葉がんは晩期再発が多い傾向があると目にしたことがあるのですが、それは小葉がんはおとなしい性質のため増殖が遅い、またしこりにならないので画像上検知しにくいなどの理由があるのでしょうか?
それから、地元の病院では、これまで定期的な超音波検査が一度もありませんでした
が、前回の診察のときに今度エコーをとると話されていました。
その頻度は、診察時毎3か月おきなのか、それとも年一回の定期検診としてされていくのかはよくわかりませんでしたが、3年目に初めてエコーをすることになったのはなぜなのかと思いました。
今年の乳がん学会のガイドラインで指針が変わったとか何かあるのでしょうか?
以上、思いのままのわかりづらい質問になってしまい申し訳ありません。
よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答12】

こんにちは。田澤です。
「手術後すぐ受けたオンコタイプDXでは低スコアの結果でしたが、リンパ節転移ありの検査においては、10年ではなく5年後再発リスクが表示されていて、同じ低リスクでもリンパ節転移なしの数値と同等と考えていいのですか?」
⇒対象となる臨床試験が異なるので、そのようにちがってくるのです。『今週のコラム99回目』のグラフを見てもらうとお解りになるでしょう。
今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?
「小葉がんは晩期再発が多い傾向があると目にしたことがあるのですが、それは小葉がんはおとなしい性質のため増殖が遅い、またしこりにならないので画像上検知しにくいなどの理由があるのでしょうか?」
⇒晩期再発に関して「小葉癌は…」というようには(私は)感じていません。
「今度エコーをとる」「今年の乳がん学会のガイドラインで指針が変わったとか何かあるのでしょうか?」
⇒変わっていません。(何故なのかは主治医に確認しましょう)