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手術前の不安

[管理番号:605]
性別:女性
年齢:35歳
先生はじめまして。宜しくお願いします。
半年前に右胸外側にしこりがみつかり(1㎝)、針生検の結果乳管内乳頭腫の疑いありで経過観察し、半年後(今月上旬)しこりが大きくなり(1.5㎝)再度針生検をした結果乳癌の診断が出ました。
病理学的診断 Invasive ductal carcinoma. right breast.biopsy
病理的所見 4本。組織学的には月重(読み方わからなくて。つきへんに重です) 大した核を有する異形細胞が不整な胞巣を作り増殖、浸潤しています。浸潤性乳管癌の所見です。核グレード2(nuclear atypia 2 mitotic count 2 ただし腫瘍部が少なく参考所見)
先日血液検査、心電図、レントゲンをとり、今日はMRI.
来週CTをとります。
長々となりましたが、上の所見をもう少し詳しく教えてください。もう初期の段階ではないですよね。
それと手術が7月後半なのでそれまでにリンパの転移の可能性が高くならないか不安です。浸潤ガンということもあり毎日不安で過ごしてます。回答宜しくお願いします。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 半年前に「針生検で乳頭腫の疑い」そして今回は「浸潤癌 腫瘍量が少なく」とありますので、「針生検の精度に問題」がありそうです。

回答

「上の所見をもう少し詳しく教えてください。」
⇒以下の内容ですね。
 病理学的診断 Invasive ductal carcinoma. right breast.biopsy
 病理的所見 4本。組織学的には月重(読み方わからなくて。つきへんに重です) 大した核を有する異形細胞が不整な胞巣を作り増殖、浸潤しています。浸潤性乳管癌の所見です。核グレード2(nuclear atypia 2 mitotic count 2 ただし腫瘍部が少なく参考所見)
 ○invasive ductal carcinoma:浸潤性乳管癌 これは「乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌」に分けられますが「最初に乳頭腫を疑っている」ことより「乳頭腺管癌」だと思います。
○腫大(しゅだい)した核を有する異型細胞:これは癌細胞です。
○不整な胞巣を作り増殖、浸潤:これは癌細胞が「集団(塊)」となり、増殖して、(周囲の間質に)浸潤(入り込んでいる)=浸潤癌ということです。
 ♯周囲の間質に浸潤なく、乳管内に留まっている状態を非浸潤癌といいます。
○核グレード2(nuclear atypia 2 mitotic count 2)
⇒「核グレード」は「核異型の点数」+「核分裂の点数」です。
核異型nuclear atypia 
弱い:1点
中間:2点
強い:3点
核分裂mitotic count 
5個未満(10視野で):1点
5~10個(10視野で):2点
11個以上(10視野で):3点
核グレード(NG) 核異型の点数(nuclear atypia)+核分裂の点数(mitotic count)
2点、3点 :核グレード1 
4点    :核グレード2
5点、6点 :核グレード3 
★質問者の場合は nuclear atypia:中間(2点)+mitotic count:10視野で5~10個(2点)=4点(核グレード2)となります。
◎ただ、針生検で「十分な組織量」が採取されていないようなので、術後病理で変更される可能性があります。
 
「もう初期の段階ではないですよね。」
⇒内容的には「普通の浸潤癌」です。
 ただ、腫瘍径1.5cmであれば十分初期(1期でしょう)です。
◎半年前に「乳頭腫と診断」しておきながら、「半年後に進行してます」などと言う事は決して許されません。
 
「手術が7月後半なのでそれまでにリンパの転移の可能性が高くならないか不安」
⇒大丈夫です。
 そんな短期間に「リンパ節転移」はおこしません。
 主治医も責任を幾らかは感じている筈です。
 
 

 

質問者様から 【質問2 手術を終えました。】

先日は一つ一つ丁寧な回答ありがとうございました。
手術が7月後半の予定でしたが、空きが出たとかで早まり、一昨日終えました。センチネルリンパ生検で2つとったうち1つに転移(の疑い?)がありリンパかくせいをしました。
ドレーンが入ってるのですが、その場合5日位は退院できないと事前の説明書にも書いてあるのですが、主治医からは3日後に退院という指示がありました。手術後に他の乳腺の先生が診に来て下さったときは5日後位だねと言っていたので、ほんとうに3日で大丈夫か不安で江戸川病院ではこのケースならどのような対応になるのかお聞きしたくて質問させて頂きました。
それと術前にCTやMRIをして、がんの広がりは限定的でおそらくリンパや他のところの転移はないだろうと言われていただけにリンパ節の転移はショックです。やはりこういうケースも割りとあることなのでしょうか。
それらとは関係ないかもしれませんが、いつも平熱は36℃位なのですがここ3週間位37℃強の微熱が続いています。だるさとか痛みはないのですが身体がぽかぽかと温かい感じで、普段は手や足先が割りと冷たく冷え性気味だっただけに何か違和感を感じます。リンパ転移の影響なのかあるいは他の臓器へ転移し始めてるのではないかとか不安が募ります。色々質問を重ねてしまってすみません。先生のご意見を聞かせてください。宜しくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 手術が終了したという事、御苦労さまでした。

回答

「ほんとうに3日で大丈夫か不安で江戸川病院ではこのケースならどのような対応になるのかお聞きしたくて質問させて頂きました。」
⇒江戸川病院では「ドレーンは入れません。」(乳房温存でも切除でも、郭清の有無にかかわらず)
 だから、そもそも質問者のようなケースはありません。
 十分な精度で血管もリンパ管もきっちり処理すれば、ドレーンなど不要なのです。
 なので温存では「術翌日退院」
 乳房切除では「術翌々日退院」
 と一律していますが、退院延期となる人は「ただの一人も」いません。
 
「リンパ節の転移はショックです。やはりこういうケースも割りとあることなのでしょうか」
⇒多くは無いですが、やはりあります。
 CTにしろ超音波にしろ(MRIは不要)画像診断では限界があるのです。
 リンパ節全体が転移により腫大すれば解りますが、数ミリの転移では「画像診断では困難」な部分はあるのです。
 
「リンパ転移の影響なのかあるいは他の臓器へ転移し始めてるのではないかとか不安が募ります」
⇒全く心配ありません。
 リンパ節転移の影響は全くありませんし、遠隔転移等心配は全く不要です。
 ○心配される気持ちは痛いほどわかりますが、私の経験を信頼してください。
 
 

 

質問者様から 【質問3 最終診断結果がでました】

先生いつも丁寧で適切な回答ありがとうございます。
このサイトの存在は乳がん患者にとって本当に救われます。今回も少し長文になりますが宜しくお願いします。
先日術後の最終診断結果がでて、その内容の解説(長いのでできる範囲で構いませんので)と治療方針について先生のご意見をお聞きしたいです。
病理学的診断
Invasive ductal carcinoma of the right breast, Bp+SN→Ax–Locus C, pT2(27×15㎜), nuclear grade 2,
Ki-67 labeling index 40%, gfs, ly+,v+,pN1(1/8).
–Surgical margin, see description(0.15㎜)
病理学的所見
右乳房部分切除検体(72×48×25㎜,皮切60×13㎜),
センチネルリンパ節および腋窩リンパ節(レベルⅠ+Ⅱ);–右乳腺外側上部に腫瘤あり。組織学的に27×15㎜大の範囲に浸潤性乳管癌、乳頭腺管癌の増殖、浸潤あり。肉眼的に確認できる13×9㎜大の癌巣頭側に連続して invasive micropapillary patternを示すリンパ管浸襲巣が断片近傍まで広がっており上記のサイズを示す。Ki-67 labeling indexは約40%。
核グレード2(4点)=核異型スコア2点+核分裂像スコア2点(7個/10HPF)、組織学的波及度は脂肪(15,17,19)と皮膚(#17)。リンパ管侵襲は高度。静脈侵襲は陽性(#7,10)。
切除端は頭側で近接している(#9で0.15㎜)。
リンパ節転移陽性 1/8:センチネル1/2(p1504756),
腋窩レベルⅠ+Ⅱ0/6。
–非癌部乳腺組織には乳腺症(中等度)が、乳管乳頭腫症、
上皮増殖症、硬化期腺症、嚢胞、開花期腺症、アポクリン化生などを伴って、広範囲にみとめられます。
(#3-7,9-20)。
診断結果の追加です。
ER陽性10%以上、染色強度:高度
PgR陽性10%以上、染色強度:中等度
HER2遺伝子(FISH)シグナル比1.0、遺伝子増幅なし
以上です。
こちらは針生検のときの結果です。
宜しくお願いします。
治療方針は、①抗がん剤(エピシルビシンとシクロフォスファミドを4クール後、ドセタキセルを4クール)、②放射線 ③ホルモン療法
の順でやるそうです。抗がん剤は3種類全部を一緒にやる(4クール)方法も選べるそうですが、身体の負担を考えこのような提案をされました。先生ならどのような提案をされますか?
それと、読んだ感じ癌が広範囲に広がっていて、追加で切除(あるいは全摘)が必要なのかなと思いました。今度主治医に確認しようと思いますが、先生はどう思われますか?
以上非常に長くなって申し訳ありません。
先生の解説、お考えがどうしても聞きたくて毎度長文ですみません。宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 病理所見の結果の解説ですね。
 少々長くなりますが、全ての解説をするので我慢して読んでください。

回答

「Invasive ductal carcinoma of the right breast」
⇒右乳癌の浸潤性乳管癌
 
「Bp+SN→Ax」
⇒Bp+SN(乳房温存+センチネルリンパ節生検)施行して(センチネルリンパ節転移を術中に認めたので)Ax(腋窩郭清を追加した)ということ
 
「Locus C」
⇒(腫瘍が)C領域(上外側)に存在していた。
 
「pT2(27×15㎜), nuclear grade 2」
⇒pはpathological(病理学的の略)にT2(20mm<腫瘍径≦50mm) ,核グレードが2   「Ki-67 labeling index 40%」
⇒所謂Ki67の値が40ということ
 
「gfs」
⇒腫瘍がどの「層」まで浸潤していたのか?という記載で
 G:gland(乳腺)
F:fat(脂肪層)
S:skin(皮膚)
 この場合、「脂肪層や皮膚まで達していた」となります。
 ♯浸潤癌では「乳腺から脂肪層へ浸潤しているのは当然」のことです。
 皮膚浸潤とは(おそらく)腫瘍が(真上の)皮膚まで達していた事を示しています。
 
「ly+,v+,pN1(1/8)」
⇒ly(リンパ管侵襲)あり、v(血管侵襲)あり、リンパ節はp(pathological:病理学的に)転移を認める(N1とはリンパ節転移が1~3個を指します)
1/8とは8個郭清したうちの1個に転移を認めた事を示しています。
 
「Surgical margin, see description(0.15㎜)」
⇒外科的断端は以下の記載を参照(最も近い部位で0.15mmと近接している)
 
「右乳房部分切除検体(72×48×25㎜,皮切60×13㎜)」
⇒乳腺の切除範囲は72x48x25mmであり、皮膚を60x13mmの範囲で一緒に切除している。
 ♯皮膚浸潤を認めたので、(その部分の)皮膚も一緒に切除したのでしょう。
 
「センチネルリンパ節および腋窩リンパ節(レベルⅠ+Ⅱ)」
⇒リンパ節は「センチネルリンパ節」と「腋窩リンパ節としてレベルⅠとレベルⅡ」を郭清している
 
「右乳腺外側上部に腫瘤あり」
⇒英語表記の「Locus C」に相当します。
 
「組織学的に27×15㎜大の範囲に浸潤性乳管癌、乳頭腺管癌の増殖、浸潤あり」
⇒(顕微鏡でみると)27x15mmの範囲に浸潤性乳管癌(組織型は乳頭腺管癌)が拡がっている。
 
「肉眼的に確認できる13×9㎜大の癌巣頭側に連続して invasive micropapillary patternを示すリンパ管浸襲巣が断片近傍まで広がっており上記のサイズを示す」
⇒(肉眼的に判断できる)腫瘍は13x9mmなのだが、「浸潤性微小乳頭がんの(組織学的)特徴を持った」リンパ管内で増殖している範囲が「切除断端の近傍まで」連続して拡がっているので、(それらを合わせた大きさとして)組織学的浸潤径は27x15mmとなります。
 
「核グレード2(4点)=核異型スコア2点+核分裂像スコア2点(7個/10HPF)」
⇒核グレードは「核異型の点数」+「核分裂の点数」です。
・核異型 
弱い:1点
中間:2点
強い:3点
・核分裂 
5個未満(10視野で):1点
5~10個(10視野で):2点
11個以上(10視野で):3点
核グレード(NG) 核異型の点数+核分裂の点数
2点、3点 :核グレード1 
4点    :核グレード2
5点、6点 :核グレード3 
 
「組織学的波及度は脂肪(15,17,19)と皮膚(#17)」
⇒(切り出し図の♯15, ♯17, ♯19で)脂肪織浸潤を♯17の部分で認めます。
 
「リンパ管侵襲は高度。静脈侵襲は陽性(#7,10)」
⇒リンパ管侵襲は高度:(invasive micropapillary patternを示して、断端近傍まで拡がっていた)リンパ管侵襲巣の部分でしょう。
⇒♯7,10の切片で静脈侵襲を認める。
 
「切除端は頭側で近接している(#9で0.15㎜)。」
⇒最も断端に癌が迫っている部分は「頭側(切り出し図では♯9)」であり、そこでは切除断端から僅か0.15mmまで癌が迫っていた
 
「リンパ節転移陽性 1/8:センチネル1/2(p1504756),腋窩レベルⅠ+Ⅱ0/6」
⇒リンパ節は、センチネルリンパ節は「2個摘出して1個が転移陽性」、腋窩リンパ節(レベルⅠ+Ⅱに相当)は「6個郭清して転移は無し」だった。全体として「8個郭清して1個が転移」
 
「非癌部乳腺組織には乳腺症(中等度)が、乳管乳頭腫症、上皮増殖症、硬化期腺症、嚢胞、開花期腺症、アポクリン化生などを伴って、広範囲にみとめられます」
⇒摘出した乳腺の「癌で無い正常組織部分」には乳腺症(組織としては乳管乳頭腫症、上皮増殖症、硬化期腺症、嚢胞、開花期腺症、アポクリン化生)部分が広範囲に認めた。
 ♯これらは全て良性病変です。乳腺症変化が結構強かったので「敢えて」記載した様ですが、関係ありません。
 
「ER陽性10%以上、染色強度:高度 PgR陽性10%以上、染色強度:中等度 HER2遺伝子(FISH)シグナル比1.0、遺伝子増幅なし」
⇒エストロゲン受容体は陽性 陽性細胞は占有率は10%以上であり、それぞれの染色強度は高度だった
 プロゲステロン受容体は陽性 陽性細胞占有率は10%以上であり、それぞれの染色強度は中等度だった
 HER2はFISH法で評価して陰性(遺伝子増幅なし)だった
 
「①抗がん剤(エピシルビシンとシクロフォスファミドを4クール後、ドセタキセルを4クール)、②放射線 ③ホルモン療法の順でやるそうです」「先生ならどのような提案をされますか?」
⇒ECx4⇒DTXx4は術後行う抗がん剤としては最も強力(アンスラタキサン アンスラ:エピルビシン、タキサン:ドセタキセル)なレジメンです。
 質問者はpT2(27mm), pN1(1/8), luminal B, NG2です。
 私であれば「アンスラタキサン」は使いません。過剰投与と思います。『TC療法』を行います。
 そしてホルモン療法は最初から併用(タモキシフェン+LH-RHagonist)して「TC療法(ドセタキセル+エンドキサンx4)」⇒「温存乳房照射」を行います。
 
「読んだ感じ癌が広範囲に広がっていて、追加で切除(あるいは全摘)が必要なのかなと思いました。今度主治医に確認しようと思いますが、先生はどう思われますか?」
⇒断端が0.15mmという事ですね。
 St. Gallen 2015では「マージンは露出していなければ良い」とのvoting 結果となっていますが、悩ましいところだと思います。
 これはご本人しだいでしょう。
○温存+放射線照射でもいいとは思いますが、「より安全志向」であれば、「全摘も選択肢」だと思います(リンパ管侵襲が高度でもあり)
 主治医と相談してください。
 
 

 

質問者様から 【質問4 主治医への聞き方】

先生今回も一つ一つ分かりやすく教えて下さってありがとうございます。本当に感謝です。もっと前から先生を知っていたら江戸川病院でお世話になりたかったです。
来週水曜から抗がん剤が始まるのですが、その前に先生が提案して下さった内容(TC療法やホルモン治療も先に併用)を主治医に伝えて納得した形で治療を進めたいと強く思います。私はできたら抗がん剤の期間を短くしたいです。ただ、主治医にどんな風に聞いたらいいか(ストレートにこんな内容はどうかと聞くべきか)悩んでいます。何か上手な聞き方はありますか?(こんな答えずらい質問申し訳ありません。)
それと今回の診断結果で皮膚や血管にまで浸潤していた事にとてもショックを受けました。この場合再発や転移率はどのくらいになりますか?
手術で腫瘍を取ってまだ血管等に残っているという事ですよね。
最後に追加の切除する場合、全摘しか方法はないですか?
(例えば温存でより広く切除する等)
毎回質問を重ねてしまってすみません。主治医にすべての質問をぶつけるべきところを本当に申し訳ないのですが回答いただけると幸いです。宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 「脈管侵襲」に対しては「多くの方が陥り易い」誤解があるようです。

回答

「主治医にどんな風に聞いたらいいか」「何か上手な聞き方はありますか?」
⇒TC療法を希望するのであれば
 (仕事などの都合で)「できるだけ、抗がん剤を短期間」としたいと思って、いろいろ「人に聞いたり、ネットで調べたりして」TC療法と言う「3カ月の治療」があるようだけど、それでは駄目ですか?
 ではどうでしょう。
 ○それでも「主治医がアンスラタキサンを推す」場合には「その根拠を尋ねてみましょう」
 「若いから」などと言う場合がありますが、「年齢」はこの場合には何の根拠にもなりません。
   
 
 ○「アンスラタキサン」と「TC療法」の直接比較はありませんが、「差があるとしても」5%以下です。
   
「今回の診断結果で皮膚や血管にまで浸潤していた事にとてもショックを受けました」
⇒腫瘍が(おそらく直上の)皮膚に浸潤していたと思いますが、これはそれ程珍しくはありません。
 いろいろな条件がありますが、おそらく、腫瘍のある部分の皮下脂肪が薄く、「乳腺と皮膚の距離が近い」というだけで「皮膚浸潤」が起こることはあります。
⇒「血管侵襲」も同様であり、「浸潤癌」である以上は、「周囲の間質にある小血管に浸潤」している像がたまたま「癌組織の顕微鏡で見えた」だけにすぎません。
 血管の中に残っている訳ではないのでご安心を
   
「この場合再発や転移率はどのくらいになりますか?」
⇒再発率は27%となります。
   
「手術で腫瘍を取ってまだ血管等に残っているという事ですよね」
⇒これは大変な誤解です。
 単に、「腫瘍の周囲の微細血管の中に癌細胞がたまたま見えた」だけであり、現時点で「血管の中にいる」わけではありません。
 殆どの癌細胞は自然に消滅するのです。
   
「最後に追加の切除する場合、全摘しか方法はないですか?(例えば温存でより広く切除する等)」
⇒再温存という方法もあります。
 「切除端は頭側で近接している(#9で0.15㎜)。」という記載からは(近接している)「頭側だけを」追加切除でいいように見えます。
 この件は実際の「切り出し図」で確認する必要があります。
 手術所見とも関係しますので、「執刀医」の見解が重要です。
 
 

 

質問者様から 【質問5】

先生度々追加の質問すみません。
ご提案の治療内容の確認をさせて下さい。
順番としては①ホルモン療法(タモキシフェンとLH-RHagonistを
同時にする)、それと同時に①TC療法
②放射線
という認識で合ってますか?
ホルモン療法を先にするというのはめずらしいという印象を持ったのですが、できた
らその理由をおしえてください。主治医に聞く前に確認したいと思い、お忙しい中ほ
んとうにすみませんが宜しくお願いします。
 

田澤先生から 【回答5】

こんにちは。田澤です。
「順番としては①ホルモン療法(タモキシフェンとLH-RHagonistを同時にする)、それと同時に①TC療法②放射線」
⇒その通りです。
 
「ホルモン療法を先にするというのはめずらしいという印象を持ったのですが、でき
たらその理由」
⇒「ホルモン療法を抗がん剤と併用する」という事です。
 逆に「ホルモン療法を抗がん剤と併用してはいけない理由」は無いのです。
 唯一報告のあるものは「タモキシフェンとアンスラサイクリン」の併用は良くない
というものだけです。