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手術跡の壊死

[管理番号:8358]
性別:女性
年齢:48歳
病名:
症状:
投稿日:2020年3月7日

田澤先生、はじめまして。

乳がんの手術後10年以上が経ちましたが、
今年に入り術側の胸の様子がおかしくなってきました。

現在かかっている先生の見立ては信頼していますが、
今後の治療法については先生も悩まれている様子で、
良性疾患もよく診られている田澤先生のご意見が伺えればと思い、はじめて質問させていただきます。

私は35歳の時1cmに満たない癌が見つかり、ラジオ波手術を受けました。

(放射線治療、ホルモン療法も受けています)
術後、若い人では稀と言われていた焼き跡のしこりが胸の中に残り、
それが皮膚に近いところだったため、皮膚の引き攣れ、変色、
その下にエコーでは直径2cmほどですが、
皮膚の上から触った感覚としては直径5cmぐらいのしこりを抱えたままこの10年以上を過ごしてきました。
この部分はずっと触ると痛い感じでした。

この年末ぐらいから、そのしこりを中心に胸の4分の3ぐらいまでの皮膚が熱感を持って腫れて、赤く、痒くなり、あまり気にせずに放っておいたら、
それから2~3週間で腫れも赤味も、しこり部分の上+α程度まで縮小し、
その皮膚の下がぶよぶよとしてきました。

これで自然に治るのだろうとまた気にせずに放っておいたら、
そこから1週間ぐらいで皮膚が自然に破れたような感じで小さい穴が開き、
あまり粘度の高くない浸出液のようなものがあふれ出てきました。

ここで流石にまずいと思い乳腺外科を受診したところ、
この液体は膿で、出し切った方が良いとのことで絞り出してくれ、
その後しばらくは痒みもなく、少し楽になりました。

そこからまたしばらくすると、もう液体らしきものは出なくなし、
ここ2週間ぐらいは、穴の淵が茶色くなり、そこが自然にとれての繰り返しです。

皮膚と皮膚の下数ミリまでの組織が一緒に溶け出てくるような印象で、
穴は横3cm、縦と深さは5mmぐらいまで広がりました。

しこり自体は以前からあったもので定期検査は続けているため
今回は特に生検などはしておらず、
念のため膿を培養検査に出して細菌感染でないことを確認しただけですが、
おそらく焼き跡のしこりが壊死して炎症を起こし、
膿として出てきているのだろうと言われています。

治療は基本的に膿(壊死した組織)を出すだけで、全て出し切れば良くなるはずだが、
正直なところ、どのように治療したら良いか分からず困っているという感じでした。

少し気になるのは、皮膚の上から触れるしこりが増えてきていることで、
1年前には焼き跡のしこりの横に繋がって、触った感じでは1cmぐらいのしこりが新たにでき、
1~2週間前から、それとは反対側の横に繋がって、同じぐらいのしこりができてきました。

1年前には生検もして悪性でないことは確認しましたが、何かは分からないとのことでした。

今回反対側に新たにできたしこりについては、
元のしこりの奥の汚いものを体の外に出そうとする働きで、
皮膚近くまで上がってきて別のしこりになったのではないかと推測されましたが、
1年前は新たにしこりができても元の焼き跡のしこりは全く小さくなっていませんでした。

私は初め、自分の症状が肉芽腫性乳腺炎に似ているのではないかと思い、
ネットで検索していて乳がんプラザの存在を知りました。

私のような経過をとる人は稀であり、
こうすれば治るというはっきりした方法は無いのだろうと思いますが、
田澤先生であれば、どのような検査、治療法を検討されるでしょうか。

文章だけでは何とも言えない部分もあるかとは思いますが、
もしある程度の検討がつきそうであれば、やや遠方ですが、受診も考えています。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

メール内容を拝見しました。
私は(このQAのお陰もあり)
「肉芽腫性乳腺炎」も「ラジオ波術後の乳がん(局所)再発」も、(常識では考えられない位)多数診ています。
★何故、このように言い切れるかというと、「あの東○公○病院での10年間」の経験の10倍以上をこの「江戸川での数年」で経験しているからです。

 ラジオ波術後、かなりの期間してからの局所再発は稀ではありません(根本的にラジオ波とはそういう治療だという認識です)
 浸出液が出たり不安定となって(ラジオ波を受けた病院での診療に不安をもって)
当院を受診、結局「局所再発だった」というケースも、しばしば経験しています。

 その一方で(もしもラジオ波後でなければ)純粋に症状経過は肉芽腫性乳腺炎で何ら矛盾しません。
 その意味では必然的に以下の2択となります。

1.ラジオ波後の局所再発が関係している。
2.(ラジオ波とは無関係に)たまたまその部位に「肉芽腫性乳腺炎」ができている。

「田澤先生であれば、どのような検査、治療法を検討されるでしょうか。」
⇒私であればシンプルに「広範囲のMMTE」を行います。

 これを行うことで「確定診断(癌の局所再発でないのか?) 本当に肉芽腫性乳腺炎なのか?」と(もしも肉芽腫性乳腺炎ならば)「治療(volume reduction)も兼ねる」からです。
 
 ○MMTEしたうえで(局所再発が否定されて、肉芽腫性乳腺炎と確定診断となれば)ステロイド内服となります。