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術前に抗がん剤をすることで(冒頭に記載したような)結果として不完全な手術となり、局所再発のリスクを高めるとしたら…

[管理番号:8790]
性別:女性
年齢:46歳
病名:乳がん
症状:
投稿日:2020年8月4日

田澤先生、毎日、こちらのサイトで、先生から治療して頂いているかのように、学び、癒やされております。

今日はQ&Aから失礼します。

お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします!

術前抗がん剤の場合、再発率や予後はどの段階のものを自分のステージと考えるのか教えてください。

最近、術前抗がん剤をされている方がとても多くなっていると思います。
そこでステージの考え方について、疑問があります。

これまでの学びで、小さくして温存を望む場合以外に、術前抗がん剤はあり得ない事、術前でも術後でも予後が変わらないことはわかりました。
手術先行でしたら、手術時の病理検査でステージ確定しますが、
術前抗がん剤だったら、どこで最終的なステージが確定するのですか?予後を考える時に、抗がん剤で消えちゃった分はカウントしなくて、もうよくなるのですか?

私は手術先行組だったので(病理ステージアップ1→3)、ステージは否が応でも確定間違いなしですが、術前抗がん剤組で抗がん剤が良く効いて、手術後の病理検査でも完全寛解だった場合はもう奇跡のステージゼロと思っちゃって良いのですか?
例えば私の場合、術前検査ステージ1のまま、術前抗がん剤をして消滅していたら、リンパの覚醒さえなく治療終了していたのかしら?と恐ろしく想像するのです。

ピ○○○グという女性疾患患者専用SNSで、ステージ3相当の方が、術前抗がん剤が良く効いて、主治医からもうステージ0だと言われたと報告されていて、その『ステージゼロになりました』という響きに感動を覚えると同時に、アレレそれがあり得るならば、術前抗がん剤も『精神的救済』としてトライする価値があったのか?と混乱しています。
手術先行だったら、リンパへの細胞レベルの転移などで、ステージは上がる方が良くあり得るのではないかと思うのですが、術前抗がん剤だったら、自分の予後を『ステージダウンした』と思えるのでしょうか?予後もそう考えていいのでしょうか?
自分のステージが3だと思うのと、0だと思えるのとでは精神衛生上(折れ線グラフ上も)雲泥の差があり、ムダなこと!前を向け!と自分を叱咤しながらも、いろいろ考えてしまいます。

術前抗がん剤で消滅した部分もすべて外科的に執る必要があるという事は、ゼロにはならないのでは??でも消えたならステージダウンと言って頂けるのか…?
田澤先生は、未だかつて『ステージダウン』という言葉を使用されてないと思います。
田澤先生なら、術前抗がん剤から癌消滅した方、縮小した方に、どのようにステージを伝えるのか教えていただけますか?
先生の言葉で状況把握したいので、お願いいたします!

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

失礼ですが、大変な思い違いをしています。
質問者は術前ステージ1がステージ3だったという内容からは
(一切の病理の情報はありませんが)
手術の際にセンチネルリンパ節生検を施行し、(術中迅速診断で転移陽性であり)追加郭清をした(そしておそらくリンパ節転移は4個以上あったのでステージ3A以上となった)と推測します。(合ってますね?)

質問者が、もしも術前抗がん剤をした場合、
(画像上リンパ節転移が不明であれば)やはり、センチネルリンパ節生検する筈ですが、結果は以下の3通りとなります。
1.(術前抗がん剤により)センチネルリンパ節だけが転移消失したため、郭清省略されてしまい、(転移している)残り3個以上のリンパ節が後に局所再発してしまう。
2.(術前抗がん剤で消失せずに)結局センチネルリンパ節に転移が残り、結局郭清をすることになる(手術先行と全く同様の結果)
3.(術前抗がん剤で)運よく「全てのリンパ節の転移が消失」したため、センチネルリンパ節生検で陰性となり、追加郭清を省略したが(残存がないため)局所再発もなく最善の結果となる。

質問者は3の可能性を悔やんでいらっしゃるようですが、実際には圧倒的に1もしくは2の可能性の方が高いのです。
1となった場合に、どう思いますか?(そんな「賭け」がしたかったですか?)
 『今週のコラム 91回目 「転移したリンパ節が残存」してしまうのです。』を熟読してください。

★ 腋窩再発って少ないと思いますか?

私もかつては少ないと思っていました。
ただ、最近非常に増えています。
今年に入ってから、私が腋窩鎖骨下再発の手術をどれくらいしているのか?数字を知ったら驚くことでしょう。
他院で「腋窩再発を指摘されたけど、手術の提案がない。手術してほしい」という方がQAで集まっていることは当然、背景にあります。
コラムでも散見されます。
今週のコラム 185回目 腋窩再発vol. 1 腋窩郭清が必要な場合には、是非「病院選び」に慎重になりましょう。その選択が第1のturning pointとなるのです。
 に、例を上げましたが(実例です)氷山の一角。
今週のコラム 230回目 リンパ節再発 あなたは諦めますか?

 おそらく(これらのコラムによって)「腋窩鎖骨下リンパ節再発した場合、江〇川病院なら手術してくれる」という患者さんが集まっている成果だと思います。
 (大袈裟ではなく)私にしかできない手術と思うので、役立てて本当に幸いだと思っています。

当院で「腋窩再発の手術」が増えている背景には、上記コラムがあるとは思いますが、
(それに加えて)術前抗がん剤の乱用も背景にはあると思います。(そして、それら「術前抗がん剤乱用病院」では上記コラムのように、(腋窩再発しても)「手術はしない」としているのでしょう)

「私は手術先行組だったので(病理ステージアップ1→3)、ステージは否が応でも確定間違いなしですが、術前抗がん剤組で抗がん剤が良く効いて、手術後の病理検査でも完全寛解だった場合はもう奇跡のステージゼロと思っちゃって良いのですか?例えば私の場合、術前検査ステージ1のまま、術前抗がん剤をして消滅していたら、リンパの覚醒さえなく治療終了していたのかしら?と恐ろしく想像するのです。」
⇒どうですか?
 勘違いに気付きましたか?

 むしろ「もしも術前抗がん剤をして郭清省略されていたら」と想像する方が「恐ろしく」ありませんか?

「田澤先生なら、術前抗がん剤から癌消滅した方、
縮小した方に、どのようにステージを伝えるのか教えていただけますか?先生の言葉で状況把握したいので、お願いいたします!」

⇒私は、そもそも「無意味」な術前抗がん剤は絶対にしません。
 行うのは
 1.温存を希望
 2.手術不能

 どちらの場合にもステージダウンなどは重要ではありません。
 単純に「化学療法効果のグレード」が出るので、
 『抗がん剤の効果がグレード2なので、結構効きましたね』などです。

それと、(最近でもちょくちょくあるのが)前医で術前抗がん剤をして「手術を当院で」という方です。
 この場合でも「ステージダウン」というのは無意味な話です。
 やはり、「抗がん剤、結構効きましたね。グレード3(完全緩解)だから、再発率はかなり低いと思いますよ」と、お話しします。

★冷静に考えてみましょう。
 術前抗がん剤で(もしも)グレード3であれば予後良好なのは当たり前(それだけ抗がん剤による効果があったわけだから)
 ただし、それは「術前に行えば」という意味ではありません。
 普通に手術先行して、術後補助療法として抗がん剤を行っても(当然ながら)同じだけの効果となり、同じ予後良好となるだけの話です。
 術前抗がん剤は、それを「可視化」するだけであって、「改善する」わけではない。

 それよりも問題なのは「(改善はせず)可視化するだけ」の為に、術前に抗がん剤をすることで(冒頭に記載したような)結果として不完全な手術となり、局所再発のリスクを高めるとしたら…
 あなたは、それでいいのですか?

 
 


 

質問者様から 【結果2 】

大変な思い違い、勘違いでした
性別:女性
年齢:46
病名:
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]

ご回答ありがとうございました。
お盆前の忙しい、暑い日に、先生を熱くしてすみませんでした。
自分の大変な思い違い、勘違いを、思い知りました。
あまりに申し訳なく、恥ずかしく、結果から一言いわせてください。

予後は変わらない、「可視化」するだけであって、「改善する」わけではないいうこと、よくわかりました。「ステージゼロになった」と聞いて、5年無再発生存率58.42%が96.34%になるのか?!と考えてしまいましたが、そんなの有り得ない、ガンは不可逆なのだとよくわかりました。

一つだけ、私の言葉足らずで、先生を熱くしてしまったのですが
私はリンパ郭清していただいたことを、まったく後悔していません!
もししていなかったら不安過ぎて、江戸川区に駆け込んでいます!
ただ、「ステージダウン」という無意味な妄想に取りつかれて、訳が分からなくなっていたようです。(「このばかちんがっ!」by 金八先生)

これからもっと勉強します。

<Q&A結果>