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転移なしで乳房全摘する場合に術前抗がん剤投与は必要か

[管理番号:7767]
性別:女性
年齢:59歳
病名:浸潤性乳管癌
症状:左胸にしこりがあるのを感じ近くの乳腺クリニックに受診

超音波検査とマンモグラフィー検査をした結果、左胸に11ミリと17ミリのしこりがフタコブラクダのように連続した画像が確認でき底辺部の長さは30ミリと診断され針検診を実施。
その結果浸潤性乳管癌と診断されCT・MRI・骨シンチ実施。
①明らかな転移はない ②乳頭のすぐ下まで延びていて、大きさは42ミリ ③エストロゲンレセプター(陽性) プロゲステロンレセプタ(陰性)④HER2 2+(境界)→FISH実施中
当初、乳房温存術で術後放射線治療をすると説明を受けたのですが、
MRI検査の結果線状に乳頭のすぐしたまで延びていたことから乳房全摘術に変更された。

質問1:乳房全摘術はやむをえないのでしょうか?他に方法はありませんか?

質問2:手術前に抗がん剤治療を6ヶ月間します。
エストロゲン陽性
プロゲステロン陰性と片方が陽性で片方が陰性、且つKi67が非常に高いから抗がん剤は効かないと思うと言われました。
効果がないと思われKi67が非常に高いのに術前に抗がん剤を投与して手術を遅らせる必要があるのか疑問に思います。
リンパ転移なしと記載されており、他の臓器にも転移なしKi67が高いのであれば、すぐに乳房全摘手術をすれば治癒になり、抗がん剤の副作用も受けなくて済むのではないかと疑問に思います。
教えて下さい。

質問3:乳房再建術を受けたいとが思っていますが
今使用するシリコンが使えないので世界中で再建術(除自家再建)が出来ない状態になっている。
6ヶ月抗がん剤投与をしている間にシリコンの代替品が出てくるかも知れないと説明を受けました。
現在同時再建は
無理な状況でしょうか?判断に迫られていますので至急ご返事頂けるとありがたいのですが、よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「局所療法と全身療法を明確に区別しなくてはならない」という治療の根本を理解されていないようです。(担当医の説明の仕方に問題があるのかもしれません)
局所療法(手術をどうするのか?)と全身療法(遠隔転移再発に対する薬物療法)は全く別個です。

「質問1:乳房全摘術はやむをえないのでしょうか?他に方法はありませんか?」
⇒温存できるのでは?

 実際に画像を見ていないわけですが…
 温存できない理由が「線状に乳頭のすぐしたまで延びていたことから」であれば、乳頭の裏側まで切除(乳頭自体を摘出する必要はありません)すれば温存は可能だと思います。

「質問2:手術前に抗がん剤治療を6ヶ月間します。」
⇒何故術前抗がん剤?

 全く理由になっていません。
 本来の術前抗がん剤の適応は「小さくして温存」目的となります。

「すぐに乳房全摘手術をすれば治癒になり」
⇒これは100%完全に勘違いしています。

 以下をよく読んで理解してください。
 ① 抗がん剤を(術前にしろ、術後にしろ)行う目的は「(将来的な)遠隔転移再発のリスクを減らすため」である。
 ② 将来的な遠隔転移再発のリスクとは(手術した時点で)すでに(画像上は見えないが)遠隔臓器に潜んでいる癌細胞が増大するリスクである。(手術してから起こるわけでは無いのです)
 ③ つまり、全摘しても温存しても「その(遠隔転移再発する)リスク」は全く変わらない

「抗がん剤の副作用も受けなくて済むのではないかと疑問に思います。」
⇒普通に(術前抗がん剤などせずに)手術先行して病理結果を確認しましょう。

 その結果(サブタイプ)によっては、抗がん剤が必要ないかもしれません。
(全摘でも温存でも、そこは無関係)

「現在同時再建は無理な状況でしょうか?」
⇒自家組織再建以外は、どうしても問題を抱えてしまうことになります。