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進行してしまったのでしょうか

[管理番号:693]
性別:女性
年齢:40歳
いつも田澤先生のQ&Aを読ませていただき、先生の答えに励まされています。
以前先生に質問さていただいたものです。
また先生にお聞きしたいことがあるのですが、よろしければお返事ください。
手術を7月半ばに予定していたのですが、病院の都合で転院したものです。
以前の病院ではステージ1という診断だったのですが、転院先の病院ではステージ2bと診断されました。
その紹介状の中には6/3の造影CTでは、
●右乳腺内側領域に約1.5×1.7×1.5cm大の造影される腫瘤を認めます。
●両側腋窩に最大7mm大のリンパ節が散見されますが、内側に脂肪を含有しているも
のが多く見られ、有意とは言えません。鎖骨上、胸骨傍リンパ節に有意腫大は指摘で
きません。
●胸水は認めません。気胸も指摘できません。
6/23日の造影MRIでは、
●右乳腺BA領域、3時方向、乳頭から26mmの位置に、造影T1WIにて、辺緑やや不整な
22×17×22(RL×AP×CC)mm大の腫瘤を認めます。腫瘤はT2WIにて、周囲の正常乳腺より淡い高信号を示します。腫瘤はring状の造影効果を示し、造影効果は早期濃染されて、淡い流しが見られるパターンを示します。乳癌と考えます。
●正常乳腺の造影効果は軽度です。
●両側の腋窩に40~10mm大の扁平なリンパ節を複数認めます。いずれもDWIにて軽度高信号を示します。形態が扁平であり、転移を積極的に疑う所見とはいえず、反応性腫大を疑います。
●少量の両側胸水を認めます。
紹介状には、
乳房視触診にて、右CD領域に2㎝大、表面やや不整、可動性良好な、弾性硬腫瘤を触知。
MMGにて、右MにFAD、淡く不明瞭な石灰化あり、cー3。左微小円形石灰化、領域性分布、Cー2。
USでは、右CD領域に20×15×12mm、辺緑不整、内部不均質、血流豊富な低エコーSolあり。後方エコーは一部増強。
FNAにて悪性。指定組織型は乳頭腺菅癌。
転移検索、広がり診断、術前検査を施行。右乳CA(c領域、T1c:20mm、NO、MO)と診断いたしました。
とありました。
以前の病院で、手術は温存手術と予定されていました。センチネルリンパの検査をして病理検査でがん細胞が見つかった場合はリンパ郭清、手術中の検査で、乳頭にガン細胞があったら全摘と言われました。
私はステージ1と聞きすごくホッとしたのですが、転院した病院では、リンパへの影があると言われ、(エコーにて黒い?影があり、正常なリンパは周りが白くて?中が黒い?が、転移の可能性があるものは黒い?みたいなことを言われました)
細胞診をしました。
そして、しこりの部分を以前の病院で針生検をしていないので手術をする前にもしかして悪性に似た(ほぼ悪性なんですが)良性との可能性もなくはないので針生検しますねと言われ針生検をしました。バチン!と音のするものです。(結果は来週の予定です)
一つ目の質問は、6/3の造影CTではリンパに転移を積極には見られないとかかれていましたが、1ヶ月半、手術を待っている間に転移してしまったのでしょうか。腫瘍計も以前の病院では2.5センチでしたが転院した病院では2.7センチと言われました。大きくなってしまったのでしょうか。
もう一つの質問なんですが、手術は温存手術の予定でしたが、転院した病院では、エコーを見ながら説明してくれて、乳房のこれがミルクの線で、ここに腫瘍があります。そして乳頭に沿って石灰化がミルクの線に沿って?テンテンテンと散らばっています。こういった石灰化が見られる場合には乳頭にも繋がりやすいので、お子さんが小さい(3歳と1歳)事を考えていきちんと安全にするなら全摘にして、同時に胸の膨
らみを入れる方法がいいのではないか、と言われています。そして、半年後シリコンを入れ、その後、乳輪をタトゥーをする方法がありますと言われました。最終的には紹介状の造影MRIや新たに昨日撮った造影CTなどの結果、針生検の結果を見てお話ししましょうとのことでした。
以前の病院では、乳頭から26mm離れているので温存と言われていたので、驚いてしまいました。田澤先生はどう思われますか。
以前の病院からの紹介状には、乳頭腺間癌とありました。やはり広がりやすいという
特徴があるのでしょうか。
細胞の種類の結果が出ていないので、はっきりとはお答えいただけないと思いますが、抗がん剤もする可能性がありますか。
年齢から考えても進行が早いのでしょうか。
また、左腎に石灰化が見られますとありましたが、異常でしょうか。
造影MRIで両肺に少量の胸水がみられますとありましたが異常でしょうか。
造影CTには胸水は見られませんとありました。
今日、転院してあまりに変化してしまったので、疑問がたくさんあります。
私は完治するのでしょうか。忙しい中申し訳ありません。
ぜひ、お返事下さればうれしいです。
まとまりがない文で読みずらくて申し訳ありません。
忙しいところ本当に本当に申し訳ありません。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 腋窩リンパ節の術前評価は意外と困難です。
 「超音波所見」「CT所見」などで総合的に評価します
 そして最終的には(余程明らかでない以上は)センチネルリンパ節生検を行います。

回答

「6/3の造影CTではリンパに転移を積極には見られないとかかれていましたが、1ヶ月半、手術を待っている間に転移してしまったのでしょうか。」
⇒違うと思います。
 同じ検査(CT)での所見の違いがあれば、「進行」と判断してもいいですが、「CTと超音波の直接比較」はできません。
 ♯超音波検査は「検査する人によって評価もかわります」
 たとえ、同日に行ったとしても「評価する医師」によって判断が異なる可能性はあります。
 
「腫瘍計も以前の病院では2.5センチでしたが転院した病院では2.7センチと言われました。大きくなってしまったのでしょうか。」
⇒これも違うと思います。
 超音波検査は「検査する人」によって測定の誤差がその程度はでます。
 
「以前の病院では、乳頭から26mm離れているので温存と言われていたので、驚いてしまいました。田澤先生はどう思われますか」
⇒私はその石灰化の写真を見てはいませんが、
 たとえ(腫瘍の乳管内への進展をあらわす石灰化だったとしても)明らかに「乳頭部までの連続が無ければ」十分温存可能だと思います。
 当然、前医でも「マンモグラフィーを見ている筈」なので大丈夫なのではないでしょうか?
 
「乳頭腺間癌とありました。やはり広がりやすいという特徴があるのでしょうか。」
⇒乳頭腺管癌は乳管内進展の所見を伴う事も多いですが、特に「拡がり易い」と言う事はありません。
 
「細胞の種類の結果が出ていないので、はっきりとはお答えいただけないと思いますが、抗がん剤もする可能性がありますか。」
⇒サブタイプが判明していない以上、何とも言えません。
 「拡がり易い」とかとは無関係です。
◎サブタイプとは?
組織検査(針生検や手術標本)などで以下の3点を調べます。
エストロゲンレセプターの発現(ER)
プロゲステロンレセプターの発現(PgR)
HER2蛋白の過剰発現の有無(HER2)
 ⇒これらの組み合わせで
●luminal type:(ER陽性、PgR陽性、HER2陰性) ホルモン療法が有効(更に増殖指数Ki67の値が低いAと高いBに分けます)
♯luminalA(Ki67低値)ではホルモン療法単独を、luminalB(Ki67高値)には(ホルモン療法に加え)化学療法も行う事が多い
● HER2 type:(HER2陽性のもの) ハーセプチンという分子標的薬と通常の抗癌剤の組み合わせを行う
●トリプルネガティブ:(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)通常の抗癌剤を行う
●トリプルポジティブ:(ER陽性、PgR陽性、HER2陽性)ホルモン療法と分子標的薬と抗癌剤の全てを行う
※正式名称はluminal B(HER2タイプ)と言います。
 
「年齢から考えても進行が早いのでしょうか」
⇒年齢は全く無関係です。
 
「左腎に石灰化が見られますとありましたが、異常でしょうか」
⇒普通によくあることです。
 細かくなり、下(尿管)へ落ちると「尿管結石」となります。
 
「造影MRIで両肺に少量の胸水がみられますとありましたが異常でしょうか。造影CTには胸水は見られませんとありました。」
⇒胸水は無いと思います。
 CTの方が正しいです。(MRIの所見取り過ぎでしょう)
 
「私は完治するのでしょうか」
⇒サブタイプなどのデータが不足しており、数字は示せませんが、十分に根治する可能性があります。