[管理番号:58]
性別:女性
年齢:27歳
自分に当てはまる乳がんのリスクについて
- 高身長 160センチ以上
- 全身CT検査経験
- 胃バリウム検査経験
- 毎年のマンモグラフィ検査経験
以上のリスクは其々乳がんになる大きなリスクになるのでしょうか?
回答
こんにちは。田澤です。
「自分に当てはまりそうなリスク因子」ということですね。
良く勉強されていますね。
それでは回答します。
回答
「高身長 160センチ以上」は確かにリスク因子の一つです。
成長期における栄養状態、内分泌環境(女性ホルモンの分泌)が関係しており、「初経年齢が若い=女性ホルモン(エストロゲン)に乳腺が長期間曝される」と関係があると言われてます。
※但し実臨床上、「身長が高い方に乳癌が多い」という感覚は全くありません。
私自身の臨床経験(私自身が執刀した2000人以上を思い浮かべても)ではあまり関係無いように思えます。ただ、疫学的にはそのようになっています。
「放射線被爆について」
⇒これら(全身CT,胃バリウム、マンモグラフィー)全ては乳癌のリスクと考える必要ありません。
実効線量(被ばく線量)を以下に示します。
- 全身CT:10-30mSv(単純CTか造影CTかなどでも異なります)
- 胃バリウム:3mSv
- マンモグラフィー:0.1mSv
◎総量が100vSvを超えると、癌(乳癌では無く、癌全体として)の発生との関係があると言われていますが
マンモグラフィーは低線量なので毎年(たとえ、半年に1回でも)でも影響無い事がわかります。
ただ、CTだけは非常に線量が高いので注意が必要です。
無闇に撮影する事はお勧めできませんが、過去に撮影したことがあるからと言って乳癌リスクと考える必要はありません。
■CTについて(参考に)
救急病院で(研修医を含めた)若い医師は、とにかくCTを撮影したがります。
そのような際には「本当に必要なのか?」を確認した方がいいでしょう。「念の為にCT撮っておきましょう」みたいな事が多い事が私には気になります。
※私が研修医であった20年前には CTが性能が悪く撮影にも時間がかかるため(勿論被ばく線量も高いため)めったに撮影しませんでした。(急性虫垂炎=盲腸でCTを撮る事などは到底考えられませんでした)
しかし、最近はCTが高性能となり短時間で詳細な情報が得られる為、当たり前のように「CTを撮ってみましょう」となっています。
技術の進歩がいい事ばかりでは無い1例だと思います。