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乳がんの可能性はどのくらい?

[管理番号:2569]
性別:女性
年齢:44歳
始めまして。
私は現在イギリスでくらしており、2児の母です。
4cm程のしこりが右胸上部内側にみられ、病院でマンモグラフィー、エコーをしてきました。
その結果、別の箇所に石灰化したものも見つかり、脇下のリンパ節部分
にも何かあると言われました(しこりではないと言っていました)。
また、針生検をして検査の結果は2週間後に出る予定です。
マンモグラフィー、エコーの詳しい結果内容は教えてもらえなかったのですが、癌の疑いあり、心配な状況ですと言われました。
生検の結果待ちにも関わらず、結果を聞きにくる際には、乳がんについてステージングや治療法などを話しますので身内の方と一緒に来て下さいと言われ、
先生はすでに癌であるかの様に話しをされました。
次男の授乳が終わった約4年前から同じようなしこり(大きさも変化なし)があったと思うのですが、
排卵前にはズキズキして生理が過ぎると
痛みがなくなると同時に
しこりも気にならない感じだったのでさほど気にしていませんでした。
その後も同じ様な感じの状態でしたが、乳腺症の症状だと思っていました。
ここ数ヶ月は、また排卵前にズキズキしてしこりが顕著だったので、
今回の乳がん検診に至ったのですが、まだ言われた事を現実として受け止められません。
癌の可能性を言われ、今日の先生や技術者の方も深刻に話していたので
癌の可能性も十分承知して、かなり不安ではあるのですが、
今でも乳腺症ではないのかと思い、検査結果がでるまで、癌でない可能性もあれば前向きに過ごしたく質問を送らせて頂きました。
マンモグラフィー、エコーのみで癌である可能性はどの程度まで分るものなのでしょうか?
またこの検査で、乳腺症であると言われなかった理由は、やはり写っていたものが乳腺症より癌の疑いが強いからでしょうか?
しこりだけでなく、石灰化や脇下リンパ節にも何かある事から癌が疑わしいと言われたのですが、癌でない場合もこのように数カ所に現れる場合がありますか?
この状態で癌であると診断された場合は、かなり進行しているのでしょうか?
先生のサイトでリンパ腺のしこりは超音波をすれば、「鑑別は容易」と書かれてありましたが、今回癌を否定しなかったのは鑑別でリンパ線にも癌の疑いがあったと考えられますか?
また、癌であった場合、リンバに転移していても完治はするのでしょうか?
長文にて失礼します。
外国と言う事もあり、子供もおりますので今後についてやはり心配になっています。
先生のご意見をお聞かせいただければ幸いです。
宜しくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
メール内容を読みました。
「癌の疑いあり、心配な状況」「乳がんについてステージングや治療法などを話しますので身内の方と一緒に来て下さいと言われ、先生はすでに癌であるかの様に話し」
⇒ここまで(針生検の結果前に)言うのであれば「乳癌の可能性」がかなり高さうです。
 エコー像で間違い易いものは
 ・肉芽腫性乳腺炎
 ・糖尿病性乳腺症
 
「約4年前から同じようなしこり(大きさも変化なし)があったと思うのですが、排卵前にはズキズキして生理が過ぎると痛みがなくなると同時にしこりも気にならない」
⇒この状況は「典型的な」乳腺症です。
 ○乳腺症の強い変化の有る乳腺に(たまたま)乳癌ができた可能性があります。
 
「マンモグラフィー、エコーのみで癌である可能性はどの程度まで分るものなのでしょうか?」
⇒これは所見によって「随分、幅」があります。
 全ての癌が「典型的な画像所見」となる訳では無いのです。
 その意味では今回の「担当医のリアクション」からは「典型的な画像所見」であるように想像します。
 そうであるとすれば、「9割以上の確率」がありそうです。
 
「またこの検査で、乳腺症であると言われなかった理由は、やはり写っていたものが乳腺症より癌の疑いが強いからでしょうか?」
⇒その通りです。
 もしも「乳腺症かもしれない」と思ったら、これほど「確定的な言い方」はしないと思います。
 
「しこりだけでなく、石灰化や脇下リンパ節にも何かある事から癌が疑わしいと言われたのですが、癌でない場合もこのように数カ所に現れる場合がありますか?」
⇒所見によります。
 石灰化に関して…明らかな「癌でしか起こらない様な形態」であれば「癌の疑いを決定づける」ことになりますが、ただ石灰化が複数個所にあるだけでは「良性でも珍しい事ではありません」
 リンパ節に関して…明らかな「転移性リンパ節の所見」と判断できるような所見であれば、「判断ミス」する可能性はかなり低いと言えます。
 
「この状態で癌であると診断された場合は、かなり進行しているのでしょうか?」
⇒そんなことはありません。
 
「今回癌を否定しなかったのは鑑別でリンパ線にも癌の疑いがあったと考えられますか?」
⇒その可能性があります。
 
「また、癌であった場合、リンバに転移していても完治はするのでしょうか?」
⇒根治する可能性の方が、通常高いです。
 リンパ節転移は(もし、あったとしても)局所であり、「遠隔転移ではない」のです。
 ご安心を。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、前回はとても分りやすい回答をいただきありがとうございました。
告知前に質問をさせていだだき、覚悟を持って医師と向かい合う事ができました。
結果は、やはり残念ながら乳ガンでした。
イギリスと日本の医療では多少の流れの違いがあるかと思うのですが、
一先ず生検の結果、浸潤性乳がん、グレード2である事が判明しました。
そして石灰化の部分については良性とでましたがこれは確定ではない事、腫れのある脇下リンパのサンプルは不十分という結果で再検査になりました。
しこりはエコーでは3.5cmでした。
レセプターについてはまだ判明していないといわれ、ステージについても術後に全て報告するとの事でした。
先日、胸部のMRIをしましたが癌のある右胸については特に何も言われず、ただ左に少し何か見えるから再びエコーをして確認するとの事でした。
イギリスでは乳ガン診断が出てから約4~6週間で手術/治療を開始しなければならないと国で定められており、当方は手術が先行で4月中旬から下旬となります。
質問ですが、
-乳ガン診断が出てから約4~6週間手術/治療を開始でもガンの進行に影響はないのでしょうか?
医師の説明で、しこりの大きさと私の胸のサイズ(Aカップ)を考慮すると右胸は恐らく全摘が良いと言われ、また手術の際にインプラントを使った同時再建をするオプションを言われました。
-この場合ですとやはり右胸全摘となりますでしょうか?
全摘で再発リスクが抑えられるなら全摘にするつもりなのですが。
-イギリスでは再建方法もいくつか選べる様ですが、日本人の様にあまり脂肪や余裕な皮膚がない場合はインプラントが良いのでしょうか?
-またインプラントで同時再建した場合、その後の放射線治療等に影響や他のリスクはないのでしょうか?
ガンの告知より1ヶ月程前から、肩と腕の痛みがあり痛みが増加しています。
現在は首や鎖骨下、腕にも痛みがあり、リンパ節への転移ではないかと心配です。
また、肝臓のあたりも鈍痛がありこちらも転移ではないかと心配です。
-しこりの大きさやグレード、またリンパ節の腫れからして、転移の可能性は高いのでしょうか?
イギリスの医療を信じて治療をしていくつもりですが、経験多大な田澤先生のご意見をお聞かせいただければ幸いです。
宜しくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「腫れのある脇下リンパのサンプルは不十分という結果で再検査になりました。」
⇒「腋窩リンパ節の細胞診が満足にできない」というのは、(ここ日本だけでなく)「イギリスも同様」なのですね。
 細胞診に自信がないのであれば、「無理してまでやらなければいい」と思います。
 術中に「センチネルリンパ節生検を行えば済む」だけの話なのです。
 そこまで「術前に細胞診に拘る理由が不明(患者さんに痛い思いをさせるだけです)」です。
 
「イギリスでは乳ガン診断が出てから約4~6週間で手術/治療を開始しなければならないと国で定められており」
⇒それは「理想」ですが、実際には困難なこともあるとは思います。
 国の制度として「定めている」というのは、少々驚きです。(なかなか日本では難しいでしょう)
 
「乳ガン診断が出てから約4~6週間手術/治療を開始でもガンの進行に影響はないのでしょうか?」
⇒それは十分「早い」と思います。
 乳癌は「短期間で進行はしない」のです。
 
「医師の説明で、しこりの大きさと私の胸のサイズ(Aカップ)を考慮すると右胸は恐らく全摘が良い」「この場合ですとやはり右胸全摘となりますでしょうか?」
⇒「術前化学療法」の話はでなかったのですか?
 「35mm」であれば、「そのままでは温存は困難(整容性の問題で)」と思いますが、このような場合にこそ本来の術前化学療法の目的である「小さくして温存」の適応が有るのです。
 
「日本人の様にあまり脂肪や余裕な皮膚がない場合はインプラントが良いのでしょうか?」
⇒そんなことはありません。
 むじろvolume的には「広背筋皮弁」などでも「十分な整容性が得られる」と思います。
 
「インプラントで同時再建した場合、その後の放射線治療等に影響や他のリスクはないのでしょうか?」
⇒放射線治療は、「シリコンに入れ替えてから」となるのが通常です。
 
「ガンの告知より1ヶ月程前から、肩と腕の痛みがあり痛みが増加」
⇒これは無関係です。
 
「現在は首や鎖骨下、腕にも痛みがあり、リンパ節への転移ではないかと心配」
⇒誰しも心配することですが…
 症状からは「転移は全く疑いません」
 女性ホルモンによる刺激症状です。
 
「肝臓のあたりも鈍痛がありこちらも転移ではないかと心配」
⇒1000%ありません。
 ご安心を(ちなみに肝臓は痛みがありません)
 
「しこりの大きさやグレード、またリンパ節の腫れからして、転移の可能性は高いのでしょうか?」
⇒遠隔転移は「全く心配なし」です。
 ご安心を。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生、以前に質問させていただきましたイギリス在住の者です。
私の件だけでなく、他の方々への丁寧な回答も拝見させていただき、乳ガンについての知識をつけながら、この病気に向き合うことが出来ています。
海外にいながらどれだけ支えられているか感謝の気持ちで一杯です。
本当にありがとうございます。
今回は、新たな検査の結果と手術日が決定しまして、少し質問をさせていただきたく思います。
先ず、現在までで判明しましたのは以下の通りです。
浸潤性乳がん
しこりサイズ(右胸): 35mm。
別の箇所に石灰化あり(陰性)
ガンの浸透範囲(MRIにて): 57mm この浸透は乳首の6mm手前くらいまで。
グレード: 2
ER陽性 +8, PgR検査せず, HER2陰性
リンパ節の転移:超音波で肥大あり、リンパ節の皮質3mm。
再び針生検(core needle biopsy)陰性
Ki67やLuminal A/Bについてはイギリスでは適応しないとの事でした。
手術は4月(中旬)日に右胸全摘と同時再建(インプラント)、またセンチネルリンパ節検査をする事になりました。
ただセンチネルリンパ節検査の結果は2週間後との事で、陽性の場合は後日、腋窩リンパ節郭清をするとの事。
前回イギリスのガイドラインでは告知より4~6週間以内に治療、手術開始と言いましたが、やはり4週間強での手術となりそうです。
質問ですが
– リンパ節の肥大があり超音波ではリンパ節の皮質厚が3mm、通常は2.5mmであるため転移が疑わしかった様なのですが、再び針生検をしたところ(初回はサンプル不足で不明)今回は陰性となりました。
そのためセンチネルリンパ節検査をするのですが、この状況でセンチネルリンパ節検査で陽性となる可能性は高いのでしょうか?
– 執刀医は再建する際に乳首を残せるかもしれないと言うのですが、説明では通常ガンが乳首より10mm離れていないといけないが、私の場合は6mmで近いが、なんとかいけるかもしれないと言っています。
私は再発のリスクがあるようなら残さなくても良いと伝えたのですが、
6mmだと大丈夫そうだし再発のリスクは5%くらいと言われているが、
実際のレポートではさらに低いと言います。
私は5%でもリスクは残したくないのですが、田澤先生はどのように考えますか?
– リンパ節の転移がない場合は、化学療法や放射線は必要ないかもしれない言われたのですが、しこりと浸透サイズから、化学療法はいづれにしてもするのかと思っていました。
この様な場合、どの様な治療法が組まれますか?
– リンパ節に転移していた場合は転移数に関わらず化学療法となりますか?
– センチネルリンパ節検査結果が陽性であった場合にあらためて後日腋窩リンパ節郭となります。
腋窩リンパ節郭清をする際、再建した箇所に影響はないのでしょうか?
放射線もゆるめのレベルで回数をふやしてあてるので問題はないと言われたのですが支障はないのでしょうか?
– Ki67の数値、PgR、luminalA/Bはイギリスでは検査適応外と言われましたが、治療判断に必要ではないのでしょうか?
イギリスでは税金で国民健康保険を支払っていますが、治療や診察等は全て無料なので、必要以上の事は行わない傾向が全般的に(乳ガンのみでなく)あるようです。
もちろん費用が無料なのには救われているのですが。
以上、お忙しい所恐縮ですが宜しくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「再び針生検をしたところ(初回はサンプル不足で不明)今回は陰性となりました。この状況でセンチネルリンパ節検査で陽性となる可能性は高いのでしょうか?」
⇒高くはないと思います。
 2回も針生検?(腋窩なのに「細胞診」ではなく、「針生検」なのですか?)して「陰性」なのに、「取ってみたら陽性」ということはないでしょう。
 
「執刀医は再建する際に乳首を残せるかもしれないと言うのですが、私は5%でもリスクは残したくないのですが、田澤先生はどのように考えますか?」
⇒乳頭を残す事は勧められません。
 「乳頭との距離が十分である」「腫瘍径が小さい」ことが安全に「皮下乳腺全摘」を行う事の条件です。
 
「しこりと浸透サイズから、化学療法はいづれにしてもするのかと思っていました。この様な場合、どの様な治療法が組まれますか?」
⇒ルミナールAであれば「腫瘍径が大きくても、リンパ節転移があっても化学療法による上乗せ効果は無い」ことがSABCS 2015で報告されたばかりです。
 「Ki67を計らない」のであれば「Oocotype DX」などでもしなければ、治療法が安定しない様に思います。
 
「 リンパ節に転移していた場合は転移数に関わらず化学療法となりますか?」
⇒4個以上であれば、「化学療法すべき」と思います。
 「それ以下の場合」には「ルミナールAなのかBなのかが重要(Aでは化学療法は不要)」となります。
 
「腋窩リンパ節郭清をする際、再建した箇所に影響はないのでしょうか?」
⇒術野が全く異なるため「全く影響無」です。
 
「放射線もゆるめのレベルで回数をふやしてあてるので問題はないと言われたのですが支障はないのでしょうか?」
⇒「シリコンに)入れ替えた後に照射をするという方法があります。
 
「- Ki67の数値、PgR、luminalA/Bはイギリスでは検査適応外と言われましたが、治療判断に必要ではないのでしょうか?」
⇒今回のようなluminal typeでは「Ki67が重要」と思います。
○メール内容からすると(ルミナールをAとBに分けずに)「リンパ節転移があったら抗がん剤、無かったら抗がん剤をしない」では「前時代に逆戻り」の様に思いますが…
 
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生、いつも分かりやすい回答をありがとうございます。
4月中旬に手術となり、術後の病理検査の結果が出ました。
幾つか質問させていただきたく思います。
宜しくお願いします。
<<病理検査結果>>
多発生浸潤性乳管癌
21 mmの範囲に最大病巣6 mm(グレード2:T3 P2 M2), 5mm, 4mm
(両グレード2), 2mm(グレード1)の病巣あり
核グレード中~強の様々な非浸潤性乳管癌あり(全体の腫瘍サイズ30mm強)
局所のリンパ管侵襲あり
Paget’s diseaseなし
Nearest surgical margin – 3 mm
1/2 リンパ転移(1/1 センチネルリンパ節含む)
– 術前の画像検査では、しこりが35mmと言われていたのですが、実際は病巣が21 mmの範囲内に多数集まったもののようでした。
この場合
のしこりのサイズはどのようになるのでしょうか?ステージを出す際にも影響してくると思うのですが、6 mmの腫瘍が1つのみの場合と腫瘍が多数集まった場合はどうなりますか?
– また術前MRIでは57mmの範囲に微小のガンが散らばっていたのですが、これはしこりサイズとは関係してきますか?
– ガンのタイプについては今回の病理検査では確認なしで前回(ER陽性+8, PgR検査せず, HER2陰性)の結果を採用の様なのですが、時々病理検査の結果が違う場合もあると理解しています。
術前の結果のみで大丈夫でしょうか?
– 術前の針生検査ではリンパ節は陰性となっていましたが、センチネルリンパ節生検では陽性でした。
病理検査結果と主治医の話しでは、センチネルリンパ節のすぐ横にリンパ節があり(これも手術で摘出)どうやらそこに針生検の跡があったとの事で、このリンパ節は陰性と出たようでした。
センチネルリンパ節が陽性なので、追加廓清手術をする事となりました。
陽性センチネルリンパ節のとなりのリンパ節が陰性の場合、他のリンパ節への転移は多数あるものでしょうか?
– リンパ節はセンチネルリンパ節から枝分かれをしているものなのでしょうか?
– リンパ管侵襲については局所のリンパ管侵襲あり(focal
lymphovascular invasion is present)とだけ記載があるのですがこの場合の侵襲レベルはどのように解釈すれば良いですか?
– 右胸全摘となりましたが、リンパ節の転移があるとその部分には放射線治療が適応されますか?
– ki-67は不明ですが、この状況では抗がん剤の適用はどのようなものでしょうか?
主治医からは抗がん剤の話しをされました。
手術の日に、全くの別件でガンの新薬の研究機関に私のがんブロックを協力提供する事になりました。
その際に訪れていた研究者の方とki-67について話しをしたところ、そちらの研究所でki-67の数値を出せるかもしれないと言う事になりただ今、回答待ちです。
やはり自分のガンの性質を知っておきたいという気持ちがあり、また今後の治療方にも影響でるかもしれないと考えるとki-67の数値を知りたい所です。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
pT1b(6mm), pN1,
「この場合のしこりのサイズはどのようになるのでしょうか?
ステージを出す際にも影響してくると思うのですが、6 mmの腫瘍が1つのみの場合と腫瘍が多数集まった場合はどうなりますか?」
⇒6mmです。
 腫瘍の数は無関係です。
 
「また術前MRIでは57mmの範囲に微小のガンが散らばっていたのですが、これはしこりサイズとは関係してきますか?」
⇒無関係です。
 あくまでも「病理での最大浸潤径」です。
 
「術前の結果のみで大丈夫でしょうか?」
⇒大丈夫です。
 
「センチネルリンパ節が陽性なので、追加廓清手術をする事となりました。」
⇒術中迅速ではないのですか???
 後日「追加郭清」は大変だと思います。
 
「陽性センチネルリンパ節のとなりのリンパ節が陰性の場合、他のリンパ節への転移は多数あるものでしょうか?」
⇒あまり無いと思います。
 
「 リンパ節はセンチネルリンパ節から枝分かれをしているものなのでしょうか?」
⇒決まっている訳ではありません。
 
「この場合の侵襲レベルはどのように解釈すれば良いですか?」
⇒リンパ管侵襲ありという程度でいいでしょう。(あまり気にするポイントではありません)
 
「- 右胸全摘となりましたが、リンパ節の転移があるとその部分には放射線治療が適応されますか?」
⇒リンパ節転移4個以上でなければ不要です。
 
「- ki-67は不明ですが、この状況では抗がん剤の適用はどのようなものでしょうか?」
⇒追加郭清の結果次第です。
 pT1b(6mm)なのだから(これ以上の転移が無ければ)「ホルモン療法単独」でいいと思いますが…
 
 

 

質問者様から 【質問5】

田澤先生、ご無沙汰しております。
イギリスで治療を受けているもので、6月上旬にリンパ節郭清の追加手術が終わりました。
今後の治療方について伺わせていただきたく、宜しくお願いします。
病理結果をもらい、今回の郭清でとったリンパ節には転移はなしで、前回のセンチネルリンパ節の1つのみ転移となりました。
またKi-67スコアも別の研究所で出してもらう事ができ、Ki-67は32%でした。
これまでの結果は以下です。
<<病理検査結果>>
多発生浸潤性乳管癌
最大病巣6 mm, 5mm, 4mm, 2mmの病巣あり
グレード: 2
ER陽性 +8, PgR検査せず, HER2陰性
局所のリンパ管侵襲あり
1/2 リンパ転移(1/1 センチネルリンパ節含む)
病理結果より、グレーゾーンに近いが、多発生である事、グレード、リンパ節転移も含め、今後は抗がん剤をする方針であるとの事でした。
田澤先生ですとどの様な治療を考えられますでしょうか?
また、もし抗がん剤をする場合、どういった抗がん剤での治療となりますか?
抗がん剤も前向きに考えてはいるのですが、実家の母が父の介護をしており、母を手伝うためこの夏1ヶ月ほどの里帰りを随分以前から予定していました。
こちらの病院では術後4~6週間で抗がん剤治療を開始するとの事で、
その場合開始時期は7月中旬頃になるのですが、里帰りから帰国後の8月下旬~9月上旬に抗がん剤を開始ですと、
予後に影響してくるのでしょうか?始めの摘出手術から計算すると、帰国後ですと術後約5ヶ月が経過する事になります。
予後に影響するようでしたら、里帰りは諦めて、もちろん治療優先で7月に抗がん剤を開始するつもりなのですが、影響がないようなら、母も疲れているので孫も連れて、励ましに帰りたいと思っています。
MDアンダーソンがんセンターの研究では、術後91日以降の抗がん剤投与は生存率が低下するとの記事がありました。
これは特にトリプルネガティブ患者に顕著だが、全ての乳ガン患者にも手術後90日以内に開始することをすすめるとありました。
ただ、ホルモン受容体陽性患者あるいはHER2陽性患者では、治療開始遅延による有意な影響はみられなかったと記載がありました。
田澤先生の豊富な臨床経験よりご意見いだたければありがたいです。
また、もし抗がん剤を8月下旬~9月上旬から開始する場合、
それまで補助療法なしですととても不安なので、ホルモン療法を今から開始してもらいたいのですが、
ホルモン療法を開始して、里帰り後一旦中止して抗がん剤を開始という方法は有用なのでしょうか?
Ki-67は32%でしたが、この場合もリンパ節転移が1つの場合は放射線治療は必要ないでしょうか?
ホルモン療法のみと、化学療法を上乗せした場合の10年後の再発率と生存率を教えて下さい。
最後に、ガン告知前からこちらのサイトとQ&Aを拝見させていただき、
また先生にも何度も貴重なご意見をいただき、乳ガンの実態を把握しながら、励まされながらここまで来る事ができました。
おそらく、先生とこのサイトがなければ、乳ガンとの闘いも恐怖とのたたかいであったと思います。
田澤先生のご尽力にどれだけの方が救われた事かと思います。
私もその中の一人であり、先生には感謝してもしきれない程です。
本当にありがとうございます。
 

田澤先生から 【回答5】

こんにちは。田澤です。
結局リンパ節転移は「センチネルリンパ節の1個だけ」でしたね。
それはよかったです。
 
「病理結果より、グレーゾーンに近いが、多発生である事、グレード、リンパ節転移も含め、今後は抗がん剤をする方針」
⇒「多発」とか「グレード2」「リンパ節転移1個」は全く無関係です。
 上記は「抗ガン剤を勧める根拠にはなりえない」と言えます。
 Ki67=32%というのも悩ましい数値です。
 pT1bであり、「このまま抗ガン剤を勧める」ことはありません。
 OncotypeDXはどうでしょうか?
 私の印象ですが、質問者は「低リスクもしくは、せいぜい中間リスク」のような気がします。
 最近のデータでは「中間リスクも化学療法による上乗せは無い」ことが解ってきています。
 ★質問者が「積極的に化学療法をすることを厭わない」のであれば、それでもいいですが(もし迷うのであれば)OncotypeDXを勧めます。
 やはり、自分自身の患者さんの経験に引っ張られる傾向は(当然、私にも)あり、最近見ていると「luminalBだとされている患者さんの多く」が「OncotypeDXで低リスク=luminalA相当」であることを多く目にしているのです。
 一度『今週のコラム30回目 実際はかなり多くのルミナールAがBと判定され無駄な化学療法をされている』を一読ください。
 
「もし抗がん剤をする場合、どういった抗がん剤での治療となりますか?」
⇒TC療法です。
 アンスラタキサンはやり過ぎでしょう。
 
「ホルモン療法を開始して、里帰り後一旦中止して抗がん剤を開始という方法は有用なのでしょうか?」
⇒有用かどうかは解りませんが…
 全く問題ありません。(よくある事です)
 
「Ki-67は32%でしたが、この場合もリンパ節転移が1つの場合は放射線治療は必要ないでしょうか?」
⇒不要です。
 Ki67は全く無関係です。
 
「ホルモン療法のみと、化学療法を上乗せした場合の10年後の再発率と生存率を教えて下さい。」

再発率 10年生存率
ホルモン療法のみ 22% 87%
ホルモン+化学療法 15% 90%

○このデータでみると化学療法の「上乗せ」は7%となりますが…
  (しつこいようですが)OncotypeDXによる「低・中リスクのケース」と「高リスクのケース」の総和になっていることに注意が必要です。
   ザックリ言うと
   もしも質問者が「低リスク」であれば、 おそらく ホルモン療法のみでも再発率は「一桁」となり、逆に「高リスク」であれば、「抗ガン剤による上乗せ効果は15%位」となるのではないかと推測します。
   ★つまり、「抗ガン剤は全く無意味」か(逆に、高リスクであれば)「抗ガン剤による上乗せはもっと大きい」に「実際は二分されるのだけれど、それが混ざった結果がNeoadjuvant onlineの結果である」と言えます。
 
 

 

質問者様から 【質問6】

田澤先生、
詳しい説明をいただきありがとうございました。
コラム30回目『実際はかなり多くのルミナールAがBと判定され無駄な化学療法をされている』のluminalBのOncotypeDXについても拝見させていただきました。
Ki67数値も微妙なところですので、無駄に体に負担はかけたくないと思います。
次回のOncologistとの診察の際に一度相談させてもらおうと思います。
もし抗がん剤をする場合についての質問なのですが、
– 抗がん剤の開始時期が里帰り後であると、8月下旬~9月上旬から抗がん剤開始となるのですが、その場合、始めの手術より約5ヶ月が経過する事になってしまいます。
術後5ヶ月後からの抗がん剤開始は予後に影響しないのでしょうか?
– また、抗がん剤開始までの5ヶ月間、ホルモン療法をせず無治療となる場合は予後に影響してきますでしょうか?
– TC療法をした場合は、4サイクル(3ヶ月)となりますか?
– また、アンスラタキサンはやり過ぎと言うのは、これは高リスクの患者さんに使われるのでしょうか?自分自身が低リスクであるかは分りませんが、私には不要という解釈でよいですか?
抗がん剤についてまだまだ勉強不足で、これから色々調べてみたいと思います。
 

田澤先生から 【回答6】

こんにちは。田澤です。
「術後5ヶ月後からの抗がん剤開始は予後に影響しないのでしょうか?」
⇒有る程度進行している方なら気にはなりますが…
 質問者のケースでは「そもそも、化学療法の適応自体があやしい」特に「急ぐ必要」を私は感じません。
 
「- また、抗がん剤開始までの5ヶ月間、ホルモン療法をせず無治療となる場合は
予後に影響してきますでしょうか?」
⇒数字に出るほどの影響はないと思います。
 
「- TC療法をした場合は、4サイクル(3ヶ月)となりますか?」
⇒その通りです。
 
「- また、アンスラタキサンはやり過ぎと言うのは、これは高リスクの患者さんに使われるのでしょうか?自分自身が低リスクであるかは分りませんが、私には不要という解釈でよいですか?」
⇒その通りです。
 最近では心毒性の問題で「アンスラサイクリンは避けられる」傾向があります。
 何年か前のアメリカのデータで「タキサンがアンスラサイクリンを逆転」しています。(どんどん拡がる一方でしょう)
 その意味で「アンスラサイクリン+タキサン」は「トリプルネガティブ」か高リスクとすべきと考えています。