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稀な症例の治療法と予後について

[管理番号:7076]
性別:女性
年齢:37歳
病名:左乳癌
症状:乳癌術後

田澤先生 診断されてからほぼすべてのQandAを拝見させていただいております。
田澤先生のお人柄溢れるアンサーに時に涙しながら拝読しております。
先生、貴重な場をありがとうございます
私は、しこりを感じクリニックで乳癌の診断を受け同時再建を希望した為大きな病院へ転院しました。
そこでレベルⅢに気になるリンパ節があると言われてpet 施行しpetでも大胸筋下、小胸筋内側にリンパ節転移を示唆する集積を認めました。
その後針生検実施し、転移が認められた為
左乳房全切除術+腋窩リンパ節郭清levelⅢまでを実施しました。
術前抗がん剤を提案されましたが先生で勉強させて頂きましたので手術先行を希望しました。
先日病理の結果を主治医からとても不思議な症例と説明され毎日不安で泣いて過ごしてます。

【病理組織診断報告書】
組織学的には、左乳腺内側上部から一部乳輪区域にかけて85×60㎜の範囲に非浸潤性乳管癌が広がっています。
大小に拡張した乳管内で異型の高度な腫瘍細胞がcomedo壊死や石灰化を伴いながら主として充実性となって非浸潤性に増殖しています。
さらにこの病変内において、浸潤巣が複数認められます。
一連とみなせる浸潤巣のうち最大のものは18×6㎜大です。
腫瘍全体として、乳管内成分優位の浸潤性乳管癌、腺管形成型から硬性型と考えます。
浸潤は各所で脂肪織に及んでおり、またリンパ管侵襲を伴っています。
静脈侵襲は明らかではありません。
断端陰性ですが、一部深部断端までDCISが25μm程度と極めて隣接しています。

リンパ節転移が見られます(2/13)
Levell(0/7) Level Ⅱ(0/2) Level Ⅲ(0/2) センチネル(1/1) Rotter(1/1) 節外浸潤なし。
転移巣最大径5、5㎜(rotter)
Nuclear grade:Grade3
Nuclear atypical score 3 Mitotic counts score 3(mitosis 13/10HPF) Histology also grade:Grade Ⅱ Tubule formation2 Nuclear atypia3 Mitotic counts2.
生検標本より高度の異型、高頻度の核分裂像が見られます。

標本17:MIB-1 37 %
参考:ER(+)3b、PgR(+)3a、HER2 FISH(-)、MIB-1 20%

上記の結果について主治医は、とても深いところのリンパ節に転移している…リンパ節転移が2つなのも不思議。
センチネルは術前はしないと説明されましたが実施したとのこと。
私の希望のオンコタイプの結果を鑑みて抗がん剤の実施など無意味。
はっきり言ってオンコタイプでどうこうしましょうのレベルではないと思うよ。
オンコタイプで低リスクになるパターンではないね。
仮にオンコタイプで低リスクとでても抗がん剤は不可避との見解を話されました。
たしかに、田澤先生もレベルⅠを通り越えての転移はないとのアンサーを複数されておりますし本当に不思議な現象なのだと思います。
管理番号3925様「リンパ節転移」と同じ様な症例ではと期待しおりましたが私とは違うのでしょうか。

主治医は、ddAC +wpac 放射線 ホルモン療法 を提案しております。
あとは治験ぐらいしか治療法はないよとのこと。
とりわけ再発リスクが高い人向けの治療内容とのことです。

質問ですが、
1. d.dAC+wPAc これは妥当でしょうか。
若いので頑張ってと言われましたが不安です。
そして私の癌はそれほど悪性度が高いのでしょうか。

主治医はどこに持っていっても同じ事を言われると思うよと言っております。
オンコタイプで低リスクでも抗がん剤をとのことで無駄な検査になるとのことでした。
そこまで言われては私もなかなか医師の前では、
それでもオンコタイプでしっかりサブタイプを確認してから治療したいと言えませんでした。

2. ご経験豊富な先生の患者様の中にもこのような転移を起こした患者様はいらっしゃいましたでしょうか。
やはり稀なケースだと予後も悪いのでしょうか。
リンパ節はあくまで局所、サブタイプに応じた効果的な治療をすれば主治医の言う深い所に転移はしていましたがステージ2Aで根治出来ると希望を持っておりましたがやはり甘い考えなのでしょうか。

画像の時は、LevelⅡとLevelⅢの間と言われていたのが病理ではロッターになっているのは気にしなくてもいいですか?
3. DICSが85㎜もあったこともショックでしたし毎日なんでこんなところに転移があったんだろう、85㎜まで育ててしまった上に昨年の検診はパスしたのだから一気に浸潤したのかな。
こんな予測不能な転移をする癌なのだからきっとすでに全身にも潜んでいるのでは?と不安で不安でたまりません。
DICSが妊娠出産授乳を経て一気に浸潤する若年に典型なルミナルBは特に予後が悪いとの情報も見て毎日生きた心地がしません。
私は天寿を全う出来るのでしょうか。
先生のご見解をお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

残念ながら?私は、質問者の担当医の意見には興味がないので、事実(病理結果)のみから回答します。

「1. d.dAC+wPAc これは妥当でしょうか。」
→普通に…

 グレーゾーン(Ki67=37%)なのだからOncotypeDXをして「抗がん剤の適応」を決めましょう。

「そして私の癌はそれほど悪性度が高いのでしょうか。」
→普通のルミナールタイプです。
 (悪性度が高いなどと考える)根拠が全くありません。

「ご経験豊富な先生の患者様の中にもこのような転移を起こした患者様はいらっしゃいましたでしょうか。」
→確かに多いケースではありませんが…

 いらっしゃいます。
 (低頻度とはいえ)別ルートがあるのだと想像します。

「やはり稀なケースだと予後も悪いのでしょうか。」
→何を根拠に??

 全くナンセンス。

「リンパ節はあくまで局所、サブタイプに応じた効果的な治療をすれば主治医の言う深い所に転移はしていましたがステージ2Aで根治出来る」
→その通りです。

「やはり甘い考えなのでしょうか。」
→考えすぎです。
 普通に考えましょう。

「画像の時は、LevelⅡとLevelⅢの間と言われていたのが病理ではロッターになっているのは気にしなくてもいいですか?」
→画像所見からは…

 レベル3のようですが…
 なぜ「Rotter(胸筋間リンパ節)」として提出したのか?は不明です。(もしかすると、その他のリンパ節と区別するために「便宜的に」そのようにして提出したのかもしれません)

「先生のご見解をお願いいたします。」
→私には…

 その主治医の「独創的な」想像など興味がありません。
 普通に診療しましょう。

 
 

 

質問者様から 【質問2 骨転移疑い】

性別:女性
年齢:37歳
病名:左乳癌
症状:術後腰痛

田澤先生 前回はご回答賜りありがとうございまいた。
田澤先生の様な有名で沢山の患者様を診て来られたすごい医師に病理の結果を見てもらい希望を頂いた事を家族とも共有しそれはそれは喜びました。
家族にまで安堵感を与えてくださる先生の存在は我が家では本当に特別な存在です。
そんな矢先また不安な事が起きました…本来なら主治医に相談すべきとは重々承知しておりますが、是非田澤先生のご見解をお願いいたします。

12月(上旬)日に左乳房全切除+腋窩リンパ節郭清level3まで郭清しました。
結果は、稀な症例と言われたpT1c(18mm)pN1a(センリネルとロッター)です。
術後6週間経ち徐々に体調も落ち着いてきた頃でした。
2週間前ほどから、腰の違和感を感じ始め、罹患前から生理前は同じ症状があるので無治療の今も同じ生理に関わる腰痛と思い放置しておりました。
しかし、生理も終わりこの1週間で日に日に尾骨から腰椎のあたりまで安静にしていてもジンジンとする腰痛があります。
これは骨転移による症状でしょうか?術前のPET CT を2ヶ月ほど前に撮りましたがロッターの5.5mmの転移は見つけてもらいましたが骨転移については指摘はありませんでした。
田澤先生には、前回回答で悪性度が高いガンではなく普通のルミナルと言っていただき 安心しましたがやはり安静時にも今まで経験したことのない執拗な痛みに精神共々壊れてしまいそうです。
主治医は今日も鎖骨上のリンパ節まで触診してくださりましたが肝心の腰痛についてはとても怖くて怖くて腰痛の事を話せませんでした。
今日初回のAC療法の日でした。
(田澤先生にはオンコタイプで普通の診療をとご回答賜りましたが主治医に押されd.dAC+wpacをすることになりました。

せっかくご教示下さったのに申し訳ございません。)
また田澤先生にご回答賜りたく存じます。

?田澤先生のご経験の中で、術後6週間で腰痛で骨転移のケースはございましたでしょうか?また稀なケースに該当するのではと戦々恐々です。
ある程度の覚悟も辞さない様に気持ちも持っていきたいです。

?2ヶ月前のPETはあくまで2ヶ月前のもで今の私の状況の判断には有用ではないものでしょうか?抗がん剤治療中でも次の検査を急いだ方が良いでしょうか? 骨転移も早期発見が重要で放置すると麻痺を起こすものとの情報を見ました。
私も怖がらず事実をしっかり確認した方が賢明でしょうか?
?抗がん剤治療中に湿布を貼っても良いものなのでしょうか?高名な医師にこの様な質問をと葛藤しましたが現在投与1日目でありますが副作用より腰痛が怖く腰痛の方が症状が重いです。

?もし残念なことになりましたら今の治療の中止になるものなのでしょうか?その際は田澤先生に実際にお会いしたいです。
セカンドオピニオンを希望します。

ご回答よろしくお願い致します。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

術後暫くは、色々なことを「これって、転移?」と心配されるのも仕方がないことなのでしょう。

「2週間前ほどから、腰の違和感を感じ始め、罹患前から生理前は同じ症状があるので無治療の今も同じ生理に関わる腰痛と思い放置」
「しかし、生理も終わりこの1週間で日に日に尾骨から腰椎のあたりまで安静にしていてもジンジンとする腰痛」
「これは骨転移による症状でしょうか?」

→99%違います。

 普通に(常識的に)考えれば、(そもそも30歳代後半となり、卵巣機能が衰えてきたところに)「手術」「これから行う抗がん剤への不安」が引き金となり、「卵巣が不安定となって、生理の頃の症状が継続している」と考える方が自然ではないですか??
 是非『今週のコラム 4回目 「卵巣が支配している」
   『今週のコラム 111回目 大事なことは、これら①~④の病気など世の中には無いのです。それは(我々医師には)自明なことなのです。
  をご参考に!