[管理番号:7434]
性別:女性
年齢:41歳
病名:乳がん
症状:
先日、細胞診、針生検組織診までの検査を行い、
しこり19ミリ、リンパ節転移なしのステージ1と診断されました。
その後、骨シンチ、MRI、CTの検査を行い、手術方法が確定になります。
現段階でリンパ節転移なし、と診断されましたが、CTや骨シンチの検査を行うのは何故でしょうか?
また、術中にセンチネルリンパ生検を行うと思うのですが、リンパ節の転移は細胞診、組織診で確定になったのではないのでしょうか?
センチネルリンパ生検を行った後に、ステージが変わるということはあるのでしょうか?
無知で申し訳ありません。
ご回答、よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
★「転移」と一括りにすることに誤りがあります。
・リンパ行性転移 癌細胞が「リンパ管」を通ってリンパ節へ転移
・血行性転移 癌細胞が「血管」を通って遠隔臓器へ転移
「リンパ行性転移」と「血行性転移」は全く別ルートなのです。
だから、「リンパ節転移が無い」ことと「血行性転移(遠隔臓器転移)」の有無は無関係なのです。
「その後、骨シンチ、MRI、CTの検査を行い、手術方法が確定になります。」
→ここも(細かいようですが)ザックリしすぎています。(物事は整理しなくては、理解が深まりません)
骨シンチ、CT:遠隔臓器転移(血行性転移)の有無を調べるための検査
MRI :乳腺内の腫瘍の拡がり目的
つまり「手術方法が確定」するための検査はMRIだけであり、「骨シンチやCT]は「遠隔臓器転移の有無を(念のために)調べるため」なのです。
「現段階でリンパ節転移なし、と診断されましたが、CTや骨シンチの検査を行うのは何故でしょうか?」
→上記★を読んでいただけましたか?
回答は「リンパ節転移と血行性転移は無関係だから」です。
「また、術中にセンチネルリンパ生検を行うと思うのですが、リンパ節の転移は細胞診、組織診で確定になったのではないのでしょうか?」
→リンパ節を細胞診したわけですね??
冷静に考えてもらうといいのですが…
「リンパ節全体に癌細胞があれば」、細胞診で「どこを刺しても癌細胞が出る」が、「リンパ節が2cmとして、そのうち1mmに癌細胞があった場合」、細胞診で「たまたま癌細胞にさしていないだけ」という事態が起こりうるわけです。
「センチネルリンパ生検を行った後に、ステージが変わるということはあるのでしょうか?」
→上記通りです。
センチネルリンパ節生検は(細胞診とは異なり)「リンパ節全体を顕微鏡で見る」から、(細胞診で陰性でも)「センチネルリンパ節生検で陽性となる可能性はある」のです。
質問者様から 【質問2 術前診断について】
性別:女性
年齢:41歳
病名:乳がん
症状:
田澤先生、
先日は、質問にご回答いただき、本当にありがとうございました。
とてもわかりやすく参考になりました。
その後、MRI、 CTの検査を行い、しこりの大きさが少し大きいことが判明し、ステージ2となってしまいました。
リンパへの転移も CTの画像を見ると怪しいとのことです。
しこりも大きかったため(2、7センチ)当初温存の方向だったのですが、全摘も勧められました。
温存ですと、取りきれたかどうかわからないので、病理の結果を1ヶ月待ってから再手術になるかもしれない、との事でした。
教えていただきたいのですが、
術前や術中に、取れる範囲などが判明はしないのでしょうか?
全摘温存の件とは外れますが、ki67の値なども、術前にはわからないものなのでしょうか?
1ヶ月待ち、2度手術になるのが不安です。
田澤先生でしたら、全摘か温存、どう診断されますか?
二度手術を行うことが不安です。
でも温存への思いも捨てきれません。
先生でしたらどちらを推奨いたしますか?
よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「術前や術中に、取れる範囲などが判明はしないのでしょうか?」
→不可能なのです。
術前:何故なら、画像診断はあくまでも「肉眼」であり病理診断は「顕微鏡レベル」なのです。(肉眼で見えないものが顕微鏡で見えるのは想像できますね?)
術中:迅速診断そのものは不正確だし、(そもそも)全周は不可能なのです。
「ki67の値なども、術前にはわからないものなのでしょうか?」
→術前の針生検で数値を出すこともできるし(実際に出している施設もありますが…)、手術標本で病変全体で出すべき値なのです。
「田澤先生でしたら、全摘か温存、どう診断されますか?」
「先生でしたらどちらを推奨いたしますか?」
→それは実際にMRIを見ない限り判断しようがありません。