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リンパ転移の今後の治療について

[管理番号:7330]
性別:女性
年齢:61歳
病名:左乳がん「硬性型」
症状:

いつもサイトで勉強させて頂いております。

素人にも出来るだけ理解しやすいようにご配慮をして頂き本当に感謝しております。

〈経緯〉

毎年定期健診でマンモ、エコーの両方を受けており、一部石灰化等がありましたが特に問題なしとのことでした。

昨年12月の検診で怪しいしこりがあるとのことで細胞診(局所麻酔のタイプで3本採取)をしたところ左側の乳がんとの診断。

位置は左下外側で約5mm前後の初期の段階とのことでした。

年末に近かったこともあり、年明けにがん専門の病院にてMRIの検査結果、左上部にも石灰化がみえ怪しいのと、リンパも少し腫れているのが1個見つかり、いずれも針生検したのですがグレーとの診断。

はじめは温存と思っておりましたが、離れた場所に2個目が見つかったので無理をして温存で変形するよりも全摘のお話があったので覚悟を決めました。

〈手術内容〉

*3月初旬に全摘(乳頭乳輪温存全乳房切除)+センチネル生検+TE挿入

乳頭は術中診断で直下断端が陰性の場合は残す

リンパは怪しいので本来はセンチネルの対象ではないと言われたのですが、一縷の望みをかけてお願いし転移1個の場合は廓清省略を同意。

やはり術中診断にてマクロ転移1個あり(廓清省略)
転移リンパの周囲6個切除。

TEは複数のリンパ転移がない場合は入れてほしいと希望したので現在入っています。

理由としては乳頭、皮膚を残すことが出来たので再建のために良い状態にしておきたかったことです。

もちろん治療が最優先ですので、形成で相談の上最悪TEを抜くのはそれほど大変ではないとのことだったのでお願いしました。

〈病理結果〉

昨日病理結果がでました。

*ルミナールタイプ
術前ではKi67値が中間、術後に数値をだすとの事だったのですが
昨日は出てなかったの急ぎ再オーダーしますとのことで不明。

*リンパ転移1/6あり

*浸潤径 下部は10×8mm 上部は非浸潤がん

*脈管侵襲 なし

*グレード 術前1⇒術後3

〈質問〉

①サブタイプはKi67値以外でも分類出来るのですか?

②主治医からはリンパ転移⇒抗がん剤を速やかに行いたいとの申し出。

ルミナールAの場合ケモの効果が期待できないのでは?との質問には
再発をしたときにやっておけば、という後悔がなければいいのですがとのことでした。
こちらの質問コーナーでよく見るやり取りですね。

質問は10日後に追加でKi67の数値が出るのですが、もし数値が40%以上の高値が出た場合オンコタイプ検査の一か月後の結果待ちは無駄でしょうか?(既に昨日オンコは申込み済み)

③先生のコラムの中でオンコの再発率グラフはリンパ転移陰性は10年もありましたが、転移1~3個は5年のものしかデータはないのですか?

④私のリンパ転移は上部ではなく下部の腫瘍からだろうと言われました。
ただ、センチネルなのかははっきりしないとの事。

センチネルは一番最初の関所と勉強していたので、何度か主治医に質問したのですが理解できませんでした。
(センチネルにうまく流れず飛び越えることもある?というような内容)
本当にそのようなことがあるのでしょうか?だったらそれがセンチネルなのでは?と疑問があります。

⑤腫瘍径も小さかったのにリンパ転移にとてもショックを受けています。
本当小さいうちに発見できて良かったと喜んでいましたが結果ステージⅡA、残念です。

オンコは現状では一番信頼が出来る再発率データでしょうか?
リンパ転移のあるなしで、再発率が大分変わる印象ですが具体的な数値を教えて頂けますか?

⑥オンコの結果でケモの上乗せの数値はどの位だったらやるのか、迷ってます。
本人次第とは分かっているのですが、もし田澤先生からアドバイスを頂けるのなら何%くらいの上乗せになりますか?

⑦現在の病院ではルミナールでもAC+パクリタキセル又はドセタキセルで半年の治療になるようです。

田澤先生はTCの場合が多いようですが、私の状態ではACでしっかり治療した方が良いのでしょうか?期間も半年は長いなと。

コラムも拝見したのですが、AC=きつい、より効果がありしっかり治療ということですか?
もし、私もTCで大丈夫なら3か月位の期間になりますか?

⑧オンコの結果待ちを含めると、術後3か月ほど経過してしまいケモを始めるのが遅くなりはしないかと心配になります。

結果待ちの間、先にホルモン療法は?と伺ったのですがケモをやる場合
ホルモンを一時中止にした場合の効果がはっきりしないので焦らずにオンコの結果を待ちましょう、との事でした。

全身治療をはじめるのに何か月位猶予がありますか?

以上、沢山の質問で申し訳ございません。

お忙しい中大変恐縮ですが何卒よろしくお願い申し上げます。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「①サブタイプはKi67値以外でも分類出来るのですか?」
→正確に言うと…

 本来のintrinsic subtypeはマイクロアレイを用いた研究室レベルの分類なので(Ki67を含めた免疫染色による分類は)疑似分類とも言えます。『今週のコラム 98回目 ♯このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです。』をご参照のこと。
 但し、Ki67が無ければ「疑似分類とさえ、言えない」レベルとなります。

「②主治医からはリンパ転移⇒抗がん剤を速やかに行いたいとの申し出。」
→?
 「リンパ節転移」と「抗がん剤が効くのか?」は全く無関係

「もし数値が40%以上の高値が出た場合オンコタイプ検査の一か月後の結果待ちは無駄でしょうか?」
→それはありません。

 つい先日もKi67=50%近くの方がRS低値でした。(完全にパラレルではないのです)

「③先生のコラムの中でオンコの再発率グラフはリンパ転移陰性は10年もありましたが、転移1~3個は5年のものしかデータはないのですか?
→OncotypeDXの結果は最近(ここ1年位?)リニューアルされ、「リンパ節転移無」も「1~3個」も「9年無再発生存」のデータとなっています。

「ただ、センチネルなのかははっきりしないとの事」
→?
 結局1/6となっているから、(常識的に考えて)センチネルリンパ節だっとということでは?

「オンコは現状では一番信頼が出来る再発率データでしょうか?」
→その通り。

「リンパ転移のあるなしで、再発率が大分変わる印象ですが具体的な数値を教えて頂けますか?」
→ステージが上がるのだから、それ(再発率が上がる)は当然(そうでなかったら、ステージの意味がどこにある?)

 具体的な数値は「オンコタイプの結果」に記載ありますよ。
 ご安心を。

「⑥オンコの結果でケモの上乗せの数値はどの位だったらやるのか」「もし田澤先生からアドバイスを頂けるのなら何%くらいの上乗せになりますか?」
→5%以上が目安の一つでしょう。

「田澤先生はTCの場合が多いようですが、私の状態ではACでしっかり治療した方が良いのでしょうか?」
→TCですね。

「コラムも拝見したのですが、AC=きつい、より効果がありしっかり治療ということですか?」
→完全な誤り。(「AC(単独)だから」ではなく、「AC+Taxaneという併用だから」より安心という意味です)
 冷静に以下をご覧ください。

 TC>AC 『今週のコラム 168回目 乳癌診療の基本 7 taxane単独regimenであるTCは、anthracyclene単独regimenであるAC/ECよりも効果が高いことが示されている。(SABCS 2007)』をご参照のこと

 (質問者が提案されているのは)「アンスラサイクリン+タキサン」です。
 (タキサン単独レジメンである)「TC]と(アンスラサイクリン+タキサンの併用レジメンである「AC+Taxane(wPTX/DTX)]との直接比較はありません。
 
  ★ただ、(もともとスタンダードレジメンである)「アンスラサイクリン+タキサン」が(タキサン単独よりも)「アンスラサイクリンを加えている分より効果を期待できそう」という考え方は当然、あります。
   それで、TNもしくはhigh riskでは「アンスラサイクリン+タキサン」がchoiceされるのです。

「私もTCで大丈夫なら3か月位の期間になりますか?」
→その通りです。

「⑧オンコの結果待ちを含めると、術後3か月ほど経過してしまいケモを始めるのが遅くなりはしないかと心配」
→全く問題ありません。

「全身治療をはじめるのに何か月位猶予がありますか?」
→特に決まった目安などありません。

 3,4か月は問題ありません。

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

リンパ転移の今後の治療について
性別:女性
年齢:61歳
病名:
症状:

田澤先生、先日はご回答を頂きまして有難う御座いました。

追加のKi67が出まして、31.9%でした。

主治医からは「やはり高値ですね」と言われ、へこみましたが田澤先生の101回目のコラムのデータで少し勇気を頂きました。
今週のコラム 101回目 (Ki67が20代はluminal Aの可能性が圧倒的に高く)本当に「Aなのか、Bなのか迷うのは30代以降」と言えるのです。

あとはオンコの結果を待つしかないですね。

前回の質問で、私の場合でもTCで大丈夫とのご回答を頂きました。

TNまたはルミナールでもハイリスクの場合=AC+パクリタキセル又はドセタキセル
ルミナールB=TC

ルミナールのハイリスクというのは、どの程度のことでしょうか。

私はステージⅡA(リンパ転移1/6、グレード3)ですが、リンパ転移自体がハイリスクと思っているのですが(予後因子でもあるので)

どうせをケモをやるのなら最初からAC+パクリタキセル又はドセタキセルでしっかりと叩いた方が良いのか、体への負担のリスクを考えたりと不安になってしまいます。

TCとの直接比較はないとの事ですが、それでも田澤先生がTCを選択されることについてのお考えをお聞きかせ頂けますか。

もう一つは143回コラムについてです。

「リンパ転移無」において51歳以上ではRS26から化学療法による
benefitがあるということですがリンパ転移がある場合には全く参考にはならないのですか?
オンコでも中間値が出た場合にはまた迷ってしまうのかと不安です。

今回の手術でマクロ転移が1/6個あったのですが廓清省略です。

事前の説明ではマクロ転移でも1個までなら予後に影響がないのではないかとの最近の研究があるとの事で承諾しました(本でもそのことは読んでいたので)
でも田澤先生は廓清をすると知りこの判断で良かったのかと不安です。

全摘⇒TE挿入で放射線治療の予定はありません。

リンパ再発が心配ですが今後の検査等で気を付けることは3ヶ月毎のエコーですか?
その場合何年にも渡って必要な観察になるのでしょうか。

以上、ご教授くださいますよう宜しくお願い申し上げます。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「ルミナールのハイリスクというのは、どの程度のことでしょうか。」
⇒まさに『今週のコラム 182回目 乳癌診療の基本Ⅱ vol.6 長いことanthracyclineの時代が続いたので「本当にアンスラサイクリン抜きでいいの?」抵抗がある医師も多いのです』に記載した通りです。

「TCとの直接比較はないとの事ですが、それでも田澤先生がTCを選択されることについてのお考えをお聞きかせ頂けますか。」
⇒ものごとは「やりすぎればいい」ものではなく(有害事象や副作用もあるので)、
バランスがあるのです。

 上記『今週のコラム 182回目 乳癌診療の基本Ⅱ vol.6 長いことanthracyclineの時代が続いたので「本当にアンスラサイクリン抜きでいいの?」抵抗がある医師も多いのです』の特に「「過剰の時代から有害事象を考慮した省略の時代へ」を熟読お願いします。

「オンコでも中間値が出た場合にはまた迷ってしまうのかと不安」
⇒それは実際に「中間値」が出てから考えるべきことです。

 「もしも、こうなったら」という「仮定」に対して不安になることは止めましょう。

「今回の手術でマクロ転移が1/6個あったのですが廓清省略」
「田澤先生は廓清をすると知りこの判断で良かったのかと不安」

⇒前回、回答したように…

 (前回のコピペ)「結局1/6となっているから、(常識的に考えて)センチネルリンパ節だっとということでは?」

  常識的に考えれば、「センチネルリンパ節に転移あり」⇒「追加で5個郭清した」と同等の状態にある(つまり「追加郭清して(追加分には)転移無」)と考えてもいいでしょう。

「リンパ再発が心配ですが今後の検査等で気を付けることは3ヶ月毎のエコーですか?」
⇒その通り。

「その場合何年にも渡って必要な観察になるのでしょうか。」
⇒ホルモン療法をするわけだから(3か月処方なので)「5年間は3か月に1回」行えば十分です。

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

リンパ転移の今後の治療について
性別:女性
年齢:61歳
病名:左乳がん
症状:

田澤先生いつもご丁寧な回答を頂き誠に有難う御座います。

Ki67=31.9%でしたのでオンコタイプDX検査を依頼、良くてRS値は中間かなと思っていたのですがまさかのRS=17。

低スコアぎりぎりでしたが、ケモの「上乗せ効果なし」とのことでしたのでホルモン治療のみの選択をしました。

上乗せ%で数値が出ると思っていたのですが表記の仕方が変わったのですね。

まさに田澤先生がコラム等で書いて下さったようにKI67が30%台でも無用なケモを回避できました。

主治医にケモを勧められ悩んでいる方は多いと思います。

検査費用が高額ではありますが私は自身が納得し次の治療に臨みたかったのでオンコを受けて良かったと思いました。

ただ主治医はこの結果を見ても懐疑的だったのが残念です。

田澤先生のような方がもっともっと増えて下さったら、私たち患者は本当に救われるのにと思います。

オンコの報告書について質問がありますのでよろしくお願い致します。

RS値が低スコアでしたが9年遠隔再発率が15%で意外に高かったので動揺しました。

リンパ転移と遠隔転移は関係がないとの事ですがやはりリンパ転移1個あるためなのでしょうか?

5年再発率はどの程度になるのでしょうか?

RS値が高くてもケモの上乗せで再発率が一桁になる例がありますがその違いはどこにあるのでしょうか?
低スコアを祈ってましたが高スコアの方がケモ治療で結果的に再発率が低くなる場合があるということですか?

SEERレジストリの9年BCSS(乳がん特異生存率)はRS16-20は96.7%となっています。

上記の再発率と随分乖離があるなと単純に思ったのですがきっと
このエビデンスでの再発率が3.3%という意味ではないのですよね?

特異生存率とはどのような意味なのでしょうか?

報告書の冊子も読んだのですが今一つ理解が出来ず、ご教示頂ければと存じます。

お忙しい中大変恐縮ですがどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

「ただ主治医はこの結果を見ても懐疑的だったのが残念」
→?
 事実は事実です。
 新しいエビデンスを(情報としてサラッと「知っている」ではなく、「体に染み込ませる」必要がありますね)

「リンパ転移と遠隔転移は関係がないとの事ですがやはりリンパ転移1個あるためなのでしょうか?」
→常識的に考えましょう。
 もしもイコールならば、(わざわざ)ステージをつける意味がどこにありますか??(予後を占うためにこそ、ステージはあるのです。「治療のため」ではありません)

「5年再発率はどの程度になるのでしょうか?」
→5年以降10年までの再発率は極端に減りますので、たいして変わらないでしょう。
(10年以降15年までは更に減っていきます)

「RS値が高くてもケモの上乗せで再発率が一桁になる例がありますがその違いはどこにあるのでしょうか?」
→どの辺の値のことを言っているのか不明なのでピンポイントには回答できませんが…

 あくまでも「実際の統計結果」からのデータなので、そういうこともあり得ません。

「このエビデンスでの再発率が3.3%という意味ではないのですよね?」
「特異生存率とはどのような意味なのでしょうか?」

→「生存率」+「乳癌以外での死亡率」となります。

 言い換えれば…
 100-「純粋に乳癌の再発で亡くなった人数」となります。
 ★再発率の場合にはA「乳癌の再発で亡くなった」+B「再発しているが生存している」となるので、生存率は(無再発生存より)Bの分だけ高くなるのです。

 
 

 

質問者様から 【質問4 】

リンパ転移の今後の治療について
性別:女性
年齢:61歳
病名:左乳がん/硬性型
症状:なし

田澤先生こんばんは。

いつも本当に有難うございます。

3月の手術から先日やっと術後6か月検診でエコーと骨密度の検査がありました。

今後の検診は半年後に健側のマンモと一年後にエコーと血液検査の予定です。

私はリンパに1個転移がありましたが廓清をしていないので今後の局所再発が心配です。

そのために是非エコー検査を田澤先生にお願いをしたく12月に市川の予約を取らせて頂きました。

これから田澤先生に診て頂けると思うと、とても心強く安心です。

田澤先生どうぞ宜しくお願い申し上げます。

Q&Aで定期的に腫瘍マーカーで数値の推移を診ている方もいらっしゃるようですが私は1年毎の血液検査で大丈夫なのでしょうか?

主治医からはマーカーは余りあてにならないので大丈夫と言われました。

ホルモン治療ですので3ヶ月毎に通院ですがお薬の処方だけなので主治医の診察はなく代診?になるようです。

市川では血液検査はやられているのでしょうか?

 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。

「市川では血液検査はやられているのでしょうか?」
⇒勿論、行っています。

 腋窩を含めたエコーに受診するのだから、同時にしたらいいでしょう。

 例) 3か月に1回のエコーなら 2回に1回の採血腫瘍マーカー
    6か月に1回のエコーなら、毎回、採血腫瘍マーカー