[管理番号:434]
性別:女性
年齢:44歳
はじめまして。宜しくお願いします。
昨年トリプルネガティブのステージ2aの診断を受けて
術前抗がん剤 FECとアブラキサンを終え、鏡視下温存術+センチネルリンパ生検をされました。
現在は放射線治療中です。
FEC4クールを終えた時に、中間判定のMRでしこりが全く写らなかったので
完全奏効すると思っていたら
術後の病理結果で唖然としました。
腫瘍の大きさ 浸潤部=10×4×12㎜ in situを含む全体=20×4×35㎜
浸潤の範囲 g,f
脈管 ly1,v0
センチネルリンパ節に転移無し
核グレード 2
治療効果判定 2a
以上の結果でした。
不安です。
完全奏効するとばかり思っていたので、とてもショックでした。
無治療になるのが不安で、毎日泣いています。
リンパ節に転移が無いというのは、予後にかなり影響があるものなのでしょうか?
術後 主治医に第一声『リンパ節に転移無かったですよ!』と言われた位
重要な事なのでしょうか。
恐れ入りますが、教えてください。
宜しくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「術前化学療法の評価」については注意が必要です。
状況の確認
センチネルリンパ節生検を行っている事より(化学療法前の)画像診断ではcT2, cN0, cStageⅡAの筈です。
これが化学療法後には、ypT1c, ypN0, ypStageⅠにダウンステージしています。
回答
「リンパ節に転移が無いというのは、予後にかなり影響があるものなのでしょうか?」
⇒「かなり」とは言えないかもしれませんが以下にデータ(1990年台のものなので、現在はもっと改善している印象ですが)を示します。
5年生存率 | 10年生存率 | |
リンパ節転移0個 | 96% | 92% |
リンパ節転移1個 | 94% | 86% |
リンパ節転移4個 | 89% | 84% |
「第一声『リンパ節に転移無かったですよ!』と言われた位重要な事なのでしょうか。」
⇒術前診断がcN0と診断された上の手術なので、『センチネルリンパ節転移陰性は当然と言えば当然』なのですが、「患者さんを安心させる情報」は早い方がいいのです。
質問者様から 【質問2 トリプルネガティブ】
田澤先生の皆さんの質問の回答を見させていただき、こんなに心がある先生っているんだと
感動しています。
くだらない内容だと思うのですが、又質問させてください。
トリプルネガティブは、健側の胸にもガンが出来やすいとネットで見ました。
あと、3年は再発転移する確率が高いのですか?
先生のご回答から、ステージ1と2は早期に入るとのことで
私も早期なのかもしれないと思い、すごく気持ちが前向きになれたのですが
不安材料があまりにも多くて、事実がわからなくなりました。
主治医は、術後の病理で再発は10%、これをどうとらえるかと仰いましたが
本当に?心配かけないように言ってるだけなんじゃないかなと
思ってしまいます。
先生は、私の病理だったら、患者にどうお話しますか?
お忙しいところすみませんが、お時間があるときにご回答頂けたら嬉しいです。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
化学療法前の「腫瘍径が不明 2~5cmの筈」ですが、再発率は15%程度だと思います。
回答
「トリプルネガティブは、健側の胸にもガンが出来やすいとネットで見ました」
⇒これは「遺伝性乳癌にはトリプルネガティブが多い」
「遺伝性乳癌では両側乳癌の頻度が高い」という事が根拠だと思います。
実際に「サブタイプ」別に「両側乳癌」比率の「質の高いデータ」は無い筈です。
「3年は再発転移する確率が高いのですか?
⇒(ルミナールタイプなどの大人しいタイプとは異なり)再発するとすれば、3年以内が多くなります。
逆にいうと、10年以上経ってから(晩期再発)の頻度は低くなります。
「先生は、私の病理だったら、患者にどうお話しますか?」
⇒化学療法前はcT2, cN0, cStageⅡA⇒化学療法後 ypT1c, ypN0, ypStageⅠ
トリプルネガティブといっても、「化学療法も奏功」しているし、十分早期なので心配ありません。
「やるべき事もやっているので」あとは定期フォローをしましょう。
質問者様から 【質問3 リンパ節が腫れていたが陰性。
】
田澤先生こんにちは。
先生のこの『Q & A』は心の支えになっていて、拝見することが毎日の日課になっています。
先生のお陰で、乳ガンについて知識がつきました。
お忙しくされているなかで丁寧に解答されていらっしゃる事に
敬意を表します。
『マスコミ等』で取り上げられたりしている『著名な病院や医師』が
ここまで、されているでしょうか。
横槍は気にせず、私達乳ガン患者のために是非このまま続けてくださることを
切に願います。
お身体だけは気を付けて下さい。田澤先生の事を応援しています。
さて、すみませんが質問させて下さい。
術前抗がん剤の前に、リンパ節の腫れがあり、私自身も脇に何か挟まっているような感覚がありました。
エコーで診ながら針の様なものを刺して擦って組織検査をして陰性で
一応はリンパ節に転移無しだが、手術しないと何とも言えない、あくまでも『グレー』とのことでした。
因みにpetでも確認されませんでした。
そして、手術を迎えセンチネル生検で陰性でした。
温存なので、放射線をあてましたが、脇の下にはあてるのでしょうか。
何となく、脇の下の変色が無かったので不安に思っています。
もしかしたら、リンパ節転移していたのが、術前抗がん剤で消えて陰性判断とされたんではないかと、不安に思っています。
リンパ節に再発するかもしれないと。
書き忘れていましたが、抗がん剤前のしこりは2.5センチ、グレードは3でした。
分かりにくい文章ですが、もしお時間頂けたら嬉しいです。
(後回しで結構です。)
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「術化学療法前リンパ節細胞診」(陰性)⇒「術前抗がん剤治療」⇒「センチネルリンパ節生検」陰性ですね。
このポイントは「術前抗がん剤」をしてしまうと、その後に「センチネルリンパ節転移陰性」であっても『最初から転移が無かったのか、抗がん剤が効いて消失したのか不明である』という点です。
まさに、ここに「質問者が不安」になっているのです。
私がこのメールを見ての「最大の問題点」は
「化学療法前リンパ節細胞診の精度」です。
『一応はリンパ節に転移無しだが、手術しないと何とも言えない、あくまでも「グレー」』という担当医のコメントです。
まるで、「細胞診で陰性だけど、(細胞診検査で失敗しただけで)実は転移があるかもしれない」と担当医自身が感じているかのようなコメントです。
おそらく、そこに質問者は不安に思っているのではないでしょうか?
本来、「細胞診で陰性だったから、転移はありません。安心して抗がん剤治療を受けましょう。」でなくてはいけないと思います。
「術前抗がん剤」をするからには、抗がん剤前の時点で『リンパ節転移陽性か陰性かを明確にする』必要があるのです。
それは何故かというと
「術前化学療法前にN0(リンパ節転移無)である症例に対してはセンチネルリンパ節生検による郭清省略を行うことを考慮してもよい」:推奨グレードC1
に対し、
「術前化学療法前にN1(リンパ節転移有)である症例においては、センチネルリンパ節生検による郭清省略は基本的に勧められない」:推奨グレードC2
となっているのです。
○つまり、「術前抗がん剤前に転移無しと判断」すれば、「センチネルリンパ節生検」は(熟練した術者であれば)信頼できるが、
「術前抗がん剤前に転移有と判断」される症例での「センチネルリンパ節生検」は信頼できない(と、日本乳癌学会ガイドラインでも明確に示されています)
質問者は「術前抗がん剤前がN0だったのかN1だったのか?」
その鍵は担当医の「腋窩リンパ節細胞診の精度」を信用できるのか?です。(その点は私には判断困難なところです。 ただ本人自信の「自信無い様なコメント」は如何なものでしょうか?)
回答
「温存なので、放射線をあてましたが、脇の下にはあてるのでしょうか」
⇒あてません。
「センチネルリンパ節生検で転移無と出た以上」通常は「腋窩照射」はしません。
「もしかしたら、リンパ節転移していたのが、術前抗がん剤で消えて陰性判断とされたんではないかと、不安に思っています」
⇒今となっては「担当医の腋窩リンパ節細胞診の精度」を信じるしかありません。
また、「病理医のコメント」はないのでしょうか?
その「摘出した」センチネルリンパ節を、病理医が詳細に見れば「転移巣が抗がん剤で消失した痕跡があるかどうか検討がつきます」
「リンパ節に再発するかもしれない」
⇒確率は低いです。
通常は心配ありません。
(リンパ節細胞診の精度は別にしても)「センチネルリンパ節生検で陰性」であった事実からは、(万が一、もともと転移があったと仮定しても)「最低限、そのリンパ節は摘出している」し、
それより先のリンパ節については、「術前の画像診断で所見が無かった筈」なので(もしも微小転移が存在していたとしても)術前抗がん剤により「消失してしまっている」可能性が高いです。