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術前抗がん剤治療と手術について

[管理番号:4809]
性別:女性
年齢:43歳
初めまして。
いつも、こちらのコーナーで勉強させて頂いています。
よろしくお願い致します。
今年の3月に、浸潤性乳管がんと診断されました。
ステージ1、
ホルモン感受性-、ハーツー2+、fish法でも2+増幅あり、Ki67-80%、グレード3との事でした。
術前術後いずれにしても、
抗がん剤は必要との事で、だいぶ悩んだのですが、腫瘍が1センチ弱から2ヶ月程で1.5センチと言われ、Ki67も高い事から、
手術の順番も混んでいて、はっきり予定が立たなかった為、術前科学療法を受けました。
予想外に副作用が強く、2回目を受けるのが正直怖いです。
症状としては、全身の痒みに悪心、下痢便秘、微熱が続き全身倦怠感があり、治療後10日程たってから立ちくらみもするようになりました。
現在二週間経過したのですが、白血球が2000、好中球が20%、単球が32%でした。
病院では、感染症に注意するようにいわれましたが、数値的に悪い状態ですか?次回まで、
約一週間ありますが、(治療による副作用も怖いのですが、何より順調に予定通りにできるのかも心配でいます)個人差も大きいでしょうが、自然に数値は回復するものでしょうか?白血球を増やす為の注射をしなければならない目安を教えて下さい。
また、術前に抗がん剤で治療をして、運良く腫瘍が消えた場合でも、手術は必用なのでしょうか?
腫瘍が消えた場合、どのように手術するのでしょうか?
疑問だらけで、前向きになれず、一人取り残されている感じです。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「数値的に悪い状態ですか?」
⇒全く問題ありません。
「次回まで、約一週間ありますが、自然に数値は回復するものでしょうか?」
⇒2週間目でその数値なら(2週間目で底を打ちます)全く問題ありません。
「白血球を増やす為の注射をしなければならない目安を教えて下さい。」
⇒これは基準があります。
「好中球数<1000で発熱」もしくは「好中球数<500」です。
♯好中球数は「白血球数x好中球の割合」
 質問者の場合には2000x0.2=400だから(白血球を上げる注射の)適応になるのですが、単球に注目してください。
 単球はこれから、分化して好中球となるので、実質2000x(0.2+0.32)=1040となるのです。
「また、術前に抗がん剤で治療をして、運良く腫瘍が消えた場合でも、手術は必用なのでしょうか?」
⇒勿論です。
 「画像上消失」しても、「顕微鏡的に」生き残っていることは良くあることです。
 画像上の完全寛解(cCR:clinical complete response)と病理学的完全寛解(pCR:pathological complete response)は全く違います。
「腫瘍が消えた場合、どのように手術するのでしょうか?」
⇒画像上消失する前に、乳頭からの距離などで「座標を記録」しておいたり、(実際に)マジックでマーキングしておく(消える前に、患者さんになぞってもらう)などを行います。
「疑問だらけで、前向きになれず」
⇒術前化学療法には注意が必要です。(効果が有る可能性が高いとはいえ、もしも効果が無い時に緊急事態となるのです)
 きちんとした「担当医の評価(3週間に1回の超音波)」や「(抗癌剤が効かないと判断したら、速やかに手術へ移行できるように手術日程を仮押さえしながら抗癌剤を行うなどの)緊急時の対応」が必須です。
 『今週のコラム 81回目 肺転移が出現した。もう手術はできない。』をご参照ください。