[管理番号:5515]
性別:女性
年齢:50歳
田澤先生、はじめまして。
今後の治療についてどうかアドバイスいただけないでしょうか。
海外在住で、先週、右胸温存手術を受けました。
術後の病理結果は以下の通りでした。
Tumour type: Mixed invasive carcinoma (60%) and micropapillary carcinoma
(40%)
Size: 22mm
BRE grade: 3 (tubules 3, nuclei 3, mitoses 3)
ER: 90% ++to +++
PR: 70% +++
HER2: Negative (1+)
KI67: 22%
pT2N0(sn)
Margins: Clear
手術前には放射線とホルモン治療になる可能性が高いと言われていたのですが、執刀したドクターからは、グレード3なので放射線の前に抗がん剤治療4クールを勧められています。
来週、執刀医とは別のオンコロジー担当のドクターと会うことになっています。
大きな交通事故に遭って治療中のため、できるだけこれ以上体に負担はかけたくありません。
先生でしたら、どのような治療を勧めますか?
また、抗がん剤治療の有無で、再発率はどのくらい変わりますでしょうか?
乳がんと診断されて約2週間後には手術、手術も1泊2日、病理結果も2日後には出て、とにかく全てのペースが速く混乱しています。
どうかアドバイスいただけますよう、よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「グレード3なので放射線の前に抗がん剤治療4クールを勧められています。」
⇒これが誤りなのは『今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?』をご一読していただければ解ります。
「先生でしたら、どのような治療を勧めますか?」
⇒グレーゾーンだからOncotypeDXを勧めます。
ただし、(それを)行わない場合には「ルミナールAである確率が高い」のでホルモン療法単独(抗癌剤は勧めません)とします。
「また、抗がん剤治療の有無で、再発率はどのくらい変わりますでしょうか?」
⇒ルミナールAかBかで全く異なります。
もしもAならば3%以下となります。
「乳がんと診断されて約2週間後には手術、手術も1泊2日、病理結果も2日後には出て」
⇒迅速でいいですね。
日本も見習ってもらいたいものです。
質問者様から 【質問2】
抗がん剤治療の必要性
性別:女性
年齢:50歳
田澤先生、先日はご回答いただきありがとうございました。
回答をいただいたあとオンコタイプを受けたところ、RS29 と結果が出ました。
Ki67の数値が22%だったので、低リスクとなることを願っていたのですが、中間リスクの上限に近い結果となり、かなり動揺しました。
オンコタイプの結果の見方について、お伺いしたいことがあります。
コラム99回にある結果のサンプルで、「1.リンパ節転移陰性」のRS10の場合の1つめのグラフの左にTam Aloneで再発率7%と明記されていますが、2つ目の方のTam Aloneと
Tam+Chemoの比較グラフでは数値が明確には表記されておりません。
でも、2つ目の比較グラフの中でもTam Aloneの数値は7%くらいに見えます。
・『今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?』
私のRS29の結果では、1つめのグラフでTam Alone 19%と明記されていますが、2つ目の
グラフでは、数値の明記はありませんが、グラフを見る限りTam Aloneが14%、
Tam+Chemoが8%くらいかと思います。
医師には、(1つめのグラフで)Tam Aloneが19%で、(2つ目のグラフで)
Tam+Chemoが8%のようなので、Chemoのメリットは11%と説明を受けました。
私は2つめのグラフを見て、上乗せは6%程度(Tam Alone 14%、Tam+Chemo 8%の差)では?と思ったのですが、1つめのグラフと2つめのグラフのTam Aloneの数値の違いはどう読めばいいのでしょうか?
RS29とは言えあくまでも中間リスクであること、そして交通事故のケガの治療で今後も
心身ともにまだまだストレスが続くため、抗がん剤治療は受けないつもりでいます。
上乗せが6%なのか11%なのかによって、抗がん剤治療を受けないことへの不安も違ってきますが、Tam Alone 19%=抗がん剤を受けなくても81%は再発しない可能性、と考えると決して怯える数値ではない気もします。
もちろん、個人の感覚でだいぶ違うかとは思いますが。
抗がん剤を受けない場合、来週にも放射線治療が始まりますが、日本では25~30回が一般的なようですが、15回+癌があった部分のみ4回の計20回と言われています。
回数が少なくても大丈夫なんでしょうか?
どうぞよろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
私が実際に自分の患者さんに(その方の)OncotypeDXの結果についてお話しする際に、「同様の疑問」がでるので予め話している内容として
最初のグラフ(Tam Aloneのみのもの)はNSABP B-14の臨床試験(Tam vs Placebo)でのデータを基にしたものであり、2つ目のグラフはNSABP B-20(Tam Alone vs Tam +Chemo)の臨床試験でのデータを基にしているのです。
B-14試験でのTamの人達とB-20でTam Aloneの人達は同じ治療をしているのですが、(理論的には)同じ様な対象者が同じ治療をすれば、同じ結果になってもらいたいのですが、実際には「同じ様な対象者と言っても、全く同一ではない」ので乖離がでるのです。
「私は2つめのグラフを見て、上乗せは6%程度(Tam Alone 14%、Tam+Chemo 8%の差)
では?と思ったのですが、1つめのグラフと2つめのグラフのTam Aloneの数値の違いはどう読めばいいのでしょうか?」
⇒お解りでしょうか?
RS=29と出た人はB-14試験の対象者では再発率が19%だったが、B-20試験の対象者では(実際に)14%だったのです。
この数値が同一であれば解り易くていいのですが、これは「机上の空論」ではなく、「実際の患者さん達の再発率」なので「確臨床試験の対象者が全く同一ではない」ので生じたことなのです。
♯ここに推論を加えれば、後者の方が新しい臨床試験なのでその分(医学の進歩等により)予後が改善(底上げ)されているのかもしれません。
「上乗せが6%なのか11%なのかによって、抗がん剤治療を受けないことへの不安も違ってきます」
⇒これは(当然)6%が正解です。
「上乗せ」は同じ対象者で比べるものであり、B-14でTam Aloneの人達と、(対照群が異なる)B-20でのTam + Chemoを比較するのは誤りです。
♯前者は対象患者が(1982-1988)に対し、後者は(1988-1993)と異なっています。
「放射線治療が始まりますが、日本では25~30回が一般的なようですが、15回+癌があった部分のみ4回の計20回と言われています。回数が少なくても大丈夫なんでしょうか?」
⇒これは寡分割照射です。
(日本では)臨床試験中と言えますが、欧米では有効性が確認されているのです。
問題ありません。