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抗がん剤について

[管理番号:863]
性別:女性
年齢:46歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:902「HER2陽性乳癌の術後治療 非アンスラサイクリン系」

 
 
初めまして。
現在、抗がん剤をするか悩んでいます。
7月中旬に全摘手術をしました。
先日、検査結果が出て主治医からは
標準治療では抗がん剤を進めますと言われました。
リンパ 1/4 0.7㎜
腫瘍最大9㎝ 多発浸潤8個 最大5㎜
ER0% PGR0% HER2(3+)
Ki67 10~20%
グレード2
ステージ2a
再発率20% 抗がん剤により10%減少
ドセタキセル+カルボプラチン+ハーセプチン 5ヶ月
その後、ハーセプチン7ヶ月
と言われています。
先生のご判断も変わりはないでしょうか?
どうか、ご意見をお聞かせ下さい。
また、抗がん剤の副作用についても
詳しく教えて頂けると幸いです。
宜しくお願いします。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 pT1a(5mm), pN1mi(0.7mm), HER2 type
 最大浸潤径が5mmと小さく、リンパ節も微小転移(0.7mm)であるので化学療法の適応があるか難しい所です。
 アメリカのNCCNガイドラインでは、質問者のケースでは(化学療法+ハーセプチンを)『考慮する』という表現に留まっています。
 つまり『行うべき』という表現ではなく、必須とはされていません。
♯これが「最大浸潤径が1cm以上、もしくはリンパ節転移が2mm以上」だと『必須』とされています。

回答

「先生のご判断も変わりはないでしょうか?どうか、ご意見をお聞かせ下さい」
⇒非常に迷うところです。
 上記のようにNCCNガイドラインでは『考慮すべき』という表現にとどまるものであり、本来不要である可能性があります。
 担当医のいう「再発率20%」とは「微小転移を通常のリンパ節転移1個と置き換えての話」だと思います。
 おそらく、非常に「低リスク」であり、故にNCCNでは「必須としていない」のです。
 私であれば「非常に低リスク」であることをお話し、その上で「抗HER2療法はターゲット療法であり、非常にいい治療」なので、「頑張る気持があれば、行いましょう」とします。
 
「ドセタキセル+カルボプラチン+ハーセプチンを5ヶ月その後、ハーセプチン7ヶ月」「抗がん剤の副作用についても詳しく教えて頂けると幸いです」
⇒TCH療法と言われます。
 抗HER2療法の中では「非アンスラサイクリン レジメン」であり「低リスク群」に用いられます。
 副作用については「BCIRG 006試験(AC-T vs. AC-T+HER vs. TCH)」という有名な試験があるので、そこからのデータも含めてお話します。
 ♯AC-T+HERが「アンスラサイクリン レジメンです」
 
 
「抗がん剤(TCH)の副作用についても詳しく教えて頂けると幸いです」
⇒まずは「ドセタキセル+カルボプラチン+ハーセプチン」の5カ月間ですが、
 全身倦怠感・脱毛・浮腫・筋肉痛・白血球低下(発熱)に加えて(カルボプラチンによる副作用として)貧血や血小板減少に注意が必要です(これらは低頻度です)
 その後の「ハーセプチン7ヶ月」ですが、自覚する様な副作用は一切ありません。
 ♯心機能毒性(可逆性ですが)の注意として「ハーセプチン投与中」は心臓超音波を半年に1回は行います。
○副作用対策としては主としてドセタキセルに対して
 全身倦怠感・浮腫:ステロイド内服
 筋肉痛:鎮痛剤
 吐き気(強くはありませんが):制吐剤
 これらを行えば、十分許容範囲内だと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

お忙しいところ何度もすみません
抗がん剤の副作用ではなく終了したのちのリスクはありますか?
抗がん剤は将来、癌を誘発する可能性があるとネットで見て不安に感じました
本当なのでしょうか?
私のケースの場合に放射線は対象にならない治療でしょうか?
例えば今回は無治療を選択して
万が一、転移した時に抗がん剤をすると言う選択は正直あまり正しくないですか?
看護師の方に今回する抗がん剤は根治を目指す
転移してからの抗がん剤は延命
と目標が違ってしまうと言われました
癌治療に対する抗がん剤とはそう考えるべきなのでしょうか?
あまり時間がないようなので
度々に渡り数多くの質問で申し訳ありません
もし抗がん剤をするなら術後2ヶ月以内と聞きましたが正しい判断でしょうか?
ご回答のほど宜しくお願いします
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 『pT1a(5mm), pN1mi(0.7mm), HER2 type』 でTCHを勧められている方ですね。

回答

「抗がん剤の副作用ではなく終了したのちのリスクはありますか?」
⇒意味が解り難いのですが…
 「抗がん剤をやってみて副作用が全く無かった際には、効果が低いのか?」という意味だとしたら(解釈に誤りがあったらすみません)、それは誤りです。
 「効果」と「副作用」は全く別物と考えてください。
 
「抗がん剤は将来、癌を誘発する可能性があるとネットで見て不安に感じました 本当なのでしょうか?」
⇒殆ど考える必要はありません。
 「アンスラサイクリンで白血病(血液の癌と言えます)を誘導する」事は、広く知られていますが、実際にみることは殆どありません。
 その他の薬剤は「もっと少ない」です。
 
「私のケースの場合に放射線は対象にならない治療でしょうか?」
⇒「pN1mi(0.7mm)」では適応は無いと思います。
「今回は無治療を選択して万が一、転移した時に抗がん剤をすると言う選択は正直あまり正しくないですか?」
⇒正しく無い訳ではありません。
 ただし、同じ抗がん剤でも「術後補助化学療法として行う場合」と「再発してから行う場合」では「効果が全く異なる」ことは認識が必要です。
 「再発してから」では「敵が大きいため、基本的に根治は困難」となります。
 
「今回する抗がん剤は根治を目指す 転移してからの抗がん剤は延命と目標が違ってしまうと言われました 癌治療に対する抗がん剤とはそう考えるべきなのでしょうか?」
⇒上記で示した通りです。
 「術後補助療法」と「再発治療」では「敵の大きさが違う」のです。
 小さいうちなら「根治されてしまう」ものも「一旦大きくしてしまうと、根治が難しい」ということです。
 
「もし抗がん剤をするなら術後2ヶ月以内と聞きましたが正しい判断でしょうか?」
⇒正しい様な、正しくない様な…
 感覚的には「どうせ(抗がん剤を)始めるなら」2カ月以内。というのは良く解ります。
 但し、「半年たったから、(抗がん剤をやっても)無駄」と言う事は決してありません。(そのようなデータは無い筈です)
 
 

 

質問者様から 【質問3】

大変ご多忙のなか何度もご回答頂き本当にありがとうございます
4月に告知を受けてから家族の心ない言葉
非協力的な態度に病気以上の苦しみを感じ
家族がいるのに天涯孤独のような心情で治療に挑んできたのですが先生からの親身なご回答、他の方々への内容も拝見させて頂き前を向いて行こうと思えてきました
このQAを教えてくれた友人に感謝です
本当なら今すぐに先生の病院に転院させて頂きたい気持ちでいっぱいなのですが遠方の為に泣く泣く断念しています
主治医は何を質問していいのかすら分からない私に必要以上の説明をしてくれないので毎日、必死でインターネット検索を繰り返しています
先生の回答はとても解りやすく、お会いしてもいないのに何故かとても安心感を感じています
ご多忙な中、この文章をお読み頂くのも恐縮な思いですが先生の様々なご回答を読み涙が込み上げてきてしまい長々と書かせて頂きました
病気で不安な方々の為に毎日、診療や手術以外に何時間もの時間を費やしていらっしゃる先生の生き方がとても素晴らしく私自身の人生について考えさせられています
以前、ご相談をさせて頂いた時に
頑張れるなら抗がん剤を頑張りましょうと言いますとご回答を頂きました
私が頑張れるなら抗がん剤をした方がいいと思われますでしょうか?
肉体的にも精神的にも不安があり決めきれずにおります
当然、抗がん剤をしたとしても転移の可能性が0%になる訳ではないですよね?
先生なら私の転移の可能性を何%ととらえますか?
浸潤の個数が多い事についてはどのようにお考えになりますか?
数よりも最大の大きさでご判断されるのでしょうか?
先生、本当に毎日ご多忙にお過ごしだと思いますがどうかご自身のお体をくれぐれもご自愛くださいませ
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 質問者のおかれている大変な状況。お察しします。

回答

「私が頑張れるなら抗がん剤をした方がいいと思われますでしょうか?」
⇒そう思います。
 我々乳腺外科医は(皆同じ考えだと思いますが)「抗HER2療法」は「効果と副作用のバランスが凄くいい」という感覚です。
 前回挙げた「非アンスラサイクリンレジメン」の中でも『肉体的にも精神的にも不安があり』という状況からは、「weekly PTX + HER」が(副作用の点からは)勧められます。
 
 
「当然、抗がん剤をしたとしても転移の可能性が0%になる訳ではないですよね?」
⇒その通りです。
 残念ながら「抗がん剤をしても再発する群」は存在するのです。
 
「先生なら私の転移の可能性を何%ととらえますか?」
⇒10%以下程度でしょう。
 
「浸潤の個数が多い事についてはどのようにお考えになりますか?」
⇒個数は関係ありません。
 小さな浸潤は「無視」してもいいと思います。
 
「数よりも最大の大きさでご判断されるのでしょうか?」
⇒その通りです。
 最大浸潤径が「T:tumor size」ファクターとして重要なのです。