[管理番号:1165]
性別:女性
年齢:41歳
はじめて質問させていただきます。
9/11に左湿潤性乳管癌の診断を受けました。
今後の治療について教えてください。
以下、診断までの経緯です。
昨年末、近くのクリニックでマンモグラフィーを受けました。
要精密検査となり、1月末に超音波検査を受け、のうほうと石灰化があるとのこと
で、経過観察のため6か月後に再受診となりました。
この時点ではしこりは確認できませんでした。
7月末に左胸にこりこりしたしこりをみつけ、再受診したところ、クリニックでは設
備がないので、他の病院で生検やCTもしくはMRIを受けるよう言われました。
8/21に転院先でマンモグラフィーと超音波検査、8/26にバネ式の針生検の結果9/11に
上記の診断です。
ER:Allred score 8(IS3+PS5) J-score 3b
PgR:Allred score 0(IS3+PS0) J-score 0
HER2:Score 2+
MIB-1 labeling index 20%
しこりの大きさ 14mm
診断のあった9/11にMRIを済ませ、明後日9/16にCTの予約をしており、その結果が
9/18にわかります。
結果次第でステージや治療方針が決まるとの説明でした。
結果待ちの状態ではあるけれど、それほど深刻な状態ではなく、部分摘出と術後の治
療で完治可能と思われるとのことでした。
先生でしたら、どのような方法での治療を考えますか?
納得した上で治療に臨みたいので、あれっ?と思ったことはその場でどんどん質問し
たいんです。
先生の治療方針をうかがっておけば、18日にその場で疑問を解決できるのでは…と思
いまして。
あと、もうひとつ、気になっていることがあります。
どうやら右にももう少し小さいしこりがあるようです。
自分ではわかるようなわからないような…大きさです。
右のしこりについては針生検をしないのか質問したこところ、「MRIをとれば、ある
程度のことはわかる」とのことでした。
同時期にあるしこりでも性質は全く違うこともあるのではないか…と思うのですが、
こういった場合は生検などはしないものですか?
ご回答、よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
常々思っていることがあります。
「検査の設備の無い病院(クリニック)で経過観察すること」が正しいのでしょうか?
例えば、質問書の件でも「半年前に所見があり経過観察」となっています。
その「半年後に14mmのしこり」とありますが、「半年前に所見が全く無かった」とは
思えません。
もしも、そのクリニックに「針生検があれば(もしも、乳腺クリニックと標榜してい
るなら針生検は当然できるべきと思いますが…)その場で診断されていた」筈です。
石灰化のケースでは良くあることですが、「ステレオガイド下マンモトーム生検がで
きない施設」で経過観察などしても、「明らかに癌と解るような所見となるまで」放
置されているのが現状です。
♯そのようなケースを私は「あまりにも沢山」見てきました。
そのような医師は「多少大きくなっても、明らかに癌と解る位になってから診断すれ
ばいい」という認識なのでしょうが(自分の家族でもそうなのでしょうか?)
患者さんにとっては「早期発見は一生を左右するかもしれない」事なのです。
★このように「医師と患者さんの間には(一般的には)大きな乖離が存在」している
ことに注意が必要です。
私が常々言っている事ですが、「自分の身は自分で守って欲しい」と思います。
前置きが長くなりました。
それでは以下に回答します。
回答
「結果次第でステージや治療方針が決まるとの説明」
⇒MRI:
これは乳腺内の拡がり診断目的です。
術式選択(全摘か温存か?)の参考にします。
CT:
これは腋窩及び全身スクリーニング目的です。
腋窩は『本来、超音波で評価されるべき』ものなので参考程度です。
全身は(遠隔転移はありえないので)確認するだけです。
これらの結果「ステージ」(腫瘍径とリンパ節の評価で決まります)と「術式」
(MRIでの拡がり診断を主として参考にして決まります)
「先生でしたら、どのような方法での治療を考えますか?」
⇒腫瘍径も小さいので「乳房温存」となると思います。(MRI結果で確認)
また、「腋窩リンパ節は超音波で評価」し、「センチネルリンパ節生検」となるで
しょう。
温存術後は当然「温存乳房照射」を行います。
○HER2 2+とありますが、FISHは行っていますか?(もしくは手術標本で再度評価
し直す予定なのでしょうか)
全身療法として
・HER2-FISH陰性ならば「ホルモン療法単剤」となります。
♯但しMIB-1(Ki67)は手術標本で再評価するべきです。(Ki67高値ならば
luminal Bとして抗がん剤も適応となります)
・HER2-FISH陽性ならば「抗HER2療法」を行います。
♯この場合にはKi67は参考になりません。
「MRIをとれば、ある程度のことはわかる」
⇒私は賛成しません。
MRIは経過観察などでの「参考程度にとどめる」べきです。
今回「左を手術」するのだから、当然「右も組織診断するべき」です。(100%画
像診断で良性と言い切れる場合は別ですが)
もしも、「右も癌だったら、当然同時に手術すべき」だからです。
左を手術して、(右を経過観察として)半年後に、「やはり、右も癌でした。今度
は右を手術します」と言う診療は「完全な誤り」です。
○必ず右も「確定診断」つけて左の治療に臨むべきです。
質問者様から 【質問2】
先日はご回答いただきありがとうございました。
昨日、MRIとCTの結果説明でした。
リンパ節や遠隔転移の心配はなさそうです。
リンパについては断言は難しいようでしたが…。
ただ、MRIの結果、先生の方から造影剤の染まり具合など気になるとのことで、更に
右のしこりの吸引式針生検と左の嚢胞の細胞診を受けてきました。
結果次第では左右全摘の可能性もあるとのことでした。
素人考えですが、左右同時に針生検をしてしまえば無駄に時間ばかり過ぎずによかっ
たのでは…?と思いましたが、いずれにしろ、右についても針生検を希望するつもり
だったので方向としてはよかったです。
先に受けた左の針生検の結果のHER2については、術後に確定となるそうです。
結果次第で治療の方向がかわってくるかと思いますが、今後の結果説明や術式の説明
などの際に、確認しておくべきことなどがありましたら、ご教示いただけると助かり
ます。
結果待ちの2週間の間に今度は全摘になった場合、再建をどうするのか…また考えな
くてはいけません。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
結果として右のしこりの「吸引式針生検が行われて」良かったです。
ただ「MRIを参考にしてから」行うのには「質問者同様に」賛成できません。 結
局、術前に行われたのだから不問としますが…。
回答
「今後の結果説明や術式の説明などの際に、確認しておくべきことなどがありました
ら、ご教示いただけると助かります」
⇒右と左は分けて考えるべきです。
それぞれ、MRIでの拡がりが「温存可能」であれば「両側温存でいい」と思います。
あとは、(もしも右も癌であったなら)サブタイプは其々異なる筈です。
術後の治療では、それぞれに効果のある治療を全て選択することになります。
質問者様から 【質問3】
いつもお世話になっております。
前回、右のしこりの吸引式針生検をうけたところまでご相談させていただきました。
その結果、良性のしこり(繊維の…と言っていました)とのことでした。
でも、実は、MRIの画像をみると、そのしこりから乳頭方向にむけて、染まってい
る部分があるんだそうです。
先生はその画像から、しこりとその染まっている乳線(?)は同じ病変と判断して針生
検をしたとのことでしたが、しこりの結果が良性となると、しこりと染まっている部
分は別の病変が考えられるとのこと。
カンファレンスにもあげて、他の先生方とも話し合った結果、改めて、染まっている
部分の吸引式針生検をしてはっきりさせたいとのことで、再度針生検を受けてきまし
た。
結果は明日です。
結果、良性のものとなったら、右は経過観察か、または、希望して左の手術の際に摘
出生検となるそうです。
私はなんとなくですが、右も悪性ではないかと思っています。
根拠はありませんが…。
結果次第では、先生のところでセカンドオピニオンを受けたいと思っているのです
が、その場合、最低限どの病理データが必要になりますか?
また、この検査の流れは妥当なのでしょうか?
お忙しいところ、申し訳ありません。
ご回答を
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「しこりの結果が良性となると、しこりと染まっている部分は別の病変が考えられる」
⇒このコメントには大いに問題があります。
「担当医は、良性ではおかしい=癌だと思っている」ということになります。
つまり「MRIでは癌が疑われている」ということになります。
○MRIでは「癌が疑われている」位なら、「MRIを撮影する前の段階(つまり超音波
所見)でも、当然針生検をすべき所見」だった筈です。
それを「MRIを撮影してからでないと組織診しない」ところが「MRIに頼り過ぎて
いる」ところが問題だと思います。
「結果次第では、先生のところでセカンドオピニオンを受けたいと思っているのです
が、その場合、最低限どの病理データが必要になりますか?」
⇒左と右の「針生検」及び右の(再度の)「針生検」の結果です。
「また、この検査の流れは妥当なのでしょうか?」
⇒妥当だとは全く思いません。
冒頭にもコメントしましたが、
そもそも「MRIを撮影する前の段階」で「右の病変に気付いていた(カンファレン
ス云々と言っている位だから、おそらく検査技師による超音波でしょう)」訳です。
それであれば、「左を手術する訳だから、当然右の病変は組織診断すべきなのです
(MRI所見に引きずられる事自体が誤りです)」
右の診断が「後手後手」に回り、診断能力にも問題がありそうです。