[管理番号:2990]
性別:女性
年齢:37歳
いつも こちらで勉強させてもらっています
4月中旬に温存手術をしました
病理結果は
左乳腺 乳ガン病巣数1
切除術Bp+(SNB)8.4×6.0×3.5cm
占拠部位 左D領域
腫瘍径2.00×1.90×1.70
組織分類 invasive ductal
carcinoma.scirrhous carcinoma.
核異型スコア2核分裂スコア3
グレード3
リンパ転移なし
ハーツ陽性
術後治療にFEC→HER+DOC
と言われました
先生ならどうされますか?
また再発率と生存率も知りたいです
よろしくお願いします
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1c(20mm), pN0, HER2タイプ(ER, PgRの記載がありませんが、陰性なのですね?)
「先生ならどうされますか?」
⇒HER2タイプであれば、当然「抗HER2療法」を行います。
ただし、質問者はpT1c, pN0, pStage1という「低リスク」なので「非アンスラサイクリンレジメン」を用います。
♯キードラッグとして「アンスラサイクリン」と「タキサン」がありますが
質問者の場合 FECは「アンスラサイクリン」であり、DOCは「タキサン」です。つまり「アンスラサイクリンレジメン」です。
それに対し、(心毒性のある)「アンスラサイクリンを省略(つまりタキサンのみと)したレジメン」を「非アンスラサイクリンレジメン」といいます。
非アンスラサイクリンレジメンには以下の①~③があります。
私が多く用いるのは②ですが、「毎週の通院がOKで副作用が不安な方」には①をお勧めします。
①パクリタキセルとハーセプチンを毎週投与(12回)⇒ハーセプチン単剤(14回)
「最初の12回の毎週通院」は「通院は大変」ですが、「副作用は格段に楽」です。
その後のハーセプチン単剤には副作用はありません。
②ドセタキセル+エンドキサン+ハーセプチン(4回)⇒ハーセプチン単剤(14回)
これは、「全て3週毎通院」となります。
①と比較すると「通院回数が少ない」ことが利点ですが、「副作用は①よりは、やや強い」と言えます。
効果に関しては①との直接比較はありませんが、「パクリタキセル(毎週12回)
=ドセタキセル(3週投毎投与4回)」と考えると②の方が「エンドキサン分」上乗せされると思います。
③ドセタキセル+カルボプラチン+ハーセプチン(6回)⇒ハーセプチン単剤(12回)
これも「全て3週毎通院」となります。
カルボプラチンが唯一乳癌の適応を通る使い方です。
「また再発率と生存率も知りたいです」
⇒抗HER2療法の「術後補助療法としての歴史」は短いので「3年」しかありませんが…
3年再発率は9%、3年生存率は96%となります。
質問者様から 【質問2】
こんにちは
この前は早速の返事とても嬉しかったです
いまでも田澤先生が仙台にいればなぁっとばかり考えてしまいます
以前の質問で
ER PgRが抜けていたので
ER陽性PS5+IS2=TS7
PgR陽性PS5+IS2=TS7
でホルモンも効くタイプでした
質問1
ホルモンも効くタイプだと生存率と
再発率に変わりがありますか?
質問2
リンパ節転移なし(0/1迅速診断)
だったのですがリンパ管侵襲Iy2 リンパ球浸潤+っとなっているのは
転移とは関係がないのですか?
質問3
アンスラサイクリン+ハーセプチンをすると心毒性が強まると読んだのですが大丈夫なのでしょうか?
沢山 質問してしまいましたが
ヨロシクお願いします
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「質問1 ホルモンも効くタイプだと生存率と再発率に変わりがありますか?」
⇒抗HER2療法に関しては、そこまでのデータはありません。
「質問2 リンパ節転移なし(0/1迅速診断)だったのですがリンパ管侵襲Iy2 リンパ球浸潤+っとなっているのは転移とは関係がないのですか?」
⇒無関係です。
「リンパ管侵襲」は、あくまでも「病理切片上でリンパ管の中に癌細胞が入っている像」を見たものです。
リンパ管に入ったからと言っても「リンパ節転移が成立」するとは限らないのです。
また「リンパ球浸潤」というのは「癌組織周囲に(おそらく免疫応答で)リンパ球が遊走している」所見です。 リンパ節転移とは無関係です。
「質問3 アンスラサイクリン+ハーセプチンをすると心毒性が強まると読んだのですが大丈夫なのでしょうか?」
⇒前回、回答したように…
心毒性の問題があり(特に心疾患の多い欧米を中心に)「非アンスラサイクリン」への傾向があります。
それで、決して「ハーセプチンとアンスラサイクリンを同時に投与はしません」
(アンスラサイクリン⇒ハーセプチン+タキサン」となります。
○アンスラサイクリンによる心毒性は「容量依存性(ある量を超えると急激にリスクが増す)で不可逆性」であり、ハーセプチンは可逆性(辞めれば徐々に元に戻る)
と、異なってはいますが(同時投与ではないにしろ、両方投与するのはリスクにはなります)
質問者様から 【質問3】
田澤先生こんにちは
いつも こちらで勉強した事を自分に当てはめて担当医に質問したりしてますが担当医も理解していない事が多く田澤先生の膨大な知識に感激と感謝をしています
私は温存手術でトリプルポジティブで今 抗がん剤治療が終わったところです
これから放射線治療、ハーセプチン、ホルモン治療が残っています
そこで お聞きしたいのですが
手術側は左なので放射線の間ハーセプチンは止めた方がよろしいのですか?
後ホルモン治療は年齢によってや
化学療法閉経などによってさまざまだと思うのですが私に適した治療はどういうものがありますか
今は化学療法閉経中です
よろしくお願いします
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「放射線の間ハーセプチンは止めた方がよろしいのですか?」
⇒これはガイドラインでは「放射線照射とは併用しない方が良い」ということになっています。
実際は「関係無さそう」に(私も)思いながらも、(万が一のことを考えて)「放射線照射が終了してからハーセプチンを開始」しています。
「ホルモン治療 私に適した治療はどういうものがありますか 今は化学療法閉経中です」
⇒もちろんタモキシフェンです。
ここで最初から「LH-RHagonistを併用するか?」は議論の多い所です。
質問者は若いから「おそらく、化学療法閉経から復活するだろう」との予測から、
(私なら)「最初から」LH-RHagonistを併用します(月経再開傾向が出てから開始しても間違いではありません)