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非浸潤性乳癌

[管理番号:4627]
性別:女性
年齢:60歳
ご相談させて下さい。
去年7月、右乳首辺りの石灰化がみつかり(しこりは触れず)乳腺症と診断されました。
半年フォローで、しこりの変形を指摘され細胞診で疑陽性だったため、針生検で非浸潤性乳菅癌(1.3cm)と診断されました。
5月下旬に手術の運びとなりました。
手術前にMRIを行い全摘か温存か決める予定です。
ER(-)PgR(-) ホルモン療法不要
HER2(3+) ハーセプチン療法不要
リンパ節転移(-)
とのことです。
①乳腺症から癌化する事はないとのことですが、やはり7月の時点で癌だった可能性は高いですか。
②全摘と温存では再発率に差はありますか。
全摘後は腕が上がりにくくなったという経験者からの話がありできるだけ温存を希望しています。
③現時点でリンパ節転移はありませんが、手術して転移があったということもあるんでしょうか。
④HER2 3+ですが、非浸潤ではあまり気にしなくてもいいですか。
もし手術して浸潤がんなら再発や転移のリスクがやはり高いんでしょうか。
⑤非浸潤から手術の病理結果で浸潤だったという症例では多いですか。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「去年7月、右乳首辺りの石灰化がみつかり(しこりは触れず)乳腺症と診断」
⇒ここですね。
 「無駄に経過観察」せずに、積極的な診療をしてもらいたいところです。
「①乳腺症から癌化する事はないとのことですが、やはり7月の時点で癌だった可能性は高いですか。」
⇒可能性というか…
 100%「7月の時点で癌だった」ということです。
 さすがに、その担当医も「半年間で乳腺症が乳癌になった」などという「戯言」は言わないでしょう。
 ♯願わくば、(質問者には悪いですが)担当医にはこれを機会に「診療態度を改めて」もらいたいものです。
「②全摘と温存では再発率に差はありますか。」
⇒再発を「遠隔転移再発」と「局所再発」に明確に分けてください。
 全摘と温存では
 「遠隔転移再発」には差はなく(そもそも非浸潤癌では確率ゼロです)
 「局所再発」は「温存して放射線では10年で5% vs 全摘ではゼロ」という差があります。
「全摘後は腕が上がりにくくなったという経験者からの話」
⇒それは「誤り」です。
 「乳腺を全部取るのか、部分でとるのか?」は腕の上がりとは無関係です。
 「腕の上がり」は「腋窩郭清とのみ」関連します。
 今回質問者は「センチネルリンパ節生検をして腋窩郭清は(おそらく)省略される」わけですから、「乳腺を全切除しても部分切除しても」どちらでも腕は(全く問題無く)上がります。
「現時点でリンパ節転移はありませんが、手術して転移があったということもあるんでしょうか。」
⇒画像上「リンパ節転移がない」「術前診断が非浸潤癌」という条件であれば、「転移の可能性はほとんどゼロ」と考えられます。
「④HER2 3+ですが、非浸潤ではあまり気にしなくてもいいですか。」
⇒「全く」気にする必要はありません。
「もし手術して浸潤がんなら再発や転移のリスクがやはり高いんでしょうか。」
⇒浸潤癌でも早期であれば、「低い」です。
「⑤非浸潤から手術の病理結果で浸潤だったという症例では多いですか。」
⇒画像所見を見ていないので判断はできませんが…
 確率は高くはありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

お忙しい中ご回答していただきましてありがとうございました。
先日MRIの結果2.2cm(腫瘍が飛び石みたいにみえるいびつな型)とのことでした。
温存希望でしたが、術後の治療や再発等を考慮し全摘の変更しました。
先生でしたら全摘を勧めますか。
また、エコーやマンモでは1.3cmほどだったのですが、やはりMRIのほうが大きさが明確に見えたと言うことでしょうか。
この短期間で腫瘍が急増したということではないですよね。
MRIでは転移も認めなかったのですが、術中のセンチネルリンパ節生検は実施することが多いのでしょうか。
ご回答のほどよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「先生でしたら全摘を勧めますか。」
⇒画像診断を見ていないのに正確なコメントは無理ですが…
 2.2cm程度なら「温存でもいいですね」と言うとは思います。(無理に勧めることはありません)
「また、エコーやマンモでは1.3cmほどだったのですが、やはりMRIのほうが大きさが明確に見えたと言うことでしょうか。」
⇒そのための「MRI」です。
 エコーやマンモと全く同じなら、「MRIの存在価値がない」ということです。
「この短期間で腫瘍が急増したということではないですよね。」
⇒ありません。
「MRIでは転移も認めなかったのですが、術中のセンチネルリンパ節生検は実施することが多いのでしょうか。」
⇒画像診断で「センチネルリンパ節生検の可否」を決めることはありません。
 質問者のケースでは…
 非浸潤癌の場合には、画像上「狭い範囲に限局した」場合には「省略が推奨される」となります。
 画像所見次第です。
「十分狭い範囲」と担当医が捉え、「患者さん自身が省略を希望」すれば、「センチネルリンパ節生検の省略は十分に妥当」となります。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

5月下旬に全摘しました。
病理検査の結果は、
Invasive dictator carcinoma with a predominant introduction component
histological grade:1(SBR score=2+2+1)
nuclear grade:1(nuclear atypia=2 mitotic figure=1) right CA,27×25×17mm,
g,ly(-),v(-) lateral margins(-) deep margin(-) right mastectomy Lymph node:
No metastasis of carcinoma:level 1(0-10) level 2(0/0),excision
ER(-) PgR(-)
HER2(3+)intraductal growth onlyでした。
英語のみで分からないとこもあるんですが…。
ステージは、Ⅰa
期(Ⅰ期もa,bとかあるんでしょうか、)で、非浸潤の腫瘍にほんの僅かに
(3ミリにも満たない)浸潤しているとこがあった。
今後の治療方針としては、無治療で経過観察でよいが、予防的に抗がん剤をしてもいい。
抗がん剤をしたからといって再発率はほとんど変わらない。
抗がん剤はマイトマイシン+5FUという薬でそこまで強い薬ではない。
ハーセプチンを使用するには併用で比較的強い抗がん剤になってしまう。
現時点ではそこまで強い薬は必要ない、と言われました。
母は、予防的に抗がん剤投与を検討しています。
先生でしたらどのような治療方針になりますか。
先生の考えをおききしたいです。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
決して抗癌剤(抗HER2療法)をする必要はありません。
抗癌剤(抗HER2療法も含む)の適応は「浸潤径5mm以上」です。「3mmにも満たない」場合には適応外です。
「無治療で経過観察でよいが、予防的に抗がん剤をしてもいい。」
⇒これは誤りです。
 抗HER2療法にも副作用があります。
 絶対に抗HER2療法により期待される再発予防効果(殆どありません)とはバランスしません。
「先生でしたらどのような治療方針になりますか。」
⇒無治療です。(1秒も迷いません)
 この場合、患者さん側から(抗HER2療法を希望されると言われても)却下します。