Site Overlay

肺転移疑いと今後の対応について

[管理番号:6933]
性別:女性
年齢:50歳
病名:
症状:現在特になし

田澤先生初めまして。

たくさんの情報発信ありがとうございます。
初発の頃から参考にしています。

現在50歳、2014年12月に左乳房浸潤乳がん確定診断、2015年2月左乳房全摘、SNB
陰性、リンパ節郭清なし、腫瘍の大きさ2.8cm、ER陽性、HER2FISH法で陰性、
ki67約20%で抗がん剤はやってもやらなくてもよいということでホルモン単独治療を選択、リュープリンとタモキシフェン投与を続けていました。

途中薬剤影響と思われる肝機能悪化などもありましたが、特に体調変化もなく、3年経過した今年3月でリュープリンを止めましたが、その頃から年3~4回行っている血液検査で腫瘍マーカーCEAが5前後だったのが7.5→9.0→11と上がってきたので(CA15-3は現在も12~14でほぼ変化なし)、10月にCTを撮ったところ、「左腋窩リンパ節」と「右肺」にそれぞれ腫瘍影があり、同時期に人間ドックで乳腺エコーで同様に左腋窩リンパ節に腫瘍影が見つかりました。

エコーと健側マンモは毎年周年検査で行っており、今年2月のエコーでも腋窩リンパ節には何も写っておらず、主治医も驚いています。

PETCTを撮ったところ、やはりこの2箇所に高度集積があり、それ以外の場所にはみられませんでした。

肺腫瘍については現在呼吸器科で気管支鏡で生検を行い結果待ちとなっています。

主治医にも呼吸器科の先生にも、乳癌の転移巣として原発巣とは反対側である右肺の、しかも肺門部に単発での出現は典型所見ではなく、ちょっと考えにくいので肺原発かもしれない、とは言われています。
肺の腫瘍は画像だと1.6cmで、肺癌だった場合は早期となり根治を目指した切除適用とのことです。

主治医からは乳癌の肺転移だった場合はリンパ節再発部分も手術せずに化学療法と言われました。

ここで質問です。

1.肺が早期肺癌で、腋窩リンパ節が乳癌局所再発だった場合、いずれも切除となると思いますが、手術はどちらかを先行させるのでしょうか、または同時切除になるのでしょうか。
またこの場合は、肺もリンパ節も根治可能性はあると考えられますでしょうか。

2.肺も腋窩リンパ節も乳癌の転移再発だった場合、主治医は手術せず化学療法と言います。
が、今回肺は孤立性腫瘍の見込みがかなり高く、「肺単独転移の場合切除も検討余地あり、予後が比較的よい」との論文も結構見かけます。

私としては、治療は今回はやりきりたいと思います。
論文も症例も複数出ているのであれば、肺転移巣が孤立性であれば切除→リンパ節再発も切除→その後化学療法 を希望したいです。

田澤先生であればどのような作戦で対処されますか?
3.腋窩リンパ節について、2月のエコー画像では認められないのに、半年強で急に2センチまで大きくなるのでしょうか?
悪性リンパ腫などほかの病気の疑いはないでしょうか?
それとも見落としなのでしょうか?
検査は技師さんによるものでした。

4.ルミナルタイプということで、リュープリンとタモキシフェンで治療してきましたが、結局こんなに大きくなったり、転移疑いが出たりするということは、タモキシフェンはあまり効いていないということでしょうか?
初発時の補助療法で抗がん剤をやるべきだったでしょうか?リュープリンを止めたあと、生理は戻っていません。
閉経後の薬剤に変更すべきでしょうか?
5.今から江戸川病院に転院することは可能でしょうか?それともあまり意味はないでしょうか?通えない距離ではありませんが、1時間半程度かかります。

いろいろ質問して恐縮です。
術後も毎月乳腺専門医に通院しているのに、こんなことになって大きなショックを受けています。

是非田澤先生のご意見をうかがいたいです。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「1.肺が早期肺癌で、腋窩リンパ節が乳癌局所再発だった場合、いずれも切除となると思いますが、手術はどちらかを先行させるのでしょうか」
→常識的にいえば…

 肺です。

「またこの場合は、肺もリンパ節も根治可能性はあると考えられますでしょうか。」
→勿論!

 肺がんは早期だし、リンパ節は単なる「局所再発」ですから。

「田澤先生であればどのような作戦で対処されますか?」
→肺も(転移だとしても)単発であれば…

 Volume reductionの観点からも「切除してもらえれば、これ幸い」ということで、呼吸器外科医にお願いします。

 腋窩リンパ節は「局所」なのだから「取るべき」です。

「半年強で急に2センチまで大きくなるのでしょうか?」
→臨床経過を考えれば…

 リュープリンが効いていた(腋窩リンパ節はもともと転移があったが、リュープリンにより抑えられていた)と考えるべきです。(担当医からも、「そのように」言われましたね??)

「悪性リンパ腫などほかの病気の疑いはないでしょうか?」
→絶対にありません。

 皆さん、簡単に「悪性リンパ腫」など持ち出しますが…
 頻度が全く違います。(しかもPETで他のリンパ節になく、「術側腋窩だけ」に悪性リンパ腫など10000000%ありえません)

「タモキシフェンはあまり効いていないということでしょうか?」
→そうではなく、「リュープリンが効いていた」と理解しましょう。

「閉経後の薬剤に変更すべきでしょうか?」
→間違い。

 リュープリンを再開しましょう。

「5.今から江戸川病院に転院することは可能でしょうか?それともあまり意味はないでしょうか?」
→そもそも当院には「呼吸器外科」がありません。

 質問者にとって、最も理想的なことは
 (肺が転移であれ、原発であれ)肺も腋窩も手術して、術後に抗がん剤することです。(リュープリンは再開しましょう)

 
 

 

質問者様から 【質問2 肺転移疑いと今後の対応について】

性別:女性
年齢:50歳
病名:
症状:

管理番号6933
タイトル 肺転移疑いと今後の対応について
田澤先生先日は大変参考になるご回答をありがとうございました。

その後、腋窩リンパ節は針生検の結果、乳癌局所再発。
肺腫瘍は気管支鏡でも診断が
つかず、呼吸器外科で胸腔鏡手術にて区域切除し、年末に病理結果が出ました。

なお手術前検査ならびに手術時に、肺腫瘍は単発であり、ほかに見える遠隔転移巣は無しと確認できています。

ーーーーーーーー
肺腫瘍→14×9mm大の充実性白色結節、免疫染色結果GATA+3、Mammaglobin+、
TTF1-、napsin-、E-Cadherin-、EGFR変異を認めない。
乳癌の転移と判断。
細胞間接着が乏しくE-Cadherin陰性を示すことから浸潤性小葉癌が疑われる。
既往生検標本と比較すると腺腔形成が乏しい。
リンパ管侵襲を認めるが、静脈侵襲は明らかでない。
切除断端は陰性。
リンパ節に転移を
認めない。

ERスコア6陽性
PGRスコア0陰性
HER2 3+
ki67 70%程度
ーーーーーー
上記のとおり乳癌肺転移との所見でしたが、左腋窩リンパ節再発分に関して11月下旬に行った針生検結果、
ーーーーーーーー
全体に線維化が目立ち、腺癌の増生を認める。
リンパ節構造は不明瞭化しているが、
辺縁部に少量リンパ球の集簇が見られる。

免疫染色結果から浸潤性乳管癌、硬性型を考える。

免疫染色結果:
ERスコア4弱陽性
PGRスコア0陰性
HER2 1+ 陰性
ki67 50%程度
GATA3
ーーーーーーーー
の所見とかなり異なっている状態です。

初発2015.2左乳房全摘での病理は
浸潤性乳管癌、SNB陰性、リンパ節郭清なし、腫瘍の大きさ2.8cm、ERスコア強陽性、HER2 2+、FISH法で陰性、ki67約20%でした。
術後リュープリン+TAMでホルモン療法を4年近く続けていました(リュープリンは3年で終了)。

今回肺手術の関係で別の総合病院へ転院したのですが、新しい乳腺の先生は
・切除した転移巣がHER2タイプ、腋窩リンパ節がホルモン感受性が低めでホルモン療法はあまり効かないかもしれない
・患者である私自身がやりきる治療を希望していることから、
・腋窩リンパ節3cmの局所再発分は気になるとは思うけれど、当面あえておいておき、化学療法の効果測定をする
・化学療法、AC3週毎4サイクル→
DTX+ハーセプチン+パージェタ3週毎4サイクル→
腋窩リンパ節再発巣切除→
ハーセプチン+パージェタ継続→
ホルモン療法を提案されています。

質問としては、下記となります。

1.肺転移巣は小葉癌疑いの病理でしたが、
原発巣、局所再発巣いずれも乳管癌所見です。
遠隔転移巣なのに癌の種類が異なることもあるのでしょうか。

2.切除した肺転移巣がHER2陽性のルミナルB、まだ切除していない腋窩リンパ節再発巣がHER2陰性のルミナルBに該当すると思いますが、化学療法はやはり悪性度の高い抗HER2を優先したレジメンになるのでしょうか。

3.腋窩手術はDTX終了後の予定ですが、抗がん剤前のほうがよいでしょうか。

4.ハーセプチン+パージェタの継続期間は、効いているうちは基本継続と言われました。
再発治療にスタンダードはないとは思いますが、期間の目安はあるのでしょうか。

5.ホルモン療法の開始時期は、腋窩手術後に再開するハーセプチン+パージェタと併用となるでしょうか。

新しい先生はホルモン療法でダラダラいくより、化学療法をしっかり効かせてホルモンで維持を狙う考えで、私の希望に近しく、基本的に提案内容の治療を行いたいと思います。

是非田澤先生のお考えをお聞かせください。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「遠隔転移巣なのに癌の種類が異なることもあるのでしょうか。」
→勿論、あります。
 だから、再発した場合には(組織が取れる部位ならば)「なるべく、組織診をしてサブタイプを確認すべき」と推奨されているのです。

「化学療法はやはり悪性度の高い抗HER2を優先したレジメンになるのでしょうか。」
→悪性度が「高い、低い」ではなく…

 「効くものは行おう」という趣旨からは抗HER2療法を行うべきです(それが一般的です)
 ★今回の場合には、(更に言えば)今後問題となるのは(腋窩再発ではなく)血行性転移である「遠隔転移」なのです。
  その意味で、(今後注意すべきは)肺転移を起こした「HER2陽性の癌細胞」なのです。

「3.腋窩手術はDTX終了後の予定ですが、抗がん剤前のほうがよいでしょうか。」
→敢えて抗がん剤を先行させる理由がありません。

 「効果をみるために」とありますが…
 全く無意味!

 ★今後、抗がん剤は何のためにするのか?
 →局所再発した腋窩腫瘍のためではなく(それは、手術で摘出するのですから)、『血行性転移として、どこかに潜んでいるかもしれない癌細胞を死滅させるため』なのです。

 何のための抗がん剤なのか?
 もう一度よく考えましょう。

「期間の目安はあるのでしょうか。」
→半年とか1年とか、区切りはつくものです。

 「区切り」ありきではなく、まずはcCR(画像上、完全緩解)を狙うことです。(質問者のケースでは腋窩再発巣を切除すれば、cCRとなりそうですね?)
 そして、それを維持すること。
 「半年、維持」するたびに、「継続しますか?」そのようにしていくのです。 
 ★この(維持されている)状態が「5年」も続いたら、「もうやめますか?(医師側から)」となるか「おまじないとして、やっている方が安心(患者さん側から)」となるか自ずと決まってくるものです。(性格的に)

「5.ホルモン療法の開始時期は、腋窩手術後に再開するハーセプチン+パージェタと併用となるでしょうか。」
→それが常識だと思います。

「新しい先生はホルモン療法でダラダラいくより、化学療法をしっかり効かせてホルモンで維持を狙う考え」
→これには大賛成です。

 ただ腋窩は手術してしまった方がいいのでは?

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

肺転移疑いと今後の対応について
性別:女性
年齢:50歳
病名:
症状:

田沢先生こんにちは。
以前2回にわたり、
質問回答いただきありがとうございました。

その後治療は進み、
・抗がん剤AC4クール→DTX+PER+HER4クール
・術前PETCTで腋窩腫瘍縮小(30mm大→11mm、活動度も低下)
・腋窩リンパ節郭清、LN1/11、ERとPgr
スコア0、HER2陰性、ki67→5%未満で、次のステップとして
・肺転移巣病理(ルミナルB,HER2タイプ)
に合わせてPER+HER継続、閉経後ホルモン治療アロマターゼ阻害剤 を行う予定です。

質問としては、主治医からイブランス併用もあると言われた点です。

イブランスはHER2陰性でないと使えないと思っていたのですが
再発転移の場合はHER2陽性でも使えるのでしょうか。

使えない場合はホルモン療法はアロマターゼ阻害剤単独(抗HER2は併用)で問題ないでしょうか。

ご回答よろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

「イブランスはHER2陰性でないと使えないと思っていたのですが再発転移の場合はHER2陽性でも使えるのでしょうか。」
⇒使えません。

 担当医が勘違いしているのか、(知っていて)「知らんぷり」をして使おうとしているのか、どちらかでしょう。(もしかして「腋窩はER陽性、HER2陰性だから」などという言い訳を用意しているのかもしれません)
 ただ、「HER2陰性」と明記されている以上、trastuzumab や pertuzumabを使用しながら併用していたら、必ず(保険審査機関に)ばれて、査定されてしまいます。
 ★一方でHER2陽性でないと使用できない薬剤(trasutuzumab, pertuzumab)を使い、もう一方でHER2陰性でないと使用できない薬剤(palbociclib)をつかっていたら「矛盾そのもの」となります。

「使えない場合はホルモン療法はアロマターゼ阻害剤単独(抗HER2は併用)で問題ないでしょうか。」
⇒質問者は「化学療法閉経」ですよね?

 本物の閉経ではありません。
 その状態(化学療法閉経)でアロマターゼ阻害剤を使用すると、月経が再開(卵巣が賦活)するケースが知られています。(そして、それは「良くない事」なのです)

 正しい治療は「tamoxifen + LH-RHagonist」です。
 ★担当医は「だって、その治療で再発したではないか?」というかもしれません。
 ⇒(以前、回答したように)

  LH-RHagonistが効いていた(止めてから増大した)ように私は感じます。