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DCIS切除マージンについて

[管理番号:6939]
性別:女性
年齢:64歳
病名:非浸潤型乳管癌
症状:術後で症状はありません

お忙しい先生の貴重ななお時間をいただき、ご相談させていただけることに心より感謝申し上げます。
どうもありがとうございます。

3年前マンモ検査で右乳房下部(画像右下に石灰化がやっと入っている)に1cmほどの石灰化があり、今年7月マンモ後、針生検(超音波局所麻酔4回採取)の結果「右乳房に非浸潤性乳管癌がある(1~2.5cm)」と言われました。
術前CT検査で左胸と腰椎に白い影があり、PET-CT検査後、白い部分は旧肋骨骨折とヘルニアで癌の転移等はありませんでした。

家族に病人もあり、放射線治療が負担で全摘をお尋ねしたところ、体への負担や大きさから部分切除を勧められ、8月右乳房部分切除手術(2cm円状切除)、センチネルリンパ節生検転移なしで10月放射線治療25回を終えました。

8月病理検査説明時 「DCISでした。薬剤治療はありません。乳房が小さく、仕方がないんです。」と明るく言われました。

乳房が小さく病巣が胸筋近くにあることは術前にもわかることだし、全摘もOKだったので、術後「仕方ない」と言われる意味がわからず、
11月診察時、再度お尋ねしたところ、「取り切れているし放射線で焼いているので全摘と同じです。
横は2cm確保できたが(切り口8cm)、縦(高さ)は、病巣が胸壁から5mmもない上、皮膚側も皮膚も取っているが、高さは2cmはとれていない。
胸筋まではとっていません。」と言われました。

病理結果を教えてほしいと頼みましたが、「DCISだから特に何も調べていないんです」と言われ、検査や病理結果のデータは手元にはありません。

「3か月ごとに腫瘍マーカー検査をするし、年一回CT検査等もするから大丈夫だが、心配ならホルモンはプラスなのでホルモン薬治療をしますか。」と言われています。

質問
1)術後わざわざ「乳房が小さく仕方ないんです」と言われることの意味はなんでしょうか?
2)マージン2cmは鉄則と思っていましたが、横がとれていれば 縦(高さ)はあまり影響ないのでしょうか?
3)乳房が小さく病巣が胸筋から5mmもない場合は、全摘しても同じだったのでしょうか?
4)DCISに薬剤治療は不要とこちらで勉強しましたが、マージン不足の場合も不要でいいでしょうか?
コラム85・86回なども読みましたが、理解力が足りず、自分勝手な解釈等での質問をどうかお許しください。
今週のコラム 85回目 ○この層構造の理解が、「皮膚側断端」「深部側断端」の理解に役立つのです。
今週のコラム 86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです

どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

申し訳ありませんが…
とても賛成できる診療ではありません。
極めてバランスに欠けている。

石灰化がやっとわかる程度の非浸潤癌なのに術前CTやPET!(無駄なCTを撮影するから、結果としてPETまですることになるのです。 担当医には常識を持ってもらいたい)

「胸筋まではとっていません。」
→当たり前。
 非浸潤癌で胸筋を切除する必要はありません。
 Deep margin(深部断端)は非浸潤癌では必要ないのです。
今週のコラム 147回目 実際に患者さんと接している私は、そう心配するのです。』をご参照ください。(このコラムでは「側方断端」についての記載ですが、deep marginも全く同様です)

「3か月ごとに腫瘍マーカー検査をするし、年一回CT検査等もするから大丈夫」
→???
 この発想!!

 非浸潤癌で腫瘍マーカーとか定期CT???(馬鹿げている)

「心配ならホルモンはプラスなのでホルモン薬治療をしますか。」
→これも全く「的外れ」

 ★私から見れば「極めて的外れ」
  物事は「局所」と「全身」に明確に分けなくてはいけません。
  もしも(その担当医が)「deep marginを心配している(実際は不要だと思いますが)」のであれば、唯一の治療は(腫瘍床の)「胸筋切除」となります。
  これは、あくまでも「局所の問題」であり、それを(全身の再発のマーカーである)「腫瘍マーカー」や(全身の再発を確認する)CT、これまた(全身再発予防のために行う)「ホルモン療法」を提案すること自体「究極に」ナンセンス!!

「 1)術後わざわざ「乳房が小さく仕方ないんです」と言われることの意味はなんでしょうか?」
→これは、おそらく…

 皮下脂肪が少ないので「乳腺に切り込んでいる」可能性をちらつかせている?ように思えます。『今週のコラム 86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです』をご参照ください。

 ★乳腺の裏にあり、大胸筋との間にある脂肪(乳腺裏脂肪)が少ないと、(下手な術者だと)『乳腺側に切り込むか、大胸筋に切り込むか? どちらかになる』のです。
  私の推測ですが、 病理レポートに「乳腺に露出」という記載があり、(術者の頭の中に)「脂肪が少ないから、乳腺に切り込んでしまった?」という意識があるように思います。(あくまでも「私の想像」です。機会があったら主治医に確認してみましょう)

「2)マージン2cmは鉄則と思っていましたが、横がとれていれば 縦(高さ)はあまり影響ないのでしょうか? 」
→「高さ」とは(表面側である)「皮膚側断端」と(裏側である)「深部断端」のことですね??

 非浸潤癌だから(乳腺に切り込まなければ)全く問題ありません。

「3)乳房が小さく病巣が胸筋から5mmもない場合は、全摘しても同じだったのでしょうか? 」
→そのとおり。
 深部断端は、「全摘でも部分切除でも同じ」です。 (皮膚側断端は「全摘では直上の皮膚も切除」するのが一般的なので異なります)

「4)DCISに薬剤治療は不要とこちらで勉強しましたが、マージン不足の場合も不要でいいでしょうか?」
→勿論!!

 「局所の借り」を「全身療法で返す」という発想が、「外科医として如何なものか?(外科医は、局所には絶対の自信を持つべきなのです)」

★結論として
  本当に心配なら「腫瘍床の大胸筋、及び皮膚を切除」すべき(ただし非浸潤癌だから、実際に癌の残存の可能性は極めて低いとは想像します)
  そうでもないなら、(CTや腫瘍マーカーやホルモン療法ではなく)『担当医自身が3か月に1回のエコーをすればよい』のです。