[管理番号:2930]
性別:女性
年齢:49歳
田澤先生、はじめまして。
昨年11月大学病院で乳癌と診断され、1月半ばに左胸全摘手術しました。
術中センチネルリンパ節生検で転移がありLevel2まで郭清。
組織型: 乳頭腺管癌>硬癌
Invasive carcinoma, NOS
ER 90%
PgR 80%
HER2 score 0
ki67 3-8%
EMGにて静脈侵襲を認めます。
腫瘍サイズ
マクロ:2.7×1.6×3.0cm
ミクロ:DCIS含む全体5.7×3.5×1.5cm、
浸潤最大径 3.0cm
浸潤パターン: Infiltrative
浸潤伸展度:F
DCIS/ADH:Present,extensive
LCIS/ALH: Absent
脈管侵襲: ly2,v2
リンパ節転移:Positive level I+ll (2/10) (SNB 含む)
核グレード:Grade2
(Detailed scores:nuclear score-3,mitotic score-1)
切除断端:DCIS(+) within 5mm from the margin.
臨床所見:左乳癌に対し、乳房切除、センチネルリンパ節生検施行しました。
術中迅速診断でセンチネル2/3転移あり、level 2まで郭清しました。
病理の結果を見ても英語で意味がわからず、
主治医からはステージ2b、ホルモン治療が効くタイプと言われ、浸潤最大径が大きいのと脈管侵襲があるので
抗ガン剤治療も放射線治療もした方がいいとの事で、EC療法を4回終わらせ、タキソテール4回をこれからするところですが、
本当に必要な治療なのかとこのQ&Aを知り質問させて頂きました。
抗ガン剤をECで終わらせたら上乗せ効果や再発率、生存率はどうなのでしょうか。
4回目の抗ガン剤で生理が止まりましたが、私の場合、ホルモン治療はどのような流れになるのでしょうか。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT2(30mm), pN1, luminalA(Ki67=3-8%)
「浸潤最大径が大きいのと脈管侵襲があるので抗ガン剤治療も放射線治療もした方がいい」
⇒ly2+やリンパ節転移2個を「局所因子」と捉え放射線治療を選択するのは誤りではないとは思います。(本来は乳房切除後の放射線照射の適応はリンパ節転移4個以上:推奨度A ですが)
ただ、化学療法の適応については私は反対です。
「Ki67=3-8%」というのは、かなり低い値であり当然luminalAとなります。
(腫瘍径≧5cm もしくはリンパ節転移陽性である)luminalAでは「化学療法によるベネフィットは得られない」という報告(SABCS 2015)があり、またSt. Gallen2015でも「luminalAでの化学療法の適応はリンパ節転移4個以上」という意見が最多でした。
○luminalAでのホルモン療法はASCO(2016)のガイドラインを参考にすると、
「タモキシフェン+LH-RHagonist併用」で間違いありません。
「抗ガン剤をECで終わらせたら上乗せ効果や再発率、生存率はどうなのでしょうか。」
⇒
上乗せ効果 | 10年再発率 | 10年生存率 |
11% | 25% | 81% |
「4回目の抗ガン剤で生理が止まりましたが、私の場合、ホルモン治療はどのような流れになるのでしょうか。」
⇒化学療法閉経では、決して(通常の)「閉経後に適応されるアロマターゼインヒビター」は使用してはいけません。
「必ずタモキシフェン」とすべきです。
化学療法閉経が(化学療法終了後、数カ月して)再開した場合にはLH-RHagonist併用となります(予め最初からLH-RHagonistを併用する方法もあります)
○将来的にLH-RHagonist終了後も閉経が継続する場合には(エストラジオール値をチェックの上)アロマターゼインヒビターへスイッチして更に5年投与となります。
質問者様から 【質問2】
先日はお忙しい中ご回答頂き本当にありがとうございました。
あの後、タキソテール1回受けた後でしたが、先生の回答を頂き6月下旬の2回目予定で迷わず抗ガン剤を中止する事を申し出て、脈管侵襲の事で再度勧められましたがお断りし中止しました。
それならその後すぐ放射線治療をして下さいと言われ、元々、初めは住んでる埼玉県の近くの総合病院で受診した先生のイチオシの先生の紹介状を貰い、都内の大学病院でその先生に手術をして頂いた経緯なのですが、遠いのもあり放射線治療は毎日の事なので近くの大学病院で胸壁、鎖骨上、25+5回治療しました。
抗ガン剤を中止した時点で、放射線治療は他院ですし、その後のホルモン治療などは元の総合病院の方でやってもらって、1年検診で総合病院で出来ない検査があると思うので来て下さいと言われました。
ホルモン治療の事で田澤先生に回答を頂いていたので、生理が戻ったらLH-RHagonistするんですよね?と聞いた所、生理は戻らないと思いますから大丈夫ですよと、戻ったらのお話は無かったです。
手術前も術後も一度もその先生に超音波される事もなく、術後の腫瘍マーカーの検査もなく、抗ガン剤中の血液検査のみだったので、CEA、CA15-3の検査はしないのかお尋ねましたが抗ガン剤中は意味が無いからと却下されたので、その2つの腫瘍マーカーは紹介状持って初めて行った時だけのデータしかありません。
7月末に指示された放射線治療を終わらせ、総合病院にホルモン治療のため受診して、超音波お願いしましたがこの間まで抗ガン剤やってたんだから何もないよと却下、触診も自分でマメにやってれば気づくからと触診もしてくれず、術後やっと7ヶ月後にして血液検査はしましたが、
CA15-3は5.2で、CEAは検査されてなく、その先生はいきなりICTPが7.6だから、もし癌細胞があったら破骨細胞を刺激して骨を壊すから、それを予防する薬が点滴15分で終わるから打ってく?次回でもいいけどね。
と軽い言い方で言われたのですが、先端恐怖症なので今日は心の準備もないので今日はとりあえずいいですと断り、家に帰ってネットで調べたら、ICTPは骨転移腫瘍マーカーだった事、勧められた点滴は骨転移した時に使うゾメタだった事を知り、そんな説明も検査も何も無くその流れって事は、数値も高いし骨転移してるんじゃないか?と不安な毎日で、いろいろな対応で先生に対しても不信感しかありません。
経済的にセカンドオピニオンも出来ないので、今出来る事は、手術した大学病院に行くしかないなと思い予約は取りましたが、無駄な医療被曝ば受けたくないのですが、田澤先生でしたら、この状況で私はどんな検査をすれば良いと思われますか?
まだまだこれから先が長い治療や経過観察ですし、自分の身は自分で守るしかないと本当にこのQ&Aを読んで思います。
自分自身が納得出来て、心から信頼出来ると思える先生に診て頂きたいと、田澤先生に是非診ていって頂きたいと切に思いますが
紹介状がないと転院する事は出来ないのでしょうか?
出来るとすればどうすれば良いのでしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「CEAは検査されてなく、その先生はいきなりICTPが7.6だから、もし癌細胞があったら破骨細胞を刺激して骨を壊すから、それを予防する薬が点滴15分で終わるから打ってく?次回でもいいけどね。」
⇒とんてもない治療です。
ICTPなど、そもそも無用な検査です。
そんな値だけで「骨転移として治療(骨吸収抑制剤)する」としたら『とんでもない事』です。
○担当医としは(念の為という)「軽い気持ち」なのだとは推測しますが、(骨転移でも無いのに)「骨転移とされて治療される」患者さんの気持ちは溜まったものではないのです。
「数値も高いし骨転移してるんじゃないか?と不安な毎日」
⇒ICTPの値など気にする必要はありません。(そもそも7.6など、よくある値です)
担当医も「本当に骨転移を疑っている」訳では無く、むしろ「予防的な意味も含めて、やって損はない」という気持ちだとは推測できます。
「田澤先生でしたら、この状況で私はどんな検査をすれば良いと思われますか?」
⇒私はそもそも「ICTPやNCC-ST439」などの無駄なマーカーは測定しません。
転移再発の監視という意味では「CEAとCA15-3だけで十分」です。
○ただ、どうしても気になるのであれば「骨シンチ」もしくは「PET」となります。
「紹介状がないと転院する事は出来ないのでしょうか?」
⇒大丈夫です。
受診してから、私の方から「当院に転院希望なので、診療情報をお願いします」と依頼します。(病院から依頼されて、断ることは絶対にできないのです)
「出来るとすればどうすれば良いのでしょうか?」
⇒市川がいいですね。
江戸川病院は今非常に混雑していて「新規予約をストップ」しています。
♯それで(予約なしの)「当日受付」を案内されるわけですが…(当日受付だと、相当待ち時間が長いし、私も他の「待っている患者さん達」の事が気になり、ゆっくりとした診療ができないのです)
それに比べれば「2,3カ月待ち」でもメディカルプラザ市川で予約した方が診療に余裕ができます。