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今後の治療法について

[管理番号:3458]
性別:女性
年齢:47歳
 
今後の治療方針に不安を感じご相談させていただきたいと思います。
左胸にしこりを感じ、5月下旬にクリニックを受診。
触診でしこり確認され、エコー、マンモを行った結果、影が認められ、針生検を行いました。
 
結果、
しこりの大きさ0.78cm
リンパ節 微小転移があるかも
ER 90% PgR 90%
HER2 1+ グレード1
ki67 20%
ルミナールA
温存術+センチネルリンパ節生検との説明をうけました。
紹介された病院で、エコー,MRI,CTの結果、
しこりの大きさ1.4×1.2cmだが乳頭に近く温存が無理、リンパにも転移が見られるとのことで、左胸全摘出+腋窩郭清に術式が変更になり7月(下旬)日に手術を行い、8月(中旬)日に病理結果が出ました。
 
<病理結果>
大きさ 2.0×1.5×1.5cm
組織型 硬癌
拡がり 乳頭に少しかかっていた
リンパ管侵襲 ly+
脈管侵襲 V0
リンパ節転移 2/26
取り残しなし
ホルモン 陽性(+++)
HER2 0
核異型度 グレード2
ki67 26%
 
主治医から今後の治療方針として、抗がん剤(TC 3w/4クール)+ホルモン治療をすすめられました。
(年齢、リンパ管侵襲、ki67の数
値、グレード2 ルミナールタイプだがリスクが高いからとの事でした)
ki67の数値がグレーゾーン、リンパ節転移2個…という事で私としてはホルモン療法単剤で…という思いが強くあります。
出来れば抗がん剤は避けたい…と思っているのでオンコタイプDXの事を聞きましたが、閉経前でリンパ転移があるので適応ではないと言われました。
でも、日本でも同じような検査が出来るようになったとのお話を伺い、その検査を受けようかと思っています。
(検査名は忘れてしまいました。
金額は25~6万位と言っていました)
もし抗がん剤治療を行った場合、上乗せ効果はあるのでしょうか。
 
田澤先生ならどのような治療を行われるでしょうか。
もし、田澤先生も抗がん剤をすすめるとしたら何を使いますか。
ご意見を伺いたく思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
 
pT1c(20mm), pN1, luminal
質問者のいうように「本当に抗ガン剤が必要か?」はOncotype DXしてみるといいでしょう。
 
「オンコタイプDXの事を聞きましたが、閉経前でリンパ転移があるので適応ではないと言われました。」
⇒これは認識が古い(誤っている)です。
 以前はそのように言われていましたが、現在は適応となっています。
 それは以下の3つの臨床試験で確認されたからです。
 
■ECOG 2197
HT + AC vs ATを比較した閉経前・リンパ節転移陽性を含む試験の検体を用いて
oncotype DX(r)を検証したところ、予後予測が可能であると示されました。
 (Goldstein LJ, et al. J Clin Oncol. 2008;26:4063-4071.)
 
■ NSABP B-28
Tam + AC vs AC-Pを比較した閉経前・リンパ節転移陽性を含む試験の
検体を用いてoncotype DXを検証したところ、予後予測が可能であると示されました。
パクリタキセルの追加効果について、高リスクにおいて傾向は見られましたが、
有意差はありませんでした。(Mamounas EP et al. ASCO 2012;abstr 1)
 
■ PACS01
FEC vs FEC-Dを比較した閉経前・リンパ節転移陽性を含む試験の検体を用いて
oncotype DXを検証したところ、予後予測が可能であると示されました。
(Penault-Llorca F et al. ASCO 2014;poster 11052)
 
「もし抗がん剤治療を行った場合、上乗せ効果はあるのでしょうか。」
⇒あまり無さそうです。
 ご本人がその気なら、是非「OncotypeDX」してみましょう。
 
「田澤先生ならどのような治療を行われるでしょうか。」「もし、田澤先生も抗がん剤をすすめるとしたら何を使いますか。」
⇒もしも(OncontypeDXをしてハイリスクならば)
 TC4回です。(低や中間ではホルモン療法単独です)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

前回質問させていただいたときに、田澤先生が閉経前、リンパ節転移ありでもオンコタイプの適応がある…とおっしゃって下さったので、オンコタイプDXを受けました。
 
結果は、
再発スコア24の中間リスク
5年再発または死亡率
タモキシフェン単独療法
14%(95%CI:9%-22%)
タモキシフェン+化学療法
13%(95%CI:9%-19%)
ER=7.6陽性
PR=8.0陽性
HER2=8.8陰性
で、ホルモン剤単独での治療を選択出来ました。
本当にありがとうございました。
 
10月(上旬)日から、ノルバデックス20mgを服用しています。
いくつか質問がありますのでよろしくお願いいたします。
 
①主治医から閉経前だから、3ヶ月に1回の注射(名前は言いませんでしたが、リュープリンかゾラデックスですよね?)を打ってもいいかもしれないですね、と言われ、11月(上旬)日の受診の時に返事をします。
現在48歳です。
田澤先生ならどうされますか?もし、打つようならリュープリン、ゾラデックスのどちらにしますか?個人差はあると思いますがどちらも副作用は相当出るものでしょうか?
 
②最初の治療方針の説明の時(オンコタイプを受ける前です)に主治医から、抗がん剤の後に放射線、そしてホルモン剤とお話があったのですが、ホルモン剤開始の時に、放射線治療の話はありませんでした。
放射線治療はしなくてもいいものでしょうか?
田澤先生ならどうされますか?
 
もし受けるなら、リニアックよりもトモセラピーの方がいいのでしょうか?
私としてはやった方がいいことは受けたいと思っています。
お忙しい中、申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
 
「①主治医から閉経前だから、3ヶ月に1回の注射(名前は言いませんでしたが、リュープリンかゾラデックスですよね?)を打ってもいいかもしれない」
⇒是非、LH-RHagonistは併用してください。
 ASCO(2016)のガイドラインでは(閉経前であり)「明らかな低リスク(=1期)ではない」場合には(年齢は無関係に)「LH-RHagonistの併用が推奨」されています。
 
「田澤先生ならどうされますか?もし、打つようならリュープリン、ゾラデックスのどちらにしますか?」
⇒上記の通りです。
 ゾラデックスもリュープリンも同じだとは思いますが…
 (エビデンスは殆どゾラデックスだから)ゾラデックスを行います。(ただし、針が太いのが嫌というのであれば、リュープリンとします)
 
「個人差はあると思いますがどちらも副作用は相当出るものでしょうか?」
⇒それ程ではありません。
 まずは、やってみましょう。(副作用は、「もしも出たら」その時考えましょう)
 
「放射線治療はしなくてもいいものでしょうか?」
⇒全摘だから不要です。
 全摘後の放射線照射の適応は「リンパ節転移4個以上」です。(質問者は2個ですよね?)

 
 

 

質問者様から 【質問3 エコーの結果が心配です】

性別:女性
年齢:50歳
病名:
症状:

オペから2年半が経過し、現在は3ヶ月毎の受診でエコー検査をし、ホルモン剤(ノルバデックス)とリュープリンにて治療中です。

今まで、エコー、マンモ共に問題なかったのですが、今回(12月(上旬)日)エコーをしたところ、左脇腋窩リンパ節腫大の疑いと言われ、次回のエコーを診て細胞診をしましょうとのことでした。

いつもは診察時にドクターがエコーをしていましたが、今回は診察前に技士さんによるエコーでした。

今までのQ&A、今週のコラム(第65回第66回)で書かれているものを読ませていただいています。
大切な一枠、同様のような質問になってしまい、お忙しい田澤先生には大変申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

今週のコラム 65回目 これを「腋窩リンパ節腫大」と記載された検診結果をみて、健診受診者が心配し悩んだとしたら…
今週のコラム 66回目 『腕の付け根のリンパ節を腋窩リンパ節と勘違いして、細胞診を推奨』とは!

①左脇リンパ節に転移があり(2/26)リンパ切除をしているのにリンパ節腫大になることはあるのでしょうか。
術後、取り残しなしとお話がありましたが、取り残しがあり再発と言うことも考えられるのでしょうか。

②もしそうだとしたら、そうじゃないとし
ても気になるエコー画像なのに、次回の診察(2月(下旬)日)まで放置していても大丈夫なものでしょうか。

③再発…と言う言葉をドクターから聞きとても不安です。
もし再発だとすれば今後の治療はどのようなものになるのでしょうか。

④当初2年間の予定のリュープリンでしたが、年齢的に微妙なのでもう少し打ちましょうとの事ですが2年以上打つことはどうなのでしょうか。

いろいろと質問してしまいましたがよろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

〇今回のkey pointは(今までが主治医のエコーだったのに)「今回が技師エコー
だった」ことです。
 エコーにおいては「術者によって、所見の解釈が異なる」ことはザラなのです。
(術後なら、尚更です)

「①左脇リンパ節に転移があり(2/26)リンパ切除をしているのにリンパ節腫大になることはあるのでしょうか。」
「術後、取り残しなしとお話がありましたが、取り残しがあり再発と言うことも考えられるのでしょうか。」

→状況的には…
 可能性は「ごく低い」と感じます。

「②もしそうだとしたら、そうじゃないとしても気になるエコー画像なのに、次回の診察(2月(下旬)日)まで放置していても大丈夫なものでしょうか。」
→これは、本来(技師エコーを見た時点で)「どれどれ、実際に俺が見てみるか」
と、その場で主治医自身が「見ていれば済むこと」だったと思います。(診察室にはエコーが無いのですか??)

「もし再発だとすれば今後の治療はどのようなものになるのでしょうか。」
→腋窩郭清です。(ただし、そもそも初回手術時に郭清しているようなので、「再発した部位のみの切除」となるでしょう)

「2年以上打つことはどうなのでしょうか。」
→それは「腋窩リンパ節再発?」とは無関係なことです。
 リュープリン自体、年齢的に(ASCOのガイドライン通りだから「誤り」ではありませんが、必要性が高いとは思いません)