[管理番号:7658]
性別:女性
年齢:57歳
病名:非浸潤性乳管癌
症状:
田澤先生はじめまして。
よろしくお願いします。
6月に針生検で非浸潤性乳管癌と診断され7月に局麻下で左乳房部分切除術を受け、
術後病理の結果を聞きに行った時に主治医から今後、無治療を提案されたのでそれについての質問です。
針生検結果
Non-invasive ductal carcinoma
グレード1
免疫染色学的には
ER 90%
PgR 80%
HER2 (-)
Ki67 15%
術後病理診断結果
Non-invasive ductal carcinoma
左乳腺:60×50×30mm
Nippleの上方に10×8×10mm大の腫瘍性病変。
Area AC
組織学的には
Non-invasive ductal carcinoma,Papilo-tublar carcinoma.
Comedo patternを認め、浸潤像は確認できない。
グレード 1
Tubular differentiation 1
核異型 2
核分裂像 1
手術断端に腫瘍の露出を認めない。
浸潤部分がなくてホッとはしたのですが今後の治療について部分切除術なのに無治療を提案されました。
ホルモン療法は私も乳管内以外にガンはなかったのだから全身治療はしなくてもいいと納得したのですが放射線療法はガイドラインでは非浸潤性乳管癌でも部分切除術の場合は放射線療法を行うのが標準治療であるとあるのに放射線性肺臓炎の副作用があるし再発するにしても5年以上経ってから(浸潤癌ならルミナールAだから?)になるだろうし新規にできる可能性は普通の人と同じだし治療を受けても予後に差はなく過剰治療になる恐れもあるからしなくてもよい。
その代り6ヶ月ごとのエコーで万が一再発や新規にできた場合は早期に見つかるようにフォローするとのことでその時は治療が何もないのに越したことはないかと納得したのですが帰宅してガイドラインを読み返して局所再発率の数字を見て無治療で大丈夫なのか?と疑問に。
止血しづらい病気があって(今回の手術でも大きな血腫ができてなかなか吸収されず術後1ヶ月経つが今も痛み止めを内服中)どこを切っても手術のたびに血腫ができるのでできれば手術はもうしたくないので少しでも再発率が下がるのであれば放射線療法を受けた方がよいのではないかと思い、お尋ねしました。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
どうでもいいことですが…
非浸潤癌なのに「Ki67]を調べていることが気になります。(非浸潤癌には適応がないKi67を測定するのだろうか?)
脱線しました。
結論から言えば「放射線を省略してもよい」根拠がありません。
★ご存知のように、ガイドラインでは「温存手術で放射線を省略していい例外」などは定めていません。
私の感覚では(生検で取りきれてしまったくらいの)「2-3mm以下」の「low grade」であり、全麻下で「かなりのマージン」を付けた場合には(ガイドラインにはありませんが)放射線の省略は可能と考えています。(質問者には、当て嵌まりません)
その根拠は、あるのか?
⇒あります。私自身の経験です。(十分すぎる症例数があるのです)
質問者様から 【質問2 】
非浸潤性乳管癌の部分切除術後の治療について
性別:女性
年齢:57歳
病名:非浸潤性乳管癌
症状:
田澤先生、お忙しい中お答えいただきありがとうございました。
主治医から放射線の副作用を色々言われて臆してしまったのですがここで放射線性肺炎などの記載を読んで主治医が言うほどのリスクではないと理解したので放射線を
やってもらうよう説得するために再度、質問させてください。
・私が省略にあてはまらない理由はガイドラインで標準治療とされている他に何があるでしょうか?マージンですか?
術前に主治医から
「非浸潤だからさほど大きく取る必要はない。マージンは5mmか1cm位」
と言われ
マージン5mmに驚いて全麻で大きめに取ってほしいとお願いしたのですが
・腫瘍が小さい(1cm)。
・センチネルリンパ節生検も不要。
・30分かかるかどうかで終わる。
・局麻でもマージンは十分取れるから全麻は不要。
と言われて局麻での手術でした。
実際には大胸筋のすぐ上という深部にあったのでエコーで見ながら注射針を腫瘍の下に入れ、麻酔薬で腫瘍を浮かせて取ると言っていましたがなかなか麻酔が効かずに麻酔薬を追加、追加でかなり入れましたがそれでも痛くて予定より時間もかかりました。
・病理結果にある通り大きく切ったと言われ、このことが放射線療法を省略する根拠の1つになっているようですがこれは十分なマージンとはいえないでしょうか?
・手術から1ヶ月以上経っていますがレモン1個大の血腫がなかなか吸収されません。
放射線は血腫が完全になくなってからの方がいいでしょうか?
さらに申し訳ありません。
もう1点。
先生は非浸潤の場合のホルモン療法は効果と副作用のバランスから勧めていらっしゃらないことを読んで私もしなくてもいいと思っていたのですがベーチェット病を診てもらっている膠原病内科主治医から抗TNF-α療法のバイオ製剤「ヒュミラ」を打っているので副作用として悪性腫瘍のリスクがただでさえ高いから全部やった方がいいと言われ、でも乳腺外科医は「何だそれ?」という反応でスルーされ、どうしたらいいか困惑しています。
専門外とは思いますが田澤先生はどう思われますか?
ちなみに…
Ki67を調べてしまった?詳細はわかりませんが…
針生検の結果コピーをもらった時に病理へのオーダー伝票部分もくっついていたので
それを見ると主治医は
「浸潤部でのER,PgR,HER2,Ki67を測定してください」
と書いてあったので主治医の指示ではなく、病理医が非浸潤だったのに全部調べてしまったのかな?と思いました。
そうかどうかはわかりませんが…
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「・私が省略にあてはまらない理由はガイドラインで標準治療とされている他に何があるでしょうか?マージンですか?」
⇒前回の回答を見ていますか??
(前回のコピペ)
私の感覚では(生検で取りきれてしまったくらいの)①「2-3mm以下」の②「low grade」であり、③全麻下で「かなりのマージン」を付けた場合には(ガイドラインにはありませんが)放射線の省略は可能と考えています。(質問者には、当て嵌まりません)
★上記①~③全てを満たした場合のみ省略可能だと思っていますが、質問者が満たしているのは②だけですよね?
「病理結果にある通り大きく切ったと言われ、このことが放射線療法を省略する根拠の1つになっているようですがこれは十分なマージンとはいえないでしょうか?」
⇒局麻にしては「頑張った方」なのかもしれませんが…
全麻で「最初から、放射線を省略するつもりで」本気でマージンを付けた場合とは全然違います。
「放射線は血腫が完全になくなってからの方がいいでしょうか?」
⇒あまり関係なさそうですが…(実際にみていないので解りませんが)
「悪性腫瘍のリスクがただでさえ高いから全部やった方がいい」
⇒膠原病内科医の心配も解らないではありませんが…
非浸潤癌でホルモン療法を行うことは無意味です。