Site Overlay

術後1年半経過後にCA15-3大幅に上昇で骨転移の可能性はありますか?

[管理番号:7759]
性別:女性
年齢:51歳
病名:乳癌
症状:現在はなし

初めて質問させて頂きます。

2018年の1月に左胸にルミナルAタイプの乳がん、ステージ3と診断されました。

2018年3月に全摘手術を行い、術後6ヶ月間抗がん剤、その後放射線治療、その後ホルモン剤(毎日タモキシフェンを飲む、3ヶ月に1回注射)治療を現在まで行っています。

2019年7月に腫瘍マーカーを測定したところ、CA15-3が27で基準を超えていて、4月5月は6、6月は20だったのに対し、上昇し続けていることから、8月にもう1度検査したところ、30に上がっていたのでCTとMRIを撮りました。

結果、背骨のあたりに先生曰く「モヤモヤしたものが映っているが、典型的な骨転移ではなさそう。9月もう1度様子見ましょう」ということで、数日前に再度測定したところ、50と大幅に上昇したので、先生の判断で全身検索のPETを行うことになりました。

腰痛など症状は全く無いのですが、CA15-3について調べると「この値の上昇は遠隔転移が疑われる」と書いてあったので不安です。

また、この論文「乳癌術後に腫瘍マーカーが持続的に上昇した一症例」
https://tmu.repo.nii.ac.jp/

を読んだのですが、素人ながら「術後に腫瘍マーカーが上昇し続け、CTなどでも転移が
同定されず、症状もない場合は予後が悪い」と解釈してしまったのですが、どうでしょうか?

まだPETを撮っていないので転移しているかはわかりませんが、田澤先生は遠隔転移の可能性は高いと思われますでしょうか。
よろしくお願いします。

長文乱文失礼致しました。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

あまり考えすぎずにシンプルに考えましょう。

腫瘍マーカーが上昇した場合には、まずは「遠隔転移再発」を疑います。(そのための「マーカー」なのだから当然ですが…)

そこで画像診断を行うわけです。
画像診断で「遠隔転移所見がない」場合には「経過観察」となり、(その後)下がるならいいのですが、「上がり続けた場合はどうするのか?」

★これは「転ばぬ先の杖」として(再発巣不明の)「再発」として抗がん剤すべきでしょう。
 抗がん剤することで下がるようならば、「抗がん剤が効いている=(画像で見えないが)どこかに再発している」と判断して、(少なくとも)マーカー正常化するまで治療を続けるべきでしょう。

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

CA15-3上昇で遠隔転移再発の可能性
性別:女性
年齢:51歳
病名:乳癌
症状:背中が痛む

回答ありがとうございます。

追加で何個か質問したいことがあります。

・質問1:1年半前の術後病理結果が以下のように出ましたが、術後EC療法、TC療法、放射線、タモキシフェン毎日服用、注射を行ったところでどれくらい再発リスクは減りますか?

手術後の病理結果です。

大きさ:6cm*6cm
リンパ節転移:あり(31/33)
ER:陽性(99%)
PR:陽性(99%)
HER2:陰性
Ki-67:15%
リンパ管浸潤:2+
静脈浸潤:1+
悪性度:グレード2
切除断端:陰性
組織型:硬癌
ステージ3

・質問2:前の質問のようにCA15-3の値が少しずつ増加しているのが不安なのですが、調べるとCA15-3の値が増加するのは肝転移が多いという情報を見つけたのですが、やはりそうなのでしょうか?

・質問3:CA15-3が50を超えていた場合、やはり再発する可能性が非常に高いのでしょうか?
ただ、今年の1月ごろにCEAが上がり続けたのですが、今は正常値に戻っています。
CA15-3も同じように下がる可能性がありますか?

・質問4:数ヶ月前のCT検査では背骨のあたり以外は何も映っていないと言われたのですが、肝転移はCTで見つからないことは多いのでしょうか?

・質問5:乳癌の骨、肝臓、肺、脳の遠隔転移に転移した場合それぞれ予後はどれくらいでしょうか?また、転移する順番等はありますか?

・質問6:ここ最近背中のあたりが場所変わりしながら持続的に少し痛むのですが、これも癌の影響ですか?

・質問7:乳癌の骨転移単独ではリンパ節転移や局所再発並みに予後は良いと聞いたのですが、本当でしょうか?
本当だとしたらどれくらいの予後なのでしょうか?

・質問8:転移再発部位全体のうち、骨転移単独で再発する割合はどれくらいでしょうか?
骨転移があった時点で、治療を行ってもほとんどが別の臓器(肺や脳、肝臓)で再発すると聞いたのですが、やはり本当でしょうか?

・質問9:ルミナルAタイプの乳癌は予後が良いと聞きますが、約20%の患者にホルモン療法が効かないと聞いたのですが本当でしょうか?

・質問10:現在PETの結果待ちですが、仮に「異常なし」だった場合、先生はどのような治療を勧めますか?

質問が多くて恐縮ですが、回答して頂ければ幸いです。
よろしくお願いします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「・質問1:1年半前の術後病理結果が以下のように出ましたが、術後EC療法、TC療法、放射線、タモキシフェン毎日服用、注射を行ったところでどれくらい再発リスクは減りますか?」
⇒そもそもKi67=15%だから抗がん剤による「上乗せ効果は期待できない」と思います。

 ただし腫瘍径も大きく、リンパ節転移も多いので(実際には)抗がん剤しないわけにはいかない的な発想にはなります。(ただ、上乗せが保証できることではないのです)

「調べるとCA15-3の値が増加するのは肝転移が多いという情報を見つけた」
⇒ナンセンス。

 私の経験では、その情報は根拠に乏しいですね。
 乳癌は骨転移の頻度が多いので、実際にCA15-3で見つかるのは骨転移の方が圧倒的に多いですよ。

「・質問3:CA15-3が50を超えていた場合、やはり再発する可能性が非常に高いのでしょうか?」
⇒値に特別な意味などありません。(もともとの基準値が各自異なるから)

 頭でっかちに物事を狭く考えずに、「上昇しつづけたら、このまま経過をみているよりも、治療を開始する」
 シンプルに考えましょう。

「肝転移はCTで見つからないことは多いのでしょうか?」
⇒考えすぎ。

「・質問5:乳癌の骨、肝臓、肺、脳の遠隔転移に転移した場合それぞれ予後はどれくらいでしょうか?」
⇒臓器別の予後の数値などありません。

「また、転移する順番等はありますか?」
⇒骨転移が多いことは間違いありません。

「・質問6:ここ最近背中のあたりが場所変わりしながら持続的に少し痛むのですが、これも癌の影響ですか?」
⇒場所替わりであれば、違いそうに思います。

「本当だとしたらどれくらいの予後なのでしょうか?」
⇒骨転移といっても「ごく小範囲」のものと「広範囲」では全く違います。一括りにはできないのです。
 
 再発した場合の予後は誰にもわかりません。(状況にもよりけり)
 10年以上の長期生存が5%前後あることは知られています。

「転移再発部位全体のうち、骨転移単独で再発する割合はどれくらいでしょうか?」
⇒正しい数値など存在しません。

 私の感覚では50%位だと感じます。

「骨転移があった時点で、治療を行ってもほとんどが別の臓器(肺や脳、肝臓)で再発すると聞いたのですが、やはり本当でしょうか?」
⇒骨転移はlife threateningではないので、最終的に命を奪う場合には内臓転移となります。

 つまり、治癒以外はそういう事になります。

「・質問9:ルミナルAタイプの乳癌は予後が良いと聞きますが、約20%の患者にホルモン療法が効かないと聞いたのですが本当でしょうか?」
⇒どこの情報?
 
 頭でっかちにならずに、「最適な治療を行う」ことです。

「・質問10:現在PETの結果待ちですが、仮に「異常なし」だった場合、先生はどのような治療を勧めますか?」
⇒それでも「マーカーが上がり続けた」場合ですね?

 Palbociclib+Fulvestrantでいくか? 最初にケモをするか(するとしたらeribulin or bevacizumab + paclitaxel)悩むところです。

 ★理想的には ケモ⇒(マーカー)正常化⇒palbociclib+Fulvestrant

 

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

骨に遠隔転移再発
性別:女性
年齢:51歳
病名:乳癌
症状:背中が痛む

PETの結果、多発性骨転移とのことで、背骨や骨盤、肋骨に転移していました。

主治医の先生はリンパ節転移数が非常に多いのもあるが、術後にタモキシフェンを行って1年と早い再発だったので、効いてない可能性が高いとおっしゃっていたのですが、田澤先生の見解はどうでしょうか?

また、閉経のタイミングがちょうど乳がんと告知されたタイミングだったので、全くの考えすぎだとは思いますが、閉経前の薬と閉経後の薬を間違えて飲んでいたことが原因でタモキシフェンが効いてないという可能性はありますか?

主治医の先生は転移したということで、田澤先生がおっしゃっていたのと同じイブランス+フェソロデックスで(効くかは未知数だが)ホルモン療法を継続して様子見するか、
TS1という抗がん剤を始めて様子見するか、どちらか選んでくださいとことですが、
田澤先生はどちらを勧めますか?または別の治療法を勧めますか?

また、抗がん剤を始めたら原則的にはホルモン療法には戻らないとおっしゃっていたのですが、田澤先生はどうお考えでしょうか?

よろしくお願いします。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

多発性骨転移ですか。
お気持ちお察しします。

私はTS-1を使うことはありません。(効果と副作用のバランスが悪いため)

これは『今週のコラム 198回目 乳癌の薬物療法2 その隙間(ニッチ)に今嵌りこんでいるのが「CDK4/6阻害剤」です』から始まるBさんのケースと一緒です。

ただ、「術後6か月抗がん剤」とあるので(Bさんとは異なり)アンスラサイクリン(EC/AC/FEC いずれか)+タキサン(DTX)をしていると推測します。

抗がん剤するとすればbevacizumab+paclitaxelもしくはeribulin ⇒マーカーが正常化を目標として⇒(その後)Fulvestrant+palbociclibとします。