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微小転移の捉え方について

[管理番号:3977]
性別:女性
年齢:33歳
お忙しいところ、質問をお受け頂いてありがとうございます。
妻が10月に左乳房の約4分の1を部分摘出する手術を受け、現在は放射線治療中です。
術後の病理検査結果は以下の通りです。
・腫瘍 8mm 広がり 5.5mm
・核グレード3(術前検査では1だった)
・ly – v –
・センチネルリンパ節で2個中1個に微小転移(マイクロメタ)→リンパ節郭清せず
・ホルモンレセプター +
・HER2 –
・ki67 5%
この病理結果を受けて、ホルモン剤(飲み薬+注射)と放射線は必須として、抗がん剤を適用するかどうかは、患者側で判断してほしい、と言われました。
Adjuvant Onlineでは、マイクロメタを考慮できないため、リンパ節転移ありの入力で得られた死亡率の半分で考慮しようということになり、その場合、抗がん剤利用で6%の上乗せ効果があるとの結果になったため、抗がん剤が検討の対象となりました。
質問:
・抗がん剤の適用は行うべきでしょうか?
・上記状態における10年健存率(再発なしの生存率)と生存率(再発ありも含めたもの)を教えて頂けないでしょうか。
・核グレード3は、核グレード1と比べ、どの程度再発率が上がるのでしょうか?
・センチネルリンパ節への微小転移(マイクロメタ)があった場合の予後は、転移が全くない場合と比べ、どの程度悪いのでしょうか?
・再発防止のためにできるだけのことをしたいため、標準治療(放射線、ホルモン、、)に加え、効果が期待できるなら、免疫細胞療法などの非標準治療も視野に入れて検討したいと思っています。
先生からご覧になって、こういった非標準治療の中で、
再発防止に向けて、少しでも効果が期待できそうなものはありますでしょうか?
お忙しいところ大変恐縮ですが、何卒よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(8mm もしかして5.5mm?), pN1mi, luminalA
私から見れば、「担当医と質問者の話し合い」は、そもそも「誤った方向」に行っている様です。
今回の件に関しては、「微小転移がどうこう」ではなく、「明らかなルミナールAだから抗癌剤による上乗せはない(無効)」というシンプルなものです。
♯微小転移は予後に影響しないので、そもそも気にしなくていいのですが、それ以上に(リンパ節転移の有無は無関係に)「明らかなルミナールAであること」の意味を良く考えるようにしてください。
「・抗がん剤の適用は行うべきでしょうか?」
⇒上記コメントのように
 ホルモン療法単独です。 私であれば (1秒も)迷いません。
「・上記状態における10年健存率(再発なしの生存率)と生存率(再発ありも含めたもの)を教えて頂けないでしょうか。」
⇒殆ど100%に近いと思います。
 Ki67=5%だから「核グレード3で計算するNewAdjuvant.com」での計算は、この場合正しくありません。
 もしも「数値を知りたいのであれば、Oncotype DXすべき」です。
「・核グレード3は、核グレード1と比べ、どの程度再発率が上がるのでしょうか?」
⇒核グレードで予後を考えてはいけません。
 どの程度影響を及ぼすのかは「それ以外の因子(腫瘍径やリンパ節転移など)」によって大きく異なります。
 ただ、質問者のケースでは「Ki67=5%」という事実からは「殆ど無視して構わない」レベルだと私は考えます。
「・センチネルリンパ節への微小転移(マイクロメタ)があった場合の予後は、転移が全くない場合と比べ、どの程度悪いのでしょうか?」
⇒微小転移は予後に影響を及ぼさないというデータがあります。
 実際にその通りだと思います。
 ○センチネルリンパ節生検が行われてから7~8年ですが、「それまでは、微小転移を調べることはできなかった=微小転移は(それとは気づかれずに)リンパ節転移無と認識されていた」という事実もあります。
「先生からご覧になって、こういった非標準治療の中で、再発防止に向けて、少しでも効果が期待できそうなものはありますでしょうか?」
⇒残念ながら、ありません。
○それよりも、(変なネットの情報に踊らされずに)現実を直視してください。
 8mmの癌で再発すると思いますか?(私にはそうは思えません)
 Ki67=5%なのだから、素直にホルモン療法をすれば十分すぎます。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

分かりやすいご回答を頂き、妻もだいぶ安心したようです。
本当にありがとうございます。
前回質問時に記載した病理検査結果に一点だけ記載ミスがありました。
「広がり 5.5mm」と書いてしまいましたが、正しくは「広がり 5.5cm」です。
単位が間違ってました。
広がりは予後には影響しないと思いますが、念のため共有させてください。
また追加で質問させて下さい。
先日、合計25回の放射線治療を終了し、抗がん剤を希望しない意思を主治医に伝え、現在、ノルバティックスを1錠/日だけ服用しております。
そこで下記について迷ってます。
・服用期間を5年 or 10年のどちらにすべきか。
・LH-RHアゴニストの併用をするべきか。
・オンコタイプ or マンマプリントをやると、方針(服用期間&LH-RHアゴニスト併用)を決定するための判断材料を得られるか。
ki67(5%)と核グレード(3)の数値が相反する結果の為、マンマプリントで再発リスクを調べた上で、現在服用中のノルバティックスに加え、LH-RHアゴニストとアロマターゼ阻害薬を併用して服用した方がいいのか迷っています。
核グレードが3、微小転移(マイクロメタ)が見つかった、若年である、という三点を考慮すると、10年の服用で、LH-RHアゴニストの併用もした方がいいのではないかと素人考えでは思っていますが、田澤先生のお考えを頂けると幸いです。
ki67の値は低いものの、
主治医によると、ki67の測定は術前だけで行っており、術後は行っていないとのことなので、不確実性があるものと思っています。
また最近出た論文で、マンマプリントの評価が急速に上がっているという情報を医師の方から聞くことができました。
その論文は、オンコタイプとマンマプリントで矛盾する結果が出たケースに関する内容と言われていました。
妻のケースの場合、どちらの検査が適切でしょうか。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
そもそも「Oncotype DXにしろ、MammaPrintにしろ」使用目的に誤りがあります。
あくまでも「抗ガン剤による上乗せ」を見るためのものであり、ホルモン療法として「Lh-RHagonistを加えるべきか?」という目的のものではありません。
物事はシンプルに考えなくては「本流」を見失ってしまいます。
質問者は33歳であり、「SOFT試験」からもLH-RHagonistは併用すべきでしょう。(ASCO2016では年齢に触れていませんが、やはり適応となります)
「・服用期間を5年 or 10年のどちらにすべきか。」
⇒今から5年後を考える必要はありません。
 5年経った際に、そのまま「もう5年継続すべきか?」考えるのが正しいと思います。
 「10年投与」の優位性は確実なので、「頑張れるなら10年」ということにはなるでしょう。
「・LH-RHアゴニストの併用をするべきか。」
⇒上記コメント通り…
 当然併用すべきです。
「・オンコタイプ or マンマプリントをやると、方針(服用期間&LH-RHアゴニスト併用)を決定するための判断材料を得られるか。」
⇒違います。

 使用目的を誤っています。
「LH-RHアゴニストとアロマターゼ阻害薬を併用して服用した方がいいのか」
⇒(日本では)適応外診療です。
 決して行ってはいけない診療です。(それを承知で使用している医師が残念ながらいることは、非常に遺憾に思っています。)