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アロマターゼ阻害薬とプラリアの併用

[管理番号:2724]
性別:女性
年齢:43歳
初めまして。
いつも拝見させて頂いております。
よろしくお願い致します。
海外(ドイツ)在住者で、2年前に乳がんの全摘手術を受けました。
以下が術後の病理です。
浸潤性小葉癌
T1b(7ミリ) N0(0/1)(sn)(i-) M0
ER PgR共に90パーセント以上
組織学的異形度2 (3+2+1)
核異形度1(2+1)
HER2陰性
Ki67 5パーセント
浸潤 f、Ly(-) V(-)
放射線治療が嫌だったので、全摘して同時再建しました。
こちらでは、閉経前ですが、アロマターゼ阻害薬とリュープリンの併用が一番良いと言われ、2年前からフェマーラを服用しています。
1年半過ぎた頃、骨密度減少が10パーセントほどあり、黄色の注意ゾーンに入ってしまいました。
それで、主治医に勧められて、プラリアを接種しましたが、今後の治療で悩んでいます。
1。
このままフェマーラ、リュープリン、プラリアを5年受ける
この場合、プラリアの副作用が気になります。
ネットでプラリアは止めた後のリバウンドがひどく、余計に骨密度減少が悪くなると読みました。
主治医は、プラリアを止める時は、乳がん治療を終える時なので、
エストロゲンが戻ってくるから大丈夫だと言います。
本当にそうでしょうか?
2。
タモキシフェンとリュープリンの併用に変更
この場合、まだエストロゲンが戻っていない状態でプラリアを止める事になるので、
リバウンドは酷いでしょうか?
まだ1度しか接種していないので、リバウンドもそれほどではないと期待できますか?
3。
タモキシフェン単独に変更
この選択が一番骨に良いのでしょうか?タモキシフェンはエストロゲンと癌細胞が結合するのを防ぐと言う事は、エストロゲンは存在していて、骨へのエストロゲンの役割は通常に機能すると考えて良いのでしょうか?
CYP2D6のテスト(これは日本で最近受けました)で注意(1と10)が出たので、タモキシフェン単独で十分か不安もあります。
主治医は、5年間乳がん治療に専念して(フェマーラ、リュープリン、プラリア)その後はその時対処しましょうと言います。
田澤先生も同意見でしょうか?
もし日本でも1が標準治療として選択できたとして、先生ならどの治療法を選びますか?
プラリアの副作用、リバウンドについて教えていただけますか?
もともと低リスクと理解しておりますが、ここまで副作用の危険をおかすメリットバランスはどうなのでしょうか?
それぞれのだいたいの10年再発率を教えて頂けると治療の励みになります。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(7mm), pN0, luminalA, NG1
完璧な早期癌です。
通常の基準では「タモキシフェン単剤」でしょう。
ただ、「LH-RHagonist+エクセメスタン」が「LH-RHagonist+タモキシフェン」より優れている。という臨床結果がでてから欧米では「LH-RHagonist+アロマターゼインヒビター」が用いられる事が多いようです。
○ここ日本では(LH-RHagonistと併用しようが、しまいが)『閉経前にはアロマターゼインヒビターは適応外』であることに注意が必要です。
 
「こちらでは、閉経前ですが、アロマターゼ阻害薬とリュープリンの併用が一番良いと言われ、2年前からフェマーラを服用」
⇒日本では「適応外」治療です。
 ○ただし、日本でも「適応外と知りながら」行っている医師がいます。(非難されるべきです)
 
「1年半過ぎた頃、骨密度減少が10パーセントほどあり、黄色の注意ゾーンに入ってしまいました。それで、主治医に勧められて、プラリアを接種しました」
⇒プラリアは適切な選択です。
 
「主治医は、プラリアを止める時は、乳がん治療を終える時なので、エストロゲンが戻ってくるから大丈夫だと言います。本当にそうでしょうか?」
⇒そう思います。
 ただ、自然閉経すれば「下がっては来る」ので「ホルモン療法を中止したからといっても、その時点で骨粗鬆症なのであれば、プラリアだけ継続」する可能性はあります。(それでも良いわけです)
 
「タモキシフェンとリュープリンの併用に変更 この場合、まだエストロゲンが戻っていない状態でプラリアを止める事になるので、リバウンドは酷いでしょうか?まだ1度しか接種していないので、リバウンドもそれほどではないと期待できますか?」
⇒治療法の変更と「骨密度の数値」は切り離して考えましょう。
 「治療法を変更」しても「骨密度が現実に低値」ならば、(治療法とは無関係に)プラリアは継続してください。
 
「タモキシフェン単独に変更 この選択が一番骨に良いのでしょうか?」「タモキシフェンはエストロゲンと癌細胞が結合するのを防ぐと言う事は、エストロゲンは存在していて、骨へのエストロゲンの役割は通常に機能すると考えて良いのでしょうか?」
⇒そう思います。
 
「CYP2D6のテスト(これは日本で最近受けました)で注意(1と10)が出たので、タモキシフェン単独で十分か不安もあります。」
⇒ヘテロだから大丈夫です。「ホモ」だったら考えてもいいとは思いますが…
 
「主治医は、5年間乳がん治療に専念して(フェマーラ、リュープリン、プラリア)その後はその時対処しましょうと言います。田澤先生も同意見でしょうか?」
⇒私はもともと「閉経前でアロマターゼインヒビター使用には反対」です。
 タモキシフェン単剤とすべきです。
 
「もし日本でも1が標準治療として選択できたとして、先生ならどの治療法を選びますか?」
⇒「選択できたとしても」質問者のような「低リスクには、そもそもLH-RHagonistは不要」と思うので、やはり「タモキシフェン単剤」です。
 
「プラリアの副作用、リバウンドについて教えていただけますか?」
⇒殆どありません。
 リバウンドも特に感じません。
 
「もともと低リスクと理解しておりますが、ここまで副作用の危険をおかすメリットバランスはどうなのでしょうか?」
⇒明らかにアンバランスです。
 
「それぞれのだいたいの10年再発率を教えて頂けると治療の励みになります」
⇒タモキシフェン単独しかデータはありません。
 9%です。(私の経験上では、もっと低いと思います)