いよいよ、今週のコラムも今年最後となりました。
昨年最後の今週のコラムを振り返ってみると『今週のコラム 8回目 NewAdjuvant.comとして復活しました!』でした。 私の好きな「一之輔」が初出場していました。(1年はあっという間ですね)
年末になると、いろいろと「まとめたく」なります。
前回は手術症例数(2016)をまとめましたが、その内訳として「どこから患者さんが来ているのか?」興味があったので(意外と時間がかかりましたが)調べてみました。
○このQandAのお陰で、当院は全国と繋がっています。
本来の医療圏である江戸川・葛飾は34%程度
他県が半数以上を占めています。(なかなか、こんな病院はありません)
(他県内訳)
関東が多いのは当然ですね。
千葉 66
埼玉 36
神奈川 25
茨城 7
群馬 5
栃木 2
その他には…
多いところで
大阪 9
愛知 6
静岡 6
♯大阪や愛知は人口が多い事を反映していると思います。
静岡は(感覚的に)比較的近いと言えます。
また、(私の出身地である)東北地方からも来ていただけました。
宮城 3
岩手、山形、秋田 各1
遠いところでは
九州(福岡2、熊本1、宮崎1)
北海道 2
中国地方(山口3、島根1)
関西(大阪9、兵庫1、和歌山1)
東海(愛知6、静岡6、三重1、岐阜1)
甲信越(長野3、新潟1)
○注意して欲しいのは、あくまでも「手術患者さん」だけの数字であり、外来受診だけの方は含まれていません。
さて、本題です。
今年最後のテーマは「超音波検査の重要性」とします。
私は常日頃から、「医師自身がエコーすることの重要性」について強調しています。
(実際に自分でやってみれば解るのですが)エコーは(見落としが発生し易いので、その分)集中力を要する「結構、負担のかかる手技」なのです。
逆に言うと、その分(その積み重ねにより)「技術の差が生まれやすい」重要な手技となります。
『検査技師が撮影した写真だけ見て、判断する』こと。
それは、(とっても、とっても)楽な事です。
それにより(医師自身の)「外来の負担の半分以上(言い過ぎではありません)」は軽減することになります。
しかし、それは(乳腺外科医にとって)決して屈してはならない『禁断の果実』なのです。
一度でも、その蜜の味を体験してしまうと…
それは「止められない覚せい剤」のように、(その医師自身を)蝕んでいくのです。
つい先日、そのような診療を受けた患者さんの実例を提示します。
皆さん、良く考えてみてください。
Aさん
「先生(前医)から、1期だから再発の心配なんか要らない。と言われていて安心していたのに、先日1年目の検査で、乳房内に再発しているって言われました。」
私
「どんな検査をしたのですか?」
Aさん
「マンモとエコーです。」
「マンモを撮影して影が写っているからと、(技師さんの)エコーを追加されて、再発している。散らばっている。これからCT撮影して針の検査すると言われました。」
「早期だからって、一度も診察もせずに、それで1年目に3cmのシコリだなんて… 先生(前医)のことを信用できなくなって、それでここに来たんです。」
私
「なるほど。事情は解りました。ホルモン療法で3カ月に1回通院しているのだから、時々は診察してあげるべきですね。」
○私は内心(3カ月に1回通院していたのに)「いきなり3cmのしこりがあります。」は酷過ぎるな。と思いながら、診察してみました。
まず「触診」
あれ? 3cmという割には触れないなぁ?
意外に思いながら(そのまま)「超音波」
(以下、私の心の内)
あー、これか!
でも、随分深いな。深いから触診で触れなかったのか!
しかし、これは(乳腺ではなく)その奥の「筋膜の裏側」だぞ。
これは(乳腺より、ずっと深い層にあるから)乳房内再発ではない。
腋窩リンパ節の部位とも随分、離れている。
「何だ、こりゃ?」と(エコーの)プローブの角度を変えると…
私
「心配ありません。これは筋膜裏に溜まった(おそらく手術時に形成された)血腫です。」
Aさん
「どういうことですか?再発ではないのですか?」
私
「再発ではありません。ただの(1年前の手術の際にできたであろう)血腫にすぎません。」
「もしも担当医が、時々エコーしていれば、その存在に(最初から)気付いていいた筈なのですが、一度もエコーしてこなかったから、急に出現したように思っているだけです。」
「担当医は、今回自分でエコーしてみたのですか?」
Aさん
「先生(前医)はエコーしていません。技師さんのエコー写真を見るだけでした。」
私
(やっぱりと思いながら)
「スクリーニングとして技師さんのエコーと言うのは、いいとしても。(今回のように)もしも疑わしい所見が有った場合には、(その際には)やはり医師自身がエコーすべきです。」「今回も、担当医が(おかしいな。と)自分でエコーすれば、プローブの角度を変えることで腫瘍ではないことに気付いた筈なのです。」
○質問者を安心させるため(+確定診断のために)針を刺して、血腫内容(凝固した血液)を確認して診察を終えました。
今回のポイントは
①腫瘍(?)の位置が深すぎる
皮下脂肪(赤)の奥に乳腺(青)の層がありますが、腫瘍?は、更にその奥の筋膜(オレンジ)を押し上げるように、その裏に存在している
②(一件)腫瘍のように見えるが、「プローブの角度を変える」ことにより、それが(液体の)貯留であることを確認できる。
(実際に角度を変えて撮影)
角度を変えると、腫瘍のようにみえたものが、ただの液体であることが容易にわかります。
①②ともに、技師さんに判断させるのは酷なことであり、医師自身が経験を積み重ねることで習得することなのです。