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早期発見3部作 第1部「石灰化編」(後篇) 公開しました。

こんにちは。田澤です。

それでは第1部「石灰化編」(後篇)始まります。

 

メディカル江戸川Aさんは、E病院を受診しました。

 

 

 

 

T医師

「Aさんですね。こんにちは。 今日はどうされました?」

 

Aさん

「これなんです。」と、いいながら 「左:良悪性の区別のつかない石灰化 要精査」と記載されている検診票を差し出します。

 

T医師

「あ、なるほど。これですね。」シャーカステンにマンモグラフィーをかけながら、T医師の目が光りました。

 

Aさん

「石灰化って、何ですか? カルシウムの沈着である事は調べて解っていますが…」

 

T医師

「解りました。石灰化については、きちんと話すと長くなりますがよろしいですか。

第1点:石灰化はカルシウムの沈着です。

第2点:石灰化は全身いたるところに起こります。例えば、頭から言えば、大脳基底核の石灰化、肩関節の石灰化、腎の石灰化、子宮筋腫の石灰化、血管の石灰化、挙げればきりがありません。

まずは石灰化が全身に普通に起こることで特別なことではないことを理解してください。」

 

Aさん

「なるほど、石灰化はカルシウムの沈着で全身どこにでも起こるものですね?それらの石灰化も癌と関係があるのですか?」

 

T医師

「関係ありません。まず石灰化=癌という考えを完全に捨ててください。その上で乳腺の石灰化のお話しをします。 乳腺というのは大変石灰化が起こり易い場所です。それは授乳の際にカルシウムを多く含むミルクが分泌されることからも考えやすいと思います。

Aさん、どうですか?カルシウムを含むミルクを分泌する乳腺には石灰化が起こり易いことが想像できますか?」

 

Aさん

「確かにそうですね。そのように説明されると解ります。乳腺にカルシウムが沈着することは特別なことではないんですね。」

 

T医師

「その通りです。そのような授乳期のミルクが関わったり、授乳期でなくとも分泌があります。乳腺症は乳腺が線維化を起こし硬くなり、のう胞という小部屋を形成します。そこでは内部にある分泌液中のカルシウムが沈着して石灰化が容易に起こります。これを分泌型石灰化といいます。 この分泌型石灰化が、乳腺におこる石灰化として大多数を占めており、乳腺に起きやすい事も理解しやすいと思います。

他にも間質型石灰化というものがあります。これは線維腺腫や乳頭腫など良性腫瘍の乳管近傍におこる石灰化であり、一つ一つの石灰化の粒が大きいという特徴があります。」

 

Aさん

「分泌型石灰化に間質型石灰化、乳腺に起こる石灰化にもいろいろな種類があるのですね。他にもあるのですか?」

 

T医師

「いよいよ、壊死型石灰化の説明をします。その説明をする前に「ブドウの房」を想像してみてください。1本の茎の部分から枝分かれして、最後に食べる部分(実)に繋がっていますね。 実の部分が腺房といってミルクを作るところで、それを運ぶその茎の部分を乳管といいます。

乳癌はこの乳管の細胞が癌化しておこるものが大部分です。乳管の細胞が癌化して乳管内を増殖すると、乳管という管の内部が癌細胞で充満してしまい中央部分の癌細胞が壊死(細胞死)を起こします。この壊死した癌細胞に沈着した石灰化が壊死型石灰化なのです。

乳管という管の中で癌細胞が急速に増殖し腫瘍内部で石灰化が起こる様子がイメージできましたか?」

 

と、T医師はiPADを用いて自らのホームページに掲載している図を見せながら説明しました。

 

Aさん

「ありがとうございます。図を見ながら説明を聞いたので良く理解できた気がします。」

 

T医師

「分泌型石灰化、間質型石灰化、壊死型石灰化の3種類があることを説明しました。

分泌型石灰化:殆どが乳腺症など良性疾患が原因でえあり、ごく一部が癌が原因です。

間質型石灰化:これは全て良性疾患が原因です。

壊死型石灰化:これは逆に全てが癌が原因です。

それで全ての石灰化の中で壊死型を含め癌が原因である割合は1%もありません。」

 

Aさん

「えっ! 1%?  どこかのブログで石灰化の20%が癌って書いてあった気がするのですけど」

 

T医師

「それは大きな誤りです。乳腺の石灰化の中の殆ど(90%以上)は最初から良性と判断できるものです。良悪の区別ができない石灰化(=要精査となる)はそもそも全体の5%以下です。

これら良悪の区別ができない石灰化の中で20%が癌というのが正しい数字です。

つまり全体でみると、1%以下となります。」

 

Aさん

「わかりました。私はすでに良悪の区別のできない石灰化という時点で全体の5%以内に絞り込まれている訳ですね。」

 

T医師

「残念ながら、その通りです。つまり癌の確率がおよそ20%あります。

確定診断には、その石灰化を狙ってその部分の組織検査をするしかありません。

確定診断しない場合には、経過観察として半年後に再度マンモグラフィーを撮影して石灰化が増加しないかを確認します。」

 

Aさん

「マンモグラフィーを見ただけで確定診断はできないのですね。」

 

T医師

「マンモグラフィーは画像診断です。確定診断には実際に組織を採取して顕微鏡で見る(組織診断)が必要です。

実際に私は、自らの経験としてステレオガイド下マンモトーム生検という石灰化を採取する検査を1000人以上に行っています。

その中で、ある程度経験から(この石灰化は、癌の可能性が高そうだな?とか、逆に低そうだな?)というような予測をつけるのですが、私のような経験を持ってしても石灰化を画像だけで判断するのは危険だという結論に達しました。

実際には(えっ!これが? というような石灰化が採取すると癌が原因であったり、逆に これは癌だな。と予測していた石灰化が実は癌と関係無い)事も決して珍しくはないのです。」

 

Aさん

「わかりました。私は経過をみるよりも生検を希望します。そのステレオガイド下マンモトーム生検ですが、先生のホームページで見ました。石灰化をターゲットとする吸引式の針生検と書いて有りましたが…」

 

T医師

「その通りです。あなたの場合には左乳房をマンモグラフィーの器械で挟みます。

その状態で20分程度の検査です。原理としては、挟んだ状態で2方向から撮影することで石灰化の正確な位置座標を計算し、局所麻酔した上で、生検針を正確に挿入し吸引しながら採取するのです。 実際の流れについては ホームページの石灰化3部作に記載していますので、参考にしてください。

それでは、今日は超音波検査をします。」

 

T医師(超音波検査終了後)

「超音波検査では全く異常はありません。石灰化はマンモグラフィーでしか見えない事が多いのですが、確認しました。それではステレオガイド下マンモトーム生検の日程を相談しましょう。 当院では木曜日の午後に行っています。一番早いところで来週(木曜日)の4時の枠が空いてます。」

 

Aさん

「それでは、来週(木曜日)4時でお願いします。」

 

プロローグ

その後Aさんは「ステレオガイド下マンモトーム生検」を受けました。

6

実際のステレオガイド下マンモトーム生検の様子は「石灰化3部作第2部」を参考にしてください。

結果、非浸潤癌で究極の早期発見となりました。

  • 石灰化は早期発見の最大のチャンスなのです。

安易に「経過観察」を誘導してはいけません。

きちんと「20%の確率」があるという情報提供をすべきです。その上で「患者さん自身が経過観察を望むのであれば、それはいいのです。」

医療者側から「早期発見の芽をつぶすことはあってはならない事です。

 

◎石灰化はステレオガイド下マンモトーム生検のない施設では診療してはいけません。