[管理番号:12683]
性別:女性
年齢:50
病名:
症状:全摘後、再建した乳房内にしこり
投稿日:2025年05月07日
田澤先生
お忙しいところありがとうございます。
7年半前に初めて乳がんになったときには、手術まで短期間で判断しなければならないときに、乳がんプラザの記事を読み込み、私なりに理解を深めて臨むことができました。とても感謝しています。
その際、全摘同時再建(皮弁法)を選択しましたが、その全摘した右乳房にしこりが発見されましたので、相談させて下さい。
初回手術の際のデータ及び術後治療の経緯
Stage2A
エストロゲン、プロゲステロン 強陽性
HER2 1+(陰性)
Ki67 18.2%(術後)
グレード1
浸潤癌病巣は3切片にわたり、大きさ20mmとしました。
センチネルリンパ節生険で右わきのリンパ節に転移が1つ見つかり、たしか3つ目くらいまで切除したと説明を受けたと思います。
術後の治療としては、全摘ということで放射線治療はなし。リュープリンとノルバデックスの服用を始めましたが、副作用が重く、アロマシンに切り替えた後、結局飲み薬については2年で断念しました。リュープリンについても、途中休薬を挟んで計3年行い、その後治療を行わず経過観察をしていました。
抗ガン剤は、リンパ節転移があったことから、主治医はなるべくやってほしいが、効果がそれほど高くない可能性もあるため、本人の希望に任せるということでした。個人的な事情があったことと、ルミナールAでは抗がん剤は不要と認識していたことから、抗がん剤治療をしないことを選択しました。
今回
3月の定期健診では血液検査を行い、腫瘍マーカー問題なし。
右乳房は全摘を行っているため、通常は左乳房または両乳房の触診をするが、なぜか今回に限って右乳房のみ触診を行い、問題ありませんねと言われました。いつも多忙で疲れている医師なので、うっかりしたのかと特になにも指摘しませんでしたが、この時点ではしこりはなかったのだと思います。
4月半ばに自分で右乳房の下淵にしこりを発見しました。1センチ位のプルプルした感じでリンパ節が腫れた物に似た感じです。アトピー体質のため、リンパが腫れるのはよくあることで、今回も原因不明の蕁麻疹が出てかきむしっていたのでそのせいとも思われましたが、念のため主治医のいない日程で緊急に受診しました。そこでもう一つのしこりが見つかりました。形は少しいびつな気がします。2つとも、触ってもあまり動きません。
その日のうちにマンモグラフィーを行い、結果は後日主治医のいる日にということになって、一昨日受診してきました。
マンモグラフィーは特に異常なし。この時点で初めてエコーを行い、針生検を行う必要があると言われましたが、連休で検査の日程が取れず、検査結果を聞く受診日まで、さらに3週間もかかります。
質問1 全摘後皮弁法再建の筋肉内の再発は、局所再発か?
今回、主治医が「局所再発」と表現しました。
私は、局所再発は部分切除の場合の取り残しであると理解していたのですが、今回他の方のQ&Aを読み、大胸筋局所再発があり得ることを知りました。しかし、今回のしこりのうち少なくともひとつは、乳房に軽く手を添わせた状態で触れる位置にあることから大胸筋内のしこりではないように思われます。とすると、再建時に入れた広背筋の中にできていると思われます。主治医も「筋肉の中にしこりがあるので、手術する場合には、形成外科の先生とも相談して行わなければならない」と言っていました。
管理番号1148で「筋肉転移など、ありません」と回答されていますが、それは、どこであろうと、一般に筋肉に遠隔転移はしないという意味ですか?それとも大胸筋への転移であれば、近接しているのだから局所再発とみるのが自然という意味でしょうか。後者の場合、広背筋であっても、癌のあった場所に持ってきたことで物理的に近いので、局所再発したと判断して差し支えないですか。遠隔転移の可能性を否定するためCT検査し、同日に針生検(マンモトーム生検)の予定になっていますが、乳房に十分に触れる大きさのしこりがある段階で、CTで画像的に確認できる転移がなければ、遠隔転移ではないという判断ができますか。
質問2 全摘後皮弁法再建の筋肉内のしこりに針生検をして良いか。
また、同じ方への回答(管理番号638)で「筋肉内にあるものは当然「針生検はすべきでありません」(出血のリスクが高すぎ危険なのです)」と回答されていますが、今回針生検をする予定になっています。主治医は、筋肉内への再発は経験がないと言っていたこともあり、
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
全摘後の胸壁再発ですね。
胸壁と一言で表現しても「皮膚側」と「筋肉側」に別れます。
質問1 全摘後皮弁法再建の筋肉内の再発は、局所再発か?
今回、主治医が「局所再発」と表現しました。
私は、局所再発は部分切除の場合の取り残しであると理解していたのですが、今回他の方のQ&Aを読み、大胸筋局所再発があり得ることを知りました。しかし、今回のしこりのうち少なくともひとつは、乳房に軽く手を添わせた状態で触れる位置にあることから大胸筋内のしこりではないように思われます。とすると、再建時に入れた広背筋の中にできていると思われます。主治医も「筋肉の中にしこりがあるので、手術する場合には、形成外科の先生とも相談して行わなければならない」と言っていました。
管理番号1148で「筋肉転移など、ありません」と回答されていますが、それは、どこであろうと、一般に筋肉に遠隔転移はしないという意味ですか?それとも大胸筋への転移であれば、近接しているのだから局所再発とみるのが自然という意味でしょうか。後者の場合、広背筋であっても、癌のあった場所に持ってきたことで物理的に近いので、局所再発したと判断して差し支えないですか。遠隔転移の可能性を否定するためCT検査し、同日に針生検(マンモトーム生検)の予定になっていますが、乳房に十分に触れる大きさのしこりがある段階で、CTで画像的に確認できる転移がなければ、遠隔転移ではないという判断ができますか。
⇒無論、(遠隔転移を含めた)筋肉転移などありえません。
全摘した際の「皮膚側」か「筋肉側」に残存した癌細胞が(場所的に)筋肉へ浸潤したのでしょう。
質問2 全摘後皮弁法再建の筋肉内のしこりに針生検をして良いか。
また、同じ方への回答(管理番号638)で「筋肉内にあるものは当然「針生検はすべきでありません」(出血のリスクが高すぎ危険なのです)」と回答されていますが、
今回針生検をする予定になっています。主治医は、筋肉内への再発は経験がないと言っていたこともあり、
⇒「触れる」ということは「針のアプローチがそれ程長くない」わけだから、(筋肉内は血流が豊富とはいえ)全く問題ありません。
***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/5/22
***
質問者様から 【質問2】
局所再発確定・全摘しなくて良いか
性別:女性
年齢:50
病名:局所再発乳がん
症状:
投稿日:2025年05月25日
先日はお忙しい中ご回答いただきありがとうございました。
焦って、文章の途中までで送信してしまっており失礼しました。
針生検の結果が出ましたので、追加の質問をさせてください。
しこり2つとも乳がん。
造影CTの結果、胸からお腹にかけて遠隔転移は確認されなかった。
エストロゲン陽性、プロゲステロン陽性、HER2 2+(境界域)
とのことで、現在FISH検査の結果を待っているところです。
手術日は一旦7月に押さえました。
質問1 HER2陰性から陽性に変化?
初回手術の時点ではHER2陰性であったものが、今回は陽性ということで、主治医も首をかしげています。がんというものの性質(制御がきかなくなって異常増殖するという)上、8年も経てば性質が変わることもありそうですが、先生の経験上は、このような変化はよくあることですか?ついつい、前回が誤診だったのでは?と考えてしまします。組織診で免疫染色するということは、染まった色の濃さなどを目視で判定して、このくらいなら1かな?それとも2かな?というような感覚的な判定になるのでしょうか。FISH検査を行えば、そこがはっきりするということなら、最初からそうしてくれれば良いのに・・。もし当初からそうであったとして適切な治療を行っていれば今回の再発はなかったのではないか?と考えてしまいます。
質問2 全摘しなくて良いのか
他のQ&Aで、局所再発したら全摘すれば、最初から全摘したのと同じと回答されていると思いますが、最初から全摘して再建したところに局所再発した場合も、再建組織を全摘するべきでしょうか。
主治医は、おそらく局所再発なので、腫瘍周辺だけ取れば良いと思うが、その範囲を検討するためにMRIをすると言っています。
ただ、局所再発は通常以前しこりがあった場所の近くにできることが多いのに、今回は場所が離れていることを気にしている様子でした。以前は、右乳房の外側(向かって9時の方向)だったのが、今回は下の方で、5時半くらいと7時くらいの位置にできています。
これは、同時再建をしたことで、最初のしこりのあたりにあった微小ながんの残りを、乳房の下側の方へ移動させてしまったということでしょうか。当時は、全摘すれば局所再発の可能性をゼロにできるのだから良いに決まっていると考えて、温存の可能性も十分にあったところをこの選択にしたのに、裏目に出たようでつらいです。
もし、上記のようなことがあったとして、8年経ったのだから、目に見えて大きくなっているものが2つだけなら他にはもうない(あればとっくに大きくなっている)と考えて腫瘍周辺だけ取れば良いでしょうか。
質問3 放射線治療をすべきか
温存の場合放射線治療を行うが全摘の場合は行わないと思いますが、全摘でも胸壁再発のリスクがあるのであれば、放射線治療を受けるべきだったのではないでしょうか。可能性としては低いので保険適用がないとかそういう問題なのですか。
だとすると、今回も一部切除にして、放射線治療を選択すべきでしょうか。
HER2陽性が確定した場合の治療方針については、仮定のQになってしまうので、検査結果を待つ間に他のQ&Aを読み込み勉強させていただきたいと思います。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
質問者は少々、考えすぎの傾向があるようなので(あくまでも個人的な感想です。聞き流してください)簡潔に回答します。
質問1 HER2陰性から陽性に変化?
初回手術の時点ではHER2陰性であったものが、今回は陽性ということで、主治医も首をかしげています。がんというものの性質(制御がきかなくなって異常増殖するという)上、8年も経てば性質が変わることもありそうですが、先生の経験上は、このような変化はよくあることですか?ついつい、前回が誤診だったのでは?と考えてしまします。組織診で免疫染色するということは、染まった色の濃さなどを目視で判定して、このくらいなら1かな?それとも2かな?というような感覚的な判定になるのでしょうか。FISH検査を行えば、そこがはっきりするということなら、最初からそうしてくれれば良いのに・・。もし当初からそうであったとして適切な治療を行っていれば今回の再発はなかったのではないか?と考えてしまいます。
⇒そもそも「2+」ですよね?
これは近々、今週のコラムのために実際に(ここ最近の)「2+」症例の実際の陽性率(つまりFISH陽性)を調べようと思っているところでした。
少なくとも当院での病理結果は(以前に比べて)明らかに
1.2+という症例が著増している
2.実際の陽性率が「かなり」少ない印象(2+でFISHやった際の結果の陰性が非常に多い)
これについては(あくまでも私の想像ですが)病理医のなかで「免疫染色だけで陰性(つまり1+とする)とするよりも(2+とすることで)FISHで確認したほうがよい。という考え方にシフトしていることが原因と思っています。
★つまり(かつてだったら)1+として陰性とする場合でも2+にして(その判定を)FISHに委ねているということです。
質問2 全摘しなくて良いのか
他のQ&Aで、局所再発したら全摘すれば、最初から全摘したのと同じと回答されてい
ると思いますが、最初から全摘して再建したところに局所再発した場合も、再建組織
を全摘するべきでしょうか。
主治医は、おそらく局所再発なので、腫瘍周辺だけ取れば良いと思うが、その範囲を
検討するためにMRIをすると言っています。
ただ、局所再発は通常以前しこりがあった場所の近くにできることが多いのに、今回
は場所が離れていることを気にしている様子でした。以前は、右乳房の外側(向かっ
て9時の方向)だったのが、今回は下の方で、5時半くらいと7時くらいの位置にで
きています。
これは、同時再建をしたことで、最初のしこりのあたりにあった微小ながんの残りを、乳房の下側の方へ移動させてしまったということでしょうか。当時は、全摘すれば局所再発の可能性をゼロにできるのだから良いに決まっていると考えて、温存の可能性も十分にあったところをこの選択にしたのに、裏目に出たようでつらいです。
もし、上記のようなことがあったとして、8年経ったのだから、目に見えて大きくなっているものが2つだけなら他にはもうない(あればとっくに大きくなっている)と考えて腫瘍周辺だけ取れば良いでしょうか。
⇒再建組織とは筋皮弁の全摘と言う意味ですね?
これは少々大がかりとなるので通常は行いません。(無論、再建の筋皮弁そのものに後半に浸潤所見があれば行う必要がありますが)少なくとも私には経験がありません。
質問3 放射線治療をすべきか
温存の場合放射線治療を行うが全摘の場合は行わないと思いますが、全摘でも胸壁再発のリスクがあるのであれば、放射線治療を受けるべきだったのではないでしょうか。可能性としては低いので保険適用がないとかそういう問題なのですか。
だとすると、今回も一部切除にして、放射線治療を選択すべきでしょうか。
⇒これは病理組織結果で純粋に判断しましょう。(無論、病理結果にかかわらず術後
照射ありきでも決して間違いありませんが)
***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/6/17
***