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浸潤性癌の温存療法、全摘術について

[管理番号:668]
性別:女性
年齢:58歳
 先月乳がんと診断され、手術方法を温存療法、全摘術のどちらでもいいと言われ悩んでいます。
 診断は多発性で左胸に2ヶ所
1つは1.1㎝大で、浸潤性乳管癌、硬癌、ホルモン感受性陽性、HER2タンパク陰性
もう1つは0.5㎝大で、クラスⅢだが悪性を強く疑うと言われています。
 現在、手術方法についての説明を受けたところで、来週までに結論を出すことになっています。主治医からは特にどちらを勧めることはないので、自分の意志で決めてほしいとのことでしたが、いまひとつ決めかねています。
 温存療法と全摘術ではどちらが体にとって負担が少ないのでしょうか。また、5年後生存率に差はないと聞きましたが、その後の再発率や生存率にはどの程度の差があるのでしょうか。先生のご意見をお聞きしたいです。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 乳房温存と全摘で悩まれているようですが、そもそも診断が不完全であることを指摘します。
 「5mmの腫瘍」も針生検すべきです。
 もしも2箇所ともに乳癌(が確定)であり、「全く別の乳管系に存在」するならば、『温存すべきでは無い』のです。

回答

「主治医からは特にどちらを勧めることはない」
⇒無責任です。
 きちんと5mmの腫瘍に対し、「細胞診クラスⅢ」ではなく、「針生検で確定」させた上で、『多発である事と、温存する事のリスク』を説明しなくてはなりません。
 
「温存療法と全摘術ではどちらが体にとって負担が少ないのでしょうか」
⇒かわりません。
 「乳腺をどの程度切除するか?」は体の負担とは無関係です。
 違いといえば、
 ①傷が長くなるので、やや突っ張る
 ②(乳房が思い人だと)体のバランスが(最初は)大変
 
「5年後生存率に差はないと聞きましたが、その後の再発率や生存率にはどの程度の差があるのでしょうか」
⇒生存率には差はありません。
 生存率は「=遠隔転移再発」です。
 乳腺を「どうするか(どの程度残すか?)」は「遠隔転移再発とは無関係」なのです。
 一方「乳房内再発」に関しては無論差はあります。
 例えば乳房温存術では(10年で5%程度だとしても) 乳房切除では(限り無く0%)なのです。
 
○本来「乳房温存か、全摘出か?」選択をする問題ではありません。
 あくまでも『乳腺内多発なのか、多発だとしたら同じ乳管系なのか?』をきちんと診断することです。
 「全く別の乳管系での多発」であれば、「乳房温存術は適応外」なのです。