7月最後の日曜日!
最高の天気でしたね。
マンネリ画像でスミマセン。
チキン+エビ+アサリ 最強です!
〇 本文
【閲覧注意:患部の写真が表示されます。】
以前にも似たようなこと書きましたが…
passionが私を突き動かし、それがコラムの題材となることが多い。
そのキッカケは時に「外来診療(特に、他院からの紹介患者さんが前医でなされた診療内容を読んだ際に多い)」だったり、QAを回答していて(その内容に対して)passionを感じた時です。
水曜日朝、『Q&A 2022年07月26日5 乳癌のシコリについて』を回答していて…
今回のお題「炎症性乳癌」を取り挙げようと決意したのです。
(以下、Qより抜粋)
胸は張りとジンジンする痛みはあり
ましたが、皮膚の炎症などは確認出来ていません。
炎症性乳がんの可
能性はありますか?
この方が「炎症性乳癌の可能性はありますか?」と心配している理由が、「胸は張りとジンジンする痛み」のようですが…
無論、乳癌プラザ歴の長い方であれば解ると思いますが…
謎雄君、解るかい?
はい、先生!
胸の張りと痛みは更年期の症状(卵巣が不安定となり女性ホルモンが刺激する症状)です!
大正解!
この質問者は54歳。もともと更年期の上に「乳がんと診断され、いろいろ検査」ストレスも加わり、しばしばこのような症状はおこります。
という事で…
この方は1000%炎症性乳癌とは無関係ですが、問題は「この方が(自分は炎症性乳癌なのでは?という)全く無駄な心配をしていること」なのです。
世の中から、そんな無駄な(そして無意味な)心配がなくなって欲しい! そんな思いで、今回は炎症性乳癌を取り挙げることにしたのです。
まずは乳癌取り扱い規約からの抜粋
炎症性乳癌は通常腫瘤を認めず、皮膚のびまん性 1)発赤、浮腫、硬結を示すものを指す。
腫瘤の増大、進展に伴う局所的な 皮膚の発赤や浮腫を示す場合はこれに含めない。2) 乳癌取り扱い規約 第17版4 page
炎症性乳癌のポイント
1)びまん性
まず、これが最も重要な点です。
とにかく、「乳房全体」が(あり得ない程)「真っ赤」になり「ゴワゴワと硬く」なるのです。
★皮膚全体が「真っ赤」になります。
皮膚に変化がない、もしくは「よく見れば赤いかも?」みたいなレベルではありません。
2)局所的な 皮膚の発赤や浮腫を示す場合はこれに含めない。
これは腫瘍を(患者さん自身が)放置して皮膚浸潤すると、(その浸潤した部分に限定して)皮膚が赤くなるケースです。
あくまでも腫瘍による(皮膚に対する)直接の「その部分限定の所見」であって(乳房皮膚全体の変化である)炎症性乳癌ではないのです。
腫瘍の真上の皮膚のみが「限局して」発赤
この症例は(無論、炎症性乳癌ではなく)皮膚浸潤を起こした乳癌です。
これを規約ではT4bと表記します。
★炎症性乳癌はT4dと表記されます。
腫瘍が皮膚浸潤して(発赤どころか)皮膚を突き破って顔を出した以下の症例も規約上T4bとなります。
それと炎症性乳癌の大事な概念は
「炎症性乳癌に炎症なし」です。
どういうこと?
実は重要なことなんだけど、(意外と)知られていないんだ。
炎症性乳癌とは、癌細胞が皮下のリンパ管を広範に閉塞することで「乳房皮膚があたかも炎症を起こしているが如く真っ赤になった」状態のことなんだ。
つまり「皮膚が真っ赤になる」原因は炎症ではなく「リンパ管の広範な閉塞」なんだよ!
★このQAのコラムでも「しばしば」指摘してきたことですが…
肉芽腫性乳腺炎も、炎症性乳癌も「正しく理解していない(経験不足の)乳腺外科医」が、肉芽腫性乳腺炎の患者さんを診察した際に、(実際に炎症があるのに)炎症性乳癌かもしれない! などと患者さんを無駄に心配させるシーンがしばしば見られます。
皆さん、それらの「偽?乳腺外科医」にご注意を!
実際に炎症があって(熱や痛みなど)炎症に伴う症状がある場合は、それは炎症性乳癌ではないのです。
次回は、(それら、偽?乳腺外科医からも)炎症性乳癌に間違われやすい?肉芽腫性乳腺炎などについて