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今週のコラム 208回目 「5mmと小さいから、上手くできないかも…」 そもそも、その発想に問題あり。『超音波で見えるものは、たとえ3mmでも100%確定診断しなさい』

すっかり、秋ですね。

秋と言えば(私的には)ワインの季節(夏は喉渇くから、どうしてもビールと酎ハイになっちゃいます)

秋の夜長にワインのグラスを傾ける。(至福の時間)

日頃はコンビニワインで十分なのですが、時にはちょっとリッチなワインも飲みます。

 

ムルソー

フランス3大白ワインです。

独特な「樽香」とトロッとした舌触り

 

 

先日

『とっても、お気に入りで取り寄せているんです。日本のワインだけど凄いです。』と、患者さんからいただいたワイン

飲んで驚きました。

『これは、凄い!』

日本にもあったのです。本物が。

 

 

 

 

 

 

やっぱり、「樽熟成」だよね。(「通」ぶっている自分がいました)

 

 

 

 

 

 

〇 本編

外科診療

私が「外科研修医」だった25年前から(おそらく今も)所謂一般外科で扱う癌(ほぼ全て消化器癌)は「診断は(消化器)内科」、「治療は(手術の時だけ)外科」、術後も(初回は外科外来で術後経過を診たとしても)ほどなくして内科へ移ります。

つまり、「内科」⇒「外科」⇒「内科」パターンです。

思い出すのは『振り返れば奴がいる』(今週のコラム16回目にも登場)です。

 

 

内科医である「石黒賢」と外科医である「織田裕二」

 

 

 

 

 

 

冷酷だがメスが切れる(?)織田裕二が「手術だけ完璧にこなして(術後の患者のことは放っておいて? 現実はありえませんが)颯爽と帰っていく」

このシーンは、「外科医は手術だけを行う(実際は、消化器外科では「術後管理」も重要)」的なイメージであり、ここで描かれている「内科医と外科医の関係」は「当たらずとも遠からず」なところがあります。

 

当時(外科研修医時)、「手術だけして(颯爽と)帰っていく(術後管理もありますが)」そこに物足りなさを感じていました。

simpleに言えば「診断がしたい」。

外科領域では唯一といっていい(診断も行う)領域が乳癌だったのです。

 

・診断

かつての「東〇公〇 Quolity(木〇・平〇 時代)」

これが今でも私の根幹にあります。

大学病院から、東〇公〇病院へ赴任した時の(その精度の高さへの)衝撃は未だに忘れていません。

大学では「経過観察」や「検体不良」となるような症例も公〇では完璧に診断していたのです…

 

その思いは、ここ東京でも同じです。

『診断技術があまりにも低すぎる!』

特にQandAをやっているので、「あの時に診断していれば…」という患者さんが世の中に溢れていることに(あの当時)愕然としたものです。

 

 

・前医で(細胞診や組織診もせずに)「経過観察」となった症例、及び(組織診で良性となったが)「取れていないかもしれないから、経過観察」となり当院で癌と診断された例を提示します。

 

≪症例1≫  シコリを触知し、エコーでも写っているのに、「マンモで写っていないから」と、6か月後経過観察となった例

・エコー像

 

 

辺縁(周り)が不明瞭(シャープなラインではない)の、やや縦長(潰されない=硬い)シコリ

12mm

 

 

 

 

角度を変えると…

血流(腫瘍の表面の青赤)がシコリに流れ込んでいる様子が解ります。(赤や青が血流です)

血流サインは、増殖性の高さ(血流が栄養や酸素を供給するのです)を示した参考所見となります。

 

 

 

 

・MRI

 

MRIでも

綺麗にうつっていますね。

限局しています。温存手術の適応です。

 

 

 

 

 

・病理診断(MMTE) 浸潤性乳管癌

 

≪症例1≫について

「触知するし、エコーでも見えるのに、マンモで写っていないから(生検もせずに)経過観察???」

患者さんから(それを聞いて)愕然とし、あまりの衝撃に顎が外れました(あくまでも比喩です)

マンモグラフィーで写らない癌など「数限りなく」あります。「アンタは素人か!」(しかも、そこは「乳腺クリニック」だったのです。)

このようなリスクが溢れていることを衆知しなくては! そう感じたのです。

 

 

≪症例2≫ 前医で細胞診⇒MMTE+CNBまで施行(結果は陰性)だが、「5mmと小さいので採れていないかもしれない」と言われた例

 

縦長で(症例1に比べると小さい=5mm ので)辺縁の評価はやや困難ながら、ぼそぼそとした印象

(前医で)『MMTEして陰性だけど自身がない』というコメントから、

もう少し「微妙な所見」かと想像していましたが、実際にエコーしてみると結構「しっかりした所見」

 

 

 

 

 

正直、こんなにしっかりした所見なのに(前医で)「外すかなー?」と思いながらMMTE

病理診断は浸潤性乳管癌でした。

 

 

 

 

 

≪症例2≫について

正直『これでは、他院での(良性という)組織診の結果は、やっぱり鵜呑みにはできないな』再認識しました。

全国には、全く同様に(正しく診断されることなく)「経過観察と言う名の」放置されている患者さんが多いのだろうなぁ。

そんなことを、考えていると、やり場のない気持ち 注 1 )でいっぱいとなります。

注 1 )『やり場のない気持ち』で「扉破いたり校舎の上タバコふかしたりする」のが尾崎豊です。

 

★皆さん、お解りでしょうか?

私は(別に天才でも何でもありません)ただ(かなり小さな所見も含め)膨大な生検経験がある 注 2 )から、言わせてもらっています。

 

注 2 ) MMTEを扱っている本社であるDevicor Medical Products(「Leica biosystems」の一部門です)から(症例数が多く、早期発見に積極的に使用しているとして)「認定証」を貰っています。『今週のコラム149回目 ここで重要なのは(FEAを)「放っておくと癌になる=前癌病変」との理解でいいのか?』を参照のこと

 

 

 

 

 

 

本来、組織診は100%確定診断でなくてはいけません。

それを『病変が上手く採取できていないかもしれないから…』などと言うのは、あまりにも患者さんが可哀想。

「石灰化」に対するST-MMTについては以前コラムにも記載『今週のコラム 203回目 難関症例のレベルが違うことに愕然とした3症例』しています。

超音波で見える「シコリ」症例も全く同じ。

(前医で)「5mmと小さいから、上手くできないかも…」 そもそも、その発想に問題あり。『超音波で見えるものは、たとえ3mmでも100%確定診断しなさい』

生検手技にもう少し、真剣に取り組んでもらいたいものです。