[管理番号:6657]
性別:女性
年齢:48歳
はじめまして。
よろしくお願いします。
昨年7月職場健診のマンモで異常なし。
今年3月中旬、自覚発見→乳腺クリニックにて細胞診、針生検施行。
5月下旬、総合病院にて左乳房全摘術、術中センチネルリンパ節生検にて4mmの転移が1個あり腋窩郭清しています。
病理検査の結果の違いについて教えて下さい。
針生検(乳腺クリニックにて)
ER 3b 90%、PgR 0%、HER2 3+
術後組織(総合病院にて)
Left mastectomy
Invasive ductal carcinoma,Papillotubular carcinoma pT1c:16mm(Tumor size:16×11mm)
f,ly(-),v(-),pN1a(1/19)
NG:Grade1(2+2+1=5)
ER 3+(TS8=PS5+IS3) 90%
PgR 2+(TS5=PS3+ IS2) 平均30%
HER2(IHC):2+(Equivocal)
HER2(FISH):Equivocal(シグナル比1.4及び
平均HER2遺伝子コピー数4.1)( HER2シグナルの多い癌細胞をごく少量認めます。)
ki67:平均7%(5~10%程度)
針生検と術後組織で、HER2とPgR の結果が異なります。
主治医からは、HER2検査について、FISH法でもequivocalだが、シグナル比から陰性と判断すると言われました。
私としては、針生検の結果(HER2 3+)も気になるため、本来の目的とは違うと思いますが、オンコタイプDXを依頼し、現在結果待ちです。
HER2検査の結果で、術後治療方針が異なるため少し神経質になっています。
[管理番号:4971 ルミナールAからのトリプルポジティブ]も読みましたが、私のケースではどうなのかよくわからないため、質問させていただきました。
結果はまだですが、このような場合、どのように考えたらいいでしょうか。
オンコタイプDXでHER2陰性の場合、HER2陰性と判断してもいいのですか?
以前のQ&Aで、針生検の結果の方が、組織固定の面で正確との記載があったかと思いますが、それは、染色検査だけにあてはまるのですか?
FISH法やオンコタイプDXは、術後組織でも大丈夫ですか?
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「結果はまだですが、このような場合、どのように考えたらいいでしょうか。」
→以下のように考えましょう。
HER2(針生検と手術標本で)不一致の場合
1.まずは両方ともFISHをすることです。→(免疫染色では不一致でも)FISHでは一致する可能性があります。
♯質問者のケースでは(針生検の標本が免染3+ですが)敢えて「FISHをしてみるべき」です。
(免染よりも)FISHを優先すべきなので、(もしも針生検のFISHが陰性ならば)結局「HER2陰性」となります。
2.両方のFISHが不一致の場合
こうなると解釈としては(あまりない筈ですが)癌の中で「FISH陽性の部分と陰性の部分が混在している=heterogeneity」と考えざるをえません。
「オンコタイプDXでHER2陰性の場合、HER2陰性と判断してもいいのですか?」
→おそらく陰性となるでしょう。
それは、「OncotypeDXで提出する切片(組織)」は手術標本で「代表的な部位=FISHを行った部位」が選択されるからです。
「FISH法やオンコタイプDXは、術後組織でも大丈夫ですか?」
→大丈夫です。
☆考え方としては
OncotypeDXの結果、「HER2の発現がない」という結果となった場合→針生検標本でFISHを行う→(FISH陰性ならば)①『病変全体がHER2陰性』、(FISH陽性ならば)②『病変の不均一性(HER2陰性が大部分だが、ごく一部に陽性の部分あり』
OncotypeDXの結果、「HER2の発現がある」 〃
→③『病変全体がHER2陽性』
①や③なら迷う必要はないのですが、もしも②となった場合には
(大部分がHER2陰性だから)『抗HER2療法はやらない』とするか?
(ごく一部でもHER2陽性部分があるのだから)『抗HER2療法をやりたい』と考えるのかは、質問者に任されることでしょう。(正解はありません)
質問者様から 【質問2 】
検査結果について
性別:女性
年齢:50歳
病名:乳癌
症状:
投稿日:2020年1月29日
以前、病理結果(主にHAR2)の乖離について質問させていただきました。
その節は、ありがとうございました。
オンコタイプDXの結果(2018.7.23報告)ですが、HAR2スコア 9.6
陰性、RS25でした。
先生には、針生検の組織のFISHをすることを提案していただきましたが、叶わず、オンコタイプDXの結果で、HAR2陰性との判断になりました。
術後薬物療法は、RS25で中間リスクであったため、主治医からは、TC療法も提案されました。
しかし、オンコタイプDXの化学療法の上乗せが2%だったため、化学療法はせずにホルモン療法のみを選択しました。
その後、仕事に復帰し、バタバタと毎日忙しくすごしていました。
術後1年半が経過し、最近、久しぶりにこちらのQ&Aにお邪魔したところ、オンコタイプDXの基準が以前と変更になっていたり、今週のコラム 220回、221回を読んで、術後治療で、化学療法をしないという選択がよかったのかどうか不安になってしまいました。
また、質問させてください。
①手術時48歳、リンパ節転移1個あり、RS25は、化学療法なしでよかったしょうか?
②前回の投稿の際に、病理結果を
NG:Grade1(2+2+1=5)と記載しましたが、正しくは、
Nottingham score :Grade1(2+2+1=5)でした。
これは、NGだといくつになりますか?
③Ki67が7%にもかかわらず、RS25だったこと(今週のコラム221回でいうところの外れた群)とHAR2のheterogeneityかもしれないということ、そして術後治療をホルモン療法のみにしたということは、予後や再発、遠隔転移に不安がありますか?
よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「①手術時48歳、リンパ節転移1個あり、RS25は、化学療法なしでよかったしょうか?」
→勿論、その通りです。
RSが26以上で化学療法の適応となります。
「正しくは、Nottingham score :Grade1(2+2+1=5)でした。これは、NGだといくつになりますか?
→( )内の数字は順番に「Tubule formation」「Nuclear pleomorphism」
「Mitotic activity」の順番となります。
NG(nuclear grade)はこのうち後半の2つ「Nuclear pleomorphism」「Mitotic
activity」を用いてのscoreとなります。
質問者の場合には nuclear pleomorphism:2点 mitotic activity:1点となるわけです。 つまりNG1(2+1)となります。
「予後や再発、遠隔転移に不安がありますか?」
→再発率はOncotypeDXのレポート通りです。
ご安心を。