[管理番号:4293]
性別:女性
年齢:46歳
長いですが、まずこれまでの経過をご説明いたします。
家族歴:祖母 乳がん全摘(その後老衰で亡くなるまで20年再発なし)
*右乳がん1回目
2010年夏 乳がんと診断(当初は浸潤性乳管がんの疑い)センチネル生検でリンパ節転移陰性。
右乳がん部分切除
病理の結果:浸潤性小葉癌
ER ( + ) 10%以上
PgR( + ) 10%以上
HER2 score 1
断片陰性
リンパ節転移無し
術後治療:放射線照射25回
タモキシフェン内服5年(→3年で左に乳管がんが見つかり、内服中止)
ゾラデックス4週毎を2年間
*左乳がん
2013年夏 左 非浸潤性乳管がんと診断。
タモキシフェン内服中止。
2013年秋 左乳腺全摘・同時再建。
センチネルリンパ節生検陰性。
非浸潤性なので、と病理の結果は頂けませんでした。
右は放射線かけてるし、左は全摘してるし、必要以上に心配することはありません、もし小葉がんが再びできても悪性とは限らないし、できたとき考えましょう、と、傷が落ち着いてからは 半年に一度の診察になりました。
*右乳がん2回目(今回)
2016年春頃から違和感、画像(CT・MRI)ではなかなか分からなかったが、
秋に細胞診の結果、小葉がんと判明。
2016年冬 右乳腺全摘・腋窩リンパ節郭清(レベルⅠ)
病理の結果:浸潤性小葉がん グレード2 ステージⅢC
最大径約95mm大
皮膚浸潤(+)
静脈浸潤(-)
中等度のリンパ管侵襲
凝固壊死巣(-)
リンパ節転移 22個中21個
腺管形成スコア3+核異型スコア2+核分裂像スコア1=6で、グレード2
ER 3+ , PgR 3+ , HER2 score 1 , MIB-1 index 数%~10%
E-cadherin (-)
Luminal A type 相当
リンパ節転移以外にも線維脂肪織の至る部位に浸潤性に増殖する癌を認める。
pT3N3aMX → pStage ⅢC相当
リンパ節転移21個なんて患者はめったに診ない大変なことだそうで、
Luminal A type で化学療法の効果は期待できないかもしれないが、しないわけにもいかないので「AC療法約3ヶ月、続けてアバスチン+タキソール約半年、
閉経状態を確認後アロマターゼ阻害剤(フェマーラ)を5~10年」をすぐ開始とおっしゃっていただいたのですが、
家庭の事情で 今すぐは開始できない、春まで待ちたい とお話したところまずPET検査を受け、その結果をみつつ リュープリン開始、 3ヶ月後頃に化学療法開始とご提案いただきました。
現在PET結果を待ちつつ、並行してオンコタイプDXも受けられないかと調べていただいている所です。
ただ、Luminal A type の細胞だとPET診断でもあまり活発には映らなそうで、遠隔転移の有無は分からないままになりそうな気がしています。
以上をふまえて
お聞きしたいことは
① Luminal A type なのに リンパ節転移が非常に多かった事をどう判断すべきでしょうか。
→小葉癌という性格柄「部分切除後、同時多発的に癌発生」は良くあるようですが、術後6年でこれだけ転移が進むのは「Luminal A type」でもありえるのでしょうか?
→3年のホルモン療法後中止したため、かえって小葉癌細胞が元気になった可能性はありますか?(そもそも小葉がんにタモキシフェンはあまり効かないという報告もあるようですが)放射線治療が効かずに残っていた細胞がホルモン復活でゆっくり着実に増えてるとか?
② オンコタイプDX以外にも、当該癌細胞の性格を調べる方法はありますか?
→化学療法はMIB-1 index の高い癌には有効と思われますが、今回のような場合でも有効なのでしょうか?
→他の治療法の可能性はありますか?(放射線もタモキシフェンも奏功しなかったように思えます)
③「変わった乳がん」とのことで、遺伝子などに特異的な変異がある可能性も危惧しています。
→他の治療(検査?)なども同時に進めた方が良いでしょうか?
→娘にも遺伝するのではと心配です。
危険因子などが分かれば将来の参考になりますか?
長々とすみません。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「アバスチン+タキソール約半年、」
⇒アバスチンは適応外です。
あくまでも適応は「手術不能や遠隔転移再発」でしかありません。
パクリタキセルは適応あります。
「、Luminal A type の細胞だとPET診断でもあまり活発には映らなそう」
⇒誤りです。
無関係です。
「① Luminal A type なのに リンパ節転移が非常に多かった事をどう判断すべきでしょうか。」
⇒考え方が根本的に誤っています。
「大人しさ」と「進行」は全く別のものであり、「大人しい」ものも長時間かければ進行するし、逆に「激しいもの」も短時間であれば、早期となるのです。
「術後6年でこれだけ転移が進むのは「Luminal A type」でもありえるのでしょうか?」
⇒「大人しさ」とは無関係です(上術どおり)
「3年のホルモン療法後中止したため、かえって小葉癌細胞が元気になった可能性はありますか?」
⇒ホルモン療法を中止したことと、「再発」は関係あるように思います。
「「変わった乳がん」とのことで、遺伝子などに特異的な変異がある可能性も危惧」
⇒全く普通の小葉癌です。
小葉癌は大人しいのですが、(画像上)見つけずらいという面はあります。
♯ただ、それにしても、半年に1回の定期検診をしていて「リンパ節転移21個」というのは珍しいと思います。
「娘にも遺伝するのではと心配」
⇒遺伝性乳癌ではないと思います。(サブタイプや他に特別疑わせる要素もないから)
質問者様から 【質問2】
[管理番号:4293]の者です。
その後 PETで腰椎・仙骨・腸骨など、多発性骨転移が認められました。
先生なら、どのように治療なさいますか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
骨転移の治療は
1.全身療法(抗癌剤、ホルモン療法)
2.放射線(疼痛部位や易骨折部位など)
3.骨吸収抑制剤(デノスマブ、ゾレドロン酸)
ターゲット(疼痛部位に一致した骨転移や骨折リスクの高い骨転移)があれば、まずは「局所の放射線治療先行」となります。
その上で、1と3を組み合わせます。
○私の考え方では…
まずは「化学療法できちんと叩く」⇒「維持する」という方向をとります。