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治療計画について教えてください

[管理番号:3858]
性別:女性
年齢:46歳
 
10月(上旬)日に、市の乳がん検診(触診+マンモグラフィー)の結果、カテゴリー5の診断を受けました。
突然のことに驚きと絶望の中、田澤先生のサイトを見つけ、Q&Aを拝見しておりました。
全く知識がなく不安でしたが、大変勉強になり希望が持てました。
とてもとても感謝しております。
10月(上旬)日に、精密検査のため、総合病院を紹介され、再度のマンモグラフィー、胸MRI、血液検査を受けました。
 マンモグラフィー結果 胸シコリ(30mm×1個)、脇リンパの転移疑い(15mm×1個)
 血液検査結果 腫瘍マーカー(CEA-S;1.0/CA15-3;7.2)
10月(上旬)日に、針生検(脇リンパ細胞診、胸シコリ組織診とのこと)、上半身CTを受けました。
10月(中旬)日に、ステージ2Bが濃厚との診断を受けました。
 脇リンパ細胞診結果 悪性腋窩リンパ節転移あり(13mm以下のリンパ節多数)
 CT結果 右乳房内多発病変(最大径32mm) 、遠隔転移 なし
今後の治療計画として、主治医からの提示は、
10月(下旬)日 骨シンチ (診察あり)
10月(下旬)日 手術(全摘+リンパ郭清レベルⅡまでの予定)
その後、病理の結果に応じて化学療法開始とのこと。
これが、現在の状況です。
 
主治医の先生から治療計画の提示を受けた際、手術前の”抗がん剤治療の開始”を提示されましたが、
話し合いの中で、私の方から「全摘で構わないこと」「先に手術をしてほしいこと」をお伝えしたところ、
先に手術をしましょう、ということになりましたが、
「抗がん剤は術前、術後、どちらでも構わない、リンパに1個でも転移があれば必ず抗がん剤を使う、
リンパはレベルⅠに転移を確認したので、レベルⅡまで郭清する」とのことでした。
手術を先に行えることになったので、安心していたのですが、術日が近づくにつれ
色々と疑問が出てしまい、不安になり、田澤先生にご教示いただきたい!と思い問い合わせさせていただきました。
 
①抗がん剤の使用は術前、術後どちらでも構わない ⇒温存を希望していないので術前はメリットがないのでは?
②リンパに1個でも転移があれば必ず抗がん剤を使う ⇒サブタイプによるのでは?
③リンパはレベルⅠに転移を確認したので、レベルⅡまで郭清する ⇒たくさん取って大丈夫?
組織診の結果はまだ出ておりません。
 
(下旬)日の診察時に出ているかは不明ですが、サブタイプが不明な現在のこの状況で、
上記の解釈は正しいのか?判断はおかしくないか?と不安になった次第です。
大変お忙しい中恐縮ですが、田澤先生のアドバイス、ご見解を頂戴できますと幸いにございます。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
 
「主治医の先生から治療計画の提示を受けた際、手術前の”抗がん剤治療の開始”を提示されました」
⇒まったく、困った医師です。
 術前抗がん剤を行う理由を勘違いしているようです。
 「リンパ節転移があれば、術前に行う」など、その医師が勝手に決めるのは「言語道断」です。
 きちんと「正しい提案」をしなくてはなりません。
 
「①抗がん剤の使用は術前、術後どちらでも構わない ⇒温存を希望していないので術前はメリットがないのでは?」
⇒そのとおりです。
 全摘ならば「術前に行うメリットなど全く」ありません。
 むしろ「もし構ガン剤が効かなかった場合」には窮地に立たされます。
 
「②リンパに1個でも転移があれば必ず抗がん剤を使う ⇒サブタイプによるのでは?」
⇒質問者が完全に正しい
 「リンパ節転移が1個でもあったら構ガン剤」など「ふた昔前の考え方」です。
 
「③リンパはレベルⅠに転移を確認したので、レベルⅡまで郭清する ⇒たくさん取って大丈夫?」
⇒転移していないレベルまで取ることが通常です。
 画像診断でリンパ節転移があれば「レベルⅡまで郭清するのが標準」です。(勿論、レベル3まで転移所見があれば、それも郭清します)
 
「サブタイプが不明な現在のこの状況で上記の解釈は正しいのか?判断はおかしくないか?と不安」
⇒まさしく、その通りです。
 正しい治療になることを願っています。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、前回はお忙しい中ご回答いただき誠にありがとうございました。
 
先生のご対応に、ただただ感激し興奮し、安心感を得ることができました。
本当にありがとうございました。
一言お礼申し上げたかったのですが、病理結果が出た上で田澤先生の所見をお伺いしたく、今になってしまいました。
 
10月(下旬)日に、無事手術を終えることができました。
(右乳房全摘出、リンパ節郭清Level2まで)
12月(中旬)日に病理の結果と、今後の治療を主治医から提示されました。
 
<病理結果>
浸潤性乳管癌(硬癌)浸潤径30×20×40mm
波及度(乳腺~脂肪織)
核グレード(2)
HER2(陰性)
脈管侵襲(リンパ管内;2+、静脈内;1+)
リンパ節転移;(Level1;3/33、Level2;0/4)
ホルモン受容体(陽性)(ER=95.17%、PgR=94.87%)
がん細胞増殖活性(Ki67=17.16%)
 
<病期 サブタイプ>
T2N1M0 stageⅡ B ルミナルAタイプ
 
<今後の治療>
化学療法;EC4回、ドセタキセル4回
ホルモン療法;タモキシフェン内服10年
放射線治療;右胸壁に対し25日間
 
<主治医からの説明>
ルミナルAタイプでは、通常脈管侵襲は見られないが、
脈管侵襲があるので悪いタイプである。
大きさ、グレード、総合してみると化学療法をしたほうが良い。
放射線治療とホルモン剤10年も必要である。
 
<田澤先生への質問>
①針生検時は、「乳頭腺管癌」との結果でしたが、今回病理の結果「硬癌」と言われました。
 このように変わることはありますか?
 
②今後の治療について、田澤先生の所見をお聞かせください。
 ・ルミナルAタイプで脈管侵襲は少ないのでしょうか?(通常は侵襲していない?)
 ・脈管侵襲のリンパ2+、静脈1+は悪いタイプなのでしょうか?(予後が悪い?)
 ・個人的には浸潤径から、”大きい”と感じています。
 (最大浸潤径が40mmというのは少ないような・・・)
  大きさは今後の治療選択に、何か関係はありますか?
 ・ルミナルAなので化学療法は不要であると理解していますが、
  私の場合、再発率上乗せは何%程ありますでしょうか?
 (個人的な現在の感覚では、1%でも上乗せがあるのなら頑張りたいと考えています。)
 ・抗がん剤をやるとしたら上記薬の選択はおかしくありませんか?
(ECとドセタキセル) 
 
③5年、10年の再発率と生存率をご教示いただけますでしょうか。
できるだけこのQ&Aを拝読し、勉強しているつもりではあるのですが、
自身のこととなるとどうしても不安で、個々に確認したいことが出てしまいます。
主治医は、早期ではなく最悪でもない中間で、
根治を目指した治療ができるので、頑張りましょうと言ってくれました。
もちろん、全摘も即決しましたし、できることをきっちりやる心持でおりますが、
どうしても自身の立ち位置が不安で仕方ありません。
信頼のおける田澤先生の所見をお伺いできれば安心なので、
お忙しい中、大変恐縮ではあるのですが、ご回答いただければ幸いでございます。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
 
「<主治医からの説明>ルミナルAタイプでは、通常脈管侵襲は見られないが、脈管侵襲があるので悪いタイプである。」
⇒根拠がありません。
 
「大きさ、グレード、総合してみると化学療法をしたほうが良い。」
⇒これも「誤り」です。
 ルミナールAでは「腫瘍径やリンパ節転移にかかわらず、化学療法による上乗せはない」ことが解っているのです。
 
「①針生検時は、「乳頭腺管癌」との結果でしたが、今回病理の結果「硬癌」と言われました。 このように変わることはありますか?」
⇒よくあります。
 「乳頭腺管癌」も「硬癌」も、「浸潤性乳管癌」です。本質的に「異なる」ものではありません。
 あくまでも「見た目」での評価なので、混じっていることは多く(その場合)組織型は「優勢(占める割合の高い方)な方」となります。♯(術前)針生検では「病変の一部のサンプリング」なので、全体を評価しての「手術標本が正しい」のです。
 ♯乳頭腺管癌でも硬癌でも何の意味もありません。
 
「②今後の治療について、田澤先生の所見をお聞かせください。」
⇒ホルモン療法単独です。
 タモキシフェン+LH-RHagonistとなります。
 
「 ・ルミナルAタイプで脈管侵襲は少ないのでしょうか?(通常は侵襲していない?)」
⇒根拠がありません。
 
「 ・脈管侵襲のリンパ2+、静脈1+は悪いタイプなのでしょうか?(予後が悪い?)」
⇒無関係です。
 
「大きさは今後の治療選択に、何か関係はありますか?」
⇒無関係です。
 ♯『ルミナールAでは「腫瘍径やリンパ節転移にかかわらず、化学療法による上乗せはない」ことが解っているのです。』ということです。
 
「 ・ルミナルAなので化学療法は不要であると理解していますが、私の場合、再発率上乗せは何%程ありますでしょうか?」
⇒これは不明です。(ルミナールAであれば5%以内となると思います)
 
「・抗がん剤をやるとしたら上記薬の選択はおかしくありませんか?(ECとドセタキセル) 」
⇒ルミナールタイプだから「TC」でいいと思います。
 
「③5年、10年の再発率と生存率をご教示いただけますでしょうか。」
⇒Ki67=17%と低いので「NewAdjuvant.comでの数値」と誤差が多くなります。もしも本当に気になるならOncotypeDXしてみましょう(「閉経前」「リンパ節転移陽性」でも適応あります)
 
 

 

質問者様から 【質問3】

管理番号:3858 治療計画について教えてください
 
田澤先生、以前は沢山の質問にご回答くださり、本当にありがとうございました。
結果的に手術後に抗がん剤治療を行い、昨日最終投与を終えました。
(EC+T)
その後のホルモン剤治療について、主治医よりLH-RHアゴニストを勧められました。
私の不勉強によりLH-RHを考えていなかったので、大変動揺してしまいました。
(LH-RHは抗がん剤と同じ効力があるので、
抗がん剤を行った場合は不要になると誤解しておりました・・・)
初歩的な質問かもしれず誠に申し訳ございませんが、教えていただけますでしょうか。
ホルモン受容体が陽性であり、化学療法によって無月経になった場合で、
その後に月経が再開された場合は、エストロゲンが放出されることを意味し、
LH-RHを併用することは ”放出そのものを阻害する” として「追加の投与が推奨される」 と理解して良いでしょうか?
 
また、併用することの効果についての数値などはありますでしょうか?
そしてLH-RHを併用する場合の開始時期についてですが、
タモキシフェン開始と同時に併用をせず、様子を見てから「月経の回復が確認できた時」に併用開始するのでは開始時期が遅いでしょうか?
 
私の年齢(46歳9カ月)だと月経の回復は個人差があると思うのですが、
副作用も気になってしまい、できれば月経が再開された場合のみLH-RHの
併用を選択したいと思い、様子をみてからと考えましたが問題ありませんでしょうか?
誤解から不安で動揺してしまい、田澤先生にお伺いしたく質問させていただきました。
お忙しい中大変恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
 
化学療法閉経なのですね?
それにしてもルミナールAでアンスラ+タキサンとは…
 
「できれば月経が再開された場合のみLH-RHの併用を選択したいと思い、様子をみてからと考えましたが問題ありませんでしょうか?」
⇒それでOKです。
 46歳であれば、そのまま閉経の可能性も十分にあります。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生、お忙しい中いつもご回答いただきありがとうございます。
 
また分からないことが出てきてしまい、お助けいただけますでしょうか。
化学療法閉経後のアゴニスト使用についてです。
前回、「月経の復活が確認できた時点でOK」と田澤先生にご教示いただきましたので安心していましたが、
主治医から「46歳なら1年くらいでほぼ生理は復活するので、その半年くらい前に卵巣機能が活発化するから、その頃(年内)にはアゴニストを始めたい」と言われました。
また、「リンパ節転移が4個あれば46歳でもアゴニストをやる、3個なのでやった方が良い」とも言われました。
 
大変申し訳ございませんが教えていただけますでしょうか。
 
1、月経が復活した年齢とアゴニストの使用効果との関連はありますでしょうか?
(40代なら有効、50代なら不要など)
 
2、月経が復活するときは半年くらい前から卵巣機能が活発化するのでしょうか?
 
3、卵巣機能が活発化するのなら、活性化した時からやらないとアゴニストの効果はないのでしょうか?
 
4、月経回復の見込でアゴニストを使用することは副作用のリスクが目立ち、メリットが少ないと感じるのですがいかがでしょうか?
 
5、「月経が復活した」と確定するには、「出血の確認」で良いのでしょうか?或いは血液検査等の数値で指標があるのでしでょうか?
 (タモキシフェン服用時)
 
6、アゴニストの使用を決めるとき、リンパ節転移の数は関係するのでしょうか?
急に色々と不安になってしまい、田澤先生にお伺いしたく質問させていただきました。
お忙しい中大変恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
 
「1、月経が復活した年齢とアゴニストの使用効果との関連はありますでしょうか?(40代なら有効、50代なら不要など)」
⇒無関係です。
 
「2、月経が復活するときは半年くらい前から卵巣機能が活発化するのでしょうか?」
⇒そんなデータは無いでしょう(あくまでもイメージだと思います)
 
「3、卵巣機能が活発化するのなら、活性化した時からやらないとアゴニストの効果はないのでしょうか?」
⇒良く考えてみてください。
 (抗癌剤後とかではなく)通常の使用法は「現に、普通に生理がある閉経前の方」なのですよ??
 それらの方に使用して効果があるということを、良く考えてみてください。
 
「4、月経回復の見込でアゴニストを使用することは副作用のリスクが目立ち、メリットが少ないと感じるのですがいかがでしょうか?」
⇒だから、私は(患者さん自身が希望されない限り)化学療法閉経からの月経再開までは待っています。(そのまま戻らない方も決して少なくないからです)
 
「5、「月経が復活した」と確定するには、「出血の確認」で良いのでしょうか?或いは血液検査等の数値で指標があるのでしでょうか?」
⇒「出血の確認」です。
 
「6、アゴニストの使用を決めるとき、リンパ節転移の数は関係するのでしょうか?」
⇒無関係です。

 
 


 

質問者様から 【結果5 】

術後2年の経過報告
性別:女性
年齢:48歳
病名:浸潤性乳管癌(硬癌)
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]

2019/3/20現在、術後約2年が経過しました。
術後1年検査では血液、マンモ、エコーを行い、術後2年検査では血液、マンモ、肺のレントゲンを行いました。
幸い再発も転移も無く穏やかに過ごせています。
また質問させていただいていたアゴニストは、化学療法閉経後、月経再開していませんので使っていません。
振り返ると告知当初は乳がんについて無知であったことが不安を強くさせていたのだと思いました。田澤先生のQ&Aでたくさんの情報をいただけたことが安心につながり、大変ありがたく、とても感謝しています。本当にありがとうございます。
ゴールに向かってホルモン治療と経過観察を続けてゆきます。

<Q&A結果>