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今週のコラム30回目 実際はかなり多くのルミナールAがBと判定され無駄な化学療法をされている

「歌丸師匠のご勇退」後、何かと話題の「笑点の次の司会」

日曜日、いつも通り仕事をしながら聞いていた「SUNDAY FLICKERS

一之輔2の中での一コマ

リスナーからの「笑点の次の司会は一之輔さん?」というメール。その中で「でも、そういう私は夕方にはアベレイジ聞いてるので笑点見ていないのですけど…」という内容に対して、

 

(アベレイジを全く知らなかった)一之輔、

「アベレイジっていう人がパーソナリティーをやっている番組?」

「えっ、違うの? 番組の名前?」

『それって「average(平均)」にかけているのだろうね』

 

「さすが!」って思いました。

一瞬にして「平均的サラリーマンの象徴である、安部礼司」が「average(平均)」にかけていることを見抜く「落語家力」

番組が永遠に続く事を切に願っています。

 

 

 

Oncotype DX

Oncotype DX(以下OD)自体は、私自身使った事はありましたが何分、前任地は東北だったのでなかなか希望者がなく(高額ですし、また地域性として「先生に従います」的な風潮が根強いこともありました)少し遠のいていた面もありました。

 

しかし乳がんプラザを見てくる患者さん達の中には「情報に強くODに対する関心が高い」方も多く、ここ江戸川でもODをオーダーすることが増えてきました。

正しく理解していただくために、ここで解説します。

 

ODとは

①スコア化

16の癌関連遺伝子の「発現量」(をRT-PCRで定量化し、その重要度に応じた計数をかけて)スコア化(これがReccurence Score:RSです)したものです。

♯その際には5個の参照遺伝子(癌とは無関係な遺伝子)の「発現量」を用いることで、「サンプル間のバラつきの補正も行っています。

 

16の癌関連遺伝子群の中には…

サブタイプに直結する遺伝子群(ER, PgR, HER2, Ki67)も含まれています。

その他、予後や(化学療法による)治療効果に関連する遺伝子群が含まれています。

 

②実際の臨床試験で(RSと予後が相関することを)検証し、それを用いて「再発リスク」と「化学療法によるベネフィット」を出しています。

・リンパ節転移無、10年再発率 NSABP B-14試験(668症例)

・リンパ節転移無、タモキシフェン及び化学療法の効果予測 NSABP B-20試験(651症例)

・リンパ節転移(1-3個)タモキシフェン単独及び化学療法による5年再発または死亡率 SWOG 8814(367症例)

・リンパ節転移(4個以上)タモキシフェン及び化学療法による5年再発または死亡率

SWOG8814(367症例)

 

③特徴

「腫瘍径」や「グレード」とは相関しない

○グレードに関してですが「高グレードの中でRSが高リスクとなるのは40%程度」です。 つまりグレードが高くても「半数以上で化学療法が不要」となるのです。

一方で「低グレードの中でRSが高リスクとなるのは10%程度」しかありません。

 

④RSと化学療法

一時、(せっかく高額を投じて)ODをやっても、「中間リスクとなったら、また迷うだけだ」という議論がありました。

ただ、現在の様々な臨床試験での検証ではどうやら「中間リスクは化学療法によるベネフィットがない」ことが解ってきています。

 

 

⑤RSの実際の割合

それでは実際にODを行った際に「RSがどの程度の比率になるのか?」みてみると、(アメリカも日本もほぼ同様で)「低リスク50%」「中間リスク20%」「高リスク30%」となります。

 

ここで「高リスクのみが化学療法の対象」とすると『ルミナールタイプの中で化学療法が必要な割合は僅か3割』となるのです。

しかし、実際に従来の免疫染色によるルミナールタイプを「AとBにわける」とBの方が多くなります。

 

  • つまりルミナールBが化学療法の適応だとすると、実際はかなり多くのルミナールAがBと判定され無駄な化学療法をされている。ということです。

 

自分は化学療法が本当に必要なのか?(多少のお金をかけても)『体に無駄な負担をかけたくない』と、もしあなたが思うのであれば、是非ご検討を。

 

・Ki67が20~30で「本当に抗ガン剤しなくていいのか?」と不安になる方

・Ki67が30以上だが「本当に抗ガン剤の効果があるのか?」と考える方

・Ki67が20以下なのに、「リンパ節転移があるから」とか「グレードが高いから」という理由で抗ガン剤を(主治医に)勧められている方