[管理番号:2721]
性別:女性
年齢:55歳
いつも田澤先生のこのサイトを拝見しております。
長文になりますが、できるだけ整理しました。
よろしくお願いいたします。
この度、右乳房の乳がんを宣告され、2月下旬に温存手術を終え治療方針が出たところです。
1.術前の針生検の病理診断結果
腫瘍径1.3×1.4×1.0cm(エコーにて)
papillotubular type(micropapillarypatternもあり)
Nucleargrade2(mitotiscore2,atypiascore2)
MIB-1index30%
Micropapillaryを懸念した領域はEMA免疫染色でinside out growthpatern
ER強陽性、PgR強陽性
HER2-
画像ではリンパ節転移もなく主治医の勧めで温存にしました。
術中病理診断にてセンチネルリンパ節2/4陽性反応。
レベル1まで郭清しました。
2.術後の病理診断結果
腫瘍径1.0×1.0cm
浸潤性乳管癌 硬癌
センチネルリンパ節転移3/4微小転移、リンパ節転移0/4
悪性度3
リンパ管侵襲:高度 血管侵襲なし
切除断片:陰性
ER、PgR、HER2、Ki67の結果はまだです
3.治療状況
ホルモン療法を10日程前から行なっています。
主治医はリンパ管侵襲が高度なため、まず放射線を行った後、化学療法を行う予定であるとの説明がありました。
化学療法は「アンスラサイクリン+タキサン」で勧められています。
4.お聞きしたいこと
(1)治療の順序
放射線と化学療法のどちらを先に行うべきなのでしょうか。
(2)全摘にすべきか?
断端陰性とは言え、温存で大丈夫なんでしょうか?
以前のQ&Aで田澤先生が胸壁に放射線を当てる場合、温存が邪魔をするとおっしゃっていたので、私としては全摘の選択も視野に入れています。
もし全摘の追加手術をした場合、後の治療法はどのようにお考えですか?
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1b(10mm), pN1, luminal
「(1)治療の順序放射線と化学療法のどちらを先に行うべきなのでしょうか。」
⇒化学療法が一般的に「先」です。
「(2)全摘にすべきか?断端陰性とは言え、温存で大丈夫なんでしょうか?」
⇒質問者は「何か勘違い」をされているようです。
術後の病理結果で「全摘にする」根拠が全く見当たりません。
「以前のQ&Aで田澤先生が胸壁に放射線を当てる場合、温存が邪魔をする」
⇒質問者の場合には「胸壁照射」ではありません。あくまでも「温存乳房照射」です。
「もし全摘の追加手術をした場合、後の治療法はどのようにお考えですか?」
⇒これも「完全な勘違い」です。
「局所の治療(手術や放射線)」と「全身の治療(ホルモン療法や抗がん剤」は完全に独立しています。
○「全摘するかどうか」は「全身療法に全く影響を与えない」のです。
質問者様から 【質問2】
管理番号2721で質問させて頂いた者です。
前回はお忙しい中ご回答いただきありがとうございます。
病理結果はルミナールB、HER2陰性、2aです。
無事放射線治療を25回終え、来週から化学療法を行う予定です。
以前にも主治医からは化学療法の種類は標準治療である「アンスラサイ
クリン+タキサン」を勧められていましたが、やはり病理の結果からも
「EC3ヶ月+WeeklyPTX3ヶ月」を勧められています。
色々ネットで調べましたところ、ECは副作用がきつく心毒性があると書
かれてありました。
私の場合、リンパ節転移が3個あるとはいえルミナールタイプなのでTC
療法では駄目でしょうか。
上乗せ効果の差はどれくらいでしょうか。
田
澤先生ならどういう治療法をお勧めになりますか?
それと抗がん剤は通院でするらしいのですが、入院しなくても大丈夫で
しょうか?
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
今日は。田澤です。
「色々ネットで調べましたところ、ECは副作用がきつく心毒性があると書かれてありました。」
⇒制吐剤の進歩で、随分改善はしていますが…
それでも「副作用がきつい部類」であることは間違いありません。
心毒性に関してはEC4回(3カ月)では大丈夫だと思います。(許容量の半分程度です)
「私の場合、リンパ節転移が3個あるとはいえルミナールタイプなのでTC療法では駄目でしょうか。」
⇒TCでいいと思います。
「上乗せ効果の差はどれくらいでしょうか。」
⇒4%前後です。
「田澤先生ならどういう治療法をお勧めになりますか?」
⇒TCです。
「それと抗がん剤は通院でするらしいのですが、入院しなくても大丈夫でしょうか?」
⇒不要です。
通常、外来で行います。
質問者様から 【質問3】
田澤先生、いつも迅速かつ的確なご回答をいただきありがとうございます。
大変感謝しております。
追加の病理結果がようやく出ました。
ER:score 3b.PgR:score3b.
HER2:score1+. Ki67LI:about 41.3%です。
前回、田澤先生に化学療法の種類をTC療法で勧めていただき、主治医に
もそのことを伝えましたが、「あなたの場合は、リンパ管侵襲が高度で
リンパ節に3つ転移していて悪性度も3でしかもKi67も高い
(30%→41.3%)のでやはり EC+WeeklyPtxを勧めます。
それが標準治療ですし、TCはアンダーパワーです。」と言われ、更に「TCの方がECより副作用(倦怠感)がきついですよ。」とも言われました。
やはり私の病理結果から見て高リスクと判断されますか?そうなると「アンスラサイクリン+タキサン」を受け入れるべきなのかなと迷っております。
田澤先生はルミナールBタイプでも「アンスラサイクリン+タキサン」を患者さんにお勧めになることはありますか。
あるとしたらどういう場合ですか?
それと副作用はTCの方がECより強く出るのでしょうか?
腫瘍径10ミリなのにこれ程リスクが重なると再発するのかなととても不安になります。
田澤先生の患者さんで10ミリ程度の腫瘍径で再発された方はどれほどいらっしゃいましたか?
現在ホルモン療法を行っておりますが、これに化学療法(アンスラサイクリン+タキサン)を追加した場合の10年後の再発率と生存率を教えていただけないでしょうか。
TC療法の場合はこれから4%引いた数値になるのですね。
主治医の方針で放射線療法を先にしましたので化学療法を始めるのが術後3ヶ月以上になりますが効果は変わらないでしょうか?
数日前から、対側(左側)の脇に違和感と鈍痛があります。
もしかして転移でしょうか?高度リンパ管侵襲やリンパ節転移があるので心配です。
2か月前のCTでは異常はありませんでしたが。
お忙しい中色々質問し誠に申し訳ございませんがどうかよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「田澤先生はルミナールBタイプでも「アンスラサイクリン+タキサン」を患者さんにお勧めになることはありますか。あるとしたらどういう場合ですか?」
⇒リンパ節転移4個以上です。
質問者は「微小転移」でもあるので、なおさら「TC」とします。
「それと副作用はTCの方がECより強く出るのでしょうか?」
⇒患者さんそれぞれです。
ただ、EC単独ならともかく、「EC+タキサン」との比較であれば「TCが楽」だと思います。
「田澤先生の患者さんで10ミリ程度の腫瘍径で再発された方はどれほどいらっしゃいましたか?」
⇒膨大な数の患者さんを診療してきたので、人数で回答することは困難ですが…
再発した人を思い浮かべると、「腫瘍径が大きい」方が多いという印象です。
「現在ホルモン療法を行っておりますが、これに化学療法(アンスラサイクリン+タキサン)を追加した場合の10年後の再発率と生存率を教えていただけないでしょうか。」
⇒10年再発率は19%
10年生存率は81%
「主治医の方針で放射線療法を先にしましたので化学療法を始めるのが術後3ヶ月以上になりますが効果は変わらないでしょうか?」
⇒変わらないと思います。
「数日前から、対側(左側)の脇に違和感と鈍痛があります。もしかして転移でしょうか?」
⇒全く違います。
そもそも「対側腋窩リンパ節に転移」することなど絶対にありません。
○乳癌にとって「右と左」は「天と地ほどに離れている」のです。
質問者様から 【質問4】
以前に質問したものです。
いつも的確なご回答をいただきありがとうございます。
再度質問させてください。
<経緯>
昨年の術後の抗がん剤治療では田澤先生にTC療法を勧められましたが、
担当医が悪性度3、リンパ節転移も3個(微小ではなく陽性反応)、リンパ管侵襲も高度なのでアンスラサイクリン+タキサンを勧めますと言われ、放射線治療の後、EC+パクリタキセルで治療を始めました。
EC療法の途中では白血球数や好中球数の減少で延期や減薬もありましたが、無事に4クールを終え、次のパクリタキセルでも同じく白血球や好中球数の減少で延期もありましたが、何とか終わりそうな予感がしていました。
ところが、パクリタキセルの途中で、発作性心房細動、薬剤性の間質性肺炎、更に帯状疱疹になってしまい、パクリタキセルが中止になりました。
間質性肺炎の治療途中からアリミデックスを飲んでおります。
その後、間質性肺炎の治療が終わったのですが、パクリタキセルが8回で中止になっていたので担当医からゼローダかTS-1を勧められています。
そこで質問です。
1.以下の選択肢を考えていますが、どの治療を選択するのが良いかアドバイスをお願いいたします。
①抗がん剤を使う場合
まず、パクリタキセルを完遂できなかったのですが、これから再度
抗がん剤の治療を選択すべきなのでしょうか?効果はあるのでしょうか?
また、術後1年ほどになりますが、この時期に抗がん剤治療を始めても効果はあるのでしょうか?
もし、抗がん剤の治療をするのであれば、以下のどちらを選択すべきでしょうか?
(1)ゼローダかTS-1
現在担当医に治療効果が高いので勧められていますが、標準治療でないことが気になっています。
(2)ドセタキセル等の他の抗がん剤
標準治療という意味で選択肢としています。
②抗がん剤を使わない場合
副作用のことを考えると不安でこのまま中止すべきかなと考えております。
現在の治療(アリミデックス)をこのまま続けることでよいでしょうか?
※再発率はどれぐらい上がるのでしょうか?
パクリタキセルを8回で中断しています。
完遂した場合に比べて再発率はどれくらい上がるのでしょうか?
2.腰痛、背中の痛み
昨年末から腰痛、背中の痛みがあり、いまだに痛みが続いています。
整形でのレントゲンは特に問題なしで、坐骨神経痛だろうと言われ、1月中旬の乳腺外科で初めて調べた腫瘍マーカーも数値が上昇していませんでした。
骨転移が心配なんですが、やはり骨シンチやPETを撮った方がいいでしょうか?
3.術後1年になりますが、脇にものを挟んだ感覚がいまだにあります。
この症状は今後改善するのでしょうか?
お忙しいところ申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
そもそも、術後補助療法の適応が無い薬剤「ゼローダかTS-1」を勧めている事自体「とんでもない誤り」であり、そのような適応外診療は(担当医が何を言おうと)決して行ってはいけません。
「ところが、パクリタキセルの途中で、発作性心房細動、薬剤性の間質性肺炎、更に帯状疱疹になってしまい、パクリタキセルが中止」
⇒間質性肺炎となった場合には、「化学療法や放射線療法は禁忌」と考えてください。
再発予防よりも「命の方が大事」なのです。
「パクリタキセルが8回で中止になっていた」
⇒そもそもTCで十分だったわけだから、それで十分です。
「担当医からゼローダかTS-1を勧められています。」
⇒適応外診療は決して認められません。
「まず、パクリタキセルを完遂できなかったのですが、これから再度抗がん剤の治療を選択すべきなのでしょうか?」
⇒終了にすべきです。
間質性肺炎は「重大な副作用」です。
「効果はあるのでしょうか? また、術後1年ほどになりますが、この時期に抗がん剤治療を始めても効果はあるのでしょうか?」
⇒効果の問題ではありません。
「もし、抗がん剤の治療をするのであれば、以下のどちらを選択すべきでしょうか?」
⇒抗ガン剤は「中止すべき」です。
「(1)ゼローダかTS-1 現在担当医に治療効果が高いので勧められていますが、標準治療でないことが気になっています。」
⇒「標準治療ではない」と言う以上に、「適応外診療」です。
この二つはレベルが違います。(当然、「適応外診療」の方が数倍酷いわけです)
○適応外診療とは
薬剤の添付文章を読んでみてください。(ネットで簡単に読める時代です)
ゼローダでもTS-1でも「効能、効果」には『手術不能又は再発乳癌』とあります。
♯このように「効能、効果」に無い病名で「薬剤を使用する」ことを「適応外治療」といい、そのような「いい加減な治療」を『適応外診療』というのです。
○それでは標準治療ではないとは?
一方でUFTの添付文章を見ると、「効能、効果」には『乳癌』と載っていますね?(つまり、「手術不能や再発でなくても使用できる」=「術後補助療法でも使用できる」ということです)
♯ただし、UFTは「標準療法ではない」ので、UFTを術後補助療法で使用する場合は(適応外診療ではないが)「標準治療でもない」となるのです。
「(2)ドセタキセル等の他の抗がん剤 標準治療という意味で選択肢としています。」
⇒間質性肺炎を起こした以上、化学療法を行うのはリスクがあります。
♯しかも質問者はECx4+wPTXx8行っています。
それで十分です。
「②抗がん剤を使わない場合 副作用のことを考えると不安でこのまま中止すべきかなと考えております。」
⇒それが正しい。
「 現在の治療(アリミデックス)をこのまま続けることでよいでしょうか?」
⇒それでいいのです。
「 ※再発率はどれぐらい上がるのでしょうか? パクリタキセルを8回で中断しています。 完遂した場合に比べて再発率はどれくらい上がるのでしょうか?」
⇒それは解りません。
中断でのデータなど無いのです。
「2.腰痛、背中の痛み 昨年末から腰痛、背中の痛みがあり、いまだに痛みが続いています。 整形でのレントゲンは特に問題なしで、坐骨神経痛だろう」
⇒それで十分です。
「骨転移が心配なんですが、やはり骨シンチやPETを撮った方がいいでしょうか?」
⇒整形外科で骨レントゲン撮影していることで縦武運です。
「3.術後1年になりますが、脇にものを挟んだ感覚がいまだにあります。この症状は今後改善するのでしょうか?」
⇒劇的な改善はないですが、
少しずつ気にならなくなります。