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乳癌治療中の妊娠・出産について

[管理番号:2629]
性別:女性
年齢:28歳
こんにちは。
毎日、田澤先生
のホームページを拝見しておりす。
最近は、若年のかたの妊娠・出産に関する質問が増えたなと感じます。
かくゆう私も、関連の質問なのですが…。
以前、ほかのかたの質問に対し、先生が御回答された内容(管理番号2226「ki67の線引きと、ホルモン療法の期間について」のかた)で、ホルモン療法を後回しにして妊娠出産する場合と、治療してから妊娠出産する場合では、再発リスクは、数字で出るほどの違いは無いと思う。
との記事を読みました。
質問1
ホルモン療法を中断して妊娠する場合、「数字で出るほどの違いはない」ための休薬期間は、何年を想定しておられますか?
(タモキシフェンと)ゾラデックスをやめて生理が戻るまで半年、妊娠するまで半年、出産まで約1年、授乳期間約1年、トントンと順調にいっても最短3年は薬を飲めなくなるのですが、それでも、その後に投薬を再開すれば、数字が出るほどの違いは出てこないのでしょうか。
3年のブランクは、結構大きく感じられるのですが…。
質問2
授乳は粉ミルクにして出産後すぐに投薬を再開するよりも、授乳して健側の乳房のリスク下げるほうが良いでしょうか。
「授乳」でリスクが下がると言うのは、お乳をあげる側の乳房内の話で、全身状況の話ではないですよね?
(例えば、エストロゲンの分泌自体が減るとか、代謝されるとか…)
質問3
(タモキシフェンと)ゾラデックスを5年すると、34歳になります。
その後に5年も止まっていた生理が戻り、妊娠機能は戻る確率はどのくらいでしょうか。
そもそも、ゾラデックスでそのまま閉経になるのは何歳くらいが境目ですか。
抗がん剤では、よく35歳とか40歳とか言いますが。
質問3
リンパ節転移が2個あります。
とある研究結果で、治療後の出産を果たしたのは大部分がリンパ節転移陰性の早期ガンだと読みました。
ホルモン療法を中止して妊娠するのにはリスクが高いでしょうか。
質問4
現時点では、3年か4年、ホルモン療法をしてから妊娠したいと思っています。
「出産を望まない」道が無いのならば、3年の短期間は、妊娠性能を失うばかりであまり意味が無い治療ですか?
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
非常に「理論的に」理解されていますね。
大事なことだと思います。
乳癌術後の妊娠については、「乳癌罹患年齢の低年齢化」と「出産年齢の高齢化」が(依然と比べ)正反対となり、これから大きな関心をよぶ領域だと思います。
実際に診療をしていても、「未出産の方が乳癌となるケースが(10年前、20年前と比較すると)大変増加しています」
今まで解っているエビデンスは「かなり限定的」なもので、個々のケースで「最適なものが解るレベルではない」ことをご了承ください。
「質問1 ホルモン療法を中断して妊娠する場合、「数字で出るほどの違いはない」ための休薬期間は、何年を想定しておられますか?」
⇒妊娠・出産は「乳癌の再発リスクを高めない」というエビデンスがあります。
 休薬期間ですが、実際には「妊娠期間+授乳期間=2年程度」とすると、「妊娠まで1年程度」は許容範囲だと思っています。
 ここで「1年以上経過しても妊娠しなかった」場合には、(妊娠を諦めて)ホルモン療法を開始するかの選択を再度行います。
 
「質問2授乳は粉ミルクにして出産後すぐに投薬を再開するよりも、授乳して健側の乳房のリスク下げるほうが良いでしょうか。」
⇒授乳により「エストロゲンレベル」は確実に抑えられます。
 だから、「授乳」は有効ですが、「粉ミルクにして、(その代わり)タモキシフェン+LH-RHagonistとした方がいいのではないか?」という疑問は当然湧きます。
 このような臨床試験はなく、議論のあるところですが(私の解釈としては)「highriskであれば、授乳せずにタモキシフェン+LH-RHagonist」「low riskであれば、授乳でもよい」と思います。
 
「質問3(タモキシフェンと)ゾラデックスを5年すると、34歳になります。その後に5年も止まっていた生理が戻り、妊娠機能は戻る確率はどのくらいでしょうか。」
⇒ほぼ戻ると思います。
 LH-RHagonistによる閉経は(化学療法による閉経=化学療法閉経が不可逆的なことが多いのに対し)「可逆的」です。
 今までのデータは「2-3年」が殆どではありますが、「5年間投与」でも、おそらく戻ります。
 
「そもそも、ゾラデックスでそのまま閉経になるのは何歳くらいが境目ですか。」
⇒40代後半以降です。
 質問者には該当しません。
 
「質問3 ホルモン療法を中止して妊娠するのにはリスクが高いでしょうか。」
⇒リンパ節転移2個は、それほど「リスクが高い」とは思いません。
 
「3年の短期間は、妊娠性能を失うばかりであまり意味が無い治療ですか?」
⇒(3年ホルモン療法を行っても)妊娠は可能だと思います。
 「妊娠出産⇒ホルモン療法」も「ホルモン療法⇒妊娠出産⇒ホルモン療法」もトータルでみれば「あまり変わらない」と思います。