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妻の病状について

[管理番号:6888]
性別:女性
年齢:48歳
病名:粘液性乳がん
症状:放射線治療中

田澤先生はじめまして。

妻(48歳)の乳がん発覚以来、不安な気持ちの中、
大変勉強させて頂いております。

回答が明確で非常に参考になります。

大変感謝しております。

 経緯:生検(2018/07)
 【病理組織学的診断】
   部位:左 乳腺C
   針生検(検体適正)悪性
     HER2陰性、ER陽性、PgR陽性、Ki-67陽性率9%
 【所見】
   粘液間質の中に異型細胞が集塊状にみとめられます。

   推定病変:粘液癌
    HER2/neu:陽性所見はみられません。
スコア0
    ER:80%程度が陽性です。
スコア3b
    PgR:80%程度が陽性です。
スコア3B

 経緯:手術(2018/08)
   手術前日(2018/8)に超音波でリンパの腫れを指摘され、
   センチネルリンパに3mmの転移あり(1ケ/6ケ中) 
   術中迅速診断では0.2mmの転移でしたが、術後病理検査で判明。

   追加郭清はしませんでした。

 【病理組織学的診断】
   部位:左 乳腺C
   乳腺:Moucinous carcinoma
 【所見】
   乳腺①~⑨
   ④⑤⑥⑦粘液結節を形成する3cmの粘液癌です。

リンパ管浸潤がみられます。

   頭側の追加切除片の近傍まで癌の浸潤がみられますが、
追加切除片に癌はみられません。
組織標本上の乳腺断端
距離7mmですが、頭部付近の皮下切離端との距離は3mmです。

   非腫瘍部乳腺には、乳管過形成が目立ちます。

   乳癌外科手術症例病理診断報告書(乳癌取扱い規約第18版)
   1) 組織型:mucinous carcinoma
   2) 大きさ:
     浸潤径:30x15mm
   3) 病理学的T因子:pT2
   4) 組織学的波及度:f
   5) 脈管侵襲:Ly1 V0
   6) 浸潤性乳管癌核グレード
     核異型スコア2 + 核分裂スコア1 = 3点
     核グレード:1
   7) 乳管内進展:なし
   8) 乳腺症の合併:あり
   9) 断端の評価
     最短距離の方向:頭側の皮下切離面
     最短距離:3mm
     切除断端がん波及部の組織所見:間質浸潤(+)

 経緯:オンコタイプDXの結果(2018/10)
   主治医が粘液性癌で大人しい癌であるが、リンパに転移が
あるので抗がん剤が必要じゃないかもといわれました。

判断は、家族で相談して決めてほしいといわれましたが、
Ki-67が9%でもあるので、こちらで学ばせていただいた事も
   あり、オンコタイプDXの結果ではっきりさせようと思いました。

  オンコタイプDXの結果
   RS: 23 (中間リスク)
   EgR: 9.2 (陽性)
   PgR: 6.8 (陽性)
   Her2: 8.5 (陰性)
   再発率 タモキシフェン単独:14%、+化学療法:13%

   上乗せ1%という事ですので、抗がん剤はせずに放射線のあと、
   リュープリン(2年)とタモキシフェン(5年or10年)と
理解しています。

   現在、30回の放射線治療を受けております。

   ①上記の経緯や病理検査から何かお気づきの点があります
でしょうか?
    オンコタイプDXで中間リスクとなり不安が増しています。

   ②抗がん剤の効果についてはある程度すっきりしたのですが、
     古い基準かもしれませんがKi-67が9%やおとなしいと
言われている粘液性にも関わらず、RSが23もあり妻は
ショックを受けています。

     今週のコラム101回に書かれているレアケースと同じ
パターンでしょうか?どの様な可能性があるのでしょうか?
レアケースと思うと、本当に抗がん剤を省いて良いのか
不安になってきています。
オンコタイプの結果が
全てでしょうか?

今週のコラム 101回目 (Ki67が20代はluminal Aの可能性が圧倒的に高く)本当に「Aなのか、Bなのか迷うのは30代以降」と言えるのです。

   ③オンコタイプDXの結果にはリューブリンの効果は
見込まれていないと思いますが、見込んだ場合は、
どうなるのでしょうか?
   ④ オンコタイプDXの結果でリンパ転移の場合、5年後の
再発率しか開示されておらず
     10年の記載が無いのは、何か理由があるのでしょうか?
   ⑤ 進行がんの方が抗がん剤が効くと認識していましたが、
同じ中間リスクであってもなぜリンパ転移タイプの方が
抗がん剤の上乗せ効果が低くなるのでしょうか?
   ⑥ 検査・治療を進める中で悪い傾向の結果しか出てこず、
落ち込んでおります。

     癌確定時の診断は、18mmの粘液性癌、リンパ転移の
所見なし。

     一般的に良くあることでしょうか?

     支離滅裂で理屈っぽい事ばかりお聞きしてますが
よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「①上記の経緯や病理検査から何かお気づきの点がありますでしょうか?」
⇒私であればリュープリンはしませんが…

 ASCOのガイドラインからは「やってもいい」とは思います。

「今週のコラム101回に書かれているレアケースと同じパターンでしょうか?どの様な可能性があるのでしょうか?」
⇒Ki67はOncotypeDXにとって強い相関因子ではあるが、「16遺伝子のうちの1つにすぎない」ということに尽きます。

「③オンコタイプDXの結果にはリューブリンの効果は見込まれていないと思いますが、見込んだ場合は、どうなるのでしょうか?」
⇒殆ど影響はないと思います。(SOFT試験から)

「④ オンコタイプDXの結果でリンパ転移の場合、5年後の 再発率しか開示されておらず10年の記載が無いのは、何か理由があるのでしょうか?」
⇒データがないからです。(全て統計なのです)

「⑤ 進行がんの方が抗がん剤が効くと認識していました」
⇒そもそも「この認識が間違い」です。
 「進行すること」と「抗がん剤が有効」であることに関係はありません。

「同じ中間リスクであってもなぜリンパ転移タイプの方が抗がん剤の上乗せ効果が低くなるのでしょうか?」
⇒統計的な数字なので、全てを(理論的に)解釈することには限界があります。(OncotypeDXの結果についてきたグラフは実際の臨床試験のデータなのです)

 ★それを敢えて解釈しようとすれば…
  「リンパ節転移なし=より早期で発見」と考えれば、(抗がん剤が効く人にとっては)「より早期であれば抗がん剤投与によって再発しない場合でも、(時間的に)進行したために抗がん剤をしても再発を免れなかった」と解釈できます。

「癌確定時の診断は、18mmの粘液性癌、リンパ転移の所見なし。」
「一般的に良くあることでしょうか?」

⇒想定の範囲内と言えます。

 結局「やることは同じ」なのです。