Site Overlay

トリプルネガティブ乳ガンです

[管理番号:388]
性別:女性
年齢:42歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1417「体調不良が続きます

 
 
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:985「術後経過について」

 
 
はじめまして。田澤先生の回答を拝見させて頂きながら勉強しております。
乳ガン患者さんへの心温まる回答が私も質問させて頂く勇気になりました。
宜しくお願い致します。

【病理診断】
トリプルネガティブ
ステージ2a
リンパ節転移無し
静脈侵略無し
グレード2a
Ki67-48%

県内のガンセンターで術前抗がん剤を終えて、今年の1月末に右全摘出手術をしました。
術前抗がん剤で3センチ程あった腫瘍が4ミリに縮小しました。(FEC→ドセタキセル)
他にも術前5ミリ程の悪性腫瘍が四個ありましたが、消えていたのかは説明が無かったので分かりません。
術前の検査では、硬癌となっていました。
Kiの数値も抗がん剤前も病理診断でも48%変わりませんでした。
 
以上の結果をみて、私のようなトリプルネガティブタイプの乳ガンは再発、転移する可能性は高いですか?
抗がん剤しか頼りのないトリプルネガティブなのに、完全寛解出来ずに4ミリ残ってしまったこと。
Kiの数値が高いことと、硬癌であることなどから不安材料が多くて頭から離れず気が休まる時がありません。
まだ四歳の息子がいるので、しっかりしなくてはいけないのですが、寝顔を見ると涙が出てきます。
 
もう一点、術後傷口付近の一部に痛みがあり、触ると痛みの下にある骨?の一部が少しボコッと固く腫れています。まさか、骨転移では…と心配してしまいます。
ケモブレイン、抗がん剤で生理も止まり、ホットフラッシュもひどく頭の回転がかなり鈍りました。
あまりにも物忘れが多いので、脳転移では…とも考えてしまいます。
 
長文になってしまい申し訳ございませんが、
先生の回答を宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「術前化学療法後に1月に手術をされた」のですね。
 トリプルネガティブと言われると不安になる気持ちは解ります。

回答

 トリプルネガティブ、ステージ2a、リンパ節転移無し⇒ このステージは化学療法前(cT2, cN0)ですね。化学療法後は(ypT1a, ypN0)でありステージ1となります。
 静脈侵略(静脈侵襲の事ですね)無し⇒血行性転移のリスクが低い可能性があります。
 グレード2a⇒化学療法効果のグレードですね。グレード3(完全寛解)ではありませんが、「かなり有効」であった事は間違いありません。
 Ki67-48%⇒トリプルネガティブとしては、それほど高くない数値です。 『80%以上』だと、高値という認識があります。
 
「以上の結果をみて、私のようなトリプルネガティブタイプの乳ガンは再発、転移する可能性は高いですか?」
⇒高くはありません。
 トリプルネガティブではありますが、化学療法も(完全寛解ではありませんが)十分に有効でしたし、その他の条件(静脈侵襲やリンパ節転移無し)も悲観するものではありません。
 
「完全寛解出来ずに4ミリ残ってしまった」
⇒十分効果があったと思います。
 術前化学療法は「完全寛解」を目指し、「完全寛解が得られれば、予後を有意に改善」するとなっていますが、「グレード2a」でも十分改善効果はあります。
 
「Kiの数値が高いことと、硬癌であること」
⇒(前述しましたが)Ki67 48%は決して高い値ではありません。 また組織型「硬癌」は特に予後とは関係ありません。
 
「触ると痛みの下にある骨?の一部が少しボコッと固く腫れて」
⇒これは肋骨でしょう。
 おそらく「正常肋骨」だと思います。
 今は「創部痛」があるので、特別気になっているだけだと思います。
 
「あまりにも物忘れが多いので、脳転移では」
⇒大丈夫です。
 脳転移の症状とは全く異なります。
 ご本人がおっしゃっているように、「化学療法閉経による内分泌環境の変化」による影響でしょう。
※脳転移を疑う症状は(歩行時に右に傾くなど)「片側性が特徴」です。
 
◎術前化学療法も著効しているし、(ステージやリンパ節など)決して悲観する状況ではありません。
 ネットなどでは「嫌な情報ばかりが目立ってしまう」とは思いますが、現実には「根治してしまう人」の方が圧倒的に多いのです。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、御忙しい中、ご回答頂きありがとうございました。
田澤先生の言葉が私の安心材料となり
朝から笑顔になりました。
ありがとうございました。
本来は手術をしたガンセンターの主治医に質問しなくてはならないのですが、主治医はあまりの忙しさに落ち着いて話をする機会がなく退院、その後は地元の病院で定期検診することになりました。
新しい主治医は質問しても『ガンセンターでは何と言ってましたか?』と逆に質問され戸惑いました。
一回目の質問の際に書いたグレード2aとは術後病理診断の用紙には
post state of chemotherapy,Grade2aと書いてあります。
がん細胞異型度 2
がんの大きさ4ミリ
がんの広がり3,6センチ
リンパ節転移無し
微少なリンパ管への広がり無し
微少な静脈への広がり無し
ER(-)
PgR(-)
HER2(1+)
すみません、一回目の質問に記入漏れがありました。これが病理診断用紙に書いてある全内容です。
同じく安心しても大丈夫ですか?
コーヒーが好きなのですが、コーヒーをのんでも大丈夫ですか?牛乳、ヨーグルトなどの乳製品なども問題ないですか?
東京が近ければ、田澤先生の病院で今後の定期検診を受けたいくらいです。
御忙しいかと思いますが、お時間のあるときに
回答頂ければと思います。宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 今回の内容は全く前回記載された内容と一緒です。
「post state of chemotherapy,Grade2a」
⇒これが化学療法効果がGrade2aであるという表現であり「かなり有効」という記載です。
「がん細胞異型度 2」⇒「トリプルネガティブで、Ki67が48%」という結果に矛盾しません。
 ●Ki67が70以上である場合には異型度は3となることが多いのです。
 質問者の「核異型度=NG2」というのは「それほど増殖が高くないタイプ」ということです。
 
「同じく安心しても大丈夫ですか?」
⇒上記のように、全く問題はありません。
 
「コーヒーが好きなのですが、コーヒーをのんでも大丈夫ですか?牛乳、ヨーグルトなどの乳製品なども問題ないですか?」
⇒珈琲も乳製品も全く問題ありません。
 食事については、「明らかな因果関係」はありません。
 何を食べてはいけないということもありません。
 唯一あるとすれば、「イソフラボン」の採りすぎ(サプリなどで補充するレベル)は避けましょう。
 「豆腐とか味噌汁とか、納豆とか、日常生活で摂取する分」には健康維持にはかえっていいくらいです。
★喫煙や「過度の」アルコール摂取は避けましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

お世話になります。前回は分かりやすい回答を頂きましてありがとうございます。いつも田澤先生が皆さんの質問に親身になって回答されている姿勢に感動まで覚えます。ありがとうございます。
また田澤先生に改めて幾つか質問させて頂きたいと思います。
宜しくお願い致します。
 
①術前抗がん剤でステージ2aだったのがステージ1になったとのことですが、腫瘍が縮小することで、元々のステージも変わるのですか?
ステージ1だと早期になるかとおもいますが、
早期になったと解釈してもいいのでしょうか?そ
 
②乳ガン検診は今後も地元の乳腺専門の病院で診てもらいますが、それ以外に今後何のガン検診を受けたらいいとおもいますか?
乳ガンは子宮がんにもなりやすい、と聞いたこともあるので…。
あと、福岡在住ですが、田澤先生が信頼されているオススメの福岡の乳腺専門医の先生はいますか?
 
③手術も抗がん剤も終わりましたが、トリプルネガティブなのでこれで治療は終わりです。
本当にトリプルネガティブにはまだ新薬は出来ていないのでしょうか?
近い将来分子標的薬のような薬が出来る予定はあるのでしょうか?
 
たくさん質問してしまい申し訳ございませんが、
お時間のあるときにご回答頂ければと思います。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 少し落ち着かれたようで何よりです。
 それでは回答します。

回答

「①術前抗がん剤でステージ2aだったのがステージ1になったとのことですが、腫瘍が縮小することで、元々のステージも変わるのですか?」
⇒ステージは病理結果でのものなので、ステージはypT1a, ypN0, ypStageⅠとなります。
 化学療法がそれ程良く効いた事を表しています。
 
「早期になったと解釈してもいいのでしょうか?」
⇒その通りです。
 術前化学療法により「ダウンステージ」したという事です。
 
「②乳ガン検診は今後も地元の乳腺専門の病院で診てもらいますが、それ以外に今後何のガン検診を受けたらいいとおもいますか?」
⇒「乳癌になったから…」という事は特にありません。
 40歳代となって、「胃癌や肺がん、大腸がん、子宮がん検診など」必要性が増してきます。
 この機会に「全て」検診しましょう。
「乳ガンは子宮がんにもなりやすい、と聞いたこともあるので…。」
⇒これは誤解です。
「術後にタモキシフェンというホルモン療法を行う」と「子宮体癌のリスクは上昇」します。
 
「福岡在住ですが、田澤先生が信頼されているオススメの福岡の乳腺専門医の先生はいますか?」
⇒私は、ずっと仙台にいたので福岡の事は全くわかりません。
 今の主治医はどうなのでしょうか?
 
「本当にトリプルネガティブにはまだ新薬は出来ていないのでしょうか?近い将来分子標的薬のような薬が出来る予定はあるのでしょうか?」
⇒今、臨床試験をしている薬は沢山あります。

PARP1阻害剤 プラチナ製剤との併用で効果が期待されたのですが、「最近の結果」では期待通りではありませんでした。
EGFR阻害剤 EGFRは「トリプルネガティブの中でもbasal-likeタイプでは60%過剰発現があり効果が期待されたのですが、試験では思うような効果が得られず開発が止まっています。
Src阻害薬 これも効果が期待されたのですが、試験では効果が証明されませんでした。
mTOR阻害剤 (現在もホルモン療法との併用で使用されていますが)これが基礎試験で有効であったため「臨床試験が進行」しています。
PD-1/PDL-1抗体 これもまだ第1相試験の段階ですが、極めて有効な効果が得られ、期待されています。

★このように、今「分子標的薬の標的」はトリプルネガティブに向かっています。
 ただ、「トリプルネガティブと一くくりにできない」多様な集団であることが解っています。
 つまり、将来必ず「トリプルネガティブ」は「細分化」されます。
 其のころには、上記薬剤を含め多くの薬剤が「オーダーメイド化」される時代がきます。
 分子標的薬は「癌治療のオーダーメイド化」の「第1歩」なのです。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

 田澤先生、いつもお世話になります。お忙しい中、いつも質問に回答して頂き本当に有難うございます。
 江戸川病院の患者でもないのにこのように親身になって回答して頂き感謝しております。
 化学療法後のダウンステージについてもう少し教えて頂きたいのですが・・・
 宜しくお願い致します。
 
 ステージ2a→ステージ1 にダウンステージするので化学療法の効果があり早期のなるとのことですが、生存率もステージ1の生存率で見ていいのですか?
 もともと3センチくらいの浸潤癌でしたが、4ミリに縮小したことで浸潤癌ではなくなるのですか?全身にまわってる確率も減るのでしょうか?
 ガンセンター退院後は近所の病院に定期健診を受けることになり、先月初めて
 新しい主治医にお会いしましたが、新しい主治医は30代後半くらいの若い男性の先生です。
 今年の3月まで私のいたガンセンターに勤務していたようです。
 
今の主治医は
『4ミリ残ってしまったことが問題で、あなたの場合、科学療法をしたのにもかかわらず、
kiの数値も48%と高いままで変わらなかった。ということは腫瘍は縮小しても増殖率は抗がん剤の影響を受けなかった・・・ということですね。』
と言われ、再発率を尋ねると、
『あなたはもともとステージ2aだから・・・10年でみて・・・20%~30%かな・・・』
と言われ思いのほか悪い結果にショックを受け、色々質問したかったのですが何を質問していいのか分かりませんでした。
なぜ主治医はもともとのステージ2aで再発率を言われたのでしょう・・・
実際には、私の生存率、再発率はどのくらいでしょうか?
 
田澤先生が他の方の回答に書かれているように、ガンセンターなどの大きな病院では、何人もの医師がいて主治医といえども患者とのコミュニケーションは少なく、退院後は近所の病院に転院しなくてはなりません。ですが、この病院も何名も乳腺科の医師がいます。
病院での手術件数は多いのですが、医師一人当たりで計算すると・・・どうなのかなといった感じです。
田澤先生のように経験豊富な医師の元で安心して定期検査を受け予後を過ごせたら気分も違うだろうと主人と話していました。
 
長文で申し訳ございませんが、また宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 術前化学療法後の状態と予後の関係ですね。
 いろいろと気になるところだと思います。

回答

「ステージ2a→ステージ1 にダウンステージするので化学療法の効果があり早期のなるとのことですが、生存率もステージ1の生存率で見ていいのですか?」
⇒ダウンステージと予後の関係については、まだ良く解ってはいません。
 解っているのは「化学療法は術前に行っても、術後に行っても予後は同じ」「pCR(完全寛解)では予後が良い」という事だけです。
 それで、主治医は「もともとステージⅡAだから…」という言い方をしているのでしょう。
 ただ、少し考えてみると解るのですが、
 同じように「化学療法を行っても」
(化学療法効果)
Grade 0無効
Grade 1やや有効
 更に1a)軽度の効果
   1b)中等度の効果
Grade2かなり有効
 更に2a)高度の効果
   2b)極めて高度の効果
Grade3完全奏功
と分かれます。
 質問者の場合にはGrade2a(高度の効果)に当てはまっています。
 化学療法は「予後を改善させる事が解っています:統計的に証明されているから行っている訳です」
 ただ、「全ての人に同等の改善効果がある訳ではない」ことが、この「化学療法効果のGradeで解ります」
 つまり、Grade2や3の方達はGrade0や1の人に比較して間違いなく「予後改善効果がある」と考えられます。
 
◎同じ「ステージⅡA」と一くくりにした「予後」は当てはまらず、
 ステージⅡA(無再発生存80%程度)だとしても、これは化学療法効果が「異なる人の予後の平均」となります。
 つまり同じステージⅡAでも 
 Grade0/1 はよりステージⅡBに近くなり、Grade2/3は、よりステージⅠに近くなります。
 ただ、『そこまでの細かいデータが無いので、証明する事はできません』
 あくまでも「術前化学療法によるダウンステージは治療効果を表す」ものですが、「治療効果が高かった事は、治療前のステージの平均よりはかなり予後良好が予測される」という意味です。
 
「もともと3センチくらいの浸潤癌でしたが、4ミリに縮小したことで浸潤癌ではなくなるのですか?」
⇒4mmに縮小しても「4mmの浸潤癌」です。
 縮小しましたが、「浸潤癌」です。
 
「全身にまわってる確率も減るのでしょうか?」
⇒「化学療法効果GradeⅡA、ly0, v0」という結果からは、「再発の確率は下がっている」と思います。
 
「なぜ主治医はもともとのステージ2aで再発率を言われたのでしょう・・・実際には、私の生存率、再発率はどのくらいでしょうか?」
⇒(上記のように)細かいデータがないからです。
 「化学療法は術前に行っても、術後に行っても予後は変わらない」という内容からのコメントでしょう。
 実際には、「将来的に、再発高リスクと低リスクに分けている」という事だと思います。
 ◎「化学療法効果が高かった」=「再発低リスク」へ振り分けられる。という事だと思います。
 私の経験でも、「術前化学療法で有効であった方とそうでない方」で再発のし易さに差があると思っています。
 
 

 

質問者様から 【質問5 追加質問とお礼】

田澤先生こんにちは。
先日はお忙しい中、回答頂きありがとうございます。
また、疑問が出てきましたので度々申し訳ございませんが質問させて下さい。
増殖スピードが早いと腫瘍が大きくなるのが早いということでしょうか?癌の勢いがいいと広がりやすいとは関係ないのでしょうか?
いまいち増殖とか勢いというのが分からないのです…。
このような質問で申し訳ありませんが、ご回答頂けたらと思います。
宜しくお願い致します。
あと、田澤先生がこのように一般の方からも質問出来るように乳ガンのQ&Aを設けて頂いて本当に感謝しております。
私の周りには田澤先生のような方はいません。
どの方の質問欄を見ても先生の前向きで乳ガン患者を思う先生の人柄が伝わります。
田澤先生はすごく忙しい方だと思います。その中でこのように回答を頂けるのは、私には救いの場です。
これからもまた質問させて頂くことがあるかと思いますが宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答5】

 こんにちは。田澤です。
 「増殖スピード」についてですね。
 現在、日常に用いられている「指標」には「Ki67」があります。

回答

「増殖スピードが早いと腫瘍が大きくなるのが早いということでしょうか? 」
⇒その通りです。
 癌細胞が「細胞分裂」して「癌細胞数が増加」することで「腫瘍(癌)」は大きくなります。
 「細胞分裂」するには、まず「核分裂」しなくてはなりません。「1つの核が2つに分裂」することで「細胞も1つが2つに分裂」するのです。
この「核分裂期に存在し、(分裂を休止している)休止期には存在しない」核蛋白であるKi67の割合(%)が「細胞分裂をしている細胞の割合(%)」を示します。
 つまり「Ki67(%)」=「細胞分裂している細胞の割合(%)」=細胞数が増加している割合(%)となります。
 例Ki67が50%であれば、癌細胞の内50%が細胞分裂している=腫瘍が1.5倍の大きさになる
 
「癌の勢いがいいと広がりやすいとは関係ないのでしょうか?」
⇒「癌の勢いがいい=増殖スピードが速い=Ki67が高値」となると「腫瘍が大きくなる=乳腺内に腫瘍が拡がる」となります。
 しかし、「腫瘍が大きくなる」ことと「全身に拡がる」事とは別問題です。
 「全身に拡がる」為には「大きくなるだけでは無く、血管侵襲やリンパ管侵襲など、全身へ運ばれる為の能力」が必要です。更に「運ばれた先で、臓器に入り込んでそこで増殖する」過程も必要となります。
 つまり「腫瘍が大きくなる」ことと「全身へ運ばれ、更にその場で発育すること」はまた別なのです。
 そこは分けて考えてください。
 
◎QandAをご評価いただき、ありがとうございます。
これからもご質問ください。
 
 

 

質問者様から 【質問6 今後の定期検査について】

田澤先生こんにちは。いつもお世話になっております。
お忙しい中、度々申し訳ございませんがまた質問を宜しくお願い致します。
術後の定期検査のことですが、通常転移がないかの全身の検査はどのくらいの頻度でするのでしょうか?
主治医に確認したところ、
『希望者にはしてますが・・・あなたはトリプルネガティブだから検査しても
いいかもしれませんね。』
とのことでした。
私的には心配なので1年に1回はしたほうがよいのではと思いましたが、
主治医は早く見つかったからといって余後はかわらないから・・・ のようなこと言われていたように思います。
検査をしても余後は変わらないのでしょうか?
治療はないのでしょうか?
また、以前の主治医は、あなたは腫瘍マーカーが出ないタイプだから
血液検査の腫瘍マーカーは当てはまらないと言われてました。
田澤先生なら今後の検査はどのようにされますか?
アドバイス頂けたらと思います。宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答6】

 こんにちは。田澤です。
 術後の定期検診ですね。
 これは「施設によって」かなり異なるものであり、きまったものはありません。
 マンモグラフィーは1年に1回撮影する(温存なら両側、全切除ならば対側を撮影します)事だけは「高いエビデンス」があります。

回答

「術後の定期検査のことですが、通常転移がないかの全身の検査はどのくらいの頻度でするのでしょうか?」
⇒私の感覚ですが
 採血腫瘍マーカー(3か月程度) 微小浸潤や高齢者などは6か月や1年でもいいとは思いますが…
 CTは「希望者や、明らかなハイリスク(リンパ節転移が10個とか)」以外の方には、特にしていません。
 
「検査をしても余後は変わらないのでしょうか?治療はないのでしょうか?」
⇒予後を改善するというエビデンス(証拠)はありませんが、早めに発見すれば、「抗がん剤も効きやすい」し「QOL(生活の質」もグンと上がります。
 
「また、以前の主治医は、あなたは腫瘍マーカーが出ないタイプだから血液検査の腫瘍マーカーは当てはまらないと言われてました。」
⇒このコメントは完全な誤りです。
 主治医の経験不足です。
 乳癌の初期治療の状態(手術時)に腫瘍マーカーが高い人などいません。(例外的には、腫瘍が潰瘍を形成してリンパ節もゴロゴロのような方だと上昇していることも稀にありますが)
 通常の乳癌の患者さんでは「腫瘍マーカーは正常が当たり前」なのです。
 「質問者だけが腫瘍マーカーが出ないタイプではなくて、全ての早期乳癌患者さんが腫瘍マーカー正常」なのです。
★腫瘍マーカーを測定する意義は、「もともと正常」であることが前提であり、 長い経過のなかで「腫瘍マーカーが上昇」した際に、「これは、転移再発がおきたかもしれない」として、そこで初めて「CTや骨シンチ」を撮影するのです。
 そして、その後は「治療の効果判定に用いられる」のです。
 『早期乳癌で最初から腫瘍マーカーが高い人はいません』こんな事も知らない乳腺外科医がいることを悲しく思います。(これから経験して学ぶのかもしれませんが…)
 腫瘍マーカーはその意味で「大変有効」だと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問7 遺伝性乳がんについて】

田澤先生、こんにちは。いつもお世話になっております。
毎回、分かりやすく丁寧な回答を頂きましてありがとうございます。
また質問させて下さい。宜しくお願い致します。
私は41歳でトリプルネガティブ乳がんと診断されました。
私の祖母も40歳で乳がんと診断され、手術をして30年間元気でいましたが、
30年後に肺がん、脳転移で亡くなりました。
他に乳がん、卵巣がんを患った者はいません。
トリプルネガティブで身内に乳がん患者がいる場合は遺伝性乳がんも考えた方がいいのですか?
また遺伝子検査 をしたからといって、そうであった場合に予防切除以外に治療法はあるのでしょうか?
ご多忙方は思いますが、お時間のある時にご回答頂けたらと思います。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答7】

 こんにちは。田澤です。
 「遺伝性乳癌」ですね。
 キーワードは「若年性」「家族に乳癌や卵巣がん」「トリプルネガティブ」です。

回答

「トリプルネガティブで身内に乳がん患者がいる場合は遺伝性乳がんも考えた方がいいのですか?」
⇒その通りです。
 上記のキーワード全てが該当しています。
 「遺伝カンファレンス」を受けたうえで「遺伝子検査」をすれば判明します。
 
「遺伝子検査をしたからといって、そうであった場合に予防切除以外に治療法はあるのでしょうか?」
⇒「体側乳房の切除」や「卵巣切除」などの「リスク低減手術」があります。
 治療法は、それくらいしかありません(遺伝子治療は存在しません)
 ただ、「遺伝性乳癌」と判明すれば、「治療ではなく、予防」として、(特定の)定期的検診が「ご家族」に推奨されます。
 
(参考にしてください) 
<乳房の検診と予防>
・18 歳から、乳房の自己検診を行う
・25 歳から、医療機関で半年~1 年に 1 回の頻度で視触診を受ける
・25~29 歳あるいは家族が乳がんを発症した最も早い年齢から、1 年に 1 回 の頻度で MRI 検査あるいは MRI 検査ができなければマンモグラフィ検査を行う
・30 歳~75 歳では、1 年に 1 回の MRI 検査とマンモグラフィ検査を行う
・75 歳以上では、個別対応
・「リスク低減手術」(乳がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に乳 房を切除する手術)について検討し、医療者と話し合う
 
<卵巣の検診と予防>
・リスク低減手術(卵巣がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に左 右両方の卵巣および卵管を切除する手術)が推奨される
・リスク低減手術は、理想的には 35~40 歳の間で出産が完了した時点、ある いは、家族で最も早く卵巣がんを発症した人の年齢での実施を考慮する
・手術を選択しない場合は、半年に 1 回の頻度で経腟超音波検査、腫瘍マーカ ー(血液検査)を受ける:30 歳から、または家族で最初に卵巣がんと診断され た人の発症年齢の 5~10 歳早くから開始する
*リスク低減手術によってのみ、卵巣がんのリスクや卵巣がんによる死亡率を減 らすことが報告されています。
 卵巣がんに対する有効な検診方法はまだ確立し ていません。
 
 

 

質問者様から 【質問8 術後の定期検査について】

田澤先生、こんにちは。いつもお世話になっております。
お忙しいかと思いますが、今回もまた宜しくお願い致します。
定期検査について再度質問させて頂きたいのですが…。
今日、定期検査で血液検査(一週間後に結果が出ます)と超音波をしました。
超音波では問題は無かったのですが、担当の先生から
「秋ごろCTと腹部エコーをとりましょうか?9月頃どうですか?」
と言われたので、
「血液検査で腫瘍マーカーに異常がなければ転移とか心配ないですよね?
CTは頻繁だと被爆とか心配ないですか?」
と聞いたら
「腫瘍マーカーが大丈夫だからって必ずでQはないですよ。脳の検査は症状が出てからでいいですよ。CTは多少は被爆しますよ。」
と言われ9月の予約を入れました。
ですが後々思ったのが、今年の1月末に手術をしたので1月6日の手術前に一度CTを撮っています。
なので、ちょっと早いような気がするのですが…。
トリプルネガティブなので転移も気になるのですが、CTの被爆量も気になります。
もう検査しないといけないのですか?腫瘍マーカーが正常だったら検査しなくても大丈夫ですか?
すみません、また別の質問ですが、病理診断で
「がんの大きさ4ミリ、がんの広がり3.6センチ」
となってましたが、がんの広がりとはどのような意味でしょうか?
術前化学療法なのですが、もともとのがんの大きさ(浸潤経)ですか?
今の主治医に聞いたら「それは大したことない」と言われたのですが、気になってしまいます。
あともう一点、質問させて下さい。
トリプルネガティブ
ステージ2a
グレード2
術前化学療法効果グレード2a
リンパ節、リンパ管、静脈無し
だと局所再発より他の臓器へ転移する確率が高いですか?
実際、乳ガンは局所再発と転移する方、どちらが多いのですか?
長々と質問してしまい申し訳ありません。
今の主治医は若すぎて(35歳くらい)いまいち頼りになりません。もう、三回定期検査でお会いしてますが、
カルテを見てないせいか、三回ともホルモン療法の患者さんと間違われてお話されます。
確かにホルモンタイプの患者さんが多いのは分かりますが、診察の途中で話の食い違いがあり、私の方から「トリプルネガティブです」と言うのは悲しい気持ちになります。
愚痴になってしまい申し訳ございません。
手術の病院から今の経過観察の病院に振り分けられ、今の主治医にあまり信用が無いのですが、だからといってさらにまた違う病院に行くのも…悩んでしまい
また田澤先生に頼ってしまいました。
お時間のあるときに回答頂けたらと思います。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答8】

 こんにちは。田澤です。
 術後の定期診療については明確なガイドラインはありません。
 よって主治医の経験に基づく領域となっています。
 定期的のCTの推奨はありません。
 被ばく量もかなり多いので「通常の定期検診で行うべきではない」というのが一般的見解です。

回答

「もう検査しないといけないのですか?腫瘍マーカーが正常だったら検査しなくても大丈夫ですか?」
⇒CTは不要です。
 腫瘍マーカーが上昇した場合に原因検索として「CT+骨シンチ(or PET)」を行えば十分です。
 腫瘍マーカーが「上昇しない転移」も勿論ありますが、「定期的にCTを撮影する意義はありません。検討さえ、されていない」のが実情です。
 最近の若い医師は気軽にCTを撮影しますが、その被ばく量は無視できるレベルではありません。
 当然断るべきです。
 
『「がんの大きさ4ミリ、がんの広がり3.6センチ」となってましたが、がんの広がりとはどのような意味でしょうか?』
⇒これは浸潤癌として残存していた範囲が4mmであり、「乳管内癌成分として36mmの範囲に存在していた」という事です。
 
 この36mmの範囲はおそらく「化学療法前には浸潤癌だった範囲」だと思います。
 
「局所再発より他の臓器へ転移する確率が高いですか?実際、乳ガンは局所再発と転移する方、どちらが多いのですか?」
⇒局所再発することは殆どありません。
 私は膨大な数の患者さんを診てきましたが、「局所再発は本当に少ない」です。
 そもそも質問者は「乳房切除」していて「リンパ節転移陰性」ですから、『局所再発のリスクはほぼゼロ』と考えて間違いありません。
 
 
 

 

質問者様から 【質問9】

こんにちは。いつもお世話になっております。
また質問させて頂きたいと思います。
お忙しいかと思いますが宜しくお願い致します。
最近、左側の頭痛がひどくて、あまり市販の頭痛薬が効きません。痛みがひどい時は
吐き気もあります。
元々頭痛持ちで、母も姉も片頭痛持ちですが
最近頻度が多いのです。
更年期症状なのかな…とも思い出ながら
脳転移じゃないかと怖くて怖くてたまりません。
あと、三週間ほど前から咳が続き、痰がからみます。
一週間前に病院で痰の薬と抗生物質を処方してもらい咳の回数や痰の色が黄色から透
明っぽくなってきましたが、医師からはこれで治らなかったら
レントゲンで肺炎か喘息か疑いましょう…と言われました。
肺転移だったらどうしよう…と心配になっしまいます。
先月の腫瘍マーカーは平常値で問題無かったのですが、腫瘍マーカーの出ない転移も
あるので気になってしまいます。
術前抗がん剤が終わり今年一月末に手術したばかりでまだ心配するのは早いですか?
こんな事で一喜一憂するのはどうかと思いますが、宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答9】

こんにちは。田澤です。
乳癌術後には、いろいろな症状が「あれも転移? これも転移??」と気になるものです。
気持ちは解りますが、担当医を信頼してあげましょう。

回答

「脳転移じゃないかと怖くて怖くてたまりません。」
⇒脳転移の症状では無いようです。
 視野が狭くなる
 歩行時に、どちらかに寄っていく
 体の片側が麻痺をする。
 そもそも「脳転移」は、いきなり起こりません。
 「肺や肝転移などを長期的に治療をしていて起こるもの」と考えてください。
「医師からはこれで治らなかったらレントゲンで肺炎か喘息か疑いましょう…と言わ
れました」
⇒その通りです。
 
「肺転移だったらどうしよう…と心配になっしまいます」
⇒肺転移の症状ではありません。
 肺転移の症状(かなり多発しないと症状は出ませんが)は「咳と呼吸困難」です。
 「咳はいいとしても、痰がでている」わかですから、「通常の炎症と考えるべき」です。
 
「今年一月末に手術したばかりでまだ心配するのは早いですか?」
⇒その通りです。
 症状が違います。
「腫瘍マーカーと症状」を指標にしましょう。