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トリプルネガティブ

[管理番号:504]
性別:女性
年齢:48歳
はじめまして、先生の意見をお聞きしたくて質問させて頂きます。
トリプルネガティブと診断されました。
ステージ2A リンパへの転移はありません。
しこりは4㎝でした。
主治医には全摘してから抗癌剤。トリプルネガティブなので同時再建は出来ませんと言われました。
私の第一希望は温存です。無理なら同時再建希望です。。そして抗癌剤は一切使用したくはありません。(主治医にはまだ言ってませんが・・・)
トリプルネガティブで抗癌剤を使用したくないなんてとんでもない話なんでしょうか?
抗癌剤をしたくない理由は副作用の怖さと免疫力の低下が心配だからです。
セカンドオピ ニオンを検討していますが田澤先生でしたらどの様な診断をしますか?
よろしくおねがいします。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 cT2(4cm), cN0, cStage2A, tripple negativeですね。

回答

「トリプルネガティブなので同時再建は出来ませんと」
⇒これは正しくありません。
 同時再建できない(または、するべきではない)ものは
・放射線照射が必要(リンパ節転移が4個以上など)
・急速増大しており、全摘出した後でも「局所再発高リスク」(悪性葉状腫瘍など)
 
◎化学療法は全く関係ありません。(ただ医師の中には、化学療法を再建後の合併症の高リスクと捉えている人もいます)
 今回の主治医もこのケースでしょう。
 
「私の第一希望は温存です。無理なら同時再建希望です」
⇒「腫瘍径4cmでの温存」希望であれば『術前化学療法の適応』となります。
 術前化学療法⇒腫瘍のサイズダウン⇒温存
◎同時再建はcN0なので本来可能です。(但し、トリプルネガティブなので術後化学療法の適応があります)
 
「トリプルネガティブで抗癌剤を使用したくないなんてとんでもない話なんでしょうか?」
⇒抗がん剤をしない事を勧めるつもりはありませんが、あくまでも「再発予防」なので、最終的には「ご本人の選択」として構わないと思います 。
 
本来、トリプルネガティブには
①もともと(化学療法が不要な)予後良好のタイプ
②化学療法が全く効かない、予後不良のタイプ
③化学療法が良く効く予後が中間のタイプ
 以上の3つが混ざっています。(まだ、これを分類する方法が見つかっていないのです)
♯一般的に、髄様癌、腺様嚢胞癌、アポクリン癌などが①に入るとは言われていますが…
 質問者が①~③のどれにあたるのかは不明なのです。
 これに対し、HER2タイプは「ハーセプチン」というターゲットがあり、「ハーセプチンを含めた化学療法の絶対的効果が期待」できます。
 
◎つまりトリプルネガティブの場合には「タ ーゲットがない」ので化学療法が効くとは限らないのです。
 
「抗癌剤をしたくない理由は副作用の怖さと免疫力の低下が心配だからです」
⇒「副作用が嫌」という理由で(ご本人の意思で)「化学療法をしない」事は、十分許容される事です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先生 よろしくお願いします。
先月、右乳房全摘手術と同時再建をして病理検査結果が出ました。
55×50×35㎜ トリプルネガティブ グレード3
ki-67 70%
リンパ節への転移はありませんでした。
※腫瘍辺縁から腋窩方向に5mmの乳管進展が見られる。
切除断端は陰性であるが胸壁側の剥離面が接近しており剥離面から1mm未満まで癌の浸潤が認められる。
主治医からは悪性度が高い為抗癌剤をする様に言われています。
抗癌剤をしないと再発の可能性は30%
抗癌剤をすれば15%になると説明されました。
私はこの病理結果を見てもやっぱり抗癌剤はしたくないと思っています。
そこで先生に質問です。
病理結果の※の部分はどの様な意味でしょうか?
良くない事でしょうか?
再発の%は正しいと思いますか?
先生でしたらこの病理結果でしたら抗癌剤を強く勧めますか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
一度、術前に御相談されていましたね。
504となると「随分、前」なのだと思います。
pT3, pN0, pStage2Bですね。
「主治医からは悪性度が高い為抗癌剤をする様に言われています」
⇒本来「悪性度は無関係」です。トリプルネガティブであれば「抗がん剤の適応」が本来あります。
 ただし、「トリプルネガティブの中には、抗がん剤をしなくても十分予後の良い群がある」という私の前回の回答からの流れであれば「グレード3」だから「尚の事、推奨される」という考え方は「有り」ですね。
 
「病理結果の※の部分はどの様な意味でしょうか?良くない事でしょうか?」
⇒全く問題ありません。
 病理医は「標本だけをみている」から、そのような「余計なコメント」をするのです。
 執刀医が「きちんと切除」していれば「全く問題」ありません。(執刀医の注意が行き届いていなければ問題ですが…)
 
「再発の%は正しいと思いますか?」
⇒adjuvant onlineを使うと
 No therapy 10年再発率48%
化学療法をすると28%(20%の上乗せ効果)となります。
 
「先生でしたらこの病理結果でしたら抗癌剤を強く勧めますか?」
⇒私が気になるのは「腫瘍径」です。
 「トリプルネガティブ」でも「2cm前後」ならば「ご本人の選択」でもいいかとも思いますが、「55mm」となると「強く勧める」と思います。
 ♯勿論、最終的には「自己責任」ですが…
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生。お返事ありがとうございます。
抗癌剤を強く勧めると言う返事に正直揺らいでいます。
先生は悪性度より大きさが重視とおっしゃいましたが、それはどうしてでしょうか?
大きいと全摘していても転移や再発しやすいのですか?
私は55mmと大きかったけどリンパにも転移はしていなかった事はあまり意味ないのでしょうか?
再発や転移をさせない為に必要なのは免疫力だと思っています。
その免疫力を壊す抗癌剤は余計に再発や転移をするのではないかと心配しています。
それから抗癌剤をしないと無治療になりますが経過観察の為に腫瘍マーカーを使うと思っていましたが主治医に確認した所、「私は腫瘍マーカーはあまり使いません。CTや骨シンチで検査します」と言われました。
これは田澤先生はどう思いますか?
CTは医療被曝が心配だと思うのですが・・・
以上 よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
以前、以下のように回答しましたね。
「先生でしたらこの病理結果でしたら抗癌剤を強く勧めますか?」
⇒私が気になるのは「腫瘍径」です。
 「トリプルネガティブ」でも「2cm前後」ならば「ご本人の選択」でもいいかとも思いますが、「55mm」となると「強く勧める」と思います。
 ♯勿論、最終的には「自己責任」ですが…
「抗癌剤を強く勧めると言う返事に正直揺らいでいます」
⇒トリプルネガティブであれば、腫瘍径(浸潤径)も考慮した上で「抗がん剤」すべきだと思います。
 
 pT1a(5mm以下)であれば「不要」、pT1b(10mm以下)であれば「考慮する」となります。(NCCNガイドライン)
 質問者は「55mmと大きかった」とあるので、当然「化学療法の適応」となります。
 
「先生は悪性度より大きさが重視とおっしゃいましたが、それはどうしてでしょうか?」
⇒それは私自身の経験からです。
 腫瘍径が大きいということは「癌が時間と空間をかけて大きくなった」ということを表していると考えています。
  
「大きいと全摘していても転移や再発しやすいのですか?」
⇒「浸潤径」は「ステージ」を構成する「リスク因子」です。
 そのリスクが高まるということです。
 
「私は55mmと大きかったけどリンパにも転移はしていなかった事はあまり意味ないのでしょうか?」
⇒意味はあります。
 「リンパ節転移の程度」は「浸潤径」と共に「ステージを構成するリスク因子」なのです。
 
「免疫力を壊す抗癌剤は余計に再発や転移をするのではないかと心配」
⇒この考え方は危険です。
 このようなことを言って「抗がん剤は良くない。免疫療法をしよう」などという
(ある意味)犯罪とも言える書籍が世の中にはありそうです(私には全く興味がありませんが…)
 理屈としては「通ります」が、実際のところ「抗がん剤で予後が改善される」ことが解っている以上、(抗癌剤による)「免疫力の低下よりも、直接の治療効果の方が高い」ことは明白なのです。
 
『「私は腫瘍マーカーはあまり使いません。CTや骨シンチで検査します」と言われました。これは田澤先生はどう思いますか?』「CTは医療被曝が心配だと思うのですが」
⇒CTや骨シンチは(ご本人のおっしゃるように)医療被曝の問題があり、有用性も否定されています。
 腫瘍マーカーによって「症状がでたり、定期的な画像診断よりも早期に再発を検出できる」ことは証明されています。
 ♯ただ、「早期で発見すること」がどの程度の利益を生むのかは不明とされています。
 ○私個人的な考えでは「早期で再発を検出」することで、時には「根治となる場合もある」と思いますし、少なくとも「生活の質の向上」には役立つと思っています。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生。よろしくお願いします。
抗癌剤の必要性は理解しました。
正直まだ迷っていますが…
私が先生の患者だったらどの様な抗癌剤を使いますか?
期間はどのくらいですか?
その抗癌剤の副作用も教えて下さい。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「私が先生の患者だったらどの様な抗癌剤を使いますか?」
⇒トリプルネガティブの抗がん剤は「アンスラタキサン=アンスラサイクリン+タキサン」です。
 EC(3週に1回)x4⇒PTX(毎週投与)x12です。
 
「期間はどのくらいですか?」
⇒半年です。EC(3カ月)PTX(3カ月)です。
 
「その抗癌剤の副作用も教えて下さい」
⇒EC(嘔気、脱毛、口内炎、便秘)
 PTX(痺れ、脱毛)