[管理番号:3693]
性別:女性
年齢:34歳
乳がんと診断され、先日乳房温存手術を受けました。
これまでの経緯です。
6月下旬、人間ドックの乳がん検診を受診。
触診とエコーで約8mmのしこりが見つかり要精密検査となる。
7月下旬、乳腺専門クリニックにて精密検査。
細胞診実施。
8月上旬、細胞診の結果クラス4となり同日バネ式生検を実施。
悪性の可能性が高いこともあり、この時点で検査待ちと通院回数を減らすために予定されている今後の検査について、提携病院に予約を入れてもらう。
8月中旬、組織診の結果、左乳房(上部内側)の浸潤性乳管内がん(硬がん)と診断される。
腫瘍径8mm Grade 1 , Stage1 ,
ER(3b), PgR(3b), Her-2(-),
Ki-67(Low)
同日胸部MRI、骨シンチ、CT検査を提携病院で実施。
検査の結果、骨・他臓器への転移は認められず、リンパ節にも所見は見られず。
9月上旬、センチネルリンパ節生検、乳房温存手術を受ける。
センチネル[1/1]
Frozen section, lymph node
metastasis of breast canser
術中迅速診断;乳腺所属リンパ節
やや明瞭な核小体、崩れた小型濃染核、中程度の胞体を持つ腫瘍細胞が、細索状密に浸潤増殖しています。
リンパ節の大部分を置換しています。
浸潤径は7mmです。
センチネル生検の結果、腋窩リンパ節をすべて切除。
郭清レベルについては聞き忘れてしまったが、主治医からは「すべてとった」と聞いている。
9月下旬、病理検査の結果が出たためクリニック受診。
以下、病理レポートを引用します。
病理組織診断
Breast cancer
invasive ductal carcinoma,
scirrhous carcinoma, f
病理学的浸潤径14×11mm, 断端(-),
EIC(±), n(+), Grade 1
ER(3b), PgR(3b), Her-2(-),
Ki-67(Low)
明瞭な核小体、粗大顆粒状クロマチン、比較的均一な中型濃染類円形核、淡好酸性胞体を持つ腫瘍細胞が、軽度~中程度の結合織増生を伴って、細~中索状、融合腺管状に浸潤増殖をしています。
腫瘤内に乳管内篩状増殖が散見され、また腫瘤周囲の乳管内にも軽度の伸展をみます。
核分裂は目立ちません。
脂肪織に浸潤していますが、腫瘤を越える乳管内伸展はありません。
摘出リンパ節に腫瘍細胞を認めます。
[1/12]
側方断端陰性です。
規約の核グレード分類では核異型2、核分裂1となり、合計3で、Grade1となります。
◆主治医からの説明と今後の治療方針
温存乳房への放射線照射 1.5ヵ月→(制癌剤 3ヵ月)→内分泌療法 5年
LuminalA
ホルモン治療がとても有効。
抗がん剤は絶対ではないが少しは再発を抑えるので、自己判断を。
再発の危険性は低~中程度。
手術だけで10年後に再発していない確率65%
内分泌療法を術後に行ったとき 79%
内分泌療法と制癌剤を術後に行ったとき85%
抗がん剤はTCを想定しているとのこと。
◇ここから質問です。
①ルミナルAですが、抗がん剤の上乗せ6%となることに迷っています。
できれば抗がん剤は回避したいですが、少しでも再発を抑えたい気持ちもあります。
リスクが低~中程度となっているため、低リスクに比べれば抗がん剤の上乗せがあるということでしょうか。
それぞれの再発率について、田澤先生も同様の御見解でしょうか。
②若年性乳がんが予後が悪いとされているのは、進行してから発見されることが多いからでしょうか。
トリプルネガティブも多いと言われていますが、私のようにルミナルAの場合でも、全く同じ病期、サブタイプである若年性以外の方と比較しても予後が悪いということがあるのでしょうか。
③病期について、術後に主治医から話がなかったのですが、Stage2aで間違いないでしょうか。
当初はリンパ節転移の可能性も10~20%と聞いており、Stage1で早期と希望を持っていたのですが、思っていたより進行しておりショックを受けています。
④再発率とは、局所と遠隔転移をまとめて計算したものでしょうか。
⑤こんなことを聞いても仕方がないかもしれませんが、バカな質問をさせてください。
現在2歳の子どもがおり、10年生存率を見ても私には10年では足りないと思い悲しくなります。
もし再発したとしても、適切な治療を行えば子どもが成人する頃までそこそこのQOLを維持しながら生きていられるでしょうか。
以上、長くなってしまいすみません。
お忙しいところ大変恐縮ですがよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
8mmの乳癌で「骨シンチとCT」ですか…
担当医はそのことに何の罪悪感は無いのでしょうか??
「それぞれの再発率について、田澤先生も同様の御見解でしょうか。」
⇒おそらく化学療法で、そんなに「上乗せはない」と思います。
OncotypeDXしてみては如何でしょうか?
「Ki67やmitotic counts」からは、「低リスク」となる可能性が高そうです。
「②若年性乳がんが予後が悪いとされているのは、進行してから発見されることが多いからでしょうか。」
⇒若年性乳癌が予後は悪いとされた時代は過去のものです。
現在は30代前半も珍しく無くない(ホルモン環境の変化でしょう)と感じます。
勿論予後が悪いなどということもありません。
つまり、「昔の30代の乳癌」は非常に特殊であったと思います。
「私のようにルミナルAの場合でも、全く同じ病期、サブタイプである若年性以外の方と比較しても予後が悪いということがあるのでしょうか。」
⇒同じですね。
私の感覚からすると、30歳代前半は「若年者」として区別する必要は全くありません。(10年前とは全く状況が異なっています)
「③病期について、術後に主治医から話がなかったのですが、Stage2aで間違いないでしょうか。」
⇒pT1c(14mm), pN1, pStage2A
その通りです。
「思っていたより進行しておりショックを受けています。」
⇒リンパ節転移1個で「進行」は考え過ぎです。
「④再発率とは、局所と遠隔転移をまとめて計算したものでしょうか。」
⇒遠隔転移再発だけの事です。
局所再発は「ステージなどとは無関係に」手術の術式(温存か全摘か)、手術時の状況(断端との距離)、手術の精度など「手術に関係する因子」なので、「ステージと括りつける」ことは無意味です。
「もし再発したとしても、適切な治療を行えば子どもが成人する頃までそこそこのQOLを維持しながら生きていられるでしょうか。」
⇒勿論です。
再発低リスクであり(効かない抗癌剤をするよりも)むしろホルモン療法を長期間継続することが「鍵」となるでしょう。
今は「再発」が頭をよぎるでしょうが、1年もすれば「気にならなくなる日」がきっと訪れます。
質問者様から 【質問2】
管理番号3693
田澤先生こんにちは。
前回の質問ではご回答ありがとうございました。
35歳未満であっても状況は同じということで安心しました。
余生の長さという意味で、年齢的に再発への不安はありますが、
前向きに捉えたいと思います。
恐れ入りますが、再度質問をさせてください。
抗がん剤の件は、ルミナールAであること、リンパ節転移がセンチネル1、摘出リンパ節から1の合計2個であったこと、田澤先生の日頃のご回答より自分なりに考え、
受けない方に心が傾きつつあります。
せっかく勧めていただいたオンコタイプですが、まだ受けておりません。
先生に低リスクと出る可能性が高いと言っていただけたこと、現在の主治医からも同様のご意見をいただいたため、踏み切れておりません。
オンコタイプを受ければはっきりする話なのですが、(質問1)術後の病理で核グレード1、ki67の値がLowと出た場合でも、
オンコタイプで高リスクと判定されることはあるのでしょうか。
稀かもしれませんが、もしそのようなケースが一定割合あるようなら、オンコタイプをもう一度検討しようかと思います。
ルミナールAでは、リンパ節転移4個以上で抗がん剤を適応とする、というお話がこれまで何度も出ておりましたがここで疑問が湧きました。
最大の予後因子として「腫瘍径」と「リンパ節転移の個数」が挙げられていると思います。
それと、リンパ節転移は直接的な遠
隔転移には至らない、との回答を他のQで見ました。
それでは、(質問2)なぜ腫瘍径による抗がん剤の追加は検討されないのでしょうか。
逆になぜリンパ節転移個数4個以上の場合は適応とされるのでしょう。
リスクが上がることにより相対的に恩恵も上がるのであれば、腫瘍径の大きさによって抗がん剤が検討されてもいいような気がします。
このQAでも、腫瘍径が大きいからとか若いからとかで抗がん剤を勧められているルミナールAの方が多い印象は受けています。
同じ最大の予後因子と言われていながら、
リンパ節転移がなければ、腫瘍径がある程度大きくても抗がん剤の根拠とならないのでしょうか。
現在は執刀医とは別の医療機関で放射線治療を行っており、半分ほど終了したところです。
放射線治療終了後、執刀医の診察を
受ける予定ですが、抗がん剤をやるかやらないか最終的にそこで決めます。
前回の質問で、主治医に示された再発率を記載しました。
手術だけで10年後に再発していない確率65%
内分泌療法を術後に行ったとき 79%
内分泌療法と制癌剤を術後に行ったとき85%
これはどこからのデータなのか分かりませんが、NewAdjuvant.comのデータについ
ては、ルミナールAとBを区別したものではないと理解しています。
(質問3)抗がん剤による上乗せ6%について、そんなに上乗せはないと思うと仰ったのは、主治医の示した再発率のデータがルミナールAとBが混ざったものだという判断からでしょうか。
最後に、術後10年以降の晩期再発についてです。
(質問4)ルミナールAはやはり晩期再発が多いのでしょうか。
晩期再発のほとんどがルミナールAと聞いたこともあり、
とても不安です。
10年再発率のデータには出てこないことなので…
田澤先生の、患者の不安に寄り添い、信念を持って回答されている姿勢に頭が下がります。
何度もすみませんがよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「(質問1)術後の病理で核グレード1、ki67の値がLowと出た場合でも、オンコタイプで高リスクと判定されることはあるのでしょうか。」
⇒殆ど無いでしょう。
ただ、いつまでも「抗ガン剤の上乗せがあるかもしれない」などと迷うのであれば、「数字を見るしかない」ように思います。
「(質問2)なぜ腫瘍径による抗がん剤の追加は検討されないのでしょうか。逆になぜリンパ節転移個数4個以上の場合は適応とされるのでしょう。」
⇒ルミナールAでは「腫瘍径やリンパ節転移の個数にかかわらず」化学療法によるbenefitがないことがわかっています。
ただ、昔からの考え方の名残(昔、サブタイプ等無かった時代は「リンパ節転移陽性=抗がん剤」という時代が長く続いていたのです)でSt.Gallen(2015)では「リンパ節転移4個以上」というvoting結果となっているのです。(科学的根拠があるわけではありません)
「(質問3)抗がん剤による上乗せ6%について、そんなに上乗せはないと思うと仰ったのは、主治医の示した再発率のデータがルミナールAとBが混ざったものだという判断からでしょうか。」
⇒その通りです。
「(質問4)ルミナールAはやはり晩期再発が多いのでしょうか。」
⇒多くはありません。
「10年後」「20年後」と、どんどん再発率は減っていき(20年後など、%にもできないでしょう)ます。
「「晩期再発のほとんどがルミナールAと聞いたこともあり、とても不安です。」
⇒冷静になってみましょう。
数字のマジックにかかっているようです。
簡単な例として、膵癌と乳がんを比べてみましょう。
○膵癌は悪性度が高いため「5年も経ってからようやく再発するような(のんびりした)癌細胞」はありません。
つまり、(膵癌で)再発するものは「そのほとんどが2年以内に再発」します。
(胃癌も大腸がんも5年経つと卒業と言われます)
質問者が言っているのは、「乳がんは(どの癌よりも)晩期再発が起こりえるから、最も性質が悪い」と言っているようなものです。
「何度もすみませんがよろしくお願いいたします。」
⇒最近、質問者のように…
私が「回答」しても、それに納得せず(自論を展開し)同じ内容で「再度同じ質問」する方が増えています。
この場は、「(私の回答に不満な方が)私と議論する場」ではありません。
専門家としての「私の意見をきく」場なのだと思います。
私の回答が不満ならば、「ご自分が納得するサイトをあたる」ことをお勧めします。