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ステージと今後の治療について

[管理番号:4927]
性別:女性
年齢:31歳
田澤先生。
先日乳がんの手術を受けましたものです。
疑いが出た日から
多くの場面でこちらでの誠意あるご回答で勉強させていただき、精神面でも助けられました。
病理検査の結果が出たので私からもいくつかご相談させて下さい。
腫瘤大きさ:浸潤巣 20×11×9mm 非浸潤巣 27×13×9mm
組織型:scirrhous carcinoma
リンパ管侵襲:1y+ 静脈侵襲:v-
断端:陰性
リンパ節転移:pN0(SN0/1)
ER 3b 陽性
PgR 3b 陽性
HER2 2+
(score0 5%、score1+ 30%、score2+ 40%、score3+ 0%)
MIBー1 11%(58/519)
NG 1
まず2ヶ月前の超音波検査では1.1cm、手術1週間前のMRIでは1.5cmと聞いていた腫瘤が2cmを超えていたのですがこちらは短期間で成長したのではなく測定誤差と考えてよろしいでしょうか。
今回温存手術を選択しましたがその選択が妥当であったか、主治医からは「ステージ2に近い、ステージ1」と聞かされていますがそちらに関しても先生のご判断を伺いたいです。
また術前の結果ではHER2 1+だったものが今回2+となりました。
現在
FISH法での追加病理検査をしており、それでも判断がつかない場合はオンコタイプDXも検討してみて欲しいと言われています。
そのため術後約1ヶ月となる今月末に化学療法よりも先に放射線治療を行う予定ですが、この順番で問題ないでしょうか。
(いくつかの書籍では化学療法を優先する方が遠隔転移を考えると望ましいと書いてあり、少し不安に思っています)
最後に私の予後に関して10年生存率と再発率を先生のご経験も合わせてお聞かせいただけますでしょうか。
できる治療はなんでもやっていこうと考えていますが腫瘤が大きかったこと、リンパ管侵襲があったこと、年齢も鑑みて不安が募ります。
お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1c(20mm), pN0, luminalA(HER2は75%以上の確率で陰性となります。) もしもHER2が陽性ならluminalB(HER2陽性)となります。
完璧な早期癌です。
心配なく。
「まず2ヶ月前の超音波検査では1.1cm、手術1週間前のMRIでは1.5cmと聞いていた腫瘤が2cmを超えていたのですがこちらは短期間で成長したのではなく測定誤差と考えてよろしいでしょうか。」
⇒その通りです。
 そもそも「病理学的浸潤径」は「画像診断より大きくなりがち」です。
 良く考えてみてください。
 「顕微鏡的にしか見えない(画像では捉えられない)拡がり」を想定して(通常)2cmマージンをつけるのです。(つまり、顕微鏡的浸潤径が大きくなるだろうことは「想定の範囲内」なのです)
「今回温存手術を選択しましたがその選択が妥当であったか」
⇒妥当です。
「そのため術後約1ヶ月となる今月末に化学療法よりも先に放射線治療を行う予定ですが、この順番で問題ないでしょうか。」
⇒これは「良くある」ことです。
 理屈の上で「化学療法をする場合」には化学療法⇒放射線の順番にすべきと、なっているのはご存知の通りですが、実際に(化学療法をするのか決まっていない場合に)結果として「放射線治療が先行」することはよくあることです。
「私の予後に関して10年生存率と再発率を先生のご経験も合わせてお聞かせいただけますでしょうか。」
⇒(HER2は陰性となる確率が高いので)HER2陰性として計算すると…
 10年生存率は96%
 再発率は15%
  となります。
「腫瘤が大きかったこと、リンパ管侵襲があったこと、年齢も鑑みて不安」
⇒それらは全く問題ありません。
 ご安心を。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

今後の治療計画について
性別:女性
年齢:32歳
田澤先生、先日は質問にお答え頂きまして誠にありがとうございました。
諸々の検査結果が出たこと、色々なサイトや文献を目にした中で他に疑問点と不安が生まれましたので再度ご質問させてください。
現状を申し上げますと、FISH法は陰性、また主治医と相談しましてオンコタイプDXもお願いしたのですがそちらのスコアは8でした。
放射線治療の終了を待って、今後はホルモン治療を行っていく予定です。
質問1
私の場合、先生ならどのような治療を提案されますか。
こちらのサイトを拝見しているとタモキシフェンとLH-RHagonist併用を5年もしくは10年なのかなと考えておりますが、いかがでしょうか。
質問2
将来的に妊娠を希望する場合……どんなタイミングでの妊娠・出産がリスクが少なく望ましいでしょうか。
質問3
センチネルリンパ節生検について、「センチネルリンパ節を3個取った」と言う患者さんのブログのほか、「センチネルリンパ節をひとつしか取っていないのでは、リンパ節の転移がないとは言い切れない」という某クリニックの先生の記述を目にしましたが、私の(SN0/1)というのはこういった事例にあたるのでしょうか。
手術を受けた病院では色素と放射性物質を併用したセンチネルリンパ節の確定を行っているとのことで信頼できる結果とは思いつつ、上記のような記述を見て不安になりました。
質問4
この一週間ほど背骨の右側(乳がんは左側)の奥が熱を持ったような、ハリ感やこったような感覚があります。
手術前の5月に病院の方針で骨シンチの検査をして異常ナシだったのですが、遠隔転移を心配する必要はないでしょうか。
長文失礼いたします。
ご回答よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「質問1 私の場合、先生ならどのような治療を提案されますか。こちらのサイトを拝見しているとタモキシフェンとLH-RHagonist併用を5年もしくは10年なのかなと考えておりますが、いかがでしょうか。」
⇒その通りです。
 32歳であればLH-RHagonistの併用は当然です。
「質問2
将来的に妊娠を希望する場合……どんなタイミングでの妊娠・出産がリスクが少なく望ましいでしょうか。」

⇒このQandAを隅々まで見てもらえば解りますが…
 妊娠出産を優先して 妊娠出産(授乳)⇒ホルモン療法となります。
「質問3「センチネルリンパ節をひとつしか取っていないのでは、リンパ節の転移がないとは言い切れない」という某クリニックの先生の記述を目にしました」
⇒これは笑止な…
 自ら「自分が行うセンチネルリンパ節生検の精度が悪い」と宣言しているようなものです。
 ☆正確な「センチネルリンパ節生検」を行えば、1個で全く問題ありません。(複数採取しないと心配という時点で、自分の手技に自信が無いという裏返しです)
  ♯ただ『今週のコラム 89回目  特徴的なことに(この上半期だけでも)4件もあった(術後再発に対する)「腋窩郭清術」があります。』を見てもらえばお解りですが…
   実際には「センチネルリンパ節生検をきちんとできない医師がいる」ことは間違いないようです。
「遠隔転移を心配する必要はないでしょうか。」
⇒全くありません。