[管理番号:568]
性別:女性
年齢:40歳
数年前から右乳頭から分泌物(黄色みを帯びた透明色)が出るようになり、一昨年に右乳頭の内側にしこりがあるのに気付き、エコー検査したところ、嚢胞があるが、画面は真っ黒なので水分だから問題ない、定期的に検査するようにと言われました。
そして今年エコー、マンモグラフィ、MRI検査、乳頭分泌液を採取したら、乳汁中のceaが1000以上あるので癌の可能性否定出来ずと言われ、乳腺穿刺しました。
そして今日の細胞診の結果が「鑑別困難」だったので、次回は組織を採取する為、手術で腫瘍摘出すると言われました。のう胞が幾つも在り、のう胞の中にごく小さな腫瘍が沢山があるので太い針では難しいと言われました。
4.0cm弱×2.0cm範囲を摘出するそうです。
かなり驚きました。先生からは非浸潤性乳管癌(悪性だった場合?)と言われました。
本サイトでマンモトーム生検の存在を知りました。病院ではマンモトーム生検について、一言も触れられませんでしたが、「太い針」のことだったんでしょうか。
今回のようなケースでは組織を採取するのにメスを入れるのが妥当なのでしょうか?
念のため、細胞診の所見を以下に記載します。
「血性背景の中、泡沫細胞とともに大小の細胞集塊が多数見られます。集塊内に紡錘形骸の筋上皮細胞をみとめます。篩状構造の細胞集塊も散見されます。乳管内病変が疑われます。」
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
質問者の意図は「外科的生検でなく、マンモトーム生検で診断がつかないものでしょうか?」というものだとすると、
今回の私の回答は「ややポイントが外れているかもしれません」
最終的には、その点にも回答するようにしていますが、私の関心をひくのは「乳頭分泌を伴う病変」の診療です。
どうしても、そこに触れずにはいられません。
質問者の意図から外れてしまい申し訳ありません。
「数年前から分泌物」これは当然「単孔性」だったのでしょう。
「単孔性分泌物」⇒「乳管造影」⇒「乳管区域切除」
たった、これだけなのですが、やはり『今回の担当医も乳頭分泌の正しい診療ができない』がっかりします。
このQandAで「乳頭分泌の診療に対する」回答を書いている度に「憤り⇒諦め」に変化しています。
一昨年「乳管造影もせずに」エコーで「嚢胞」と診断⇒(そして今回もやはり、乳管造影もせずに)「MRI, 分泌液CEA」(大学病院の医師のような稚拙な診療)
すみません。質問者には全く非はありません。
回答
「数年前から右乳頭から分泌物」「一昨年に右乳頭の内側にしこり」
⇒この時点で「乳管造影」すべきでした。
そうすれば、その時点で診断がついていました。
診断名は『乳管内乳頭腫か非浸潤性乳管癌』です。
♯別に「後出しジャンケンをしている訳ではありません」
本来の当然の医療なのです。
「MRI検査、乳頭分泌液を採取したら、乳汁中のceaが1000以上あるので癌の可能性否定出来ず」
⇒全て無駄な検査です。
MRIなど診断には不要、分泌物CEAは参考程度(逆に言うと、分泌物CEAが低値だったら、これ以上の検査は不要とでもするつもりだったのでしょうか?)とんでもない事です。
「乳腺穿刺しました」「細胞診の結果が「鑑別困難」」
⇒細胞診して「乳頭腫、もしくは嚢胞内癌=非浸潤癌」が鑑別困難となるのは当たり前なのです。
「先生からは非浸潤性乳管癌(悪性だった場合?)と言われました。」
⇒「乳管内乳頭腫か非浸潤性乳管癌かは五分五分」です。
決して「診断は確定してはいません」
「本サイトでマンモトーム生検の存在を知りました。病院ではマンモトーム生検について一言も触れられませんでしたが、「太い針」のことだったんでしょうか。」
⇒違います。
おそらく「その施設」には(超音波ガイド下)マンモトームが無いのでしょう。
「太い針」とは、(バネ式の)針生検の事です。
♯(超音波ガイド下)マンモトームと(バネ式)針生検の違いは「採取される組織量」の違いです。
「採取される組織量の違い」は(微妙な病変の)「診断能力の差」としてでます。(マンモトームの方が100倍位採取できます)
「今回のようなケースでは組織を採取するのにメスを入れるのが妥当なのでしょうか?」
⇒この回答はyesなのですが、妥当なのは「担当医のやろうとしている外科的生検」ではありません。
◎最も妥当な検査『乳管区域切除』
今回は分泌があるのだから、「乳管造影」をした上で「病変の範囲を確認し」『乳管ごと、この腫瘍群を切除』する。
○次に妥当な検査 『(超音波ガイド下)マンモトーム生検』
(患者さん側からの希望で)「手術では無く」診断を確定して欲しいと言われた場合には、「採取できる組織量が多い」ので、この検査を行います。
△外科的生検
「乳頭分泌があるのに」通常の「外科的生検」をするのは誤りです。
せっかく、組織を手術的に摘出するのであれば、「乳管ごと」摘出すべきなのです。
『「血性背景の中、泡沫細胞とともに大小の細胞集塊が多数見られます。集塊内に紡錘形骸の筋上皮細胞をみとめます。篩状構造の細胞集塊も散見されます。乳管内病変が疑われます。」』
⇒これをみると、(良性の)「乳管内乳頭腫」よりは「非浸潤性乳管癌」である可能性の方が若干高そうです。
◎「乳頭分泌を伴う乳管内病変」
このサイトを閲覧した方には「正しい診療」を知ってもらいたいのです。
質問者様から 【質問2 組織診断について】
迅速なご回答ありがとうございました。
腫瘍は右乳輪の内側斜め上1センチの場所から4.0cm弱×2.0cm範囲あるのです
が、
以下2点質問させてください。
1.先日病院の先生から、「腫瘍が乳管にあり、乳管は乳頭に繋がってるから、
非浸潤性乳管癌だった場合、乳頭を残せればいいが残せなかった場合、全摘になるか
も
しれない」と言われショックでした。これが妥当なのでしょうか?
2.◎最も妥当な検査『乳管区域切除』
今回は分泌があるのだから、「乳管造影」をした上で「病変の範囲を確認し」
『乳管ごと、この腫瘍群を切除』する。→どうも想像できないのですが、これを行っ
た場合、乳頭と乳輪は残るのでしょうか?田澤先生の指摘されるように乳管造影でき
る医師は日本では少ないとのことなので、今の病院の先生に乳管造影検査もマンモトームもお願い出来なかった場合、田澤先生に検査依頼出来るのでしょうか?モタモタしているうちに非浸潤から浸潤癌になったらどうしよう・・・と不安です。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
乳頭分泌のある(おそらく)乳管内病変ですね。
単孔性乳頭分泌を、そのままにしておいて、「病変が拡がったとたんに」全摘するか
もしれない。では本当にやりきれない話しだと思います。
●同様の症状を抱えている方達にも大いに参考になる内容です。
回答
『「腫瘍が乳管にあり、乳管は乳頭に繋がってるから、非浸潤性乳管癌だった場合、
乳頭を残せればいいが残せなかった場合、全摘」』
⇒根本的な考え方に誤りがあります。
そもそも「乳癌の80%以上」は乳管細胞が癌化してできます(つまり殆どの乳癌は
乳管に繋がっているのです)
「乳頭分泌」は乳頭への進展とは関係ありません。
担当医は「今回は乳頭分泌があるから、今回は乳管に繋がっている、だから乳頭に
連続しているかもしれないから乳頭を残せない」と言っているようですが、
★乳頭分泌があっても無くても、乳癌は乳管に連続しており、乳管沿いに乳頭方向
への進展の可能性は同様にあるのです。
○実際には「乳頭への直接浸潤」が無ければ「乳頭を切除する必要」はありませ
ん。(乳頭分泌は、そのリスクとは無関係です)
「どうも想像できないのですが、」
⇒分泌している乳管を「乳頭直下皮膚ぎりぎりまで追いかけて」切離して、そのまま
末梢へむかい「その乳管に連続した乳管内病変を摘出」するのです。
♯トップページの「良性疾患」の中の「乳頭分泌」の中の「乳管内乳頭腫」の中
で、図を掲載しているので参考にしてください。
「これを行った場合、乳頭と乳輪は残るのでしょうか?」
⇒勿論残ります。
「乳管区域切除」で乳頭乳輪を摘出した事は一度もありません。
「今の病院の先生に乳管造影検査もマンモトームもお願い出来なかった場合、田澤先
生に検査依頼出来るのでしょうか?」
⇒今までの診療の経緯からして、その病院では(なかなかどこの病院でも)「乳管造
影も乳管区域切除もできない」と思います。
是非とも私に診療させてください。
決して「中途半端な診療」をしてはいけません。
「乳頭分泌」は「その乳管内に異常がある」だから、その乳管を調べる。 シンプ
ルですが、そこに真実があるのです。(simple is best)
質問者様から 【質問3】
こんにちは。すみません、初めてしこりに気付いた時に行った病院と今回精密検査した病院は異なる旨の記載が漏れてました。
(引っ越しが続いた為)一昨日、組織採取する範囲を改めて訊きに病院に行きました。その病院にはマンモトームはあるそうですが、私の場合、腫瘍が極小の為採り残しがあったらいけないので手術になるとのこと。
「乳管造影して乳管ごと切除」について話ました、肯定も否定もなく流されました。
ただ、摘出する範囲は染色して特定できるそうで、「腺葉区域切除術」を行うとの事でした。もし悪性だった場合、やはり乳頭は残したいと再度言っても難しいと言うだけで、なぜ残せないのか説明してもらえず、最初から全摘出ありきの応対なのがどうしても納得できません。
やはり田澤先生に診てもらいたい・・と思うのですが、関西在住なのでそう簡単にはいかず。。検査してもし悪性だった場合の治療も含めて何回くらい病院に行くようになるのでしょうか?
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
乳管造影をしないという事は、「単孔性乳頭分泌」とその「腫瘤非形成性病変(嚢胞が沢山と表現されているのは実はこれでしょう)」が同一病変なのかは本来不明です。
♯腫瘤非形成性病変はトップページの「腫瘤非形成性病変」を参照してください。(写真では「多発小嚢胞」に相当すると考えています。)
分泌が無い場合には「マンモトーム生検で病変を比較的広範囲でサンプリング」しますが、分泌がある場合には「乳管造影⇒乳管(腺葉)区域切除」が最も確実な方法です。
回答
「検査してもし悪性だった場合の治療も含めて何回くらい病院に行くようになるのでしょうか?」
○全体の流れを示すと
(当日)乳管造影⇒「乳管内病変の存在確認」(乳管区域切除の方針となれば、その日の内に全身麻酔の検査:採血、心電図、呼吸機能、胸部レントゲンを撮影すれば、途中来院不要です)
(後日)乳管区域切除(2泊3日)
(術後2週間目で病理結果)ここで、(良性である)「乳管内乳頭腫であれば、治療は終了」
乳癌であれば、追加治療の相談(どの程度の乳癌かによります)
♯上記のように「頻回の通院は不要」です。
●私の印象
病変の範囲がどの程度なのかは「メール内容からは」不明ではありますが、『乳頭分泌があるから乳頭は残せないという考え』は全く理解不能です。
厳しいようですが、乳頭分泌について「きちんとした診療をしてこなかった」様子が解ります。
関西からでは「大変」だとは思いますが、「正しい乳頭分泌の診療」を是非、当院で行ってもらいたいと思います。