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浸潤性小葉がんについて

[管理番号:7172]
性別:女性
年齢:45歳
病名:浸潤性小葉がん
症状:特にありません。

いつもこちらのQ&Aを拝見し,勉強させて頂いております。

私は現在45歳で,妊娠経験はありません。

12月に左乳がん(浸潤性小葉がん)と診断され,来週手術予定です。

術前の画像検査では明確なリンパ節転移や遠隔転移は見られず,がんの大きさは1.5cm程度で乳管内進展なし,娘病変なしということで,現在の見立てではステージ1で,温存手術後放射線治療,サブタイプに応じた薬物治療が予定されています。

家庭の事情で,最初の診断を受けた病院から,別の病院に転院して来週手術を受けることになりましたが,
最初の病院で受けた組織検査について,浸潤性小葉がんであることと,nuclear grade1,nuclear
atypia1,mitotic count1という情報のみ判明しているとの事だったため,その検体を転院後の病院で再度調べてもらったところ,検体の量が少なすぎて,
ER(+),PgR(+),HER2(1+),E-cadherin陰性ということは分かったものの,Ki-67は判定不能でした。

また,双方の病院の先生はいずれも,私の場合は乳腺症がひどいため,マンモではほとんどがんが見えず,
エコーでも非常に特定し辛いとの事で,私自身もいまだにどこにしこりがあるのか分からない状態です。

造影CTでは乳腺全体に小さな濃染が多発しているというコメントがあり,造影MRIでも左乳腺は造影される領域多発との事でした。

この内容を踏まえて以下の4点についてご教示ください。

1 ネットで検索すると,小葉がんは広範囲に病巣が広がることが多いという書き込みをよく目にしますし,私のブログ仲間で小葉がんで長期無病状態の方達はみなさん全摘の方ばかりです。
画像検査でも広範囲に集積はしているということで,本当に部分切除でいいのか不安です。
田澤先生の御見解をお聞かせ頂けませんでしょうか?

2 正直なところ,全摘して放射線治療なしの方がよかったというのが私の本音ですが,主治医からは,最近の海外のデータでは温存+放射線の方が成績がいいという話でした。
例えば,今回の手術で部分切除をした場合,取り残しがあるということが,放射線治療の後に判明した場合,放射線もして結局は全摘もするということになりますが,放射線による全身的なダメージ(肺や骨?)は放射線を当てた乳房を全摘しても残るものでしょうか?

3 今後,数年経ってから残った乳房にがんがあることが判明した場合,又は新しくがんが発生した場合,
今回全摘した場合よりも予後は悪いでしょうか?
私の知り合いは,部分切除から3年後に同じ乳房にがんが見つかり,その時には既に遠隔転移していました。

遠隔転移前に発見できるものでしょうか?

4 造影CTのコメントに「子宮内膜が肥厚し,頸部は腫大している印象です。
病的かどうか分かりませんが,婦人科的に評価を」と書いてありました。
1か月前に受けた子宮頸がん検診は異常なしでしたが,子宮内膜ポリープがあることが判明し,経過観察中です。

9年前に受けた子宮頸部円錐切除術の後遺症で子宮の奥が癒着していて内膜ポリープの切除は入院して麻酔下でないと出来ない状態なので,まずは乳がん手術を先にということになりましたが,もし,子宮内膜がんであった場合,乳がん術後の放射線治療との同時並行での治療は可能でしょうか?

4点も質問して申し訳ございません。

ご教示のほど,よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「私のブログ仲間で小葉がんで長期無病状態の方達はみなさん全摘の方ばかりです。」
→狭い範囲で物事を判断するのは止めましょう。
 現実には小葉癌は珍しくもなんともなく、部分切除でも根治は沢山いらっしゃいます。

 

「田澤先生の御見解をお聞かせ頂けませんでしょうか?」
→画像を実際にみていない者が、その判断(部分切除/全摘)を軽々しく口にはできません。

 ただ、「明らかな多発の所見がない」+「患者さんが希望」であれば、部分切除することに(小用癌だからといっても)何ら躊躇はありません。

「主治医からは,最近の海外のデータでは温存+放射線の方が成績がいい」
→誤り。
 実際は予後は一緒です。

「放射線による全身的なダメージ(肺や骨?)」
→無視できるレベルです。

「今後,数年経ってから残った乳房にがんがあることが判明した場合,又は新しくがんが発生した場合,今回全摘した場合よりも予後は悪いでしょうか?」
→予後は変わりません。

 そのことが「温存でも全摘でも予後は一緒」となる理由なのです。

「私の知り合いは,部分切除から3年後に同じ乳房にがんが見つかり,その時には既に遠隔転移していました。」
→小数例に引っ張られても無意味です。

「遠隔転移前に発見できるものでしょうか?」
→きちんと経過を見ていれば、当然そうなります。(だから予後が一緒なのです。)

 上記お知り合いが、どのような経過観察をされていたのかは不明ですが…

「子宮内膜がんであった場合,乳がん術後の放射線治療との同時並行での治療は可能でしょうか?」
→仮定が多すぎます。
 可能性(頻度)から考えて、子宮内膜癌ではないでしょう(低頻度だし、基本的に閉経後に起こるのです)

 
 

 

質問者様から 【質問2 術後のホルモン療法・定期検査について】

性別:女性
年齢:45歳
病名:浸潤性小葉がん
症状:

先日はご相談内容への迅速なご回答,誠にありがとうございました。

乳房温存手術を終え,退院しました。

センチネルリンパ生検の術中迅速検査の結果は陰性でした。

今後の予定としては,三週間後に病理検査結果が出てからその後の治療方針が決まることとなります。

現在主治医から言われていることは以下の2点です。

1 術前の検査でホルモン受容体が高いことは分かっているので,ホルモン療法は必須。
あなたの場合は子宮内膜ポリープがあり,術前のCT検査でも子宮・卵巣に集積が見られたので,婦人科を受診して頂き,今後のホルモン療法も当院の指示のもと,婦人科で行って頂きたい。

2 病理検査の結果,抗がん剤が不要である場合は,
放射線治療で当院に通って頂き,終了後は,年に1回,マンモとエコー検査の時だけ当院を受診して頂くことになる。

私のがんは浸潤性小葉がんで,温存した乳房内や健側の乳房にも新たにがんが発生する可能性が高いという説明を主治医から受けており,また,浸潤がんであるため,全身への微小転移もあっているでしょうから,
せめて,半年に1回のエコー及び年に1回血液検査をお願いできないかと申し出たところ,主治医から,
「がんは10年くらいかけてがんになるので,マンモとエコーは年に1回でよい。
遠隔転移はどうせ見つかっても助からないので,何か症状が出てから調べればいい」と言われました。

そこで2点ご相談させてください。

1 私は関東圏からかなり離れた所に居住しており,また高齢の親の介護が必要なため,頻繁に上京は出来ませんが,定期的に田澤先生に検査をお願いすることは可能でしょうか?また,そのためにはどのような手続きが必要でしょうか?現在の病院から紹介状を貰うことは難しいと思いますが,病状については自分で詳細に記録したものはあります。

2 婦人科疾患がある場合,ホルモン療法を乳腺・内分泌外科ではなく,婦人科に委ねることは一般的なのでしょうか?

よろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「1 私は関東圏からかなり離れた所に居住しており,また高齢の親の介護が必要なため,頻繁に上京は出来ませんが,定期的に田澤先生に検査をお願いすることは可能でしょうか?また,そのためにはどのような手続きが必要でしょうか?現在の病院から紹介状を貰うことは難しいと思いますが,病状については自分で詳細に記録したものはあります。」
→市川に電話で予約してください。

 3-4か月先となるかもしれませんが、「術後半年」が目安なのでそれで十分です。

メディカルプラザ市川駅

「2 婦人科疾患がある場合,ホルモン療法を乳腺・内分泌外科ではなく,婦人科に委ねることは一般的なのでしょうか?」
→一般的ではありません。(初めて聞きました)

 
 

 

質問者様から 【質問3 浸潤性小葉がんについて】

性別:女性
年齢:45歳
病名:浸潤性小葉がん(管状小葉がん)か浸潤性乳管がん(硬がん)かの結論出ず
症状:

以前に質問しました際には,早々のご回答を頂きまして,ありがとうございました。

病理検査の結果が出ましたので,その内容等について,ご質問させてください。

病理検査の結果,まず,組織像ですが,E-cadherin
が染色されていないものの,組織像からはinvasive lobular caよりもscirrhous ca を考えるという病理レポートに対し,主治医の見解は,
Tubulolobular variant では?という事でした。

その他の項目をレポート通りに記載しますと,ER(6-10%),PgR(21-31%),HER2(0-1+),Ki-67(3-10%),nuclear grade 1(1+2),MP,
ADH,FA,g,10×8mm,DS-,
Comedo-,ly-,v-,SM-,NG1(A1M1),
E-cadherin-,SLNB 0/1,T1bN0M0 Stage1
との事でした。

この結果を受けて,放射線治療50Gyの25回照射と,
タモキシフェンを単独で5年間服用という治療スケジュールが組まれました。

また,今後の診察については,タモキシフェン処方が3か月に1回になるので,その際に問診(触診無し)
と血液検査を行い,1年に1回マンモとエコーをするそうです。

以上の点からご質問させてください。

・これらの病理結果を受けての私の治療内容(温存手術→放射線・タモ単独5年)は妥当でしょうか?

・放射線開始とほぼ同時にタモ服用がスタート予定ですが,乳癌診療ガイドライン2018年版のBQ8 の「4)内分泌療法と放射線療法の同時併用」という所に,
「1995~2015年の文献レビューでは同時併用において乳房と肺の線維化のリスクが上昇するという結果であった」と記載されていましたので不安な反面,放射線が終わるまで内分泌療法をしないことも不安です。

併用しても問題はないのでしょうか?

・主治医からサブタイプの説明はありませんでした。

私の癌はE-cadherinは陰性だったようですが,組織像について管状小葉癌か硬癌かの結論の説明は受けていません。
いずれの癌でもサブタイプはルミナールAと考えて良いでしょうか?Oncotypeは必要だと思われますか?

・以前にもお伺いしました経過観察ですが,病理レポートでも,「多彩な良性病変も混在しており,前癌病変もありそうなので,十分なフォローアップを」と書いてあったため,主治医に不安な気持ちを伝えましたが,3か月に1回の問診の際は触診もエコーもしないと言われました。
理由は,触診については手で触っても当てにならないこと,エコーを頻繁にしても癌が見つかるとは限らないからということでした。
また,
今の病院ではエコーは技師さんがされていて,先生が直接画面をご覧にならないという点も不安ですので,
以前のQ&Aでもご回答頂きましたとおり,田澤先生に是非とも経過観察をお願いしたいのですが,家庭の事情から,市川よりも江戸川病院の方が近いのですが,
江戸川病院での受診は可能でしょうか?また,私のような癌の場合,経過観察はどれくらいの頻度で,どのような検査が妥当でしょうか?

・主治医から,遠隔転移は早期発見しても治らないので,症状が出るまで検査はやらないと言われましたが,これも不安です。
同じ県内の他の病院では年に1回は骨シンチや胸腹部CTをやっているようで,骨転移だけでも早く発見することでQOLも上がるような感じがしますが,遠隔転移の早期発見は無意味でしょうか?田澤先生はどのような検査を推奨されますか?

質問項目が多くなりまして申し訳ございません。
何卒よろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

「・これらの病理結果を受けての私の治療内容(温存手術→放射線・タモ単独5年)は妥当でしょうか?」
→私も「全く」同意見です。

「併用しても問題はないのでしょうか?」
→「全く」問題ありません。

「いずれの癌でもサブタイプはルミナールAと考えて良いでしょうか?」
→その通り。(組織型とサブタイプに関係はありません)

「Oncotypeは必要だと思われますか?」
→不要(さすがにKi67=一桁ですから…)

「江戸川病院での受診は可能でしょうか?」
→江戸川では新患予約はありません。(水曜日の予約外しかありません)

「また,私のような癌の場合,経過観察はどれくらいの頻度で,どのような検査が妥当でしょうか?」
→「私のような癌」とありますが…(全く、特別なことはありません)

 通常、(3か月処方なので)「3か月に1回の診察、エコー」と「半年に1回の採血」「1年に1回のマンモ」をしています。

「田澤先生はどのような検査を推奨されますか?」
→無駄な被爆の検査は(術前も術後も)行いません。(採血腫瘍マーカーが上昇すれば、その時行います)