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(抗がん剤治療)LHRHアゴニストの併用による卵巣保護の効果について

[管理番号:13236]
性別:女性
年齢:40
病名:浸潤性乳管癌
症状:
投稿日:2025年11月23日

田澤先生、こんにちは。
いつもこちらのQ&Aをみて勉強させていただいております。
貴重な場を設けてくださり、ありがとうございます。

将来挙児希望で、抗がん剤治療に並行してLHRHアゴニストによる卵巣機能保護をすべきかどうか、悩んでおります。
なお、受精卵凍結は11個しましたが、過去に染色体異常で流産したこともあり、
このうち正常胚がいくつあるのかと考えると、数が十分とはいえないと感じており、
不安があります。
(主治医より、これ以上の採卵は、時間的に、またホルモン補充という点からNGと言われています)

浸潤性乳管癌ステージ2
腫瘍の大きさ21mm、画像上は転移なし
ホルモン受容体90%で強陽性
HER2 3+ 陽性

主治医より、リュープリン、ゾラデックスについて説明を受けましたが、
これを抗がん剤と並行して使ったとしても卵巣機能が保護されるかはわからないと言われました。

①田澤先生が別のQ &Aでエビデンスはないと書かれていたのを拝見しましたが、今の時点でもエビデンスはないのでしょうか?

② 「米国・クリーブランドクリニックのHalle C.F. Moore氏らPOEMS/S0230研究グループによる無作為化試験の結果によると、ゾラデックスの併用により卵巣機能不全を予防し、早期閉経リスクの低下や、妊娠の可能性が向上することが報告された。…
結果、卵巣機能不全が認められたのは、ゴセレリン群8%、化学療法単独群22%であった」
という記事を見たのですが、これはエビデンスとしては不十分なのでしょうか?

③そういうことではなく、②の試験はホルモン受容体陰性の患者を対象としているため、
私のようなホルモン受容体陽性の患者には参考にならないということでしょうか?

④主治医より、ゾラデックス等の併用をすることで
がんの治療には何かしらマイナスの影響があるかもしれないと言われました。
どんなマイナスの影響が考えられるのでしょうか?
乳がんに対し抗がん剤が効きにくくなるなどの可能性があるのでしょうか?
それとも、卵巣に抗がん剤が効きにくくなるから、卵巣転移の可能性が上がるということでしょうか?

⑤主治医は、あんまりやる人はいないけどね、と後ろ向きな様子です。
田澤先生が診られてきた患者さんでも、実際やる人はあまりいないものでしょうか?
何故でしょうか?

⑥年齢的に向き不向きはあるのでしょうか?
多少は抗がん剤の影響を受けるでしょうし、
若いならともかく、年齢(40)的にすでに卵巣機能が下がっている状態で保護しても、その後良質な卵子が残る可能性は低く効果が期待できないなど…

⑦もし併用するとした場合、抗がん剤投与に対して2.3ヶ月先行して打っておく必要がありますか?
(生理が止まるまで2.3ヶ月かかるという記事を読みまして…)

⑧もし私が田澤先生の患者だとしたら、先生は私にゾラデックス等の併用をすすめますか?

お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

①田澤先生が別のQ &Aでエビデンスはないと書かれていたのを拝見しましたが、今の時点でもエビデンスはないのでしょうか?
→その通りです。
保護される「かも」しれない、あくまでも「可能性を高める手段」と考えるべきです。

② 「米国・クリーブランドクリニックのHalle C.F. Moore氏らPOEMS/S0230研究グループによる無作為化試験の結果によると、ゾラデックスの併用により卵巣機能不全を予防し、早期閉経リスクの低下や、妊娠の可能性が向上することが報告された。…
結果、卵巣機能不全が認められたのは、ゴセレリン群8%、化学療法単独群22%であった」
という記事を見たのですが、これはエビデンスとしては不十分なのでしょうか?

→可能性を「高める」手段として納得して行うべきということです。(つまり結果として卵巣機能改善しない可能性がある点では同じことです)

③そういうことではなく、②の試験はホルモン受容体陰性の患者を対象としているため、
私のようなホルモン受容体陽性の患者には参考にならないということでしょうか?

→上記②の回答参照

④主治医より、ゾラデックス等の併用をすることで
がんの治療には何かしらマイナスの影響があるかもしれないと言われました。
どんなマイナスの影響が考えられるのでしょうか?
乳がんに対し抗がん剤が効きにくくなるなどの可能性があるのでしょうか?
それとも、卵巣に抗がん剤が効きにくくなるから、卵巣転移の可能性が上がるということでしょうか?

→マイナスはありません。

⑤主治医は、あんまりやる人はいないけどね、と後ろ向きな様子です。
田澤先生が診られてきた患者さんでも、実際やる人はあまりいないものでしょうか?
何故でしょうか?

→単純に…
妊娠出産を考えるならば「抗がん剤前に受精卵凍結」それが一番確実な方法であり、「その可能性を挙げるためにLH-RHagonistを推奨する」根拠がないため。
♯ただし、患者さん側から「少しでも可能性をあげるのであれば、併用したい」と言われれば別に構いませんが、治療的意義から言えば「抗がん剤すれば化学療法閉経となるのだから、LH-RHagonistで抑制する必要はない=無駄な治療」となるからです)

⑥年齢的に向き不向きはあるのでしょうか?
多少は抗がん剤の影響を受けるでしょうし、
若いならともかく、年齢(40)的にすでに卵巣機能が下がっている状態で保護しても、その後良質な卵子が残る可能性は低く効果が期待できないなど…
⑦もし併用するとした場合、抗がん剤投与に対して2.3ヶ月先行して打っておく必要がありますか?
(生理が止まるまで2.3ヶ月かかるという記事を読みまして…)

→すべて無関係

⑧もし私が田澤先生の患者だとしたら、先生は私にゾラデックス等の併用をすすめますか?
→上記⑤の♯参照のこと

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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/12/11
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