[管理番号:12787]
性別:女性
年齢:38
病名:乳房温存術後の局所再発
症状:皮膚浸潤など
投稿日:2025年06月06日
いつも先生のサイトを拝見し、勉強させていただいております。
現在海外に住んでいて、乳房温存術後の局所再発をしました。
検査の結果はルミナルB、
手術は皮下乳腺全摘術(乳輪乳頭温存乳房切除術、皮膚温存乳房切除術)の再建か全摘で考えています。
病院では術前化学療法
4x EC 90/600 q14 12x Paclitaxel (80mg/m2) q7 + 6 mg Pegfilgrastim an d2 GnRHを勧められましたが、妊娠を希望しているので化学療法はせずに, 必要だったら照射、(出産後)ホルモン療法を考えていて、どの治療法が自分のとって一番良いのか悩んでいます。
お忙しいところ大変恐縮ですが、田澤先生のオピニオンをお聞きしたいです。
初回手術は2021年12月でルミナルA初期癌でした。
温存手術、センチネルリンパ節生検(陰性)をした後は自己責任で術後照射やホルモン
療法はしておりません。
前回の病理検査結果は下記の通りです。
pT1c (17 mm) pNO (0/1 MX) LO VO RO G2 begleitendes DCIS G2, RO NST G2 ER 90 %, PR 90 %, Her2/neu 1+, Ki-67 5 %
現在はルミナルBステージ3b~c
遠隔転移がない温存乳房内再発が3ヶ所、
画像上、脇リンパの1箇所が転移の可能性があり生検をしたら陽性でした。
今回の病理検査結果は下記の通りです。
cT4、cN1, 皮膚転移あり NST G2 ER 95 % PR 65 % Her2/neu 0, Ki-67 25 %
3つのしこりの大きさは全て2cm以下、乳輪より少し下に横半径状の場所にあり、下記の通りです。
① 外側下部、初回手術した場所
②①の真上に皮膚浸潤癌(表面上1cmx2cmでした)
③ 内側下部、乳輪から斜めの肋骨の上
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③の内側下部、乳輪から斜めの肋骨の上にあるしこりについてお尋ねしたいのです。
11月頃から痛みを感じ、しこりが無かったので骨転移の心配をしていました。12月ごろからは小さいしこりが出来て徐々に大きくなりました。
質問1
痛みの後に肥大化した場合、腫瘍じゃない他の可能性はありますか?
質問2
痛みがあったので生検はしていませんが、全摘の場合は③の生検は必要無いでしょうか?
質問3
内胸リンパ節の正確な位置を知らないのでお聞きしたいのですが、もし③が内胸リンパ節転移だとしたら、PET検査が必要でしょうか?
質問4
初回の手術ではセンチネルリンパ節生検で陰性でしたが、今回はエコーで1箇所怪しかったので生検をしたら陽性で、下記の通りです。
リンパ節PR 80%、IRS 9、PR 60%、IRS 6、Her2/neu 2+、ISH陰性、Ki-67 10%
INFORM HER2 Dual ISH DNAプローブカクテルアッセイを用いた2色in situハイブリダイゼーション(ISH)では、選択した20個の腫瘍細胞核においてHER2/neu遺伝子の増幅は認められず(核あたり2~4個の黒色SISHシグナル)、17番染色体のセントロメアに2~4個のCEP17シグナル(2~4個の赤色ISHシグナル)が認められました。
HER2/neuの状態を正確に判定するためのISH検査の結果、部分的に四倍体の核を有する腫瘍が1つあり、HER2/neu遺伝子の増幅は認められませんでした。
HER2/neu:CEP17比は1.28でした。
HER2/neu遺伝子数は3.6でした。
HER2低値。
田澤先生は腋窩郭清を推奨だとは存じていますが、病院では腋窩郭清はリンパ転移がよっぽどひどい時しかやらないと言われました。
もし病院で腋窩郭清が出来ない場合、術前化学療法をせず
①画像上腫れてるリンパ節を取り除く
②+照射
③+術後に抗がん剤
④ 無治療
この4つだと腋窩郭清をした時と比べて再発率はそれぞれどれくらいの差がある思われますか?
リンパ節転移が遠隔転移の因子で直接遠隔転移を起こすわけでは無いとQ&Aで見ましたが、もし無治療の微小転移を定期的に検査して腫れた時に手術で取り除いたら転移(余命)とは関与しないでしょうか?
リンパ節が細くて生検が少し難しかったのですが、微小転移は画像で分かる事でしょうか?
HER2 は生検後の最初の診断書には診断不可だったのですが、新しい診断書には低値と書かれてましたが、これは正確な結果でしょうか?
胸の腫瘍とは違う種類だったら、治療法が変わるのですか?
放置した場合、リンパも花咲ガンになるのでしょうか?
手の中指から小指まで痺れがあるんですが、この痺れは何をしたら治りますか?
質問5
「腫瘍が皮膚や筋肉、胸壁に広範囲に浸潤していたり、リンパ節転移が激しく安全な腋窩郭清ができないような「極めて進行した」状態には術前に抗癌剤を用いて(手術で取れる)状態まで腫瘍を小さくしてから乳房切除手術をすることが目的となります。」
とQ&Aに書かれていましたが、皮膚だとどれくらいの広範囲の浸潤の事ですか?
(手術は執刀医の技術によって結果は違うとは思いますが)
広範囲の浸潤の時に術前化学療法をせずに全摘した場合再発率は高いですか?
(乳房全摘術が一番良い方法だと思いますが)
もし再建を望んでいる場合
質問6
出来るだけ外側上部、内側上部を残したいと強く希望している場合、腫瘍がある部分を部分切除術(横半径状、1/2切除して)、部分的にインプラントを入れて再建は技術的に可能でしょうか?
質問7
乳輪から近い、皮膚浸潤癌(表面上1cmx2cm)を部分的に除去して皮膚、乳輪、乳頭が
ある状態でインプラントを入れる乳輪乳頭温存乳房切除術、もしくは皮膚温存乳房切除術をする事は可能性でしょうか?
質問8
①皮下乳腺全摘術(乳輪乳頭温存乳房切除術、皮膚温存乳房切除術)
②+ホルモン療法
③+ホルモン療法 +抗がん剤
だとどれくらいの上乗せ効果があるのでしょうか?
質問9
もしOD と真のKi67値で化学療法が有効だと遠隔転移になる可能性は
①無治療
②+ホルモン療法
③+ホルモン療法 +抗がん剤
だとどれくらいの上乗せ効果があるのでしょうか?
質問10
チョコレート嚢胞も20代からあり、両側10cm以上になったり消えたりを繰り返していて手術を勧められたのですが経過観察をしています。
①乳癌手術の時にもし同時に出来たら麻酔、抗生物質などを使う量が減り、体の負担が減るのでしょうか?
②乳癌の患者さんで、チョコレート嚢胞の方は多いのでしょうか?
③もしその場合ガン化する方もいらっしゃいますか?
質問11
余談になるかも知れませんが、先生の「今週のコラム86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです」
を読み、食用の肉に腫瘍がある場合、人体への影響は何か あるのかとふと思いましたが先生はどう思いますか?
質問12
ルミナルタイプで積極的に治療をしても末期癌に進行する方に何か特徴や共通点があると思いますか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
申し訳ありませんが質問が多すぎるので整理します。
皮膚浸潤があるので(画像上の)ステージはcT4b, cN1, cStage3Bとなります。
♯
3CはIC(鎖骨下、別名レベル3)もしくはSC(鎖骨上)もしくはPS(胸骨傍)のいずれかの転移所見がある場合であり、質問者には相当しません。
質問1
痛みの後に肥大化した場合、腫瘍じゃない他の可能性はありますか?
⇒増大しているので「再発腫瘍の可能性が高い」とは常識的に思います。
質問2
痛みがあったので生検はしていませんが、全摘の場合は③の生検は必要無いでしょうか?
⇒全摘なので(当然、切除範囲に含まれるので)不要です。
質問3
内胸リンパ節の正確な位置を知らないのでお聞きしたいのですが、もし③が内胸リン
パ節転移だとしたら、PET検査が必要でしょうか?
⇒PSではないですね。
PSは余程増大しない限り「触れません」
質問4
初回の手術ではセンチネルリンパ節生検で陰性でしたが、今回はエコーで1箇所怪しかったので生検をしたら陽性で、下記の通りです。
リンパ節PR 80%、IRS 9、PR 60%、IRS 6、Her2/neu 2+、ISH陰性、Ki-67 10%
INFORM HER2 Dual ISH DNAプローブカクテルアッセイを用いた2色in situハイブリダイゼーション(ISH)では、選択した20個の腫瘍細胞核においてHER2/neu遺伝子の増幅は認められず(核あたり2~4個の黒色SISHシグナル)、17番染色体のセントロメアに2~4個のCEP17シグナル(2~4個の赤色ISHシグナル)が認められました。
HER2/neuの状態を正確に判定するためのISH検査の結果、部分的に四倍体の核を有する腫瘍が1つあり、HER2/neu遺伝子の増幅は認められませんでした。
HER2/neu:CEP17比は1.28でした。
HER2/neu遺伝子数は3.6でした。
HER2低値。
⇒HER2は陰性です。
田澤先生は腋窩郭清を推奨だとは存じていますが、病院では腋窩郭清はリンパ転移がよっぽどひどい時しかやらないと言われました。
もし病院で腋窩郭清が出来ない場合、術前化学療法をせず
①画像上腫れてるリンパ節を取り除く
②+照射
③+術後に抗がん剤
④ 無治療
この4つだと腋窩郭清をした時と比べて再発率はそれぞれどれくらいの差がある思われますか?
⇒それは流石にわかりません。
リンパ節転移が遠隔転移の因子で直接遠隔転移を起こすわけでは無いとQ&Aで見ましたが、もし無治療の微小転移を定期的に検査して腫れた時に手術で取り除いたら転移(余命)とは関与しないでしょうか?
⇒その通りです。
リンパ節が細くて生検が少し難しかったのですが、微小転移は画像で分かる事でしょうか?
⇒解りません。
HER2 は生検後の最初の診断書には診断不可だったのですが、新しい診断書には低値と書かれてましたが、これは正確な結果でしょうか?
⇒その通り 所謂陰性なのですが「低発現=(日本では)trastuzumab-deruxtecaneの手術不能再発乳癌への適応が追加された」ので、陰性だけど「低発現」という表現も残すのです。
放置した場合、リンパも花咲ガンになるのでしょうか?
⇒距離が遠いので「相当な時間がかかる」でしょう。
手の中指から小指まで痺れがあるんですが、この痺れは何をしたら治りますか?
⇒整形外科を受診しましょう。
質問5
「腫瘍が皮膚や筋肉、胸壁に広範囲に浸潤していたり、リンパ節転移が激しく安全な腋窩郭清ができないような「極めて進行した」状態には術前に抗癌剤を用いて(手術で取れる)状態まで腫瘍を小さくしてから乳房切除手術をすることが目的となります。」
とQ&Aに書かれていましたが、皮膚だとどれくらいの広範囲の浸潤の事ですか?
⇒10cm
(手術は執刀医の技術によって結果は違うとは思いますが)
広範囲の浸潤の時に術前化学療法をせずに全摘した場合再発率は高いですか?
⇒広範囲の場合には(そもそも)植皮でもしない限り皮膚を閉鎖できません。
(乳房全摘術が一番良い方法だと思いますが)
もし再建を望んでいる場合
質問6
出来るだけ外側上部、内側上部を残したいと強く希望している場合、腫瘍がある部分を部分切除術(横半径状、1/2切除して)、部分的にインプラントを入れて再建は技術的に可能でしょうか?
⇒普通は行いません。
質問7
乳輪から近い、皮膚浸潤癌(表面上1cmx2cm)を部分的に除去して皮膚、乳輪、乳頭がある状態でインプラントを入れる乳輪乳頭温存乳房切除術、もしくは皮膚温存乳房切除術をする事は可能性でしょうか?
⇒技術的には可能でしょう。
質問8
①皮下乳腺全摘術(乳輪乳頭温存乳房切除術、皮膚温存乳房切除術)
②+ホルモン療法
③+ホルモン療法 +抗がん剤
だとどれくらいの上乗せ効果があるのでしょうか?
⇒局所再発にはそれらの値を予測は不可能です。
質問9
もしOD と真のKi67値で化学療法が有効だと遠隔転移になる可能性は
①無治療
②+ホルモン療法
③+ホルモン療法 +抗がん剤
だとどれくらいの上乗せ効果があるのでしょうか?
⇒上記同様
質問10
チョコレート嚢胞も20代からあり、両側10cm以上になったり消えたりを繰り返してい
て手術を勧められたのですが経過観察をしています。
①乳癌手術の時にもし同時に出来たら麻酔、抗生物質などを使う量が減り、体の負担が減るのでしょうか?
②乳癌の患者さんで、チョコレート嚢胞の方は多いのでしょうか?
③もしその場合ガン化する方もいらっしゃいますか?
⇒これは婦人科なので回答しません。
質問11
余談になるかも知れませんが、先生の「今週のコラム86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです」
を読み、食用の肉に腫瘍がある場合、人体への影響は何か あるのかとふと思いましたが先生はどう思いますか?
⇒影響ないでしょう。
質問12
ルミナルタイプで積極的に治療をしても末期癌に進行する方に何か特徴や共通点があると思いますか?
⇒ありません。以上。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/6/24
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